女性の会計事務所・税理士法人の転職を働き方とキャリアの視点で考える

女性の会計事務所への転職

会計事務所に勤務する女性税理士の割合は年々増加傾向にあると言われています。

少し古いデータですが、全国女性税理士連盟のデータを参考にさせて頂くと、平成28年時点で女性税理士は全体の14.4%ということで割合的にはかなり少ないことがわかります。
ただ、同年の税理士試験合格者においてはおよそ27%が女性ということで、比較すると高い割合になっており、また、昨今の税理士試験のデータなどからも女性の割合は増えている傾向のようですので、その比率は年々高まっていると言えるでしょう。
実際に働く現場でも女性の税理士資格者は増えているという話を聞きます。

その一方で、女性が増えているにも関わらず未だに結婚や出産を機に退所せざるを得ないケースも多いようで環境整備という点では遅れている会計事務所もあります。

昔と比べれば随分と労働環境は改善され、理解の高い事務所も増えていますが、まだまだそうとも言い切れない会計事務所もあり、悪い意味での転職を余儀なくされるケースも多々見受けられます。
勤務する会計事務所間でかなり差があるなと感じます。

そういった中において、女性税理士・会計事務所スタッフの転職についてケースごとにいろいろ見ていきたいと思います。

女性税理士の転職は増えており、採用需要も高い傾向

まず初めに、ここ数年での市況や体制に関する変化について記載すると、最近よく聞く声として、コミュニケーションスキルの重要性の高まりから女性の方が仕事ができるといった声を会計事務所の先生(採用側)から頂く機会も増えました。

ここでいうコミュニケーションというのはしっかりと相手の話を聞き、そして返答するといった形の普通の会話をするといった基本的な能力という側面が強いです。

資産税領域の依頼の需要の高まりや業務のIT化/デジタル化などの需要と社会構造の変化といった様々な側面が要因としてあるのですが、税理士が仕事をしていくにあたって、単純な対話も含めた相手としっかりコミュニケーションを取って信頼してもらうといったプロセスは重要となっており、税理士業界においてそうしたことはどちらかというと女性の方がちゃんとやってくれるといった声を聴くことが増えたように感じます。

特に資産税領域はお客様との対話が重要なジャンルの一つであり、時代の流れからこうした案件も多いためコミュニケーション能力が重要となっています。

また、ITの発達により作業がかなり簡略化・作業化できるようになってきたので、顧客とのコミュニケーションに割く時間が増えたという他、社内の業務においても単純化・作業化できるものが増えているので、業務を一般化し、誰でもできるよう仕組化し、その意図を所員に理解してもらうといった側面でのコミュニケーションや指示出しや内容をまとめ伝えるといった社内業務側でのコミュニケーション能力の重要性も高まっています。

税理士業界の場合、男性が人数的には多いのですが、どちらかというとコミュニケーション能力が低い方(自信が無い、あるいは面倒と感じている方含)も多いので、そういった点からしっかりやってくれる女性の方が助かるという声も聴く機会が増えました。

仕事が丁寧だから女性が良いといった所長先生の声もあります。

いずれにせよ女性を採用したいという声はおそらく昔より多いのではと感じるところであり、そうした面から労働環境を見直し、活躍できる環境を整える会計事務所も増えているように感じます。

女性・男性問わず働きやすい会計事務所は増えた

女性にも男性にも働きやすい会計事務所が増えた

10年前だと信じられない光景なのですが、昨今はかなり労働環境・人事制度の構築が進んでいる会計事務所が増え、もはや男性だから女性だからといったことを気にせずキャリア構築ができる会計事務所も増えています。

特にコロナ禍以降はテレワーク環境を整える事務所も増えており、また、税務行政のDX化などへの対応も迫られてくるのでIT化・デジタル化を推し進める会計事務所は多いので、単に働きやすいというだけでなく、フルリモート可能など子育てとキャリアを両立可能な会計事務所も増えています。

ただ、全ての会計事務所がそうというわけでは無く、IT化に無頓着な税理士事務所もたくさんありますし、自分が現役の時だけやっていければいいやという考えの所長も結構いらっしゃるので、労働環境も人事制度も整えておらず所員のことを考えない会計事務所もたくさんあります。

特にここ3年か4年で大きく変わって来た印象があるので、もし現在お勤めの会計事務所がそうした方向へシフトしていく兆しが見えないのであれば転職を検討し、他の会計事務所へ目を向けることで今抱える悩みが解消される可能性は高まっているかもしれません。

結婚・子育てなどのライフイベントに左右されずに(左右され難い)キャリアを構築していける会計事務所はあり、ワークライフバランスを実現し家庭とキャリア両方を実現していくことは可能なので、もし何か困っていることがあれば思い切って勤務先を変えてみるのも一つの手です。

ただ、求人票などには家庭の都合による勤務体系の柔軟性など働きやすそうな環境であることが記載されていても、いざ入社してみたら実態は、、、などはあるので、しっかり情報収集は行ってください。

リモートワーク可能な会計事務所への転職希望の女性は増えたが転職に際しては注意も必要

リモートワーク可の会計事務所への転職は注意事項も
ワークライフバランスが取れる会計事務所は多いのですが、転職後早々にリモートワーク可としてくれる会計事務所は意外とそこまで多くありません。

求人票などを見ているとリモートワーク制度有やリモート可などの表記も多くありますが、実際にその仕組みを利用するにあたっては諸条件があり、うまく活用できていないケースも見受けられます。古参の方だけにしか認められていないなど、各会計事務所により運用状況がマチマチです。

また、それ以外にも業務上難しいというケースもありますし、所長の価値観次第というところもあるので、その辺りは事前に確認しておいた方が良いでしょう。

所内のコミュニケーションを大切にし、しっかりと自分の考えを浸透させていきたいとお考えの所長の場合はリモートワークを可としつつも実はあまり快く思っていないケースもあるので、そうしたところでリモート勤務するとそれはそれで嫌な思いをすることもあるので、いろいろ事前のチェックが必要です。

もちろん柔軟な考えの事務所もありますので、転職エージェントなどからしっかり情報を仕入れるか、面接時に質問させていただきうまく確認をするようにしましょう。

なお、リモート勤務可能な会計事務所への転職という点で積極的に転職支援を行い実績が高まっているサービスの一つにヒュープロがありますのでこちらを検討してみるのも良いでしょう。リモート勤務関連の特徴を記載したページもありますので気になる方はチェックしてみてください。

女性ばかりの会計事務所=働きやすい、ではないため転職は慎重に

女性が多い会計事務所だからといって必ずしも女性にとって働きやすい会計事務所であるとは限らない

ほぼ全員女性の会計事務所への転職を検討しているが実際のところそんなに働きやすいものだろうか?どうだろうか?と気になっている方は意外と多いようですが、悩むという事はやはり何かしら不安に関している部分もあるのだろうと思います。

女性が多いことをアピールしている会計事務所は結構多くあり、働く仲間がみな同じ女性ということで理解もあることから子育てや介護など家庭との両立を余儀なくされるケースにおいて働きやすいですよ!といった形でアピールしているケースがよくあります。

実際にそうした会計事務所において働きやすいケースもありますが、そうでない場合も多々あります。

いくつかパターンに分けて良い点悪い点も見ていきましょう。

穏やかな女性税理士所長先生の会計事務所は働きやすい傾向

小規模(2、3名)で数名でやられている所長が女性の会計事務所でスタッフも女性というケースにおいては非常にストレスも少なく穏やかに働けたといった声もいくつかあります。

各人の性格によって合う合わないがあるので絶対とは言い切れませんが、同じ女性というところで特有の悩みや不安を理解してくれつつ、性格が穏やかなことから大きなプレッシャーも感じることなく働けることから非常に精神的も時間的にも安定して働ける傾向にあります。

ただ、小規模事務所なのでお給料は安い傾向にある他、この規模だと税理士補助スタッフとしての採用にはなりますが、税理士を目指している人にとってこうした働きやすい穴場的な事務所もあります。

つまり何が言いたいかというと、所長の人柄次第的なところもあり、ヒステリックな先生でなければ割と働きやすい率が高いと思われます。

いろいろ理解はあるが気をつかうケースも多いようです

少人数で所長先生がややヒステリックな性格の会計事務所だと大変なようです。

悪口みたいになってしまうかもしれないので細かいことは記載しませんが、同じ女性といった形で同性であっても所長との相性が悪いと働きにくく、むしろ余計にストレスが溜まるなどの声も多くあるので、上記で記載した通り、所長先生の性格は見極めましょう。

所長は男性、所員はみな女性の会計事務所は雑用ばかりの可能性もある

所長以外全員女性という会計事務所のパターンも結構あります。

この場合は自身のサポートとして細々とした業務をやってくれる人材が欲しいという事で結果的に女性ばかり残ってしまっているというケースも多々あります。

雑務をこなすための単なる作業員が欲しいということで採用をかけている場合があり、入所しても雑用ばかりで一向にスキル向上に繋がる業務が経験できないということがあります。

ワークライフバランスはとりやすいがスキル・キャリア向上が見込めないこうしたタイプの事務所もあるので注意しましょう。

なお、念のため補足しますが、男性は所長1人で所員が皆女性だったら全ての事務所がこうである、というわけではありませんので誤解のないようお願いします。あくまで一例と傾向です。

女性が多いから女性にとって働きやすい会計事務所であるとは限らないので、事前の情報取得はもちろん面接時などでも相性や所長のスタンスを見極め、ハズレを引かないようご注意ください。

女性税理士のキャリアアップの視点でも会計事務所業界は広がりを見せている

女性のコミュニケーションスキルを求める会計事務所は多くキャリア視点でも有用

働き方の面だけでなくキャリア視点でも見ておきましょう。

税理士は男性が多いですし、大物先生として影響力のある税理士も男性が多い傾向なのでまだまだ男性社会な側面があるのは事実ですが、女性のキャリア構築もしやすくなってきていると思います。

雇われて事務所内でキャリアアップしていくという面で見ても、ここまで記載した通り、産休・育休などに備えた勤務体制の構築(制度的にもIT的にも)が出来ている事務所は増えているのでそうした面での解消は進んでいるほか、純粋に評価のされやすさという点でも特に男性だからあるいは女性だからという視点は無くなってきているように感じます。

むしろ、女性の方が優秀な人が多いとおっしゃる所長も結構多くいると感じます。また、良いか悪いかは別にして、女性を積極的に上に上げていく必要性のある会計事務所もあります。
積極的に女性に会計業界に参入してもらいたいというお考えをお持ちの方も多いなので、女性がキャリアを構築していくに合っている業界だと感じます。

特に昨今は本記事前半で記載したように税理士の業務においても人との対話・コミュニケーションが重要視されてきていますが、例えば先ほども記載した資産税領域のコンサルティングなどでは女性の方がコミュニケーションが上手であり、顧客からの信頼をしっかり勝ち取れるということで活躍する機会は増えていますし、一般的な法人税務であっても経営者の話を聞くという面では女性の方が引き出せたりすることも多いです。

時代の流れは変わりつつあり、良い環境が増えていますので現在お勤めの会計事務所ではそう感じないのであれば広く周囲を見渡し、他の事務所も検討してみても良いでしょう。

産休・育休明けで転職を考えている

産休・育休明けの転職

ここまではどちらかというとこれから結婚や出産を迎えるといったケースを想定して記載してきましたが、現状子育て中でこれから復帰するにあたって働きやすい会計事務所へ転職したいというケースもあろうかと思います。

ブランク明けの女性税理士の採用を積極的に行う会計事務所も多くあります。

ここまでで記載してきた通り、基本的に中小会計事務所が多いので働きやすさは所長の方針・人柄次第という側面が強いので、所長がどういった人なのかで入所を基準に入所を決めていくと良いです。

また、税理士資格者だけでなく、税理士試験勉強中という方も多くいらっしゃるかもしれませんが、そういったケースでは税理士試験+家庭+キャリアと非常に大変な思いをすることになるので、なおのこと制度的なものが整っているだけでなく、所長も含めた所属する人に重点をあてた転職活動を行うと良いでしょう。良い人はたくさんいるので、どこかマッチするところが見つかるはずです。職場見学もできます。

小規模会計事務所の方が働きやすい傾向も

小規模会計事務所の方が働きやすいケースもある

大手よりも中小規模の会計事務所の方が働きやすい傾向もあります。

労働者にとって良い環境を作っていくにあたってルール化することも重要なのですが、個々人に合わせた柔軟な対応という点では個人事務所の方が柔軟に対応してもらえることも多くあり、働きやすいといったことも多々あります。
そのため、規模が大きく制度がしっかり整っているということだけで転職先を決定しないよう注意しましょう。

実際に大手税理士法人でもフルリモート可のポジションがあったり各種制度が整っていたりと一見すると働きやすく見えることもあるのですが、精神的には中小会計事務所の方が楽で良かったとするケースもあるので、あなた自身の性格やマインド、後はキャリアの視点なんかも考慮して決定していくと良いです。

ただ、しつこいようですが、小規模会計事務所の場合は所長との相性が悪いと逆にかなり精神的にしんどくなるので、面接などで少しでも嫌な予感がしたら敬遠することをおすすめします。

転職のハードルは低くない

働きやすい会計事務所は増えており、求人も増えていますが、いつでも常にそういった求人が出ているかというとそうとも限らないのと、そうした働きやすい会計事務所は応募が増える傾向にあるので、楽々入所というわけにはいきません。

他者との競争があると考えましょう。

とはいえ会計業界は人手不足なので一定以上の税務経験のある税理士資格者は恐らく転職でそれほど苦戦しないと思いますが、科目合格者などにおいても税理士補助経験があり、一定のやる気があれば試験勉強などとも両立できる会計事務所への転職は十分可能でしょう。

転職にあたっては非公開求人も狙っていく方が良い

リモート可とかワークライフバランスが取れるといった打ち出しで求人を出すと応募が殺到し要件に合致しない人からの応募を捌くのが大変ということもあって転職エージェントなどに採用を任せるケースも多いです。

そのため、媒体などで求人を探しつつも転職エージェントなどのサービスも利用していきましょう。

例えば、子育て・家庭・仕事を両立させてキャリアも家庭も充実させられるようにしたいとお考えのケース等の転職においてはヒュープロの利用を考えると良いでしょう。

AIなどのテクノロジーの力と人の力を駆使してあなたの状況にマッチした働きやすい求人の提案が受けられます。

例えば残業時間や休日日数、有給の取りやすさ等のデータ的な視点での求人探しはAIなどが得意ですが、事務所の雰囲気や所長先生の人柄などの情報は人じゃないとうまく伝えられないので、そうしたそれぞれの良いところを活用し、スピーディーかつ的確に求人の紹介が受けられるサービスになっています。

女性の会計事務所スタッフ・税理士の転職支援実績が高く、リモートOK会計事務所への転職支援も豊富なので、こうした環境への転職を考えるなら必ず登録しておきたいエージェントです。

一方で、働き方の部分よりもキャリア的な視点を中心に転職先を考えていきたいという方もいらっしゃるかと思います。

税理士として将来独立も検討しているなど、キャリア的な視点を重視する必要がある場合は、税理士のキャリアに精通しており転職相談に定評のあるレックスアドバイザーズの利用が適しているでしょう。

双方ともタイプが違うサービスなのでうまく使い分けるか、両方とも活用することでより転職確度が高まると思います。

会計事務所の内情を把握し転職を決定しましょう

小規模会計事務所へ転職するのであれば働きやすいかどうかは所長先生との相性次第となりますので、そのあたりの見極めが重要となります。

所員10名以上くらいになってくると所属するスタッフとの相性も重要ですので、例えば職場見学などをさせてもらうなどして、雰囲気を確認しておきましょう。

いずれにせよ、しっかり情報収集をするとともに、今後どういった生活スタイルを考えているのか、キャリアを考えているのかなどのライフプランとの兼ね合いも重要となりますので、後悔の無いようにじっくり検討してください。

実際に転職するにあたって転職サービスの利用を考えている場合は以下の記事もご参考下さい。

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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士として事務所を開設しており、自身も士業として活動しております。 執筆者・監修者・編集者情報へ