特化型の会計事務所と普通の会計事務所とで何が違う?税理士の専門特化型会計事務所への転職

会計事務所には様々な業態がありますが、最近は特定の業種や業務内容に絞った「専門特化型の会計事務所」という事務所が増えてきました。

特化型の会計事務所は普通の会計事務所とは何が違うのでしょうか?その特徴を解説します。

業種特化型の会計事務所とは?

業種特化型の会計事務所とは、特定の業種を専門にクライアントにターゲットを絞ったサービスを展開する会計事務所です。

本来、その業種に即した税務会計の特性がありそれを踏まえたうえでサービスを展開するのが理想です。

ただ、普通の会計事務所はいろいろな業種のクライアントを抱えており、それぞれ業種に対して適正なサービスを提供できていないというのが実状です。

業種特化型の会計事務所とは、そのようなお客様のニーズにこたえるべくその業種に特有の商流や人間関係や慣習を熟知し、お客様によりマッチするノウハウや知識を基に税務会計はもちろんのこと、それ以外のコンサルティングサービスも提供できる事務所です。

代表的なものには、「医療特化型」の会計事務所があります。その他にも、飲食業特化型・美容院特化型・社会福祉法人・公益法人特化型、中には風俗特化型などもあります。

業界で口コミが広がることでクライアントが増える特徴があります。

業種特化型の会計事務所と普通の会計事務所の違いは主にこの3つ!

業種特化型の会計事務所の主な業務は、会計処理や税務申告書の作成などであり基本的には普通の会計事務所と変わりありません。

しかし、その業務に関するノウハウの多さから、よりクライアントのニーズに合ったサービスを提供することができます。

主な3つの違いを解説します。

その業種においてのニーズを的確に把握している

普通の会計事務所であれば、クライアントの記帳・申告さえやればそれで終わりというところも多いです。

しかし、クライアントのニーズはそれだけではありません。

例えば飲食店であれば、開業時や新店舗を出すにあたり多額の設備投資や人件費が必要であり、借入をするため銀行との折衝は欠かせません。

どこに出店するか、お客様の回転具合、内装はどうするか、提供する飲食の価格帯の決定、資金繰りはどうか、銀行に提出する事業計画書はどう作成するか、アルバイトの確保の問題、給与計算や社会保険の手続きなど、税務会計以外のニーズがたくさんあります。

飲食店特化の会計事務所であれば、その知識とノウハウを生かして税務会計以外のコンサルティングを行ったり、その人脈により問題解決にふさわしい専門家の紹介を行ったりすることができます。

また、クライアントの属性にもその特徴があります。

例えば医業であれば、ドクターは多額の資産を持っていることが多いため、医業の税務会計だけではなく相続税の相談にも応じる必要があり、ニーズが多岐にわたります。

その業種特有のノウハウを持っているため普通の会計事務所以上のサービスができる

普通の会計事務所では、特定の業種にのみ適用される税務や助成金に関する情報は乏しく、その業種であれば受けることができる特例の適用が漏れてしまうことがあるかもしれません。

例えば医療法人の税務の特徴は、普通法人とは異なる法人税の税率・概算経費率・医療器具の特別償却・消費税の取り扱いなどが挙げられます。

医療特化型の会計事務所であれば、これらを踏まえた申告書を作成するのは当たり前のことですが、普通の会計事務所ではそもそもこのような取り扱いを知らないかもしれません。

建設業や製造業であれば、煩雑な原価計算を求められることがありますが普通の会計事務所では原価計算の知識が乏しく、専用の会計ソフトの扱い方からわからないかもしれません。

税務は毎年税制改正により変わります。会計も最近は海外の動向に合わせて処理方法が変わる傾向にあります。

普通の会計事務所がこれらをすべて網羅するのは難しいでしょう。

その業種に特化した会計事務所であれば、その業種にとってタイムリーな知識を身につけ、クライアントにふさわしいサービスを提供することができます。

また税務調査の対応においても業種特有のニーズがあります。例えば飲食店であれば現金商売が多いため、抜き打ちで税務署が来て税務調査をされることがあります。

飲食店を担当するにあたっては、税務調査対応能力や事前対策も必要になるでしょう。

業種特化型の会計事務所であれば、その業種にふさわしい税務調査対応を期待することができます。

その業種・業界の情報に精通している

普通の会計事務所は、会計税務には詳しくてもその業種の情報には詳しくないことが多く、実はクライアントのことをあまり知らないということが少なくありません。

業種特化型の会計事務所はその業種のクライアントのみを取り扱うため、クライアントからその業種に関する生きた情報が集まります。

その結果、その業界の動向や成功事例・失敗事例に詳しくなり、クライアントにその情報を提供することで厚い信頼を得ることができます。

また、適切な会計処理をするにあたり、その業種の商慣習を知っていることは大変重要です。

どういった取引の流れが考えられ、どのような資料が存在するかなど、その商慣習を把握していることによりクライアントとスムーズな意思疎通を図ることができます。

業種専門特化型の会計事務所の顧問料平均単価は高め?

業種特化型の会計事務所の顧問料は、特化している業種により大きく2つに分かれます。

1つは、小規模の会計事務所や独立したての会計事務所が他と差別化するために戦略として特定の業種に特化するものであり、飲食店・美容業・IT業など比較的規模が小さく新規参入がしやすい業種をターゲットとするものです。

これらの業種は顧問料が比較的安い割に手間がかかりますが、会計作業をマニュアル化することによって安い顧問料のまま量をこなして利益を確保する傾向にあります。

もう1つは、すでに業種特化型としてある程度年数の経った会計事務所であり、こちらは医業や社会福祉法人に特化しているところが多いです。

中堅~大手税理士法人であれば、事務所の中にある業種に特化した部門を持っています。

医業や社会福祉法人は専門性が高いため、一般の業種に比べて顧問料が高めのところが多いです。

転職を考えているなら業種特化型の会計事務所と普通の会計事務所の違いと転職することのリスクを押さえよう!

業務特化型の会計事務所と普通の会計事務所の違いは、特化した業種の情報に精通しており、その知識やノウハウを駆使してクライアントのニーズに合った高度なサービスを提供できるところです。

この業種で勝負していきたいという強い意志と覚悟がある人にとっては、業務特化型の会計事務所に転職することはキャリアを積むのに最高の環境と言えるでしょう。

ただ、注意点としては、業種特化型の会計事務所への転職にリスクが全くないわけではありません。

転職・就職という点ではデメリットもあり、特化しているが故につぶしがきかなくなる可能性もあります。

特に業種特化の会計事務所の場合、一般的な法人税務など汎用性の高いスキルは身に付きにくいため、キャリアチェンジしようと思った際に苦戦する可能性はあるでしょう。

この先ずっと特化した業界の中でやっていきたいということであれば非常に良いとは思いますが、なんとなくで選んでしまって後悔される方も一定数いらっしゃいます。

そのため、業種特化型の会計事務所へと転職される際は、念のため転職エージェント等から詳細な情報を収集しておくことをお勧めします。

こうした情報に強いのが会計業界で働く方はご存じの方が多いかもしれませんが例えばレックスアドバイザーズであれば良い面・悪い面をキャリアの視点や労働環境の視点から熟知しており、業種特化の会計事務所へ転職すべきかどうかなど役立つアドバイスがもらえるとともに求人を紹介してもらうことができます。

いずれにせよ、どのようなスキルが身につき、どのようなキャリアがあるのか、しっかり理解した上で転職するようにしましょう。

税理士として幅広い汎用性のあるスキルを伸ばしていきたいのかどうかなど、よくよく考えた上で転職を決断されることをお勧めします。
転職エージェント等への相談をお考えであれば以下の記事を参考にしてください。
税理士や会計事務所への転職に詳しい転職エージェントについて解説しております。

税理士の転職サイト・エージェントを紹介!

特定の業務に特化した会計事務所も

上記まででは特定の業種に絞ってサービスを展開する会計事務所の特徴について記載しましたが、特定の業務内容に特化した会計事務所というのも有ります。

代表的なものとしては、「資産税(相続・事業承継)」、「国際税務」があるでしょう。

業種特化型同様に、特定の領域に対して深い支援が必要となるケースが多くなる領域でこうした特化型というジャンルが生まれています。

資産税領域は多くの方がご存じかと思いますが、近年はインバウンドも含めた意味でのグローバル化も進んでおりますので、広い意味での国際税務の需要が高まっています。

国際税務というと一昔前は大企業向けのサービスばかりでしたが、中小企業はもちろん個人規模の小売などでも国際取引は増えており、こうした国際税務に特化した会計事務所というのも増えています。

こうしたところへ転職するメリットやリスクについては業種特化型同様となりますのでしっかりとキャリアパスを理解した上でチャレンジするのが良いでしょう。

専門性は深まりますが、税理士として汎用的で一般的な業務スキルは上達しない傾向にあるため、転職するかどうかはあなたが将来どうなりたいかです。

こうした業務内容に特化した会計事務所への転職に興味があるケースではレックスアドバイザーズなどのエージェントに相談してみるのも良いかと思います。

一般的なエージェントでは理解できないと思うので、会計事務所の仕事内容についてしっかり理解しているエージェントを使うようにしてください。

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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士として事務所を開設しており、自身も士業として活動しております。 執筆者・監修者・編集者情報へ