税理士試験の受験者数・合格者数は右肩下がりが続いており、もはや税理士を目指したいという若手がほとんどいないといっても過言ではないという状況が続いています。
免除等が増えているから税理士試験の受験者が減っているだけだという声もありますが、実際に学生等の若い方の話を聞いても税理士に興味を持つ方は少なく、公認会計士の資格に魅力を感じる方の方が多いです。
公認会計士は会計士協会青年部等のイベントで若い方を集めたり、会計士の可能性を広げていくための啓蒙活動を行っている関係なのか、意外と若い方にも人気があり、将来コンサルティングやCFO等の経営陣を目指したい方等に一定の人気があります。
一方税理士の方は、若い方に聞いても、雑居ビルで電卓をたたいているイメージ、暗いイメージの仕事、という印象があるようで人気は年々下がっているように感じます。
※アンケート等をとったわけではなく、私の周りにいる方の個々人の意見となりますので予めご了承ください。
税理士を目指す若者はもういないのか?
昨年12月に第68回税理士試験合格発表が行われました。
合格者数(官報合格者数)は672 人とここ数年で最も少ない数値となりました。
受験者数も3万800人程度と昨年より2千人程度少ない結果となっています。
合格者の年齢内訳を見ても、40歳以上の合格者が4割近くを占めており、若いころから勉強を続け、ようやく合格したという層も多そうな印象です。
そもそも税理士試験は5科目合格するのが非常に難しく、受験勉強が長期化する傾向があるという問題点もあります。
無駄に難しいので、人生設計にも大きく影響を及ぼし貴重な若い時期を勉強に費やすというもったいないことが起きてしまうこともあるため、人気が下がっているように感じます。
試験勉強より実務経験の方がはるかに有用ですから、多感な若い時期に勉強中心になるのはもったいなく、この試験制度そのものをどうにかした方が良いのではないかと個人的には感じるところです。
上記のように税理士資格をまともに取ろうと思うと時間がかかってしまうので、短期決戦で勝負ができる公認会計士資格を取得し、税理士登録して税務の経験を積むという方も増えています。
このケースではコンサル志向の方が多いかも知れません。
このように税理士資格取得を目指す若者はかなり減っていますが、公認会計士・税理士として税務や国際を取り扱う方は実はそれなりに数が増えており、必ずしも税務が不人気になったわけでは無いような気はしています。
資格自体が持つポテンシャルとして、公認会計士の方がカッコいいというイメージと、税理士は記帳代行のイメージが強く、コンサル等のカッコいい仕事のイメージが持てないので、夢が持ちにくいのでしょう。
また、だいたいテレビ等に出てくる税理士は法の隙間をついた節税を指南する悪徳税理士であるケースも多く、会計士や弁護士と違って印象は良くないのかもしれません。
若い税理士は希少価値があるので逆にチャンスではある
税理士の人気は落ちており、そのうえAI等に仕事が取って代われれるということもあり、お先真っ暗という人もいますが、実際のところチャンスは広がっているように感じています。
まずそもそも税理士がどのような仕事ができるのかということを多くの若者が知らないということもあって人気が落ちているだけで、税理士としてのスキルを活かして様々な仕事ができることをもう少しアピールすれば人気は回復していくのではないかと思います。
税理士の仕事と言うとなぜか記帳代行というイメージがあるようですが、それだけが税理士の仕事ではありません。
現在確かに記帳はITの力で自動化できるようになってきているので、需要はなくなりますが、現在活躍している税理士は記帳だけしているのではなく、ほぼコンサルティング等の付加価値サービスに視点をおいています。
まず、コンサルティングというと会計士のイメージがありますが、税理士でコンサルティング業務を行っている方はとても多いのです。
地味なところで行くと、中小企業が一番接点を持つ資格者は恐らく税理士といっても過言ではなく、頼りにされる存在です。
そのため中小企業向けの経営コンサルを行っている税理士はかなり多いのです。
また、最近では移転価格などを始めとする国際税務のコンサルティング業務は非常にニーズが高く、海外進出に伴うリスクの算出から移転のお手伝いなど様々な需要があるのです。
海外進出というと大手上場企業というイメージが強いかと思いますが、現在中小企業であっても海外進出するケースは多く、Big4税理士法人ではフィーが高すぎてお願いできないという企業が多くなっていることから、中小企業専門の国際進出のコンサルティング需要がとても増えています。
こうした分野で活躍する若手の税理士も増えており、税理士そのものが減少していることから、高単価且つ仕事もそこまで営業しなくても舞い込んでくるという状況が続いています。
なお、この分野も意外と公認会計士がやっているケースは多いのですが、コンサルティング等の知識と経験を活かした価値の高い業務で単価の高い業務を行う税理士は増えています。
以上から、税理士を必要とする場面というのは非常に多く、若くて資格を持っていればどのような環境にも転職することはできるでしょう。
また、現在資格をお持ちでなくても、20代であればどこでも転職できる市況が続いておりますので、何かにチャレンジするにはものすごくチャンスの時期なのです。
この好機を活かして是非税理士として活躍していただきたいものです。
税理士はダメになっていない
確かに単純業務しかできない税理士はこの先厳しいとは思いますが、
中小企業の経営者の悩みが無くなるわけではありませんので、税理士の仕事がなくなるわけではありません。
また、それと同時に新しい仕事や課題がでてくるものですので、
確かに税理士資格を目指す若手は減っていますが、現在業界内にいる方にとっては逆にチャンスであると捉えましょう。
現在お勤めの会計事務所では新たなことにチャレンジがし難い状況で、付加価値が提供できる税理士を目指すのは難しいと感じている方は転職を考えても良いでしょう。
様々なサービスを展開する会計事務所や会計系のコンサルティング会社があり、どのような会計事務所・企業に行けばよいのか迷ってしまうという方は客観的にアドバイスがもらえる転職エージェント等に相談しても良いかと思います。
古くから税理士・会計士・会計事務所・経理等の会計・税務に関する転職相談を行っているところに相談することで、今と昔の違いを比べつつキャリアに関する情報を取得することが可能です。
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最近ではAIを活用した転職サービスも出てきています。
会計業界のみならず転職業界でもAIの活用が進んでおりますので、気になる方は以下の記事よりご確認ください。
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