税理士若手の会などに参加しても50代以上がたくさんいる業界ですので、40代は税理士業界においてはまだまだ若手といっても過言ではありません。
実際に税理士平均年齢は国税OBの方がいる関係もあるかと思いますが60代中盤に差し掛かろうとしていますし、転職市場でも40代税理士の転職は比較的多く、他の職種・業界に比べれば活発と言えます。
また、ハローワークの求人等を見ていても、40代会計事務所未経験・簿記2級レベルでもOKといった形で受け入れてくれる求人が一定数存在しておりますが、こうした求人は他の業界(職種)ではなかなかお目にかかることができないことなので、事務的な仕事へ転身したいというケースでは40代が比較的若いと見られる税理士業界は実はねらい目だったりします(とはいえ業界に入って来てからが大変ですが)。
40代になってから会計事務所未経験で業界への転職を目論むケースですと段階的に転職していく必要があったりもするので、注意しなければならない事項もあったりしますので、経験者・未経験者など各種ケースに分けて40代税理士や税理士科目、これから会計事務所業界への転職を目指す人向けに概要を記載していきたいと思います。
各種諸条件等にこだわりがあるケースでは当然一定度の経験・専門性が求められることが多くなり、苦戦することもありますし、転職後に後悔されるケースもあるので、転職活動をするのはおすすめなのですが、転職先決定は慎重にしていく必要もあります。
目次
40代税理士の採用市況:需要は高い
まず、ある程度の知識や業務経験のある40代税理士資格者について見ていきます。このレベルの方は採用需要が高く、ある程度の希望が叶う形での転職は問題無く実現できるかと思います。
税務会計関連人材において最も不足しているポジションの一つにマネージャークラスの管理職ポジションに当てはまる税理士の方々の採用需要があります。部長級も足りていないケースは多いですが、若手の教育等をしつつ、実務面・マネジメント面と双方が期待できる年齢・スキル帯の税理士が不足しているので、これらに該当するレベルであれば待遇面では良いものが得られるでしょう。
税理士はプレイヤー気質の方が多い職種なので、根本的にそうしたマネジメントポジションに就きたくないというケースも多いので、実務もやりつつ課員をマネジメントし教育までしっかりできるポジションの税理士が不足しており、採用需要が高い傾向にあるといえます。
もちろんマネジメント層だけでなく、特定の領域に特化して詳しいプロフェッショナルプレイヤーの税理士の需要も高く、資産税、国際税務などの領域に加えて、医療福祉業界に精通している税理士など各種領域のプロフェッショナルの需要も高いです。
一般論で行くと40代は転職難易度が高く、求人があっても管理職経験者前提であるケースが大半ですが、税理士に関していえば、必ずしもマネジメントできる人材だけが求められているわけでは無く、プレイヤーとしての転職も可能なので、転職すること自体は問題ない状況と言えます。
ただし、プレイヤーとしてのレベル感は求められます。
40代税理士が転職後に後悔するケースも多い
転職市況は良いのですが、だからといって転職が必ず成功かというとそんなこともありません。
事業会社税務室へ転職するも年収ダウンで数年後に後悔
40代に入り、思い切って新しいところへチャレンジしたいということで大手税理士法人から事業会社の税務室へ転職される方もいらっしゃいます。
このケースでは大半が年収ダウンの転職になるのですが、事業会社の方が福利厚生も含めた諸環境が良い場合が多く、また、本人も新しい領域へチャレンジしてみたいということで年収ダウン(200万円ダウン等)を許容して転職されるケースも多いです。
そして実際に転職し、業務にやりがいを感じるケースも多く(感じずに辞めてしまうケースもありますが)、1,2年は問題無かったりするのですが、その後の年収も含めた待遇が思ったほどが上がらず(また、思っていた以上に年収減少が家庭に響く等)、徐々に待遇面で不満が出てくるケースもあります。
具体的には40代ですと子供がまだ大学を卒業していないというケースが多く、むしろこれからお金がかかるという家庭も多いのですが、そういった環境下においての年収ダウンになると奥さんからチクチク言われたり、自分自身でももうちょっとなんとかなると思っていたのだが、、、ということで、徐々に待遇面の良い税理士業界への転職を考え始めるケースもあります。
意外な出費が増える年代でもあるので、30代の時よりお金が必要になることもしばしばであることから、年収も含めたお金の問題で再転職を考えるケースも多いです。
事業会社の場合、一部の企業を除いてBig4税理士法人や大手税理士法人程の年収がもらえるというケースはほとんどありません。
また、生活の質を落とすのも難しいので、入社を決めてしまう前に家庭環境・子どものことももう一度よく考えてみましょう。
他人(企業等)のお金の問題に対してはしっかり検討できるけど自分のことになると抜けが多いということもあるので、一度じっくり考えてから転職を決断しましょう。
なお、このケースの転職おいてはスキルがそもそも高いため会計業界への出戻り転職(他の税理士法人など)はすんなり決まるケースが多く、また、前職に戻れたりするケースも多く、リスクが低いことからチャレンジ転職はありでしょう(その時の市況にもよるため絶対とは言い切れませんのでご注意ください)。
中小規模の会計事務所から大手会計事務所へ転職して後悔するケース
税理士は常にスキルアップを目指す真面目な方が多く、40代になってもより高度なスキルを身に着けたいということでこれまで中小規模の会計事務所に勤務していた税理士が、新たなステージで活躍するために大手税理士法人(準大手等)へ転職するケースはあります。
中小規模の会計事務所と大手の会計事務所では取り扱うクライアントの規模やタイプが異なるので、仕事内容含めいろいろとやり方が異なることも多いので転職活動の時点で苦戦することもしばしばですが、不可能ではありません。
そうしてなんとか転職したものの、まず、これまでの仕事のやり方を改めることに苦戦しストレスが溜まる、大手税理士法人は忙しいケースが多く労働時間の増加によりストレスが溜まるなど各種状況の悪化によりやっぱり転職しなければよかったと思うケースもあります。
やる気はあるけど体がついてこなくて、徐々に落ちて行ってしまうパターンです。
40代を超えてくると体力も衰えてきますので意外と無理が効かなくなっている年齢です。若いころは気合で乗り切れた事柄も、意外と苦戦することがしばしばです。
なので、本当に大手に行く必要があるのかどうかしっかり考えつつ、体力面・精神面など綻びが無いかチェックすると良いでしょう。
友人等に相談するのも良いですが、エージェントなどの客観的に自身を評価してくれる人に相談してみるのも良いかと思います。多数の転職事例を年齢ごとに見てきているので、失敗した例なども多く見ているので参考になるかと思います。
なんとなく一度ぐらいは大手に勤務しておきたいといった形で転職されるケースもありますが、特にこれといった理由がないケースでは中小会計事務所で当該領域にプロを目指した方が良いケースも多いです。
40代で独立などを視野に大手税理士法人から小規模会計事務所へ転職して失敗
40代税理士の方で独立を目指すケースも少なくないです。
子どもが大学を卒業するまでは安定した勤務を行い、卒業したのち開業をしようと考え、そのケースにおいては一般的な規模の会計事務所での就業経験もあった方が良いだろうということで、中小規模の会計事務所へ転職されるケースもあります。
採用時点でマッチしないケースも多いのですが、転職したケースにおいても当該事務所において本当に学ぶべきことがあるのかどうかよくよく検討した方が良いです。
小規模会計事務所へ転職するケースでは一部の少数精鋭の高いレベルの業務を提供している事務所を除いては給与が大幅ダウンしますし福利厚生もダウンします。
その税理士事務所は本当に独立に向けて勤務しておく必要のあるところですか?と思わざるを得ないようなところへ転職をしてしまう方もいるので、独立に適した会計事務所へ転職してください。
常に良いところが募集しているケースはそう多くなく、すぐに見つからないケースもありますが、税理士に強い転職エージェント等では過去独立した人の実績がある事務所や独立者を歓迎する会計事務所求人も結構持っているのでそういった形で情報収集しておくのも良いかと思います。
40代税理士が転職を考える際はしっかり情報収集してください
40代の税理士資格者は採用需要が高いので転職すること自体は容易です。
ただ、不必要な転職をしてしまうケースも多く、年齢的に取り返しのつかないことになるリスクはあるので入社するかどうかの意思決定は慎重に行いたいところです。
実際に不満が基で転職をされるケースにおいて、客観的に見たらかなり恵まれている(今ほど良い環境へ転職することが難しい)というケースも多く、転職後にしまったと思う方もいるので、現実を知るという意味でも思い込みでは無く様々な視点から情報を取り入れ意見をもらうようにすると良いでしょう。また、事例としてキャリアダウン転職を繰り返してしまう方もいるので、本当に注意が必要な年齢だと思った方が良いです。
また、現在の転職市況であれば会計業界へ出戻る転職は簡単なので大きな問題無いのですが、数年後どうなっているかはわかりませんので、安易な転職は避けるのが吉です。
とはいえ転職活動をすることを否定しているのではありません。
転職活動をすることで、自分自身が客観的にどれぐらい市場から必要とされるスキルを有しているのかがわかります。逆に意外と評価されないことがわかれば、それはそれで今後のレベルアップに向けて何をすべきかが明確になるケースもあります。
なので、転職活動はしつつも最終意思決定は慎重に行いましょう。
転職活動にあたっては税理士資格者であれば個人的にMS-Japanを利用するのが良いと考えており、40代税理士資格者というケースにおいてはキャリアという視点を軸にじっくり転職活動をする必要もあるのですが、検討したことを実現するためには一定度の幅の広い求人を保有している転職サービスを利用する必要があり、そういった意味では長年税理士の転職支援を行いつつ、一般事業会社の管理部門も広くカバーしている同社は求人保有量はかなり多い(バリエーションも)ため、利用した方が良いと言えるでしょう。もちろん求人が多いだけでなく、資格者のキャリアについてのアドバイスもしっかり行ってくれます。
40代で税理士試験勉強中(税理士科目合格者)の方の転職
税理士試験のボリュームゾーンである40代の税理士科目合格者の方も転職する方が多いです。
このケースではそれなりに求人はありますが、諸条件に合致する転職先を探すという意味では結構苦戦するケースが多いでしょう。
40代にさしかかるのであれば、税理士試験勉強に加えてキャリアをしっかり考えることが重要になってきます。
税理士試験勉強だけでなく業務経験の側面を検討する
この状況で転職を考えるケースは税理士試験にもっと集中したいといった理由の方も見受けられるのですが、その転職が吉と出ることもありますし凶と出ることもあります。
確かに税理士試験に突破することは非常に重要なのですが、その後のキャリアも考えるとどのような業務経験を有しているか、どのようなクライアント規模の業務を行っていたのかといったことも重要となってきます。特に40代ともなると経験が重視される年齢なので、税理士資格を取ったからといってなんとかなるものでもないので、合わせてこの経験値の部分も気にしておく必要があります。
残りが1科目・2科目であれば1年勉強を頑張れば合格できるかと思いますが、一方でその後も転職することを考えるのであれば直近の職歴においてどういったクライアントにたいして税務関連業務を行っていたのかも重要になってきます。
そのため、場合によっては今転職しない方が良いかもしれないですし、逆に転職できるのであればしておいた方が良いかもしれない場合も考えられるので、総合的に状況を見て転職を決断する必要があります。
非常にあいまいな言い方になって申し訳ないのですが、その人の状況と将来像に係わる部分なので一概に言い切れないことから個別具体的な相談を業界に精通したエージェントにしておいた方が良いかなと個人的には思います。
40代だからこそ面接対策はしっかり行う
20代や30代前半までであれば面接時の会話に多少難あり(緊張の余りかみまくる等)でもしっかりとした税務スキル・経験があれば採用に至ることも多いのですが、40代を超えてくると管理職としての側面や仮に税理士業界での経験は浅いとしても人間力の高さみたいなものは評価の基準としての比重は高まる傾向にあるので、面接時における立居振舞いは重要となります。
ただ、面接が苦手という方は40代になっても税理士業界では多く、コミュニケーションスキルの面で低評価を受けて不採用というケースも結構多くあるので、事前の面接対策やポイントなどはエージェントから聞いておいた方が良いかと思います。
過去に行われた面接の質問事例などももらえるケースが多いので、しっかり対策を行い、落ち着いた受け答えができるように準備しておきましょう。
後は、稀に40代にもなってビジネスマナーに大きな問題があるという方もいらっしゃるので、そのあたりの自信がない方は要注意です。
税理士向けエージェントなどから面接に関する情報やポイントをレクチャーしてもらいましょう。
40代で税理士業界未経験者で業界への転職を目指す場合はハローワークを有効活用
税理士業界未経験でも経理財務などの業務経験が豊富といったケースなど、過去の経験にもよるところがあるのでこの限りではないのですが、基本的に40代業界未経験者は転職サイトなどを活用してもなかなか求人先が見つけられないかと思います。
転職サイトや転職エージェントなどの各種転職サービスは採用する側は高いコストを払う必要があるので、一定の年齢以上の未経験者の求人を出さないからです。
※絶対ではありませんが、どうしても数は少なくなります。また、転職サービスを経由して未経験者を募集するなら対象が20代や30代前半などを想定するケースが大半です。
また、大手税理士法人や条件の良い会計事務所は無理をしなくても若い未経験者からの応募は多数あるので、40代は苦戦します。
なのでちょっとあまり良い言い方ではありませんが、20代・30代若手が避ける会計事務所を狙っていくのも手です。
若い人の場合、どちらかと言えばキラキラした雰囲気を好む傾向(人によりますし税理士目指す人の場合こうでないケースも多いですが)にあり、地味でこじんまりしたところは好まないので、地味でありつつちゃんと教育してくれる事務所などの当たりを引き当てれば40代からでもキャリアを作っていくことが可能です。
そして、エージェントや求人広告などには採用依頼をしないケースも多いため、ハローワークもしっかり活用していってもらいたいと思います。
ただ、ハローワークはブラック会計事務所も多いので、面接時に雰囲気を感じ取ってください。良い事務所もありますが、マズイところもあります。所長先生の話し方がやたらと偉そうだったりするケースは要注意です。
そうしたポイントに注意してハローワークで求人を探せばそれなりに勤務可能な会計事務所はあります。
40代税理士の転職まとめ
会計事務所は高齢化著しい業界に1つですので40代でもある意味若手の部類に入り、転職も比較的活況です。
とはいえ現在置かれている状況ごとに注意点があり、後悔するケースも多いので意思決定は慎重に行いましょう。
転職にあたっては、個人的見解にはなりますが、税理士資格者や科目合格者(会計事務所経験者)であればMS-Japanやレックスアドバイザーズの利用がおすすめとなります。
一方で、40代未経験で税理士試験も合格していないといったケースでは転職エージェントなどに登録しても良いのですが、恐らく紹介できる求人が無いと言われるかと思いますので、それとは別にハローワークの方が求人が豊富(面接でしっかり見極める必要はありますが)なので、ハロワもうまく活用しましょう。
採用側が税理士業界未経験の40代をエージェントを使って募集するとは思えませんので、ハローワークをしっかり使いこなしてください。ハローワークの求人を定期的にチェックしていますが、未経験者の募集は定期的に出るので時間をかければ求人は見つかります(ただ、年齢を考えると最低でも簿記2級あるいは税理士試験勉強に手を付けている、経理経験があるなどが望ましいです)。
税理士業界は40代でも転職できる業界ではありますので、置かれた状況ごとに適切なアクションを起こして希望を叶えてください!