ブラック会計事務所に転職しないために!会計事務所の見極め・見分け方

会計事務所への就職・転職を考えているけれど「会計事務所はブラックなところが多い」という話を聞いてしまい不安を感じている、という人も多いのではないでしょうか。

また、実際に税理士業界で何度か転職しているけど、ブラックなところが多いと感じている人も多いかと思います。

ブラック会計事務所への転職を避けるため、このページではブラック会計事務所の特徴と見極め方、転職で避けるためのポイントをご案内します。

ブラック会計事務所の特徴は?

ブラック会計事務所の定義は人により多少差はあるものの、共通する事項として、「低賃金」「激務」「人間関係の悪さ」「所長が最低」という特徴があります。

会計事務所は個人経営でスタッフが数名という小規模な組織が多いです。そのため、スタッフ一人当たりの業務量が過剰になり、繁忙期・閑散期関係なく労働時間が長い・過酷といった環境の会計事務所がそれなりに存在しています。
ブラック会計事務所は離職率が高いため慢性的な人手不足になり、人が辞めるごとに残った人の作業量が増えるという悪循環に陥っています。

そして、このような会計事務所は、労働法規を遵守するという概念が薄い傾向にあります。
拘束時間が長いにもかかわらず適正な給与を支払わず、残業代の計算について疑問を持たれるケースも少なからずありますので注意したいところとなります。

また、加えて人間関係が悪い傾向にあるのもブラック会計事務所の特徴の一つです。

会計事務所は小規模な組織であるため、所長税理士の人格がそのまま事務所の雰囲気に反映され、所長税理士の知識量がそのまま事務所の仕事レベルになっていることがほとんどです。

そのため、所長の人格や知識が優れていない会計事務所においては、人間関係が悪く仕事レベルが低いところが多いです。

ブラック会計事務所を見分ける4つの方法はこちら!

ブラック会計事務所は実際に就業してみないとブラックかどうかわからないのでしょうか。

残念ながら100%絶対的にブラック会計事務所を避ける方法というのはありませんが、上記の特徴であげたような特性を持つブラック会計事務所はある程度見分けることが可能です。

ここでは転職・就職前にブラック会計事務所かどうかを見分ける4つの方法をお伝えします。

きちんと見極めて、ブラック会計事務所に転職しないように注意しましょう。

①平均年収から大幅に低く、尚且つ昇給しない

ブラック会計事務所は給与がやたらと低いのが特徴です。

会計事務所の平均年収(正職員の転職)は、無資格者(簿記レベル)の場合は300万円~、経験者(科目合格者)の場合は350万円~となっているところが多いです。
※地域や年齢、これまでの経験にもよりますのであくまで数値は参考としてご覧ください。

平均的な年収に自分の経験を加味したものと比較して、大幅に低くないかを確認しましょう。

税理士資格者でない方が高給を得るのは難しいのですが、経験が浅い税理士試験勉強中の方を何かと理由をつけて不必要に低い金額で買い叩いて採用しようとする事務所もありますので、1社だけに応募するのではなく、いくつかの会計事務所の求人票と比べつつ同時に応募して比較検討できる状況を作り、提示される年収がおかしくないかどうか判断するのも一つの手です。

業務量に比して給与が極端に低いというケースもあるため、どのような顧客を同時に何社担当し、どういった業務が想定されているのかなどしっかり確認を行ってください。ここを曖昧にしている事務所は一部を除いて業務過多傾向にあり、給与とのバランスが合わず危険なケースも多いです。

また、採用時の給与が低いだけでなく、採用後何年働いても、スキルアップしても、全く昇給しない会計事務所もあります。

採用面接の際、給与体系と自分が任されるであろう作業量がきちんと釣り合っているかどうかを確認しましょう。

求人票から各種制度や昇給が読み取れないことも多いのですが、面接時に質問をすることである程度情報は得られます。

また、こうした給与相場などの情報は転職エージェントに相談すれば不当に安いのかどうか判別が可能ですし、昇給があるかどうかなども情報提供してもらえますので、ご自身で求人リサーチをして応募するのが難しい、面倒といった場合や面接時に上手に質問するのが苦手という方はエージェント利用も検討してみましょう。

②予想される仕事量は適正か。格安だけが売りの会計事務所は注意が必要

ブラック会計事務所では、一人ではとても回らない作業量を担当させられるところが特徴です。先ほど記載したように給与と業務量が見合っていないケースが多く見受けられます。

もともとスタッフ数が少ないところが多いため、一人当たりの担当クライアント数が多くなる傾向にあります。

退職者が出ればさらに担当先が増え、作業量が雪だるま式に増えていきます。

確定申告などの繁忙期はもちろん、それ以外の時期でも帰りは終電が当たり前というところもあります。休日出勤もしょっちゅうあります。

誰かに手伝ってもらいたくても、スタッフ全員の手が空いていない状態です。

作業量の多さから、体調を崩して退職を余儀なくされる人もいます。

特に税理士試験の受験生は、勉強する時間も確保しなければなりません。

採用面接の際、クライアントの担当数と作業量がどのくらいあるのかを確認しましょう。

こうした会計事務所へ転職しないようにするためのポイントの1つとして、格安の料金体系であることを大きくアピールしていないかチェックしておきましょう。相場と比べてかなり安くサービスを提供している会計事務所もありますが、こうしたところは安い労働力を多数確保して利益を出しているところもあるため注意が必要です。

一概にこうした事務所が絶対的にブラックだとはもちろん言えませんが、基本的に労働集約になりやすい会計事務所の業務において、料金が安いということはそれだけ作業量を多くこなさなければならないということになります。

ブラック会計事務所はそもそも残業代がでないところ、管理職になったとたん残業代を出さなくなるところ(いわゆる名ばかり管理職)など労働法規に照らし合わせて明らかに違反していることもありますので慎重に選びましょう。

こうした事務所では作業量が多くなり、残業が多くなる傾向もあるため、なぜ安い料金でサービスが提供できるのか、面接時などにその仕組みに・取組についてしっかり確認しておくべきでしょう。

なお、料金の安さを売りにすることを悪いように記載してしまいましたが、誤解して欲しくないのが、料金を安く設定して量で勝負している会計事務所が全てブラックであるというわけではありません。

システム化(IT/デジタル化)により他の会計事務所よりも業務効率がなされている事務所も多数あり、こうした会計事務所では内容によっては安くサービス提供できるケースも当然あります。きちんとした理由があるケースも当然ありますので、そうした事務所はブラックでない傾向もあるため、なぜ料金を安くしても事業として継続できているのか、なぜうまく回っているのか、その背景をしっかり事務所側に確認することで実態がわかります。

ただ、こうした事務所は税理士として成長していこうと思った際に(実務レベルを上げていく等)デメリットもあるので、キャリア的な視点でも注意が必要です。

③会計事務所内の人間関係は良好か

ブラック会計事務所の人間関係は非常に険悪なところが多いです。

会計事務所は少人数なところが多いため、人間関係が密になります。

特に所長先生との相性は事務所内の人間関係を大きく左右します。

所長先生の家族もしばしば登場します。税理士資格はないが、長年働いている番頭さんが実権を握っているところもあります。

成長を望まない会計事務所であれば、スタッフもやる気がない人が多く事務所の空気が停滞しています。このような事務所に新しく入ってしまえば、閉鎖的な環境に馴染めずまたすぐに転職を考えざるを得ないでしょう。

そのため、採用面接の際、これからの事務所の展望を確認しましょう。

また、会計事務所を訪れた際には執務室を見学させてもらい、スタッフの対応や事務所の雰囲気を自分で感じ取るのもよいでしょう。

入った瞬間に負の感覚を持つようなケースでは辞めた方が良い確率が高いです。

なんとなくの感覚でいいので、ヤバそうな空気を感じたら避けましょう。結構そういう空気感は出ています。

④所長の人格・性格は良いか

人間関係のところと重なる部分もありますが、所長の人格・性格は非常に重要です。会計事務所は少人数なところが多いため、事務所を代表する所長税理士の人格が事務所の雰囲気を左右するといっても過言ではないからです。

所長の中には仕事はすべてスタッフにおまかせで自分はゴルフばかりしている人、自分が偉いと思ってスタッフをバカにする人、勉強しないため最新の税務についていけず実務はしないで申告書にハンコを押すだけの人、スタッフに怒鳴って当たり散らすパワハラまがいな人、事務所内の異性とトラブルになる人など、残念な人がいるといった話を聞くこともあります。

所長は何年も同じやり方で事務所を経営してきたため、これが普通であり自分の事務所がブラックであるという認識はまったくないかもしれません。

採用面接の際、小規模な会計事務所であれば必ず所長がどこかのタイミングで面接官として登場します。

「この人と本当にうまくやっていけるのか」を考えながら、じっくり話をしてみましょう。また、何か質問はありますか?のコーナーの時に今後の事務所の方針やどういった動機で事務所運営をしているかなどの話を伺うことで価値観が見えてくることもあります。

後は、所長の人格を見るうえで最もわかりやすい傾向として、面接時に椅子にふんぞり返って偉そうに面接をする所長の会計事務所はだいたい人がすぐやめるブラック会計事務所なことが多いです。ここまでわかりやすければ苦労はしないかもしれませんが、椅子の座り方やあなたに対してどのような態度で接するかなどを見るのも重要です。
根本的に人を馬鹿にしたような方や人をいいように使ってやろうと考えている方はそういった態度面で現れることが多いので、少なくともこうした面はしっかり見ておいてください。

ブラック会計事務所の一番よい見極め方は離職率?ずっと求人が出ている会計事務所は危ない?→決め手に欠ける

ブラックな会計事務所は人がすぐに辞める傾向にあるので離職率は高い傾向にあります。そのため、離職率が高い会計事務所を敬遠するというのは手段の一つとしてはありかもしれません。

ただ、もともと会計事務所業界は所属する税理士が独立したり、キャリアアップのために大手税理士法人に移ったりするなど、人の移り変わりが激しい業界ですので、どうしても人はやめやすい傾向にあると言えますので、決め手には欠けます。

また、そもそも離職率のデータを得るのが非常に難しく、悪い情報を公開するところはほぼありませんのでわざわざ求人票などに記載してくれているところは少ないですし、採用面接の際に離職率について質問したとしても正直に答えてくれるところはなかなかないでしょうし、そんな質問をすればあなた自身の印象がむしろ悪くなってしまいますので注意が必要です。

求人広告サイトで採用をずっとしているからといってブラックとは限らない

悪い意味での離職率の高さを見極める一つのポイントとして、求人広告がずっと掲載されているかを確認することであると言う人もいるのですが、個人的にはそうとは言い切れないと考えています。

最近は大型化する会計事務所も増えており、事務所拡大のため求人広告を頻繁に出して積極的に採用活動をしているところもありますが、こうした成長している会計事務所は比較的働きやすい傾向にあり、求人がずっと出ているから悪い会計事務所であるとは言えません。

また、需要の割に根本的に人が不足している状況なので、常に求人募集し続けるを得ないという状況の会計事務所も多くなっています。

確かにブラック会計事務所は常に人手が不足しているのでずっと求人を掲載しているケースが多いのですが、それ以外の会計事務所も普通に年中採用募集しているので、ずっと出ているかどうかで判断するのは危険です。

人を育てていくための制度・仕組みを整えているかどうかで判断していくのが良い

近年の働きやすい会計事務所を見極めるポイントの一つとして、「研修制度」などの育てていく仕組みを作ろうとしているかどうかということが見て取れるかどうかが重要であると感じます。

人を育てていこうという発想のある会計事務所は比較的所長先生の性格・人格がまともである傾向にあり、所員の労働環境・キャリアにも意識が高いことからあからさまなブラック会計事務所を避けるという意味では良い指標であると考えます。

個人事務所の場合は制度として整っていないケースが多いのですが、スキルアップしていきたいといった話を面接中にすることで、このあたりの先生のスタンスが見えますので、所員を単なる作業員として見るのではなく、育てていく意識があるかどうかを判断材料の一つにするとブラック会計事務所への転職を避けることができる可能性が高まります。

募集背景や前任者が辞めた理由を確認する

なぜ求人募集をしているのかという背景や前任者が辞めてしまった理由も可能であれば押さえておきたい情報です。

激務による体調不良など悪い情報があれば注意した方が良いです。
こういった情報は普通は手に入れられませんが、エージェントを利用すれば状況を把握していて教えてくれることも多いです。エージェント側も求職者に早期退職されると問題になってしまうため、こうした情報を持っている場合は事務所の状況は教えてくれます。

なので、情報源としてエージェントは役立つことが多いことから、必要に応じて利用を検討してみてください。

前の担当者がなぜ退職したのか、その理由をご自身で面接中に確認するのはかなり厳しいかと思いますので、第三者を経由するのが良いでしょう。

ブラック会計事務所の特徴を覚えてしっかり見極めよう!

ブラック会計事務所の特徴は、「低賃金」「激務」「人間関係の悪さ」「所長の性格・人格」です。

ブラック会計事務所に転職してしまっては、自分のキャリアを築くことができず、時間のムダになるばかりです。

採用面接時の雰囲気や話の内容のほか、募集広告や周りの評判などあらゆる手段を使って就職前に情報を手に入れ、ぜひ優良な会計事務所に転職しましょう。

ブラック会計事務所に転職したくないのであれば適切なエージェントを活用した情報収集も

所長の人柄や所内の雰囲気、離職の傾向などご自身で情報サーチをするのは困難です。

そのような場合、転職エージェントを活用して情報収集してみると良いかと思います。

また、そもそも転職エージェントはブラックな会計事務所へ人を紹介すると、後々のトラブルにつながる可能性が大きいため、あまりブラックな求人は紹介しない傾向にあります。

そのため、転職エージェントを通じて求人サーチを行ってみるのも良いでしょう。

税理士・会計事務所の転職エージェントのまとめ
ヒュープロ
※膨大なデータ・アルゴリズムやAIを駆使してあなたにピッタリマッチする求人をスピーディーに提案してくれる転職サイトです。残業時間や有給取得日数、休日・休暇等のデータも加味した分析を行っているため、働きやすい環境の会計事務所をサーチするのにとても良いサービスでしょう。
テクノロジーによる分析のみならず、専任のエージェントに電話やメールで相談することもできるので、安心して利用することができます。選考対策もしっかり行っており、通過率UPのデータも表示されており、期待できます。
簿記レベルの方から税理士有資格者まで幅広く転職支援しており、キャリアアップもワークライフバランスも両方取りたいといった希望を叶える求人も探しやすく、どなたにもお勧めのサービスです。

レックスアドバイザーズ
※会計事務所業界の情報提供という意味では良い評判が届くことが多いエージェントです。知名度も高いため、ご存じの方が多いのではないでしょうか。ブラック会計事務所に転職したくないなら多くの会計事務所の情報を詳しく知っているエージェントの利用が良いでしょう。各会計事務所に精通しており、転職実績も多いことから、おすすめできるものと考えます。

MS-Japan
※会計業界で最も有名な転職エージェントかと思います。
近年は管理部門の転職に力を入れていますが、昔から会計事務所の転職支援を行っている実績の高い転職エージェントです。
各会計事務所の風土や所長先生の人柄等も把握しており、情報収集するにはとても良い転職エージェントです。

ジャスネットキャリア
転職相談を重視しているため、現在お悩みを抱えているケースにおいては親身に転職相談にのってくれ、環境の良い職場への転職が実現しやすいでしょう。

ここではエージェントについては簡単に説明しましたが、税理士・会計事務所での転職におすすめの転職エージェント・転職サイトを紹介!のページで詳しく解説しているのでそちらも合わせてご覧ください。

ブラック会計事務所から脱出するために退職代行を利用する税理士も出てきた

本当にブラック会計事務所だったのかどうかは判然としませんが、退職するにあたり退職代行サービスを利用する税理士もチラホラ出てくるようになりました。

一般企業などでは結構多いようですが、士業業界は狭く、横のつながりが強いので、こうしたサービスの利用を避ける方もいましたが、最近はどうやら普通に利用する人も多くなりつつあるようです。

ブラック会計事務所勤務の場合、所長の顔すら見たくない、というケースも多いようなので使いたくなってしまうのでしょう。

個人的に退職代行サービスはおすすめしませんが、それでも心身に支障をきたすようなケースがあれば、検討しても良いでしょう。

その際は労働組合や弁護士が運営しているなど、ちゃんとしたところのやつを使わないとかえってトラブルになるという話も聞くのでご注意ください。

※退職代行について調べましたので興味のある方は退職代行サービスの選び方や料金についてもご参考ください。

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最速転職HUPROでは求人数が多いのはもちろんのこと、各事務所の情報をしっかりと提供。また、スキル要件に基づく高精度なマッチングが可能なことから、自分にマッチした求人先をお探しの方におすすめ!税理士資格者はもちろんのこと、会計事務所スタッフ(科目合格者や簿記2級等)の方が税理士試験勉強に適した事務所を希望するケースでも良いでしょう。
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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士として事務所を開設しており、自身も士業として活動しております。 執筆者・監修者・編集者情報へ