公認会計士論文式試験に合格すると、3年後の修了考査(※1年後もしくは2年後の場合もあり 詳細は後述します)に向けて、公認会計士試験合格者は、一般財団法人会計教育研修機構が運営する実務補習所に通うことになります。
今日はこの補習所について記事を書いてみたいと思います。
公認会計士として登録するためには?
公認会計士として登録するためには、公認会計士試験(短答式試験、論文式試験)に合格し、2年以上の業務補助等の期間があり、一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務補習を受けて日本公認会計士協会による修了考査に合格した後、内閣総理大臣の確認を受けた者は、公認会計士となる資格が与えられます。【公認会計士協会HPより引用】
一般財団法人会計教育研修機構って?
一般財団法人会計教育研修機構とは、2009年に設立された組織で、「広く会計、監査及び税務に関心を有する者の教育研修のニーズを的確に把握し、教材の開発及び教育研修の実施により、これらの者の会計、監査及び税務に関する専門知識、専門的技能の向上を実現し、もって我が国の会計人材の育成、会計リテラシーの向上に貢献することを目的とする。」【一般財団法人会計教育研修機構HPより引用】を目的とした組織となります。
そのため、公認会計士試験合格者のための実務補習だけではなく、公認会計士のための継続的専門研修や会計実務に携わる者のための教育研修なども行っている組織になります。
補習所ってどこにあるの?
補習所は、東京の他、東海、近畿、九州に補習所があり、その他に支所が各地域にあり、補習生はそれぞれの住所に応じて各補習所に通うことになります。(引越しすれば補習所の変更も可能です。)
本部は大手町にありますが、ここに補習生が通うことは通常はありません。私は東京の補習所に通っていましたが、本部に行ったことは一度もありませんでした。東京の補習所は市ヶ谷の公認会計士会館というところにあり、そこに通うことになります。
補習所での勉強科目や受講スタイルは?
補習所では、監査・会計・税務・経営IT・その他の科目を勉強します。講師は監査法人のパートナーやマネージャー、コンサルティング会社の会計士など実務家がメインとなります。
上記は大教室などで座学という形で学ぶのが通常ですが、他に少人数のゼミという形式の科目もあり、こちらでは講師や他の補習生とディスカッションなどをすることもあります。
補習所は、社会人が通えるように、平日18時~21時もしくは土日の講義がメインとなります。監査法人に勤務していると補習所を優先してよいという監査チームが多いため(法人としての方針があり)があり、1年目の平日は17時くらいで往査先のクライアント会議室などから補習所に向かうことがあります。
講義は11月の論文式試験合格発表後、12月から始まり、3月中旬で前期は終了となります。これは補習生の多くが働く監査法人では4月から繁忙期になり、補習所に通うのが難しくなるためです。後期は繁忙期が終わった7月から9月までで後述の考査が主となります。
3年間で270単位以上の単位取得が求められていますが、全てが教室での授業というわけではなく、インターネットラーニングという形で受講もあり、こちらと組み合わせて単位を取得することになりますが、1年目は通学での授業が多く、2年目、3年目になってくるとオン通学の授業は少なくなります。
これは監査法人に勤務している場合など、2年目、3年目になってくると担当科目も増えてきたり、主査(インチャージ)を行うことなどもあって、仕事が忙しくなってくるためです。
そのため、最初のガイダンスの際にも、1年目に単位はしっかりとっておくことをかなり強く勧められます。実際、1年目にしかない授業も多く2年目、3年目になって下位学年の授業を受講しようとすると有料で数千円のお金がかかるため、1年目にしっかり取得しておくのがおすすめです(笑)私は下記のように単位を取得しました。
1年目 200単位取得 180単位以上取得必須
2年目 50単位取得 40単位以上取得必須
3年目 20反以上取得 20単位以上取得必須
通学の場合、入口にカードリーダーが置いてあり、自身の写真入りのカードを入退場時にカードリーダーに通すことで、出席と時間を記録することになります。
さきほど授業がある日は、早めに退社してと書きましたが、当日の仕事や会社によっては18時に間に合わない場合もあります。そういう場合も考慮されて、18時以降での入室や途中退室も可能となっています。
しかし、1時間1単位という仕組みのため、少しでも遅刻したり、途中退室すると通常の3単位ではなく2単位や1単位になる場合もあるので注意が必要です。
仕事帰りの平日18時頃だと仕事の疲れもあり、睡魔に襲われ寝てしまう補習生もいます。
講義によるのですが、講義中に教室内を回っている運営スタッフの人がいる場合もあり、寝ていると起こされる場合があります。私も何回か起こされました(笑)
今年は新型コロナウィルスの影響で中止になりましたが、一泊二日の合宿もあります。こちらは強制参加ではありませんが、単位を多く取得できるということもあり、参加する補習生も多いです。内容としては鉄工所の見学やホテルでの授業となり、夜には生徒と講師で飲み会が行われます。この飲み会でハメを外しすぎてしまい、ホテルのプールに飛び込んで単位を没収された補習生も過去にいたらしく、プールに飛び込んだら単位没収というアナウンスが私の参加した合宿ではありました(笑)
考査について
ここまで、講義について述べてきましたが、次に修了考査の受験に必須な考査と課題研究について説明します。
考査は監査総合グループという監査や会計などの考査8回と税務グループという考査2回の計10回あり、全ての受験と監査グループでは合計480点以上、税務グループでは合計120点以上の点数を取ることが求められています(40点未満は足きり)
考査は日曜日に行われ、1回の考査時間は2時間となります。持ち込みできるのは電卓の実で、論文式試験のときのように、条文集などが配布されることもありません。主観となりますが、最初の方の考査は比較的簡単なため、あまり勉強しなくても高得点を取ることができます。私の場合は第一回考査で73点でした。そのため貯金ができて調子に乗ってしまい第二回査で勉強をあまりしなかったところ、51点となりすぐに貯金がなくなりました。。
その後も平均60点以上を取ることができず(仕事が忙しかったためという言い訳にします(笑))追試を何度も受けることになりました。。
追試は1回1万5千円かかるので、できれば毎回60点以上取れるように毎回しっかり勉強しておくのがおすすめです。考査範囲などや出題者の関係で考査によって難易度にもばらつきがあり、毎回60点以上取るのは難しい場合もあるため、できれば70点以上とって貯金をしておくのがおすすめです。
特に税務グループの税務考査2回は2回で120点以上取る必要があり、1回目で50点以下だとかなり厳しいと感じました。
私は税務考査でも追加課金をしました(笑)
課題研究について
課題研究は6回あり、合計で360点以上取ることが求められています(こちらも40点未満は足きり)
課題研究のテーマは会計などに関するテーマになり、各回により異なりますが、だいたい1600字から7400字くらいで字数指定されたうえで、与えられたテーマに対するレポートを作成し、各回期限までに提出する形になります。
テーマは全ての補習生に同じ課題が与えられるわけではなく、ゼミのために数十人にクラス分けされた班ごとに異なったテーマで与えられます(東京の場合)
レポートは参考文献などからの引用が可能ですが、参考文献からの記載であることを記載しないと盗用と判定されることがあるため注意が必要です。またワードのフォーマットなどが細かく指定されており、フォーマットに沿っていないと減点されます。課題研究のテーマは会計教育研修機構のHP上で発表されますが、期限までに日数があるため、油断していると提出期限前日で字数0ということもあり得ます。。
課題研究も再度の提出が可能ですが、考査と同じように1回の再提出毎に1万5千円かかります。私は考査で何度も課金を繰り返していたため、課題研究では課金しないようにしっかりと時間をかけてレポートを作りました。
私見ですが、課題研究の場合はしっかり準備をしたうえで、参考文献の記載で字数を稼ぐといったことをしなければ安定的に点数を取れると思います。
以前に補習生が課題研究の作成にあたり盗用を行ったこともあり(マスコミでも報道されました)、毎回提出された課題研究レポートはコピペ判定チェックなどが行われるそうなので、コピペとならないように注意が必要です。
※もちろんコピペ判定チェックがあるかどうかは関係なしにコピペは良くありません。
終わりに
この記事では公認会計士試験合格者が合格後に通う補習所について書きました。補習所は試験合格者が実務で活躍している先輩実務家から学べる貴重な機会であるととともに、公認会計士登録に必須の修了考査を受験するうえでも必要不可欠な要件になります。
実務を学ぶため、修了考査を受験できるようにしっかりと勉強しておくのがおすすめです。以上、補習所についての記事でした。
エルキャリ合同会社 代表社員
新日本有限責任監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)退所後、ウェディング関連サービスの開発や転職・採用支援事業を手掛ける。
会計・監査で培ったスキルを活かして様々な事業を展開。
公認会計士のベンチャー企業への転職やコンサルティング会社、ファンド等への転職支援も行っており、起業まで含めた幅広い経験・キャリアを活かした転職相談を行っている。