会計事務所に入所して1年たたずに転職しても大丈夫?早期に辞めることの弊害はあるか?

会計事務所に勤めている人の中には、1年以内と比較的短期間で転職してしまう傾向がある人も多いです。

一体なぜなのでしょうか?

その理由や会計事務所業界での転職において早期退職とならないようなポイントについて見ていくと共に、1年程度の短期での転職が問題無いかどうかを見ていきます。

1年で辞めちゃってもその後転職市場で不利にならない?

はじめに結論から記載すると、1年での転職を数度繰り返すと流石に転職市場で不利になる可能性が高くなりますが、少なくとも1度であれば大丈夫であると考えられます。

実際に半年たらずで転職される経験をしている方は結構多いのですが、面接の際になぜ短期離職になってしまったのかという正当な理由(前向きで論理が通った理由)がしっかりと説明できれば大丈夫です。

税理士業界の場合スキルアップを目的として比較的短期で転職をされる方は多いですし、転職理由はいくらでも考えることができるので、そこまで心配する必要はありません。

ただ、だからといって無意味に転職を繰り返すことはおすすめしませんし、転職理由の整合性が取れなくなるので、無駄な転職は避けるようにしましょう。

事業会社への転職を視野に入れているケースでは注意が必要

ただし、会計事務所ではなく事業会社への転職を検討されている場合は注意が必要です。

表立っては公表されていませんが、転職回数や短期離職を極端に嫌がる企業は結構多くあり、専門職(税理士や公認会計士)であっても、転職回数3回~4回まで(加えて1年以内の離職がある人は不可等)、などといった基準を裏側で持っている企業は結構多くあります。

税理士や会計事務所スタッフの方々は基本的に事業会社へ転職するケースはほとんどありませんのでそれほど問題ありませんが、もし将来的に経理や税務室への転職も検討しているという場合は注意しましょう。

ただ、年々転職回数などの価値観は徐々に緩くなってきていますので、過度に心配する必要はないかと考えます。
※緩くなっている背景として、人手不足の影響や高いスキルを持って仕事ができる人材が不足していること、教育する余裕がないことも大きな要因となっています。なので、職歴が綺麗かどうかよりも何ができるのか?が重要になってきています。

会計事務所から1年で転職する人はどんな理由で転職している?

たとえば未経験から簿記2級や税理士試験1科目などに合格し、やっと入所した会計事務所でも、1年ほどで早期に退職してしまう方は結構多くいらっしゃいます。

会計事務所の多くは従業員が10名以内など小さな組織であることが多いですので、人間関係で悩むことも多いですが、それら以外にも思っていたのと違ったと感じることは多いようです。

では、具体的にどんな理由で転職したくなるのでしょうか。その理由の具体例を挙げて紹介します。

入所した事務所がブラック会計事務所だった

別の業界からの転職を決意した人の中には、最初に入所した会計事務所がブラックであったというケースも少なくないようです。

最初は給料が安かったり、扱いが酷かったりしても、税理士試験の勉強のためと我慢しがちのようですが、1年くらい経つと我慢も限度を超えてくることが多いです。

未経験なので給料が安いことは覚悟の上で入所しており、常識的な範囲で安い分には我慢できるという人も多いのですが、会計事務所の中には残業手当を支給しない、保険関係が整備されていない、きつい嫌な仕事を押し付ける体質の事務所なども残念ながらあります。

先進的で制度も整っている会計事務所が増えている一方で、古い体質の事務所もまだまだ多いのが注意すべき点となります。

もし別業界から会計事務所へ転職するなら育成制度が整っているかなども含めた情報収集をしっかりして会計事務所選びを行う必要があります。
※別業界からに限らず、会計業界の中で転職するケースでも情報収集は大事です。事務所ごとで待遇や雰囲気が全然違いますので。

ブラック会計事務所に転職しないために!会計事務所の見極め・見分け方の記事などもご参照ください。

試験勉強を支援してくれる環境がなく税理士試験との両立が難しい

会計事務所で働いている人は、税理士試験の勉強をしながら働いている人が多いです。

しかし、税理士試験は片手間で勉強して受かるような容易な試験ではありません。

職場に試験勉強に対する理解や支援するシステムがないと合格は極めて困難です。
その両立が困難で転職を決意することも多いようです。

会計事務所によっては、試験勉強を支援してくれる事務所もあります。試験勉強のための休暇制度や資格スクールへの通学支援をしてくれる事務所もあるのです。

そういったことは業界に入って来て数年経ってから知ることも多いため、最初の転職・就職では見落としがちになり、早期の転職となるケースがあります。

雑用をやらされるばかりで決算含めたレベルの高い税務の仕事ができない

会計事務所は規模が小さく少人数のことが多いです。そのため、細々とした雑用的な事務処理業務を行う人材が不足しているケースが多いです。

その結果、永遠に雑用ばかりやらされて本来経験しておくべき業務が経験できない、あるいは自分の業務に集中できないという人も多いようです。

そんな事務所に長年勤めていると、大きな会計事務所で働いている人と比べると実務経験に差が出てしまうことがあるのです。

もし、あなたに問題があるわけではないのにレベルの高い業務へのチャレンジができず、スキルアップ・キャリアアップができない環境であるならば、早めに転職をしておかないと後々困ることになります。

実際の実務経験に加えて、スキルアップにつながる研修システム等がしっかりしている事務所も増えておりますので、環境を変えた方が良いとの判断から転職されるケースは多いです。

1年ならまだしも2年、3年と数年でスキルに大きな差が生まれてしまいます。

社員教育がままならずいきなり決算業務などの高度な業務をふられる

先程とは逆に、会計事務所に入社したてだというのに、新入社員研修も実施してくれない会計事務所もあります。

教育もままならず右も左も分からない状態で、いきなり決算などの難易度の高い業務をふられることもあるのです。

フォローもなく丸投げされてくることもあり、そんな状態であると、常に不安を抱えたまま仕事をすることになってしまい、そのストレスに耐えきれなくなるかもしれません。

ワンマン経営の所長と働くのが辛い

会計事務所は悪い意味でワンマン経営の事務所も多いのが現状です。

また、親族経営をしているところもあります。

古い価値観のワンマン所長がいる会計事務所ではサービス残業を強いられることもあるようです。

また、所長と人間性が合わない場合は、顔を合わせるだけで苦痛に感じる人もいるのではないでしょうか。

こうしたブラック環境に耐えられないなどで短期離職となるケースがあります。

ある程度内情に詳しいエージェントに聞けば避けられる転職ミスなので、会計事務所の内情や税理士のキャリアを知り尽くした転職エージェントを活用することでミスマッチを防ぎ、短期離職を防ぐことができるでしょう。

参考として、税理士資格者や税理士科目合格者(税理士試験勉強中の方など)であれば会計事務所業界に精通しているレックスアドバイザーズなど、古くから会計業界でキャリア支援を行うエージェントに相談することで早期離職を避ける転職が実現できる可能性が高いと考えられます。

特化型会計事務所へ転職したが合わなかった

たとえば法人税務を一通りこなせるようになり、自身に強みを持たせたいということで専門性を高めるために特化型の会計事務所へ転職されるケースがあります。

医療業界特化型や飲食業界特化型、資産税特化型などさまざまありますが、そうした特化型の会計事務所へ転職したが早々に離職し、再び総合的な税務を提供する会計事務所へと戻ってくるケースがあります。

特化型会計事務所では税務のみならず、その領域において深く広く税務以外の面も含めたサービス提供を行う傾向にあることから、税務のスキルを伸ばしたいと思っている方にとってはミスマッチになる可能性があり、ちょっと思っていたのと違ったということで早期に退職するケースがあります。

ここでは詳しく解説しませんが、特化型会計事務所で働くメリットもありますが、デメリットも大きいため、慎重に検討した上で転職した方が良いかと考えますので、プラスアルファで強みをつけたいのであれば、スポットで各種案件を多数請け負っている事務所や総合型で比較的大きな会計事務所あるいは少数精鋭でハイレベルな案件のみ扱っている事務所など選択肢を広げてサーチするとよろしいかと思います。

特化型に興味がある方は当該ページをご参照ください。

1年未満での退職は問題無いが同じような失敗を繰り返さないようにすることが重要

会計事務所業界はかなり特殊なので短期の離職が1度や2度あっても大きな問題はありません。

それよりも、スキルが身についておらず、実務が出来ない方が問題となります。

初めての就職、あるいは転職で失敗してしまうケースはかなり多くなっているので、その次に失敗しないように入念に情報収集を行い、職場を選ぶようにし、スキルが磨けるようにしてください。

多くの方が税理士試験勉強中かと思いますので、実務経験+税理士試験勉強ができる環境を見つけ、しっかりとキャリアを作っていって頂ければと思います。

情報収集では先ほど記載したようにレックスアドバイザーズなどの業界に精通したエージェントを利用するとよろしいかと思います。

未経験者や経験が浅い人よりも職歴が荒くてスキルのある人の方が転職活動では有利?理由はこちら!

税理士業界は人の入れ替わりが激しい業界です。

良くも悪くもスキル志向の方が多いので、レベルアップをしていくためには転職が必須というケースも多いため、割と転職に対する理解はある業界と言えます。

また、該当する業務にすぐに対応してくれる即戦力を欲しがる事務所はやはり多いので、例え前職が1年での短期離職だったとしても当該業務に対するスキル・経験があるのであれば欲しいという事務所は結構多いです。

たとえ税理士業務経験が数年であったとしても、綺麗な経歴の未経験者と比較すると即戦力となるので、結局のところ経験を有している方が有利です。
※1年以内の転職を何度も何度も繰り返していたらこの限りではないのと、未経験者を育てる余裕のある会計事務所での募集内容によってはこの限りではありません。

特に、求められる人物像としては、確定申告・決算の時期の業務を一定以上経験した人材です。

なので1年での短期離職になってしまったからといって転職できなくなるわけではありませんのでご安心ください。

次は失敗したくない!1年短期離職とならずに転職するには

確実に短期離職を避ける方法というのはありませんが、早期離職になってしまう大きな要因は単なる情報収集不足というケースが多いかと思います。

所長先生とのミスマッチ、待遇のミスマッチ、仕事内容のミスマッチなど理由は様々ですが、最低限のことを調べなかったことが大きな要因と言えそうです。

ただ、会計事務所業界って内情が見え難いという問題もあるなと個人的に思っています。

中小事務所だとどの事務所も同じに見え、何が違うのかわからないというケースも多いでしょう。

どの会計事務所のWebサイトを見ても、記帳代行、税務申告、MAS監査、巡回監査、スポットで相続などの同じようなものが並んでいるだけで仕事内容(キャリア)という視点で違いがわかり難いです。

後は、中で働いている人の顔が見え難い、実態がつかみにくいという問題はあるでしょう。

特に求人媒体経由での応募ですと写真が掲載されているケースも多くありますが、写真はいくらでも良く見せかけることができるので注意は必要です。

そのため、情報収集して転職するならエージェントからも情報を取得した方が良いと思います。

何度か記載しましたが、税理士資格者や会計事務所経験者であればレックスアドバイザーズが会計事務所業界という点では情報がしっかりしているので良いかと思います。転職相談と情報提供力に定評があり、サービスの質が良いのがポイントです。

エージェント利用したら絶対に早期退職が無いとは言い切れません。

それでもエージェントを活用して情報収集することで失敗リスクは下げることができるでしょう。

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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士として事務所を開設しており、自身も士業として活動しております。 執筆者・監修者・編集者情報へ