簿記1級は、資格取得の難易度が大変高いことで知られています。
この資格があれば経理の転職で有利になるのかどうかが知りたい人もいるでしょう。
しかし、簿記1級があっても必ずしも採用で有利になるとは限りません。詳しくみていきましょう。
目次
簿記1級は経理の転職で有利になる?
簿記1級は、経理にかかわる資格のなかでも特に高度な知識が求められる上位資格です。
転職の採用試験でも、一定の評価は得られると考えて良いでしょう。
しかし、『大企業の経理に転職するときに簿記1級があれば有利だ』とは一概には言えません。
大企業の経理では自社独自のシステムが構築されているのが一般的で、IT技術を活用した自動化が進んでいます。
一方、経理は人間でなければできないような高度な判断が伴う部分を担当することになるため、簿記の教科書に記載されている知識だけでは対応できないケースが出てくるでしょう。
そもそも、経理は企業にとって重要な機密情報に関係する部署なので、新卒で採用したプロパー社員を配属するケースが珍しくありません。
簿記1級の資格だけを武器に大企業の経理に転職するのは容易ではないのです。
大手上場企業でなく零細企業なら簿記1級が有利になることも?
少子化や労働者不足の影響もあって、転職は売り手市場です。
大手上場企業を志望する人が多い一方で、零細企業を志望する人は限られています。企業の規模に関係なく経理は不可欠な部署なので、経理ができる人材を確保するのに零細企業は苦労しています。
人手不足が加速するなか、零細企業では応募者の条件を厳しく設定できないケースも少なくありません。
簿記1級が応募した場合は採用で有利になることもあるでしょう。
経理の転職で採用者が簿記1級よりも重視することは実務経験!?理由はこの3つ!
経理に限らず転職では実務経験の有無が非常に重視されます。
求人情報に未経験者歓迎と書かれていたとしても、それは単に人材募集の間口を広げる手段にすぎません。
未経験者と実務経験者が応募してきたら、実務経験者を採用するケースがほとんどです。
その理由は3つあります。
知識と実務はかけ離れているから実務経験が重視される
経理の実務は、簿記試験で習得した内容とはかけ離れているのが一般的です。
『勉強してきた知識のうち、ほんの一握りしか実務で使わない』といったケースも少なくありません。勉強では学べなかった実務内容になるケースがほとんどでしょう。
簿記試験の出題範囲は、種類や級ごとにあらかじめ決められていますよね。
資格取得の勉強では知識を活用しながらルールに従って淡々と数字を処理していく能力が求められ、イレギュラーな事態に対処する能力はさほど重要ではありません。
しかし、現実はイレギュラーの連続で、さまざまな人を相手にしながら適切な落とし所を見極める能力も必要です。
採用面接で簿記1級の資格をアピールしても、『勉強はできるんだね』『簿記の知識はあるんだね』くらいにしか思われない可能性もあります。
実務経験がない人は辞めやすい
経理への転職で簿記1級の資格取得を目指している人や資格を持っている人は、『高度な簿記の知識を活かせる仕事がしたい』と考えているかもしれません。
ところが、簿記の知識と実際の経理業務はかなり違うので、実際に働き始めてから『こんなはずではなかった』と思う人も少なくないのです。
実務経験がないと職場と人材のミスマッチが起こりやすく、会社を辞めるリスクが上がると考えられています。
採用活動や社員教育には時間と費用がかかり、採用した人にすぐに辞められてしまうと会社にとっては大きなダメージになりがちです。
リスクを最小限にするために、資格だけを持つ人の採用には慎重にならざるを得ません。
そのため、資格のない実務経験者のほうが簿記1級の資格がある未経験者よりも採用で有利になるケースが多いのです。
中途採用のため企業も即戦力がある人が欲しい
経理だけに限りませんが、会社が転職者を採用する主な理由の一つに社員教育にかかる費用を抑えられるという点があります。
転職組であれば、すでに社会人としての最低限度のマナーやビジネスルールを習得しているのが一般的です。
さらに、経験があれば経理の実務について一から教え込む必要はなくなります。
社員教育を実施するためには費用や人材確保が必要になってくるので、その負担をできるだけ小さくしたいというのが会社側の本音でしょう。
中途採用者に求められるのは即戦力だといっても過言ではありません。一から教育する予算と時間があるなら素直で伸びしろのある新卒を採用したほうがメリットが大きいのです。
たとえ簿記1級の資格があったとしても、経理未経験者のハンディキャップは小さくないと考えて良いでしょう。
経理未経験だと簿記1級を持っていても転職は難しい!?
経理の仕事は企業の根幹に関わる重要な業務です。
経理には、会社の利益をアップさせるために会社全体のお金の流れを見極めながら適切に対処していくことが求められます。
会社の各部署だけではなく、銀行など社外の人とも円滑にコミュニケーションを取っていかなくてはなりません。
経理で直接扱うのはお金ですが、会社の運営全体を把握するマクロ的な視点が欠かせないのです。
しかし、実務経験がないと、このような視点を持つのは容易ではないでしょう。
経理の求人募集では簿記2級程度が求められるのが一般的ですが、簿記2級を持つ人は決して少なくありません。
実務では簿記1級を必要としないケースも多いので、『簿記1級の資格がある』というだけではライバルに差をつけるのは難しいかもしれませんね。
会社によっては簿記1級を高く評価するところも!求人票をしっかりチェック!
企業の中途採用で実務経験者が採用できないという場合には、簿記1級の資格があると有利になることがあるでしょう。
企業が求める人材はそれぞれ違うので求人票をしっかりチェックすることが大切です。
簿記1級の資格が最も活きてくるのは、将来性のある若い人が大企業への転職を目指す場合と、実務経験のあるミドル世代やシニア世代がマネジメント職への転職を有利にしたい場合でしょう。
転職市場では、若い即戦力とマネジメント経験者のニーズが高いのです。
簿記1級の資格以外に、プラスアルファになりうるポイントがないと転職で苦労するかもしれません。
転職を成功させるためには、どんな人材が求められているのかを見極めることが大切です。
経理の転職で有利になるのは簿記1級よりも実務経験!資格を取りつつ実務経験を積もう!
経理の採用試験では、簿記1級の資格よりも実務経験がある人のほうが有利です。
簿記1級の資格取得を目指すときは、実務経験を積むことも意識する必要があるでしょう。
簿記1級は難易度が高いだけに、せっかくの資格を転職で活かせないともったいないですよね。
まずは、中小企業などで経理の実務を経験してみてはいかがでしょうか。