コロナ禍以降、リモートワーク・在宅ワークを行う方も増え、自由に使える時間が増えたことから自己啓発も兼ねて国家資格(士業)の取得などに目を向ける方も増えているようです。
そういったこともあり、各資格の特徴について知りたいと言った声も多いことから、ここでは難関国家資格である所謂8士業(弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士・弁理士・税理士・土地家屋調査士・海事代理士)と呼ばれるものと、その他の士業で代表的な公認会計士・不動産鑑定士・中小企業診断士について、それぞれの特徴とキャリア、年収(稼げるのか)などを見ていきたいと思います。
昨今士業はオワコンなどと呼ばれることもありますが、果たしてそうなのでしょうか?
士業とは?
士業とは、高度な専門性を有する資格職の俗称であり、一般的に「○○士」という名称がつく職業のことを指します。
8士業・10士業など各種分類がなされておりますが、一般的には冒頭で記載した8士業に公認会計士・不動産鑑定士・中小企業診断士を加えたものを士業と呼び、サムライ業と呼ばれることもあります。
上記で記載した士業は国家資格となりますが、昨今は国家資格だけでなく民間資格でも○○士といった名称のものが数多くあります。
国家資格である士業などにおいては専門職として独占業務が法的に認められているのに対し、民間資格の場合は独占業務が認められているわけではなく、一定の知識・スキルを有していることの証明として用いられます。
また、定期的に資格ブームが訪れることもあり、ビジネス目的でそうした資格・検定が民間団体により作られることも多くあります。
そのため、民間資格を受験される際はその成り立ちをしっかりと確認して受験されることをおすすめします。
8士業とは?
8士業とは、弁護士・弁理士・司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士・土地家屋調査士・海事代理士の8つの国家資格者のことを指します。
この8つの士業に共通している事項として、職務上必要なケースにおいて「戸籍」「住民票」などの書類について職務上請求を行う権限が認められているところにあります。
参考:e-Gov法令検索(本人等以外の者の申出による住民票の写し等の交付)、e-Gov法令検索(戸籍法)
8士業の括りにおいて、それぞれの士業の仕事内容に関する特性について簡単に見ていきましょう。
弁護士
弁護士は民事・刑事などの各種訴訟手続など法律事務全般を独占業務として取り扱うことができる法律に関するスペシャリストです。
法律相談(相続・離婚・事故・労働問題等)や法律文書の作成、刑事事件の弁護人、顧問(企業との顧問契約等)など仕事内容は幅広く、また、それぞれごとにその取扱い業務は幅が広いです。
ただ、多くの弁護士の方は自身の専門分野・得意分野を定めてサービスの提供を行っているケースが多いです。
弁護士の仕事内容などについては現役弁護士に解説していただいた記事がございますので、興味のある方は以下ご参照ください。
司法書士
司法書士は不動産登記・商業登記・裁判所等に提出する書類作成などが可能な国家資格です。
会社の設立登記や不動産登記などでお世話になったことがある方もいらっしゃるかと思います。
業務範囲は広い一方で、弁護士や税理士などが得意とするゾーンの業務があるなど、他士業と競合あるいは協力関係を作って業務を遂行することも重要な分野も多くあることから、司法書士も各人が自身の強みの分野を作ってキャリア形成あるいは事務所運営を行うケースが多いです。
独占業務も含めた司法書士の仕事内容についても別途解説しております。
弁理士
弁理士は知的財産権に関する業務を行う専門家ですが、主に特許、実用新案、商標、意匠などの出願代理を行うほか、知財の専門家として知的財産権の取得に関する相談・助言、コンサルティングを行っています。
また、特許や実用新案権、商標権などの侵害に関する訴訟の保佐人として参加することや弁護士とともに行動で訴訟代理人として参加することもあります。
技術的要素が強く、理系出身者が多いです。
社会保険労務士
社労士は労働・社会保険に関する専門家であり、労働基準監督署やハローワーク、年金事務所へ提出する各種書類の作成・提出代行や事務代理を行うことができます。
また、昨今は社会構造の変化により会社の在り方、働き方が大きく変わってきていることもあり、その知見を活かして就業規則や人事制度のアドバイスを行う社労士も多く活躍しています。
社労士の仕事内容などについては社会保険労務士の仕事内容のページで解説しています。
税理士
税理士は税務の専門家であり、納税者に代わって税金の申告を行う「税務代理」と確定申告書等の税務申告書類の作成を行う「税務書類作成」、具体的な税金の計算に関する相談などの「税務相談」を独占業務として付随する様々な業務を行っています。
税金の計算や相談にのるといって、個人が相手なのか法人が相手なのか、大企業なのか小規模企業なのか等によって必要となる知識は異なりますし、昨今は資産税(相続事業承継)などの分野の需要が高まっていますが、各種領域ごとに専門知識が必要となるので、他士業同様に自身の得意分野を作ってその領域で勝負している方が多いように思います。各種仕事内容についても紹介しておりますので興味のある方はご覧ください。
行政書士
行政書士は官公署へ提出する書類の作成(許認可等)が主な業務ですが、取り扱える書類の種類は1万種類以上にも及ぶと言われており、業務範囲は広いです。
ただ、例えば弁護士であれば裁判を行う、司法書士であれば登記を行う、税理士であれば税金の計算等を行う、社労士であれば社会保険の手続きを行うといった形で何かしら仕事内容がイメージできるのに対し、行政書士は書類が作れるといっても具体的に何ができるのか、何をしているのかイメージが全く湧かないという方は多いです。
実際に行政書士として開業している人でも開業前はあまりイメージが湧いていなかったという方が多かったです。
そのため、簡単に仕事内容について、現役の行政書士の方に仕事内容について解説してもらった記事もございますので以下もご参考ください。
なお、行政書士を目指す上での注意点としては、他の士業は試験に合格した後は基本的にどこかの事務所に所属して数年程修行し、当該業務領域において経験を積んでいくことができるのですが、行政書士の場合は求人募集がほとんど行われていないので、どこかの事務所に所属して業務経験を積むといったことがし難い傾向にあります。
そのため、行政書士試験に合格後は即独立といったケースが多く、実務面では大きく苦労することもあるかと思います。
なので、実務を覚えるにしろ顧客を獲得するにしろ、個人の努力が重要な要素となるかと思います。
また、弁護士や会計士、税理士などの他士業は雇われでも高給が期待でき(監査法人・事務所だけでなく一般企業においても需要が高い)、必ずしも独立することが求められるわけではないのですが、行政書士は行政書士または行政書士法人以外の企業に行政書士として雇われることが禁止されているので、基本的には独立することが前提の資格となっています。
一般企業の転職市場などでも行政書士試験に合格した方を募集・優遇する求人はあまりありませんので、転職目的で取得するのであれば注意が必要です。
許認可などを入り口にビジネスを大きく発展させていくこともできる一方で、雇われて働くにはあまり必要とされない資格であることから、自己啓発目的を除いては、基本的に独立志向がある方が目指した方が良いでしょう。
土地家屋調査士
土地家屋調査士は不動産の表示に関する登記手続きの代理を行います。
不動産の状況を把握するための調査・測量から行い、申請を行います。
不動産取引の安全確保、財産を明確にするといった公共性の高い仕事です。
参考:土地家屋調査士倫理規定
海事代理士
海事代理士は船舶登記など海事に関する届出や登記、申請の手続の書類作成・提出などの代理を行います。
登記や行政への書類の作成という視点から見ると、司法書士や行政書士と似たような側面があり、「海の司法書士」「海の行政書士」といった言われ方をすることもあります。
8士業の中で一般の方からの知名度が最も低いためイメージが持ちにくいといった声が多いです。
なお、これらの8士業は8士業だから他の士業あるいは資格者と比較して偉いとかそういったことはなく、分類上の問題となります。
その他の士業(国家資格)
上記8士業に加えて、公認会計士、不動産鑑定士、中小企業診断士が世の中一般で言われる士業(サムライ業)となりますので、続けてこの3つの士業について見ていきましょう。
公認会計士
財務会計のプロフェッショナルで、企業が作成した財務諸表等が適正かどうかを第三者の立場で評価し、内容が正しい(適正)ことの証明する独占業務があり、士業の中でも昨今は人気が高い資格となっています。
会計監査だけでなく、大手企業に対して財務会計のコンサルティングを行ったり、財務・会計の専門家として企業の財務経理や経営企画に属してサラリーマン的に働くこともでき、キャリアの幅が広いのが特徴です。独立も可能ですし雇われでも高い給与が見込めるのも良いポイントです。
何をやるにしても会計の知識は必要となるので、食いっぱぐれの心配があまり無い資格の代表例です。
ただし、資格取得までの道のりが非常に長く、実務要件が2年から3年に伸びるなど、公認会計士登録が可能になる段階まで行くことそのものの難易度は非常に高いです。
不動産鑑定士
不動産鑑定士は不動産の価値を鑑定する専門家ですが、例えば不動産を売りたいといった際にその土地建物の経済価値を判定し、価額として表示するといった鑑定評価を行ったりする他、不動産の利用や投資に関する相談業務に応じたりする仕事もあります。
中小企業診断士
中小企業診断士の特徴としては他の士業と異なり独占業務が無いことがあげられます。
何か特定ジャンルの専門家という立ち位置ではなく、どちらかというとゼネラリストとして中小企業が抱えるあらゆる悩みを解消するためのコンサルティングを行うことを主な業務とする傾向にあり、財務から人事、マーケティング、IT化など幅広い領域でコンサルを行うとともに他士業専門家と協力して業務を遂行していくなどの特徴があります。
士業の将来性は?
ざっくり各士業の特徴等について説明しました。
一部を除いて各資格ともに独占業務があり、その資格を有していないとできない業務があることを説明しましたが、昨今はそういった士業の業務はAIにとってかわられるといった声も出ており、士業はオワコンだと言う方も増えたように感じます。
これから士業を目指すという方の中には不安に感じている方もいらっしゃいます。
そのため、多くの士業と繋がりを持っているその関係から現状をふまえて士業の現在の状況と将来性などについて考察してみたいと思います。
士業の仕事は増えており、伸びている事務所も多い
数年前にAIによって士業の仕事が無くなると雑誌などで取りざたされてからオワコンだのなんだの言われる機会が増えましたが、現時点においてはむしろ需要は高まっており、人手不足に陥っている士業もあります。
例えば、公認会計士はAIなどのテクノロジーの発展で仕事がなくなるとだいぶ前から言われ続けていますが、現状はそのような傾向は無く、むしろ会計士が足りないという状況になっており、監査法人・会計系コンサルファーム、事業会社の経理、IPOベンチャーのCFOなどあらゆるポジションで会計士を求める募集があり、会計士資格を有していれば(あるいは論文式合格していれば)とりあえずのところどこかしらに就職あるいは転職することは可能な状況です。
監査の仕事でもAIを活用する取り組み等は行われてきておりますが、それらは会計士の仕事を助けるものであり、現時点では奪うものになっているとは言えない状況です。
また、監査以外の仕事に目を向けてみても、基本的には高度な財務会計の専門知識を有する専門家としての立場から経営者の意思決定の助けやフローの整備・構築などの難易度の高い仕事をこなすことが求められ、その辺りの需要は今の時点では非常に高く、また、これから先数年は少なくともその需要が無くなることは考えにくい状況と言えます。
単純に数字を集計したり分析したりするだけであればAIでできますが、それらの数値を見て判断し、今後のアクションをアドバイスをし、経営者等に寄り添うといった人間独特の業務は重要性が高くなっており、そういった視点まで含めるとまだまだ需要は高いです。また、仮に企業がAIを活用するにしても、結局のところ財務会計の原理原則を理解し、結果を判断する人間は必要となるでしょう。
この先AIが人間的な部分においても成長していった場合はどうなるかわかりませんが(もうそうなったら士業の仕事がどうとかいうレベルではありませんが)、少なくとも今現在この先数年といった形であればあまり状況は変わらないと考えられます。
AIで消滅する士業の代表として税理士をあげるケースも多いので税理士の事例で見てみると、今時点ではテクノロジーのおかげで伸びている事務所も多くあり、例えば税理士事務所などではこれまで会計入力業務を手作業で行っていたものを完全に自動化し、入力業務にかかる時間が数十分の1になるなど、従業員一人当たりの生産性を上げ、それと同時に空いた時間で何か別の業務をする、あるいはより付加価値の高い業務を提供することで1件あたりの報酬単価をあげて利益率が上昇するといった事務所も増えています。
単純な業務しかやっていません、という税理士の方も多いのですが、単純な業務といっても法律に基づいて各種判断をし、そのうえで作業化しているわけですから巷で言われているほど楽に機械化できるわけではありません。作業部分は確かにテクノロジーのおかげで効率化できている部分もありますが、各種判断はAIではできません。
私自身も小さな会社を行っていますが、日々の記帳や各種申告業務はものすごく単純で簡単だと予想されますが(実際月に数行程度しかない)、税制改正やルール変更、新しい制度などを追っていくのが正直面倒なので、結局のところ税理士の方に丸投げして、月1とかで教えてもらっています。
最低限は自分でも情報収集したり簿記2級を取得して何とかできるようにしたり、理解するように努めていますが、単純な仕訳とかしか無い状況でもお金を払ってお願いするスタンスは変わらないです。仮に自動化できたとしても本当に合っているのかどうか不安ですし。
会計士や税理士の事例のみ記載しましたが、昨今は行政でもDX化・ICT化といった言葉が使われるようになり、あらゆる場面で電子化が進んでおり、その気になれば誰でも自分で申告・申請などが手軽にできるようになっています。
一見すると士業の仕事がなくなりそうに見える部分でもあるのですが、電子化されても結局専門知識が無いとスムーズに申請ができないということは多く、結果的に士業への依頼は多く来る(現在時点では)上に、電子化によりその作業を行う士業側はむしろ効率化できるので、今のところは悪い影響がそれほど大きくないと言えます。
また、電子化されても結局それらが使いこなせないという方は結構多くいらっしゃるので、AIなどのテクノロジーが発展すればまた別のところで新しい仕事が出てくるのかなと思います。
なので、テクノロジーの発展を不安に思うのではなく、新たにどんな需要が生まれるのか?という視点で見ていけば、夢は広がるのではないでしょうか。
士業の淘汰はある
士業の需要は高いのですが、淘汰も起きています。
昔は資格さえあればなんとかなった時代もあったようです。単純業務をなんとなく行っているだけでも売上が充分に立てられら時代があったようなのですが、今後はそれは難しくなっていくでしょう。
昨今は士業自体が増えてきていますし、社会構造や人々の価値観が大きく変化してきているため、士業そのものの需要はあるものの、何かしらの価値を提供できない士業は淘汰されていく傾向にあります。
何をもって「価値」とするのか、一概に定義できませんが、コミュニケーションスキル(提案力・コンサル・キャラクター等)の有無が勝敗を分ける他、ニッチな領域の深い専門性を保有するなどの得意あるいは特異な知見を保持しているといったケースでは伸びているように見受けられます。
もしくは逆になんでも相談が可能な総合型・大型化した士業事務所は伸びています。
士業事務所のM&A(統合等)は盛んであり、また、昨今企業が抱える課題が高度化複雑化グローバル化といった問題もあることから複数人で協力して事案に当たる必要があるケースも多いので、大型化する必要が出てきているとも言えます。
その他注目の視点としては、個人のキャラクター性も重要度が増しており、誰がやっても結果は同じという業務は意外と世の中に多いものですが、それならこの人に仕事をやってもらいたい、といった形で依頼するケースも増えています。
通常の業務以外の側面において、具体的に何を提供すれば絶対にうまく行くという正解はありませんので、あなた自身がどのような価値を提供するかということを考えていく必要はあるでしょう。
士業の将来性は安堵というワケではないが戦略的に動くことで伸ばすことは可能
テクノロジーの進化が早く、5年後すら想像するのが難しい状況なので、数年後の未来がどうなっていくのかは正直よくわからないという部分も多いのですが、現状から考察するに、今のところ士業の仕事がなくなることは無さそうですし、また、将来的にも大丈夫そうだと思われます。
ただ、記載したように資格を持っていたら何とかなる時代はとっくに終わっていますし、淘汰も起きています。
資格と経験・知識を活かしてどんな価値が提供できるのかを考え、戦略的に動けないと厳しいと言えるでしょう。
なお、私は国家資格もありますし、一般的な営業とか事務の仕事もやったことがありますが、士業よりもむしろ他の仕事の方がテクノロジーでなくなる可能性高いと思いますので、そういった意味では士業だけが無くなってしまうわけではなく、また、士業だけの問題ではないと言えます。
士業の年収
士業を目指す方の中には安定した給与を得たいといった要望をお持ちの方もいらっしゃるのですが、ザックリどの程度稼いでいるのでしょうか?
賃金構造基本統計調査の職種別賃金額や職場情報提供サイト(厚生労働省)などを参考にだいたいどのくらいの年収なのかを見ていきたいと思います。
なお、士業の場合、勤務と呼ばれる雇われの士業もいれば独立している士業もおり、一概に以下で示す平均年収が絶対的に稼げる金額であるというわけではないことはご注意ください。
特に社労士なんかは企業に勤める人事部の方がスキルアップで取得するケースもあるため、その場合士業としての給与とは言い難いなども事情もあります。
そのため、あくまで傾向としてどのぐらいもらっているのかな?程度の情報としてみるのがよろしいです。
弁護士の年収
賃金構造基本統計調査(2019年)によると、弁護士の全国の年収は728.5万万円となります。
ただ、地域によっても差はあると言われており、例えば東京の弁護士事務所などでは1000万円以上もらえるケースも少なくありませんが、地方ですと600万円~1000万円程度と言った情報もあります。
東京と地方では取り扱う案件の性質も異なるため一概に何がどう良いと言えない他、地方の場合は給与としてもらう金額は少なくても個人案件を大量に抱える弁護士が高額の申告をしているケースもあります。
一概に地方だから良くないとも言えません。
ネガティブな要素としては、昨今弁護士数の増加などの問題もあり、年々弁護士の数は増え、稼げない弁護士が増えているという現実があります。
なお、データ上では男女間で年収の差がほとんどありません。
司法書士の年収
司法書士は平均年収は600万円程度ではないかと言われています。
司法書士白書2017を参考にすると、開業司法書士の年収は200万円~499万円に位置する方が最も多い傾向にありしたが、2020年版を見ると、400万円~600万円が最も多くなっています。
一方で、1000万円~5000万円までの間に属する方も17%ほどいることを考えると、人により稼げる金額が非常に差が激しいことがわかります。
資格があればそれなりに稼げるとは言い難いが、資格を活かして大きく稼ぐことは可能であると言えるでしょう。
ただ、最新の法律に関する知識を常にアップグレードしていく勉強が必要になる他、高い営業力も求められます。
公認会計士と税理士の年収
賃金構造基本統計調査(2019年)によると、公認会計士と税理士と合わせた平均年収が683.5万円であることがわかります。
ただ、会計士と税理士では全く異なる職種であり、尚且つ給与も大きく異なります。
例えばBig4監査法人とBig4税理士法人に勤務した場合で行くと、同じ年次であったとすればだいたい年収で100万円程度差が出てきます。
その他転職エージェントが公開するデータ等によると会計士の平均年収は800万円~900万円程度であり、大手監査法人に勤務するスタッフの初年度の年収が500万円~600万円、シニアスタッフが600万円~800万円程度、それ以上になってくると1000万円以上であることを鑑みると、全体で見ればだいたい900万円程度という年収は合っているのかなと想定されます。
一方で税理士の年収はBig4税理士法人勤務でだいたい600万円~1200万円程度であり、その他資産税特化型、SPC特化型など比較的高い給与がもらえる税理士事務所でも600~1000万円程度、小規模から中堅事務所が400~800万円であることを見ると、だいたい600万円~800万円程度なのかなと想定されます。
なお、科目合格者は除いています。
行政書士の年収
ネット上ではだいたい平均600万円程度と言われています。
ただ、実態としては、平成30年の行政書士会のアンケート行政書士実態調査によると年収500万円未満の行政書士が実に78.7%と8割近くを占めています。
もちろん中には行政書士として3000万円以上稼ぐ方もいらっしゃり、そうした方々平均年収を押し上げるので平均年収600万円程度という数字がでてくるのですが、現実的には、多くの方が稼ぐ金額はだいたい400万円程度ではないか?と考えられています。
そして、それ故行政書士は稼げないと言われる傾向にあります。
ただし、年齢が60歳以上の行政書士が全体の50%を占めていることを考えると、定年後に緩やかに稼げれば良いというスタンスの人も多いことからガッツリ業務を行って稼ぐ目的でやっているという方がそれほど多くないということがある他、行政書士登録はしているけど行政書士業務を行っている方ばかりではないため、行政書士としての収入は少ないという方がかなり多いのでこうした年収データが低く出る傾向にあります。
そのため、一概に行政書士が稼げないとは言い切れません。
若い方の中には行政書士業務(許認可等)をガッツリやって稼いでいる方もたくさんいますし、行政書士業務を入り口に顧客を獲得し、その後のコンサル業務をメインにして稼いでいる方もいるので、その資格の活かし方と戦略次第で大きく幅が変わると言えるでしょう。
その人がどこに比重を置くのか次第と言えます。
後は、基本的に民間企業に雇われて行政書士として活動することができませんので、そうしたこともあってデータが取得し難い状況となっております。
基本的に独立したい人あるいは独立している人が武器の1つとして行政書士資格保持しているケースが多く、稼げるか稼げないかはその人次第といったところかと思います。
士業の人数
士業の人数について見てみましょう。
なお、同年同時期に比較したデータが取得できなかったため、正確なデータではありませんが、大枠を知るのに参考としてください。
弁護士:42,164人(2020年3月末時点)
司法書士:22,718人(2021年4月1日時点)
社労士:42,887人(2020年3月末時点)
行政書士:50,286人(2022年4月1日時点)
税理士:79,887人(2022年3月末日時点)
公認会計士:33,200人(2022年4月時点)
中小企業診断士:約27,000人(2019年)
不動産鑑定士:9,411人※不動産鑑定士補含(2015年)
土地家屋調査士:16,471人(2019年)
士業の数は全体的に年々増加傾向にありますが、合格率が一定水準を保っているため、急激に増えたり減ったりは起きていません。
ただ、過去国の政策的に弁護士の人数を増やす、会計士の人数を増やすといったことが行われた年の後には当該資格者余りの問題などが起きたりもしています。
士業は高齢化しており若手にはこれからチャンスが訪れる可能性
独立している士業に定年はないため、60代はもちろん70代以上で活躍している例は多くあります。
例えば、税理士の平均年齢は60歳以上(国税OB税理士も含みます)であり、20代税理士は全体の0.6%程度です。
行政書士も高齢化していますが、平均年齢は50歳代後半と言われており、行政書士会の調査(サンプル数は少ないのですが)では60歳以上の方が半数以上を占めていました。
税理士で見てみると重鎮と呼ばれるボス的な先生方が未だに大きな影響力を持っており、若手が台頭しにくい構図が続いています。若手税理士の会というものに参加したことがあるのですが、平均年齢が50歳代でしたので、このことからも高齢化していることがよくわかります。
昨今は税理士事務所自身の事業承継が問題になるなど世代交代の時期に差し掛かっており、若手も台頭していくチャンスがある状況が生まれるでしょう。
また、行政書士も高齢化しており、年齢の高い先生が多いことから、若手は新たな領域だけでなく、これまで埋められていた領域に空きも出てくるため、チャンスはあるのかもしれません。
もっとも、士業に限らず、日本全体が高齢化しているため、そういった意味では案件そのものの数も減っていく可能性は考えられるので、これから士業としてやっていこうと思っている方はどの領域で業務展開していくかを考える必要はあるでしょう。
なお、比較的年齢が若いのが公認会計士であり、会計士青年会など若手の活動にも力が入っており、啓蒙活動も盛んであることから学生からの人気も比較的高い資格であるように感じます。
士業についてのまとめ
難しい国家資格に合格しても、その資格だけでなんとかなる時代ではなくなりました。
ただ、資格を活かして事業を展開することは可能であり、伸びている士業事務所も数多くあります。
士業に限った話ではないかもしれませんが、時代とそのニーズに合わせて自身も変わっていく必要があるということでしょう。