会計士がIFRSのスキルを活用して転職するにあたってはどういった立場で業務に関与していきたいのかを考えることが重要です。
会計士の転職先として考えられる主な領域としては、事業会社、コンサル、監査法人、会計事務所が考えられますが、それぞれの領域ごとで関与の仕方が異なりますし働き方は異なってきます。
そのため、このページでは公認会計士のIFRSの転職についてこうした領域ごと・仕事への関わり方の視点で見ていきたいと思います。
また、そもそもIFRSのスキルを磨くことにより転職市場でどのように有利に働くか、評価されるのかという視点でも見ていきたいと思います。
目次
IFRSとは何?
まず初めにIFRSについて念のため記載しておくと、IFRSとは、国際会計基準のことです。民間団体の「国際会計基準審議会」が設定しています。
2005年にEU圏で開始され、現在では110ヶ国以上で採用されており、今となってはIFRSは事実上の世界基準となっています。
IFRSは原則主義となっていて、詳しい規定や基準は定まっていません。自由度は高いですが、解釈の根拠などを示す注記が必要です。
また、資産価値の評価では貸借対照表を重視しています。
さらに、IFRSはグローバル基準で、各国の税務問題などを加味していません。定義や議論などは全て英語で行い、言語や各国の考えで異なることを防いでいます。
IFRSを導入することで、海外に子会社がある時は便利になります。子会社と指標などが同じになるため、管理がしやすくなるのです。
また、業績を把握する時も分かりやすくなります。
さらに、海外投資家がいる場合や海外で資金調達をする時に便利なのもメリットです。そのまま財務諸表が使えるため、勘違いや計算違いによるトラブルを防げます。
日本のIFRS対応の現状をチェック!
日本でIFRS任意適用が認められたのは、2010年の3月期決算時です。
その時に、強制適用も検討されました。
しかし、翌年に東日本大震災が起きたことで、国内対応を重要視する必要があり、強制適用は見送りになったのです。
その時にIFRSを適用していた企業は、約17社でした。
その後、ifrsの監視団体「モニタリングボード」のメンバーになるためには、「その国でIFRSを多く使用している」という要件が加わります。
IFRSの策定プロセスで日本の意見を発信させるためにも、任意適用の企業を増やすことが必要になりました。
このメンバー要件の追加がされたことで、適用企業の拡大が国策になります。
2012年、金融庁から「IFRSの任意適用企業の積み上げ」という方向性が発表されました。その後、政府と民間が協力して、任意適用の企業を拡大させる環境整備を進めていきます。
2015年には、日本における「修正国際基準」を公表しました。
そして、2016年にIFRSの任意適用企業が140社以上になります。
その後徐々にIFRS導入企業は増えており、知識のある人材が求められていくことになります。
IFRSで転職市場価値が高まる?3つのメリットを紹介
公認会計士試験論文式試験でも出題されるため勉強している方が多いと思いますが、公認会計士の転職市場における価値を高めたい場合、IFRSの知識をより深めていくのもメリットが高いと言えるでしょう。
これからの業務で求められる知識であり、身に付けておくことが必要です。
監査法人など含めてIFRS導入先の業務に携わっておくとより良いかと思います。
これから、IFRSの知識を持つべき理由について簡単に見ていきたいと思います。
IFRSを導入している企業は大企業ばかりでなく中小企業でも進んでいるためキャリアの選択肢が広がる
日本でIFRSを取り入れているのは、大手企業が中心でした。
約3600社の上場企業の中で、約10%の企業がIFRSを導入しています。
一時のブームは去ったとはいえ、IFRS導入はまだまだ需要がありますし、内部で働く上でもスキルは重要となります。
また、近年は大企業のみならず中小企業でも進んでいます。
日本基準を採用している企業とIFRSを採用している企業の間に入り、それぞれを比較・計算する場合もあります。
IFRSの知識があれば、それらも問題なく行えるでしょう。
キャリアの選択肢も広がります。
今後IFRSによる会計を導入する企業は経験者を優遇する
IFRSの知識や経験がある公認会計士は、導入している企業や今後導入予定の企業から優遇される可能性があります。
実際にIFRSを導入しようとしている企業では、「経験者を優遇する」という求人が多いです。
つまり、年収やポジションなどの待遇で、優遇されやすくなります。
IFRSを適用する企業が増えており転職に有利になる
IFRSを適用する企業は今後も増える見込みがあり、その知識を持った公認会計士の需要も高まります。
2015年以降は毎年15社~35社の企業が導入をしていて、今後も導入企業は増えていくでしょう。
その際に、IFRSの知識を持った人が求められるのです。
つまり、転職を検討している場合、IFRSの知識があれば選択肢は広がります。優遇された条件で働ける可能性もあり、年収アップやスキルアップをすることが可能です。
どのような形でIFRSを活かしたいのかにより転職先が変わる
IFRSを活かすといっても様々な立場からかかわっていくことができますので、それぞれごとのメリット・デメリットも紹介しながら転職について考えていきたいと思います。
外部のコンサルなどの立場でIFRSに関与
FASでIFRS導入支援などのプロジェクトに関わるといったケースがイメージしやすいかと思います。
FASといってもBig4系から国内独立系小規模のFASまで様々ありますが、抱えるクライアントの属性・規模ごとで業務の難易度は変わってきますし、得られるスキルなども変わってきます。
基本的には上場企業が対象ですが大手企業だけでなくIPO準備企業の会社でもIFRS導入を検討するケースが増えているので、様々なところで必要とされています。ただ、IPOベンチャーなどは特殊な事例なので基本的には大手企業への関与という事になります。
このケースではIFRS導入支援のみならずM&Aなど広く会計コンサルに関わっていきますのでスキルの幅が広がりやすいと言えるでしょう。
年収も監査法人の時とそう変わらず転職できるのも魅力です。
年齢にもよりますが監査法人での経験だけでも転職できる先です。
ただし、労働時間・さばかなければならない仕事量は増加するかと思いますので、それなりに大変ではあります。
IFRS導入を事業会社内部で行っていく
自社のIFRS導入プロジェクトを推進していくにあたって会計士を採用するケースもあります。
IFRS導入にあたっては財務会計の原理原則をよく理解している必要があることから会計士がマッチするのですが、あなた自身も勉強になることが多いかと思います。
IFRS導入後は業務が作業化されており、クリエイティブな業務は少なくなり、通常の経理処理を行っていくこととなります。
採用時点でIFRS導入後の立ち位置もある程度決まっているかと思いますので事前にしっかりとすり合わせておきましょう。
なお、基本的にコンサルなどでIFRSに関与していた方が転職はしやすいので、最初にFASへ転職しておくと後が楽かと思います。
IFRS関連の転職にあたって英語力はどの程度求められるか?
例えばFASへ転職しようと思った際はクライアントがグローバル企業であることが多いので高い英語力が求められることが多いかと思います。
事業会社においてもIFRS導入を検討する企業は大手であることが多いので、IFRSという括りとは関係なしに英語力が求めらることになるかと思います。
つまり、英語力は基本的に求められると思っておいた方が良いでしょう。
海外子会社とのやりとりも増えますので簡単なコミュニケーションができる程度の英語力は有った方が良いです。
ただ、IFRS導入を行っていくにあたっては高い英語力が必要となる場面はあまりないのかなと考えます。
IFRSだからということではなく、IFRS導入を検討する企業の特性などを考えると英語が必要となるということになります。
IFRSの知識を身につけて公認会計士としての転職市場価値を高めよう!
IFRSの知識やスキルを持った公認会計士は、今後も求められる人材として需要があります。
導入を予定している企業からは優遇されやすく、年収アップも見込めるでしょう。転職でも有利になり、IFRS関連の求人も増えているのです。
公認会計士試験でもIFRSに関する出題はありますが、実務レベルで経験を積んでおくと良いでしょう。