シングルマザーが国家資格を取得して安定した職へ転職することは可能?

コロナ禍以降国家資格取得を目指す方が増えています。

資格取得を目指す方の中には人生一発逆転を狙って難関資格取得を目指す方がいらっしゃいます。
また、国家資格さえあれば安定した職が得られるという考えをお持ちの方も多くいらっしゃり、資格さえ取ればなんとかなると思って勉強を開始される方も多いように感じます。

資格学校のパンフレット等を見ると難関国家資格試験に受かったら仕事がいっぱいありそうなことをイメージさせる表記がありますが、現実はそう甘くないです。

当サイトにも転職に有利な資格はなんですか?シングルマザーということもあり独占業務のある国家資格を取得して自身のペースで安定して働いていきたいのですが、、、といった問い合わせ・質問が増えており、国家資格取得に期待を寄せている方が増えていることを感じております。

生活や時間に余裕のある方であれば難関国家資格の取得にチャレンジして頂いても問題無いと思うのですが、シングルマザーでご自身が家計を支える収入を得なければならないというケースではそもそも資格取得を目指すべきではないというケースも多いです。

そのため、今回はシングルマザーを例に国家資格取得と転職・就職に関する注意事項について見ていきたいと思います。

難関国家資格を取得しても安定した職は簡単には見つかるとは限らないことを知っておく

国家資格といっても様々なものがありますが、例えば女性に人気の難関国家資格である社会保険労務士を例にとっても、仮に社労士試験に合格できたとしても安定した職に繋がるかと言えばそうとも言い切れません。

むしろ「家計を安定させるための収入を得る」ということが目的なのであれば、社労士資格取得は基本的にやめておいた方が良い選択肢である可能性も高いです。

シングルマザーに限らずよく頂く相談の一つとして、社労士試験に合格したけどどこの社労士事務所も採用してくれず(今の売り手市場なら年齢によっては見つかります)、また、企業の労務部門などへの転職においても実務未経験者は募集しておらず業務経験を積むことができませんといったものがあり、試験に合格したからといって就職先が降ってわいてくるわけではありません。

仮に採用してくれる事務所があったとしても条件が良いケースは少なく、試験合格後は職歴・キャリア実績を作るのに苦労されている方も少なくありません。

また、試験に合格しただけで即独立開業難しく、自分のペースで働きたいといった希望を叶えることも困難が伴いますし、独立したらしたで必死で業務を取りに行くことが必要となりますので、子育てとの両立も難しい可能性もあります(不可能ではありません)。

否定的なことばかり書いてしまいましたが、社労士を目指すことが悪いと言いたいわけではなく、現実として試験に合格したら即安定して良い条件の仕事があるわけではないということを知っておいてもらいたいということとなります。余裕がない状況なのであれば戦略的に資格取得を目指す必要があります。

この他にも行政書士は即独立できると聞いたがどうか?といったものが寄せられますが、確かに行政書士は試験に合格さえすれば行政書士登録可能ですので即独立することは可能です。
ただ、行政書士事務所を開業したら仕事が勝手にジャンジャン入ってくるかといえばそのようなことは無く、営業して案件を獲得していく必要があります。また、実務未経験での開業ですと実務を覚える苦労もありますので、思ったほど稼げないということも想定しておく必要があります。こうした背景があるからか、新規独立開業後3年以内に9割の方が廃業しているといったデータを示す方もいらっしゃいます。この9割という数字の根拠は示されておらず、ネット上などで言われている数字なので信憑性は定かではありません。実際問題として私の周りの行政書士で廃業されている方はそれほど多いわけではありません。ただ、こうしたことが言われる理由の一つに、生き残りが厳しく、稼げるようになるのに時間がかかって苦労したという方が多いことから、相応の覚悟が必要であるということなのかと考えられます。

資格取得にかかる年月・費用・資格登録費用・開業資金を考えるとそれなりにリスクはあります。

「なぜ国家資格を取得しようと思ったのか」、その目的を聞いてみると、「安定」「収入の柱」「不安から」といった意見が多いのですが、難関国家資格を取得することでそれらの目的が達成できるのかというとそうとは限りません。

費用対効果とリスクを考えると、むしろ他の選択肢を検討した方が良いと言えるケースもあります。

資格学校のサイトなどでシングルマザーにおすすめの国家資格という事で行政書士や社労士が紹介されているケースもありますが、基本的には大半のシングルマザーには適さないため(適す方ももちろんいます)、よくよく考えた上で資格取得を目指すかどうか検討してください。

そして、独立開業を目指すのであればそれなりの覚悟を持ってやることをおすすめします。

資格講座を受講してから後悔する方も大勢見てきましたので、少し否定的な立場から記載しました。

なお、ここまでかなり否定的なことを書いてしまいましたが、ここで言いたかったことは資格さえ取ればなんとかなるわけではない、ということを理解して欲しいということとなります。

資格取得を否定するものではありませんし、資格を取っても活躍するのは不可能だから辞めておけというものでもありません。

シングルマザーで行政書士の資格を取得し、収入を得てしっかりと子育てと両立している方もいらっしゃいます。SNSなどでも見かけることもあります。

軌道に乗れば雇われよりも融通を利かせた働き方はしやすいのは事実なので、うまくやることができれば確かにメリットは大きいです。

ただ、そういったうまくいっている方々は情報発信をしてくれますが、それ以外のうまくいかなかった方は情報発信をしません。そのため気が付かないこともあるのですが、うまくいった人よりうまくいかなかった人の方が多いので、それなりの戦略を持って取り組むことをおすすめしたいです。

私は行政書士試験に合格しており、そういった目線での個人的な見解になりますが、行政書士などの士業は仕事を取ってくる大きな覚悟をもってやれば食えないということはないと思っています。

楽に仕事が取れるという認識ではなく、やるんだという強い気持ちがある人であれば良いと思います。

簿記やFP技能士などの各種検定も就職に直接結びつくとは限らない

事務系の仕事に就きたいという事で簿記やファイナンシャルプランニング技能士(FP)の取得を目指す方もいますが、これらも直接的に就職に結びつくかと言えばそのようなことはありません。

経理がやりたいということで簿記検定を受ける方もいますが、学生ならともかく一定以上の年齢になってしまっているケースでは実務経験が無いと経理職へ転職するのは厳しいと言わざるを得ないため、職を得るという目的で簿記検定を受けるのはあまりおすすめしません。

また、最近はFP技能士も人気ですが、この資格自体は自己啓発としては非常に優れていますが、FP技能士が欲しいという求人先はほとんどありません。

そのため、シングルマザーが一定以上の収入と安定を得るためにこれらの資格を取得するということであれば、あまりおすすめとは言えません。

ただ、これらの勉強をすることが悪いと言っているわけではありません。

現実として、これらの資格を取得したからと言って仕事がすぐにあるわけではないということです。

資格が即仕事に結びつく傾向にあるのは看護師・介護系資格・保育士などの医療・福祉系

それでは資格取得を目指さない方が良いのかというとそのようなことはなく、資格取得が即就職に結びつくものも多数あります。

代表的なものとしては、「看護師」「介護福祉士などの介護系資格」「保育士」「医療事務」「歯科衛生士」の5つです。

看護師は安定した収入に結び付くが取得が大変

看護師は資格を持っているだけで就職することが可能であり、尚且つ給与も高い傾向にありますので「生活の安定」に適した職種と言えます。

ただし、資格取得までにかかる期間が長い(5年程度)ため、楽な道のりではありません。

そのため、今から看護師を目指すのはちょっと大変と思う方も多いかと思いますが、費用の面では「高等職業訓練促進給付金」などの公的機関が用意してくれている制度を活用することで費用負担が軽減され、尚且つ一定の要件を満たせば一定期間毎月給付金(最高月14万円まで)を受取ながら職業訓練を受けることも可能であるため、人によっては大きな負担なくチャレンジすることも可能です。
※興味のある方は以下厚生労働省のサイトより詳細をご確認ください。

参考・出典:厚生労働省母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について

看護師というと激務というイメージをお持ちの方も多いのですが、勤務する病院によっては夜勤無しがあったり、子供が大きくなるまでは勤務日数を押さえるといったことも可能なケースもあり、働き方の選択肢は意外と広いです。

仕事は大変で忙しいことは間違いありませんが、安定した生活・収入に繋がりますので、おすすめできると言えるでしょう。

介護職は時間に融通がきくが給与がやや低い傾向

介護職はご存じの通り人手不足ということもあり、就職という視点では資格取得前でも比較的容易です。

資格がないとできる仕事に制限がつくため厳密に言えば介護の仕事をすることができないのですが、昨今は資格を取得することを前提として即介護現場で働いてもらう(無資格でやれる範囲で)という現場は多いので、働きながら資格取得をすることが可能です。

また、未経験者向けに人材紹介会社が資格取得までフォローしてくれるサービスがあったりするため、無資格で完全未経験からでも職が得やすいです。

働くスタイルも幅広く選択が可能で、例えば時間に融通を持たせたい場合は訪問介護やデイサービスなどであれば日勤帯のみといったサービスを提供していたりするので時間に融通がきかせやすいです。

一方で、老人ホームのような施設になると24時間稼働となるので夜勤の必要性がでてきたりするなど、働く施設の種類などにより働き方が大きく変わってくるので、比較的簡単に就職できるとはいってもしっかりと情報収集を行ってから就業先を決定するようにしましょう。

注意点としては人手不足なので仕事が無いということはありませんが、お給料は看護師などと比べると低い傾向となります。

ただ、生活をしていく・安定させるという意味においては十分な金額はもらえます。

医療事務資格は求人は多いが派遣求人が多いため収入が安定しないケースが多い

医療事務は人気の資格・職種なのですが、カルテ等の電子化により業務の大半が誰でもできる単純作業という位置づけになりつつあるので、パート・アルバイトや派遣での就業がメインの職業となってきています。

そのため、一定以上の収入を得て生活を安定させるという視点で見た際は不向きな職業となりつつあるので注意しましょう。

ハローワークの職業訓練講座でも人気だと聞くのですが、どの程度お金を稼ぐ必要があるのかそれによっては選択しない方が良い場合が多いので、ご自身の生活設計等から逆算して検討していきましょう。

歯科衛生士は比較的高い収入が得られるが資格取得までに時間がかかる

歯科衛生士も看護師同様に高い収入が見込めます。

ただ、看護師同様に資格取得までに長い期間(3年程度)がかかるため、今すぐどうにかなるといった類のものではありません。

そのため、看護師同様に公的機関の給付金等も活用しながら目指していくのが良いでしょう。

保育士は求人は多いが給与は低めの傾向

保育士を募集する求人は多いため、資格をお持ちであれば職を探すという意味では比較的簡単に就職が可能です。
また、看護師などと比べると資格も取得しやすく、公的機関の補助制度を活用すれば費用負担もそこまでかからないため、シングルマザーの方にとっても取得しやすい資格の一つと言えるでしょう。

保育士の仕事というと持ち帰りの仕事・残業が多いというイメージをお持ちの方も多いのですが、昨今は労働環境の改善が進められており、残業が少なくなったほか、保育現場にもITを取り入れるところが増えてきたので事務作業は減りつつあり、少し前までと比べれば随分働きやすくなったと聞きます(もちろん各園によるところもあります)。

また、資格をお持ちであれば未経験でも採用されやすいという特徴もあり、尚且つ子育ての経験があればそれ自体が評価されるので、資格取得にこだわるケースではおすすめできるものの1つと言えるでしょう。

ただし、やはり給与水準はどちらかというと低い傾向にあるため、どの程度の所得が必要か次第というところになるでしょう。

資格にこだわらない方がうまく行くケースも

不安から資格を取りたがる方が多いのですが、昨今の転職市場で最も評価されるのはコミュニケーションスキル(営業力・提案力等)です。

営業系・販売系の求人募集は一定の安定した需要があり、その数も多く、それでいて給与も比較的高い傾向にあります。

また、営業といってもフィールドセールス(訪問)ばかりではなく、昨今はインサイドセールスと言って内勤の営業職(リモート可)も増えているので、コミュニケーションスキルを活かしつつ時間に融通をきかせた職場への転職も可能です。

上記はあくまで一例ですが、わざわざ難しい国家資格を取らなくても目線を変えることで安定した職と収入が得られる可能性は広がっているので、広い視野で職業を考えてみるのも良いでしょう。

転職のプロやシングルマザーの自立支援に知見のある方に相談するのも手

子どもを育てながら働ける環境はあるのだろうか?シングルマザーは敬遠されないだろうか?不安を抱えている方は非常に多く、それ故国家資格の取得等に走ったりするケースもあるのですが、昨今は柔軟な労働環境を整え理解のある企業が増えています。

日本は男性社会であり子育てに理解が無い国だと言われていますが、徐々に理解のある企業も増えてきており、シングルマザーが活躍する事例も増え、キャリパスも広がりを見せています。

こういった背景もあるので、数多くの求職者の支援を行っているプロの転職アドバイザーやシングルマザーの支援活動を行っている団体などに相談してみることで、経済的安定を実現するための具体的な職場が見つかる可能性があります。

また、数多くのシングルマザーを支援しているような団体であれば、他のシングルマザーの方々はどういったキャリア選択をしてどういった生活が実現できているのかといったキャリアパス事例を聞くこともでき、あなたが思ってもいなかったようなキャリアの選択肢が生まれるかもしれません。

様々な選択肢・可能性を知ることで新しい道が開けるかもしれませんので、プロの力を借りてみましょう。

※参考情報:ひとり親家庭の方への就業支援(内閣府)

まとめ:国家資格を取得したら即安定ということにはならない

資格を取ればなんとかなるという時代はとっくに終わっています。

現状を分析し、生活を安定させるためには何が必要であるかを逆算的思考で考え、そのうえで資格が必要であるという結論に達した際に資格取得を検討しましょう。

現状分析やキャリア・就職について検討する際はその道のプロに相談することも検討してみてください。

客観的な立場でアドバイスをもらうことができ、参考となる意見がもらえます。

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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士として事務所を開設しており、自身も士業として活動しております。 執筆者・監修者・編集者情報へ