経理の仕事は会社が事業運営している限り必須のポジションであり、需要がかなり高い職種です。
事業形態や企業規模などにより求められるスキルは変わってくるものの、専門性の高さもあり、つぶしがきくので男女問わず経理職は人気の仕事となっています。
ただ、キャリアアップして年収を上げていくことは簡単ではありません。
20代後半から30代の経理の方が転職するにあたって目安とする年収で多いのが600万円となりますが、こうした希望の年収に届かず、年収が上がらずに悩んでいる方も少なくないポジションでもあります。
ここでは経理が600万円以上もらうためにはどういったスキル・経験を持っていると良いのか?また、どういった企業に勤務するのが良いかなど、経理の転職で年収600万円以上をもらうために必要なスキルや経験について説明して行きます。
目次
経理の年収はスキルよりもどの企業に所属するかが重要
厚生労働省賃金構造基本統計調査によると経理事務の平均年収が444万円です。
年次により異なりますが、大きくは変わらないのでだいたいこのぐらいとみて問題無いでしょう。
一方で日本人の平均年収が420万円程なので平均よりは高い収入を求める事ができる職種と言えます。
ただ、経理の年収はご自身の実力・スキルの高低だけでなく、現在どの会社で働いているかによって大きく差が出てきます。
例えば大手企業はもともとの給料水準が高く、加えて年功序列もあいまって経理の経験年数やスキルというよりは、会社での勤続年数や年齢によって差が出てくるケースも多いです。そのため、経理としてのスキルというよりは、こうした企業に所属できているかどうかという部分が年収に大きく係わってくることとなります(もっとも、最低限のスキルが無いとそうした企業に転職することはできませんが)。
逆にどんなに高いスキルを持っていても年収帯が低い企業に所属してしまえばそれまでです。
営業などのポジションの場合、中堅・小規模企業でも自身の成績によって大きな年収が得られるケースもありますが、経理の場合はこうしたことはほぼありませんので、年収を上げたいと思ったら給料水準の高い企業への転職を目指すのが一番の近道です。
各企業間で給与を含めた待遇差は大きくなっており、若いうちから年収600万円を得ることができる会社もあれば、20代のころは200万台の年収で働いている企業の社員も沢山います。
もちろん中小企業でも給与水準が高い企業は多数あるので、これはあくまで極端な事例ではありますが、600万以上などの一定水準以上の年収を転職で目指すうえでは、どの企業に所属するかというものが重要となってきますので、そうした企業(一般的には大手等規模が大きい企業や中小でも強い高い需要のある事業を行っている企業)に転職できるよう必要は行動をとる必要があります。
給与水準は企業ごとに個別具体的に定められているので、どの企業が比較的良い年収がもらえる可能性が高いのかリサーチするとともに、採用要件なども押さえてしっかり準備して転職活動を行うといったことが必要となります。
年収がどの程度得られるかなどの情報取得にあたっては、経理に詳しい転職エージェントを活用するのが最も手っ取り早く、確実性が高いと言えるでしょう。また、不足しているスキルなどもあわせてアドバイス頂けるので、キャリア的な視点においても相談しておくのも良いかと思います。
経理などの管理部門の転職と言えばMS-Japanが有名ですので具体的に転職をお考えの方はご参考ください。
後は、転職後平均年収が600万円で昨今伸びている転職サービスのヒュープロなどの検討も利用してみると良いでしょう。
なお、一般的に20代中盤ぐらいまでであれば高いスキルや高度な業務経験が無くてもポテンシャル採用を行っている場合においては門徒が開かれているので、年齢が若いうちに年収が比較的高めの企業へ転職しておくのが最も簡単です。
高度な財務・経理スキルに加えて英語力があると年収が上げやすい
高い年収がもらいやすい大企業ではグローバル化の影響により高度な財務会計スキルに加えて英語スキルがある人材を求めていますので、英語ができることをアピールできれば有利になるでしょう。
年齢にもよりますがこの場合の英語力は営業的な交渉を行う高い水準である必要は必ずしもなく、書類作成・読み込みやメール対応、簡単な電話対応をする程度でよい場合も多いです。
また、経理に関連する上級資格を持っていれば経営の上部で活躍できることのアピールにもつながります。
経理の転職で600万円以上の年収を得るために役立つ資格は?主な資格・検定4つを見てみる
600万円以上の給料水準の高い会社への転職を目指すうえで資格や各種検定は有用なのでしょうか?
結論から先に記載しておくと資格の有無はあくまでアピールポイントとしての要素の1つであり、必須という事でもありません。
どちらかというと経験と実際の実務スキルが重要です。
ただ、資格があれば客観的な自分の評価につながります。
参考までに年収600万円以上の方は次のような資格を有していることが多いです。
簿記2級以上
最低限として日商簿記2級の合格は経理職では必須でしょう。
そこまで難関ではないのできちんと勉強すれば取得は可能です。
基本的な経理の基礎があることの証明となります。
次に日商簿記1級ですか、2級と比べてハードルが非常に高いです。そのため、取得することによって評価が高まることは間違いありません。
勉強することが日々の生活において大きな負担にならない、知識・スキルを高めるために簿記1級合格を目指したいという方は取得して損するものでは無く、評価されるものですので目指していただいてもよろしいかと思います。
ただ、通常の経理職の方は簿記2級までの方が大半であり、年収600万円以上という目的を達成するにあたって1級はあっても無くてもどちらでも良いかと思います。
簿記1級に合格したから年収が上がるというよりは、簿記1級に合格されるような方ですと元々スキルアップ志向があり、社内においても積極的に高度な業務にチャレンジされるなど、そもそも評価されている傾向もあり、高い年収を得ているケースがあります。
現在職場できちんと評価されていないなと感じる方は、例えば簿記1級取得したことをアピールしてより高みを目指すためのステップにするといったことは有りかと思います。
その他、転職するということを念頭に置くケースでは高度な業務にチャレンジし自分を高めたいから大手企業に転職したいといった理由で転職活動をするにあたって、それに付随して簿記1級に合格しているというケースでは実力の証明と共に説得力が増すのでプラスに働くことが考えられます。
1級の合格は大変なので、仮に合格していなかったとしても合格に向けて勉強中していることをしっかりと記載し、スキルアップ志向が高いことを面接などでアピールするのもそれなりに有効となることがあります。
公認会計士・税理士
公認会計士資格を有し企業内部で財務経理ポジションで勤務される方も増えています。
会計士が経理として勤務するパターンは大手上場企業あるいはベンチャーのCFOに近しいポジションとなるため年収は比較的高い傾向にあります。
昨今の高度化・複雑化する社会情勢において企業は財務・会計の専門的な知見を有する人材を常に欲していますので、会計士資格を有していないにしても、深い専門性をお持ちの経理パーソンは高い評価を受けるケースもあり、年収UPに繋がることも多いです。
また、これから経理を目指す、経理としてのキャリアのきっかけをつくという意味においては会計士試験合格(短答であっても)も評価されるので20代であればそこからキャリアを築くこともできるでしょう。
なお、公認会計士になるには難しい試験(短答式・論文式)に合格した上で実務要件を満たし修了考査に合格する必要が求められるので、非常に難関です。
一方で税理士資格者に関してですが、企業内ではそこまで多く求められるものではありませんが、税務申告経験のある人材を求めるケースも多い他、海外展開する企業においては国際税務の知見があるケースにおいて高い年収が提示されるケースも多くあります。
税理士になるためには全科目合格が必要ですが、個別の科目合格でも評価につながります。
簿記論や財務諸表論を取得すればアピールできます。
法人税法や消費税法であれば、経営での評価も高くなるでしょう。
その他、中小企業診断士としての知見が評価されるケースもあり、そこから幹部へステップアップし高い年収を得ている方もいます。
ただし、いずれも経理として必須ということではなく、あくまで資格という視点で見た際のケース事例という形でのご案内です。
資格だけ持っているから評価されているわけではなく、やはり当該資格者としての勤務経験があってこその評価となります。
会計士であれば監査法人やFASなどの会計コンサルを経て経理部門で働いているケースも多く、これまでの知見・経験あっての高年収となります。
資格を取得したら年収UPできるというわけでもありません。
また、税理士も会計士も働きながら勉強するのは困難ですので、あくまで参考程度にご覧ください。
これらは会計士や税理士が結果的に企業内へ転職し、高い年収を得ているというケースとなります。
TOEIC
冒頭付近で記載した通り、大企業や外資系企業では英語のスキルは大きなアピールに繋がります(必須のケースも多い)。
TOEIC最低700点以上、800点以上あれば評価も高くなります。
管理職を目指すもしくは海外勤務を目指すのであれば、当然ビジネス英語の経験を問われることもありますが、一般的な日系企業であれば評価はされるけどそこまで実用経験を求められることは少ないです。
そのため、英語を活かしたいというケース以外であったとしても語学力があって損をすることは無いでしょう。
英語も含めて、これらはあくまでパターン・事例の話であり、実際に何が必要とされるかは個々人の置かれている状況にもよるため、資格に頼るといった発想は控えた方が良いでしょう。
どちらかといえばスキル・経験が重要です。
経理の転職で600万円以上の年収を得るために必要な経験はこの5つ!
転職する時、それまでの経験は大きなアピール材料となります。
評価されるスキルとともに提示できれば、経理職での600万以上の年収を得るうえでの大きなアドバンテージになるでしょう。
次のような経験があれば理想の転職にぐっと近づきます。
会計・財務・税務に関して1社で3~5年以上の実務経験
経理の実務は資格があれば難なくこなせるというものではありません。会計士資格者であっても監査法人勤務しかない方であれば、実務で書類が作れないというケースはよくあります。
そのため、具体的に必要な業務の実務経験者を求めるケースが多くなっています。
即戦力が求められる求人が大半なので、資格を有していても該当業務の実務経験なしでの転職はなかなか厳しいケースが多いです。
また、年間を通した経理業務経験も転職市場では求められますので日常経理から月次、四半期、年次決算と行い、それらを踏まえて翌年どういったアクションをしてどういった改善ができたのか等の実績があると年収UPでの転職がしやすくなります。
そのため短期での転職をするのではなく、最低3年程度は1社で経験しておく必要があります。
また、キッチリ分業制が敷かれている企業で勤務していたケースでは、一つの業務・領域を続けてきたのであれば専門性をアピールできますし、広範囲の業務を担当していれば様々なケースに対応できることが評価の対象になります。
高い専門性を持つ
やはり専門職としての一面もあるので、高度なスキルを持ち難易度の高い業務が任せられる場合は年収UPがしやすいです。
連結会計、減損会計、国際関連処理など通常の経理業務プラスアルファの知見があると給与UPがしやすいです。
また、経理処理ということでなく、財務的な知見を高めていくことで要職につきやすくなるので年収600万円以上も可能です。
業務上の英語や中国語などの語学使用経験や海外経験
グローバル化が進む大企業や外資系企業への転職をするにあたり、英語力を求める企業は多いです。
現地での英語使用経験があれば、評価は高くなります。ビジネスで英語を使用した経験があれば、積極的にアピールしましょう。
また、日本と世界の企業との取引を考えたとき、中国の存在を無視することは出来ません。
目覚ましい発展を遂げている中国ですので、クローバル企業の取引先としては大きな存在です。
英語と同じように、中国語を必要とされる案件も多くあり、中国語の使用経験があれば、企業での評価も高くなるでしょう。
課長以上(マネージャー)になる
多くの企業でマネージャーの年収提示が600万円~というものが多いため、やはり管理職になるのが年収600万円を得るのに最も効果的と考えられます。
企業規模に関わらずベンチャーから中小でもこの傾向にあります。
特に伸び盛りのベンチャー企業では一定経験以上の経理人材が不足しているので意外と600万円提示が出る傾向にあります。
ただ、マネジメント経験やスキルが要されますので、そのあたりは押さえておく必要があるでしょう。
経理の転職で600万円以上の年収を得るために必要なマネジメント能力とは?
経理で600万円以上の年収を目指すにあたって、経験やスキルだけでなく、先ほど記載したように管理職に近いポジションになるケースもあることからマネジメント能力も求められる場面があります。
マネジメントとは経営管理のことを指し、企業の経営の上層部分を担うために必要な能力です。
経理の仕事は企業の管理部門の根幹部分に携わる必要があるため、決算業務を行いつつ、組織の統括も担っていけるような能力を求められることがあります。
特に大企業では、グループ会社や支社、子会社などたくさんの部門があります。必然的に人員配置も複雑で膨大になっていくため、管理していける能力がある人物を企業は高く評価してくれるでしょう。
仕事に対する積極性や、コミュニケーション能力が問われます。
経理の転職で年収が600万円以上になった人はこんな人!
経理での転職に成功した人の体験談を聞くと、年収600万円以上の転職に必要なスキルや経験がみえてきます。
大企業の子会社に就職したTさんは、入社間もなく親会社に出向となります。そこでの配属は経理部門でした。
期間限定の出向でしたが、そこで働くうち、子会社には戻らず上場企業での経理スキルを磨きたいと思うようになります。
年はまだ若く、いずれは海外での勤務も経験してみたいという希望もあったようです。
出向先の会社では、連結決算や単体決算、有価証券報告書の作成など、企業で必要となる一連の業務は一通り経験がありました。
Tさんが選んだのは、経理ではなく国際税務に関連するポジションを募集している大手企業でした。
税理士の資格を持つ上司がおり、企業の連結決算などの業務を手伝いつつ、国内・海外経理及び税務の経験を積むことができるところが決め手だったようです。
一般的な経理とはまた違った経歴を積めるという事は、Tさんのキャリアアップにも大きく役立ちます。海外出向の機会もあり、中途社員の採用に積極的だったところもTさんの希望にぴったりでした。
Tさんは前職での経験を踏まえつつ、これから何をしたいのかというビジョンを明確にすることで、見事大企業への転職をものにしました。
仕事に対する前向きな姿勢と、チャレンジ精神などポテンシャルが評価されたといえるでしょう。
年収600万円以上にしたいなら給与水準の高い規模の企業あるいは業界の経理へ転職するのが得策
冒頭で記載した通り、高い年収を得ようと思ったらどの企業に所属しているかがかなり重要です。
これは経理に限った話ではないかもしれませんが、利益がしっかり上がっており、伸びている企業・業界へ転職するのが手っ取り早いと言えます。
業界で見ると、例えば以前であれば金融業界は非常に年収が高かったので、当該業界の経理、また、ITや広告業界も年収が高い傾向でした。現在はAIを含めたテクノロジー関連の企業が良い年収帯で経理を採用募集しているケースが増えてきています。
この辺りのトレンドは日々変化しているのでここでは具体的な言及はしませんが、こうした情報は転職エージェントに相談することでしっかり仕入れることができるので、エージェントを有効活用していきましょう。
今伸びているという視点だけでなく、今後どうなるかという視点での情報収集も可能です。
なお、エージェントという視点で行くと、経理の転職であればMS-Japanが有名であり、求人も豊富なので年収UP転職も実現しやすいかと考えられますので一つの情報源としてご参考ください。
経理の転職で年収が600万円以上になるためにできることは全て検討してみましょう
経理で600万円以上の年収を狙うには、大企業や外資系企業などの比較的待遇が良い規模の企業への転職、あるいは伸びている業界への転職が最も近道となります。
そうした領域へ転職しようと思った際は必然的に実務経験とスキルに加え、総合的なマネジメント能力が求められます。場合によっては資格の有無などがプラスに左右することもありますので、簿記1級など上位資格の取得を検討してみるのも良いかもしれません。
さらに、グローバルに対応できる英語力や中国語といったビジネススキルがあれば、きっと理想の転職に近づくことが出来るでしょう。
これらすべてを行うのは難しいとは思いますが、今現在あなたが置かれている状況を分析し、どのようなアプローチが最も効果的か検討してみてください。
- 年収の高低はスキルの高低よりもどの企業に所属しているかという要素が重要なため、そもそも年収600万円以上が期待できる企業に所属する必要がある
- 30代中盤を超えてくるとハイスキルを要求され、転職難易度が一気に上がるので極力若いうちにそうした領域の企業へ転職しておくことが望ましい
- 企業情報は経理に詳しい転職エージェント(MS-Japanやヒュープロ等)から簡単に得られる
- 当該領域の企業で求められる経験値に関して、現在お勤めの企業で経験できる業務・役職は積極的にこなしておく