簿記2級で会計事務所へ転職(業界未経験)することはできますか?
比較的よく聞く悩みです。
手に職をということで税理士資格取得を目指す方も多いのですが、どうせなら会計事務所で働きながら勉強した方が実務経験的にもモチベーション的にも資格勉強のサポート的にも高いものが受けられるので、基本的には簿記2級レベルで会計事務所への転職を目指した方が効率が良いと考えられます。早い段階で税理士業界へ転職できるのであればそれに越したことはありません。
日商簿記2級に合格していればご年齢によっては税務業務未経験でも十分に会計事務所へ転職し、税理士資格を目指していくことが可能ですのでぜひ本ページを参考にしてみてください。
※ここ数年は簿記3級や無資格でもご年齢によっては転職が可能なところも増えています。
なお、このページでは経験の有無や年齢などに分けてケースごとに転職可否や事例を見ていきます。
目次
20代で簿記2級合格であれば会計・経理などと関係ない職種からでも会計事務所へ転職可能
例えば営業職や販売職、その他全く異なるお仕事から事務系職へ転職したいという事で税理士という資格に着目し会計事務所への転職に目をつける方もいらっしゃいますが、20代であれば全くの未経験であっても転職を受け入れてくれる会計事務所は多数存在しています。
会計事務所の仕事内容はただ単に事務的な作業をしているばかりではなく、クライアントと対話する業務も多く存在しているため、一定のコミュニケーションスキルが必要とされる場面も多く、そういった意味では営業職などの他の職種で培った能力が活かせる場面というのも数多く存在しています。
ただ、やはり会計に関わる業務にチャレンジするわけですので、コミュニケーションスキルに加えて、表題の通り簿記2級や3級の取得(もしくは相応の知識を身につける)しているなど一定のやる気や意欲は見せる方が転職活動で内定が得やすい傾向にあります。また、また税理士試験を受験する段階まで来ていなかったとしてもある程度税理士試験にチャレンジする目途がたっていて、やる気がある状況である必要はあると言えるでしょう。
そのうえで、簿記2級に合格していればタイミングにもよりますが受け入れてくれる会計事務所はございます(ここ数年は簿記3級や無資格でも転職できたケースは数多くあります)。
20代以外の方の場合、経理・財務など関連する業務経験があればもちろん転職可能ですが、そうでない場合はかなり転職のハードルがあがり、採用側がコストをかけてまで採用しようと思わないので、転職エージェントや求人広告サイトではなく、ハローワークも有効活用しながら機会を探っていくのが良いでしょう。
なお、先ほど記載した通り基本的に税理士を目指していくことが求められますが、絶対的に税理士を目指さなければならないのかというと全ての事務所が税理士を目指す方を募集しているわけではありません。会計事務所でも様々なキャリアが存在しています。
会計事務所ごとに運営方針や扱っている業務が異なるので、全てに関してこうである、という一定の基準というのは無いのですが、税理士を目指す、目指さないそれぞれのキャリアがあります。
ただ、税理士を目指さない場合のキャリアは結局のところ営業的要素の強い仕事にまわされる可能性が非常に高いので、あなたの思い描くキャリアにはならない可能性が高いです。
そのため、基本的には税理士資格取得を目指して頑張りたいという視点で会計事務所の転職先を探すのがよろしいかと思います。
転職先を探すにあたって、会計事務所はなかなか情報が取り難い業界であることから苦戦することが予想されます。
これまで全く関連性の無い業界にいた方だと尚のことイメージが付きにくいかと思いますので、情報収集にあたっては税理士向け転職エージェントなどを有効活用しましょう。
参考までに、20代でこうした簿記2級レベルの方が税理士を目指す上での転職支援実績が高いのがヒュープロとなり、昨今実績が非常に高いので是非利用を検討してみましょう。
転職活動では苦戦することも想定しておく
転職することは可能ですし良いキャリアを築いていくことはできますが、転職活動はそれなりに大変と言えるでしょう。
どういった意味で大変かというと、「良い求人先との出会いが意外と少ない」「良さそうな会計事務所はライバルも多く不採用が続く」という2点です。
キャリアを積むのに適さない会計事務所も多いから求人探しが大変で自分に合う良い会計事務所がすぐに見つからない可能性もある
皆さんも転職するからにはしっかりと会計税務の知識・経験・税理士試験勉強のサポートが得られる会計事務所へ転職したいと思っているかと思いますが、残念ながら全ての会計事務所が真っ当というわけではなく、一般企業同様にブラックな会計事務所も多く存在していますので、資格の勉強時間の確保をするどころではない会計事務所も存在しています。また、実務的にも雑用ばかり押し付けられて嫌な気持ちになるケースもあります。
単なる書類の整理等の雑用しかやらせてもらえない事務所が多い他、所長の性格がちょっと変といった会計事務所も多く、せっかく転職したのに早々に辞める羽目になり、短期離職のせいでその後の転職にも響いてしまったという事例はあります。
あまり生々しいことは書けないのでやんわりとした記載にはなりましたが、会計事務所もまあまあブラックなところが多いので転職先決定は慎重に行う必要があります。
癖の多い税理士の所長先生も多いので、なかなか良いところが見つからず苦戦することもあります。
そのため、転職にあたっては会計事務所の内情に詳しいエージェントを利用して情報収集をする必要があります。
簿記2級レベルだと他者との比較検討の結果最終的に不採用になるケースもある
多くの会計事務所で税理士を目指したいと思っている20代の採用を行っていますが、一定以上の規模の税理士法人などへ転職したいと思うケースでは不採用も多くなります。
ポテンシャル採用枠も多くありますが、やはり経験・スキルがある方や税理士試験科目合格している人を優先的に採用していきますので、多くの方が働きたいと思うような良い会計事務所では簿記2級レベルだと他者と比較した結果不採用というケースも多いです。
ただ、知っておいてもらいたいのが、知名度が高くて規模が大きい会計事務所が、簿記2級しか持っていない経験の浅い方が働くにあたって適した環境であるかといえば必ずしもそうとも言い切れず、あまり有名でない小規模会計事務所の方が適す可能性もあります。
上記でブラック会計事務所が多いと記載しましたが、個人事務所規模であってもしっかりと仕事の仕方を教えてくれる会計事務所は有りますので、規模感や知名度などのうわべ的な部分で転職先を決定していくのではなく、なぜ会計事務所で働きたいのか、その動機に照らして働きやすそうな会計事務所を選んでいきましょう。
実際に転職先を選定していくにあたっては会計事務所の選び方のポイントを記載した記事もございますのでご参照ください。
なお、簿記2級レベルの方がエージェントを利用する場合については年齢や経験値などにより注意もあるので、本記事後半に記載します。
30代になると簿記2級では会計事務所への転職は無理?
20代を超えて30代に入って来た場合を考えてみましょう。
例えば前職が銀行などの金融機関である、企業の経理であるといった形で何かしら関連する業界で働いていたケースであれば問題無く転職が可能です。
一方で、職種的にも業界的にも全く無関係なところから30代業界未経験で簿記2級を活かして会計事務所へ転職することを考えると、不可能ではないが苦戦はするという形になろうかと思います。30代前半であれば大丈夫かと思いますが、中盤以降であるならば注意も必要です。
タイミングや個々人の能力などにもよるため一概には言えないのですが、長期戦も覚悟しておきましょう。
また、年収も会計事務所未経験からのスタートとなると300万円台からになりますので、収入面での覚悟は必要となります。
そのうえで、仮にうまくどこかの会計事務所に潜り込めれば、数年の業務経験を積み、上位資格を取得していくことでキャリアアップも見込めますので、まずは業務経験を積んでいくとよろしいかと思います。
そのような状況ではありますが、率直に30代半ば以降の方で業界未経験者+簿記レベルなのであれば転職エージェントに登録しても案内可能な求人が無いといった形でやんわりお断りされるケースも想像できるので、転職エージェントよりもハローワークも利用した方が良いケースも多いでしょう。
ハローワークの場合、転職相談という意味ではあまり役に立ちませんが、30代以上で未経験の簿記2級レベルの方を受け入れてくれる事務所も多くあるので、求人案件を紹介してもらい、実際の面接の場などでどういったキャリアが想定できるか面接を通じて情報を取得するのが良いでしょう。
特に所長先生との相性は重要ですので面接で見極めてください。
総じて給料が安かったりすることが想定され、就職当初は厳しいことが予想されますが、修業期間と思って頑張っていただければと思います。
40代未経験からハロワ経由で転職できたケースもあるので、あきらめないでしっかり探せばどこかしら見つかるかと思います。
どのようなタイプの会計事務所が存在するのか?
会計事務所と一口に言っても様々なタイプのものがあります。
こうしたことはエージェントに相談すれば教えてもらえますが、ご自身でも最低限業界については把握しておきましょう。
なお、ここでは簡単に記載をしますので詳しくは税理士・科目合格者の転職先はどんなところがある?のページをご覧ください。
Big4税理士法人
Big4税理士法人とは「デロイト トーマツ税理士法人」「KPMG税理士法人」「PwC税理士法人」「EY税理士法人」の4つを指し、世界的な4大国際会計事務所が国内会計事務所と提携し設立されたものです。
20代であっても税理士試験3科目合格は欲しいところである他、語学力なども求められ転職のハードルは高いです。
簿記2級の方が狙う転職先ゾーンではありません。
大手税理士法人
大手税理士法人は山田グループや辻・本郷税理士法人などが有名で名前を聞いたこともある方もいるのではないでしょうか?
小規模企業や個人を相手に業務をすることもありますが、多くの大手税理士法人が基本的には大手企業を対象とした業務が中心となり、業務案件規模も大きいものが多い傾向のため、分業制で案件を進めていく傾向にあります。
規模感の目安で行くと所員数で行くと50名以上(中堅準大手)~数百名の事務所がこのあたりです。
ご年齢にもよりますが、税理士試験勉強を始めたて等であっても若手であれば簿記2級レベルの方の採用も多いです。
なお、大手税理士法人といってもやっている業務は各社ごとに異なり、上場企業の難解な税務を中心に取り扱う税理士法人もあれば小規模企業の小さな案件を大量に獲得してきてマンパワーで捌いているタイプの税理士法人もありますので、どのような税理士になりたいかによって目指すべき先はことなります。
このあたりの目指すべきキャリアとどこの事務所が自分に合うかはエージェントに相談しても良いでしょう。
小規模から中堅会計事務所
簿記2級の方はこのゾーンが主な転職先になろうかと思います。
所員数でいくと数名~10名以内程度です。
一般的な中小規模の企業の法人税務顧問業務を行っており、記帳業務から決算申告や資金繰、資金調達支援などの経営支援を行っています。
比較的転職しやすいので新たにキャリアを築いていくのに良いです。
専門特化型会計事務所
飲食業界や医療業界といった業界に特化している会計事務所や資産税、国際など内容に特化した会計事務所等があります。
あなたが特殊な業界に所属して特殊な知見をお持ちであればこういった専門特化型の事務所も有りかもしれません。
ただ、専門特化しているが故に偏った知識が身につくので、良い面と悪い面も理解して転職する必要があります。
会計事務所の分類は上記で記載したページ等で解説しているので、各会計事務所の分類ごとのそれぞれの詳しい内容についてはそちらをご覧ください。
会計事務所で経験を積んだ後のキャリア
簿記2級を活かして会計事務所へ転職して経験を積むことでキャリアの幅が広がります。
税理士を目指している方が大半ですが、業務経験を積む中で自分が強みを持ちたい領域というものが出てくるので、目指すべき方向性に近い会計事務所へ転職し、キャリアを積んでいくことも可能です。
会計事務所業界にも様々な分野(個人向け・法人向け・特定業界特化等)のサービスがあるので、自身の強みを見つけ専門性を磨いていくのも良いと言えます。
もしくは会計事務所から企業の経理や税務室への転職を目指す、他士業事務所への転職を目指すことも可能ではあるので選択肢はかなり広くなります。
昨今はグローバル展開をする企業が多いので、社内で国際税務を専門に取り扱う税理士を抱えている企業もありますので、税理士登録できるようになれば選択肢は意外と広いものがあると言えるでしょう。
会計というどの領域でも必要とされるスキルを身に着けることは転職市場においては大きな強みとなります。
簿記2級を活かして転職できる会計事務所以外のフィールド
このページをご覧になっている方は税理士を目指している人ばかりでなく、簿記2級を活かして単に何かしら事務系の仕事がしたいと思ってとりあえず情報収集しているという方もいらっしゃるかもしれませんので、幅広くどのような方向性を考えることができるのか見ておきたいと思います。
簿記2級を活かして転職できる先は会計事務所が恐らく最も難易度が低いと考えられますが、会計事務所以外にも可能性はあります。
企業の経理
おそらく簿記2級取得して転職活動し経理を目指したが採用してくれるところが無かった、とお悩みの方が多いかと思いますが、未経験から簿記2級を取得し採用されたケースはゼロではありません。
もっとも、未経験だと20代を超えてくると厳しいとは思いますが、転職エージェントに登録し経理未経験の求人が出た際に紹介して欲しいといった形で相談しておくと転職可能性が出てきます。
このケースにおいては経理向けの転職エージェントを利用しても求人の案内はしてもらえませんので、最大手のリクルートエージェントを利用する必要があります。
何かに特化している転職エージェントというのは、企業側から当該職種のプロフェッショナルを紹介してもらうことを期待しての求人依頼が多いケースが大半なので、どんな求人も保持している最大手を利用した方が良いです。
コンサル
ハードルは高いですが、会計系のコンサルへ転職された方もいらっしゃいます。
もっとも、コンサルへ転職するに際しては簿記2級の評価というよりは別途元々在籍していた業界と業務に精通していたことに加えての会計知識の評価というところでの転職となります。
コンサルと言っても様々ありますが、このケースでは会計と業務改善を軸にしたコンサル業務への転職となりました。
あなたの元々所属していた領域によっては思ってもみなかったキャリアが生まれることもあるので幅広く転職支援を行っている総合型転職エージェントに相談してみるのもありです。多数の事例を有しています。
簿記すら持っていなくても採用されるケースが増えた
このページでは簿記2級は最低限取得しておくべきというスタンスで記載していますが、昨今は簿記も何も取得していなくても教育するから問題ないという会計事務所も増えています。
もちろんこうした会計事務所ばかりではありませんので、基本的には簿記の勉強ぐらいはしておいた方がよろしいかと思いますが、門徒は広がっており、会計業界へ転職したい方にとってはチャンスと言えるかと思います。
なお、こうした簿記を持たない方々はハローワークの利用をおすすめします。
意外と簿記合格していない方の求人が多くありました。
会計事務所への転職を目指すのであれば簿記2級取得後は上位資格の取得だけを目指すのではなく実務経験も優先する
経理や会計事務所への転職を目指すというケースでは確かに簿記2級は有効であり必須要件とも言えますが、そこまで取得したら早く実務経験が積める会計事務所へ就業しましょう。
よりハイレベルな資格を取得してから転職活動をしようとする方もいらっしゃるのですが、年齢が上がるにつれて実務経験が無いと評価され難くなるため、実務経験のことも考えてまずは転職してください。
20代や30代前半あたりであればヒュープロで会計事務所と経理の求人が見つかるかと思いますが、会計事務所ではなく経理を中心に目指すケースでは
リクルートエージェントも合わせて利用しておきましょう。
なお、30代中盤以上で該当業務未経験の方はハローワークの利用も視野に入れてください。意外とハローワークを利用する会計事務所が多く、また、上の年代の方の採用の場合は採用側からするとコストのかかるエージェントを利用するまでもないというケースも多いためです。
いずれにせよ、会計というどこでも必要とされる知見を有し、また、簿記2級は実務で求められる最低限の知識という点において非常に有用なものなので、諦めずに粘り強く転職活動を行ってみることが重要です。必ず需要はあります。
20代向けの記載が多くなりましたが、20代の方で会計事務所への転職を検討されているケースでは20代税理士・科目合格者は転職市場で引手数多?未経験でも問題無いのページもご参考頂ければと思います。