コロナ禍以降、リモートワーク制度を取り入れる企業は増えましたが、経理を始めとする管理部門職においてはそれが認められていない企業が多くあります。
そのため、経理職の方がリモート勤務を希望して転職活動を行うケースは増加しています。
なかなか求人が見つからないという悩みを抱えている方もいらっしゃいますので、このページではリモートを望む経理の方の転職活動のポイントと注意点、求人の探し方について解説していきたいと思います。
目次
- 1 経理がリモートワークできなかった背景
- 2 リモートワーク可とする経理求人はあるが実際できているか?
- 3 ベンチャーでも大手でもどちらでもリモート勤務可能な転職先はあるが働きやすさに差がでることも
- 4 リモートワーク可の経理の転職先は多いが注意して職場を探す必要があるため求人探しはエージェント利用がおすすめ
- 5 リモート環境への転職を成功させるなら経理としての経験値・能力の高さも重要
- 6 リモートより出社の方が生産性が高いというデータもあり、後から出勤に変るケースもある
- 7 経理のリモート勤務にはデメリットもあることを理解しておく
- 8 極端にどっちかに振れるのではなく自分で働き方が選択できる職場も増加
- 9 経理としてどのようなキャリアを考えているのか、各種事例も踏まえた上で転職を決定しましょう
経理がリモートワークできなかった背景
働き方改革が進められていた中で多くの職種でテレワーク・リモートワークが可能となりました。
ただ、経理職は実務的にリモート勤務が難しいということで各企業で導入が遅れていました。
リモート勤務が難しいとされてきた理由としては、「請求書含めて紙ベースの書類が多い」「セキュリティの問題上外部からのアクセスを禁止している」「印鑑・ハンコを必須とする文化がある」これら3つが特にあげられるかと思います。
本題ではないので詳細は省きますが、紙ベースの書類や印鑑が多いという点では自社の業務フローの問題ということだけではなく、他社からもらう、あるいは他社へ送付する書類においてもそういった制約があるケースも多いので、なかなか実現できなかったところとなります。
デジタル化・IT化の促進により経理もリモートワークが可能となって来た
ここ数年で企業のデジタル化が一気に進みました。
コロナのおかげで多くの方が私生活・ビジネスの面で苦労しましたが、唯一このデジタル化が進んだという点においては良かったことであると考えます。
請求書や各種帳票のデジタル化、決済業務の電子化など多くの企業であらゆるものがデジタル化・電子化されたことによりオンライン上で業務完結ができるようになりました。
デジタル化以外にも業務を一部アウトソーシングすることで経理部門を最適化し働きやすい環境を作ることに成功している企業もありますが、こうした様々な取り組みにより多くの企業でリモートによる勤務が可能となってきています。
リモートワーク可とする経理求人はあるが実際できているか?
上記のような背景からリモートワークを取り入れる経理の求人は増えています。転職活動をする中でも求人票の記載にそのようなものがあるものを見かけることも多いでしょう。
ただ、現実的にリモート勤務可能かどうかは企業によるという状況になっています。
求人票にはリモートワークに関する記載があるが転職してみたら実際は使われていないケースもある
テレワークを制度として取り入れている企業は増えましたが、実際に日常的に取り入れられているかどうかは企業によるという状況です。
企業によっては産休・育休など含めた子育て中の方向けの制度として一時的なものとして取り入れているというケースも多くあり、日々の普段の通常業務できる人は出勤というスタイルであるケースも多いです。
こうした企業ではリモートワークありきで面接を受けても不採用になる可能性が高く、また、万が一入社できたとしてもミスマッチで後悔することになります。
なので、求人票にリモートワーク可と書かれていたとしても実際のところどうなのか、その背景を確認した上で応募するようにしましょう。
求人サイトなどからの応募の場合は判断をつけにくいかもしれませんが、転職エージェント経由での応募であればこうした情報も取得できるのでエージェントを頼るのも一つの手です。
※参考:経理におすすめの転職エージェントは?記事内にリモート求人に関する記載も行っていますのでご参考ください。
フルリモート可の経理求人は少ない
日常的にリモート勤務が可能であったとしても経理の場合は完全フルリモートの求人はそこまで多くありません。
週3日程度リモート勤務可であったり、月に〇日は出社など制約があるケースが多くなっています。
あなたがどの程度リモートワークにこだわっているのか次第ですが、エンジニア職などのように完全なるフルリモートを希望するケースではなかなか求人が見つからない可能性があります。
※なお、フルリモートの経理求人が全くないわけではありません。
監視が強くリモート勤務なのに息がつまるという事例も
職場によっては管理体制が異常に厳しく、リモート勤務の方がかえって息がつまるということもあるようです。
特にリモート勤務初期のころはとにかく従業員を監視・管理したがる経営者もそれなりにいたようで、カメラをオンにしていないといけないなど働きにくい環境もあったようです。
こうした監視が不必要にキツイ企業もまだあるようなので転職する際は注意しておきましょう。
家庭環境を考えて柔軟なリモート体制を認めてくれる転職先もある
ネガティブな記載が多くなりましたが当然従業員側に寄り添って積極的にリモートを取り入れている企業も増えています。
特に子育て中の方や結婚して家庭の時間を多くとりたいと思っている方はこうしたリモート勤務とフレックス勤務体制などがある職場へ転職し、家庭も仕事も充実させることが出来て良かったとする声もあります。
会社としての考え方がこうした制度に反映されるので、面接時の経営者や経営陣の考え方などもしっかり確認しておくと良いと思います。
ベンチャーでも大手でもどちらでもリモート勤務可能な転職先はあるが働きやすさに差がでることも
大手の方が業務フローが安定していて在宅勤務がしやすいと思う方も多いのですが、意外とベンチャー企業の方がこうしたリモート環境には寛容な傾向もあります。
ただ、同じリモートOKな環境であっても大手とベンチャーでは性質が異なるケースもあります。
ベンチャーの場合は自由度が高くてリモート可能であっても経理人員が少ないため仕事が多くて忙しいケースも多い
昨今のベンチャーは働き方に裁量を持たせるケースも多いため、テレワークが行いやすい環境であることが多くなっています。経理でもリモートOKな求人は多いです。
ただ、働きやすさを求めるのであれば注意も必要です。
リモートで仕事できる環境があるとはいっても人員的にも仕組み的にも内部体制がしっかり構築されていないことが大半なので業務が安定せず、効率的な労働資源の配分ができないことから労働時間そのものは長くなる傾向にあります。
また、そもそも経理に人員数を避けないベンチャーも多いので、必然的に忙しくならざるを得ないケースも多くなっています。経理が1人というベンチャーも珍しくありません。
ベンチャーの中でもIPOをこれから目指していこうといったIPO準備企業へ転職するとリモート環境があるからといって働きやすいとは言い切れず、管理部門の業務体制の構築でかなり時間を取られるケースも多くなってきます。
会社の状況に合わせて規則が変わりやすいので後からリモートではなく出社が必須となったというケースもあります。
一方で、キャリア志向・経験値志向が高い方であればリモートワーク可能な環境を活かして効率的に多数の業務経験を積んでいくこともできるので良い点もあります。
なぜリモート勤務がある方が良いのか、その動機次第ではベンチャーは向かない可能性があります。
大手(上場企業等)の方があなたの環境の変化に合わせた多様な働き方が選択しやすい
大手、特にプライム上場企業の場合はルールが良くも悪くもガチガチに決められているのでリモート環境がしっかり利用できるのであれば安定した制度利用が可能と言えます。
特に産休・育休などの各種諸制度との組み合わせがしっかりしている傾向の企業は多いので、安定したキャリアを築いていきたい方にもマッチしやすい傾向です。
大手の場合は経理人員もしっかり確保されており、ゆとりをもった運営体制があるのでお互いがカバーしやすくベンチャーに比べれば休みが取りやすいのも特徴です。
ただ、大手の場合はそもそもリモートを可としていない経理求人も多いのでリモートOKな大手上場企業の経理求人を見つけるのに苦労するかもしれません。また、あっても入社難易度は高いと言えます。
なお、これらはあくまで傾向の話であり、絶対的なものではありません。大手だから絶対的に働きやすいというわけでもありませんし、ベンチャーだからダメということでもありません。
ベンチャーでも経営陣に公認会計士などの管理部門体制構築に強い方がいるところはしっかりしていたりするので、結局のところ大手であろうがベンチャーであろうが見極めが重要となってきます。その中でも大手は情報が取りやすいのでミスマッチは起こり難い傾向です。
リモートワーク可の経理の転職先は多いが注意して職場を探す必要があるため求人探しはエージェント利用がおすすめ
上記までで記載した通り、リモートワーク可能な職場はそれなりにあるものの前提条件や内容が企業により異なるのでしっかりと情報を取得した上で入社を決定するようにしましょう。
各企業の情報などについてはエージェントを通じて得られる物も多いため、個人的にはエージェント利用をおすすめします。
また、経理の求人そのものが非公開で募集するケースが多く、特に柔軟な働き方を認めてくれる優良な求人先こそそういった傾向にあることから転職先候補の選択肢を広げるという意味でもエージェント利用も考えてみてください。
参考までに経理のリモート求人の保有や転職実績という視点ではヒュープロが一つ注目であり、リモート可能経理求人を多数保有しており、転職実績も記載されているので参考にしてみてください。エージェント利用に興味がある方は経理におすすめの転職エージェントのページも合わせてご参考頂ければと思います。
なお、求人サイトなどでもある程度転職先は見つかるかと思いますが、先程記載したように非公開案件も多いので、何か一つのサイト・方法に拘るのではなく、様々な方法を駆使して広く求人先が見つけられる可能性が高い方法を検討してみてください。
リモート環境への転職を成功させるなら経理としての経験値・能力の高さも重要
経理の方がリモート環境への転職を実現するにあたってもう一つ大きな壁となるのがあなた自身のスキル・経験値がどの程度あるのかというところとなります。
現在は人手不足の時代と言われており、例にもれず経理も人材難です。
ただ、だからといって誰でも採用したいと思っているわけでは無く、一定以上のスキルや経験がある方、あるいは若手であればしっかりと成長していく意思があるような方を採用したいと思っています。人手不足だからといってレベルの低い方を採用した結果全体の業務効率・生産性が下がってしまうケースが増えたため、採用決定は比較的慎重に行います。
そのため、希望する転職先へ行きたいのであれば経験値・スキル面がしっかりアピールできるように準備をしておきましょう。
また、面接時に良い印象を持ってもらうために転職する動機も含めた各種理由をしっかりと練って面接に臨みましょう。
リモートより出社の方が生産性が高いというデータもあり、後から出勤に変るケースもある
最近のトレンドとしてはリモートを廃止して出社を必須とする会社も増えているところにあります。
データ上リモートよりも出勤の方が生産性が高いという調査結果も出ているようで、働き方に変化が出てきているように感じます。
こうした動きは今後増えてくる可能性があることは念頭においておきましょう。
経理のリモート勤務にはデメリットもあることを理解しておく
ここまででリモート勤務はかなり良いといったような形で記載をしてきましたが、デメリットもあります。
デメリットも理解した上で転職を決めるようにしてください。
スキルアップしにくい傾向にある
リモートだと先輩や上司と一緒に仕事をする機会が減りますし、直接仕事を教えてもらう機会も減ります。そのため、スキルの向上がし難い傾向にあります。
それらに伴ってリモート環境での研修環境や指導方法を見直す企業も増えてはいますが、やはり直接会った状態で仕事をするのとそうでないのとでは結構差がでるように感じています。
経理という職種で見た場合、単純な日々の日常業務であればそれほど問題ないかと思いますが、新しい業務(決算や資金調達、各種分析、各部門との連携等)やスキルを身に着けていきたいと言ったフェーズにある場合はフルリモートなどの環境ではなく出社がメインとなっている会社の方が先々のキャリアまで見ると良いケースもあるため慎重に選択するようにしてください。
既に高いスキルを持っている方にとってはリモート環境というのは効率的で良いのですが、これから経験を積んでいく人にとっては必ずしもプラスな面ばかりではありません。
コミュニケーションが希薄になる傾向・相談がし難い傾向
社内の方々と顔を合わせる機会が著しく減少します。
新しい職場へ転職した際に顔を合わせる機会がほとんどないというのはチームで仕事をしていく上で結構デメリットになることも多くあります。
Slackなどのチャットツールで日々やりとりを行っていくことになるのですが、相手の性格も含めたパーソナリティーがある程度理解できていないと連絡がし難い、相談がし難いなどの悩みを抱える可能性はあります。
私も経理としてではありませんがフルリモートで新しい方々と仕事をする機会というのは多くあります。そういった際に皆さんがどういう感覚の持ち主なのかわからず導入でのコミュニケーションに苦戦した記憶があります。
また、直接会ったことがないと、困ったときに誰が相談しやすい人間なのかというのも目星が付けにくく、一人でいろいろ抱え込んでしまうといったリスクもあります。出社の場合は困ったことがあった際はすぐに近くの先輩に相談ができたり、あるいは声をかけてくれる人もいるものですが、リモートだとなかなか気づかれ難く、どんどん不安が大きくなってしまうこともあります。
また、新入社員などは仲の良いメンバーが作れずに疎外感を感じてしまうケースもあるようでした。そして、その疎外感は次第に大きくなり、会社は自分をサポートする気がないのでは?といった形でどんどん大きな不安に駆られるケースもあるようでした。
極端にどっちかに振れるのではなく自分で働き方が選択できる職場も増加
どのような働き方にも良い点悪い点があります。
各々の置かれた状況に合わせて選択できるような仕組みも増えつつあります。
そういった柔軟性に富んだ会社へ転職するのが最も希望が叶えやすいのではないかと思います。
そのためには経営者、経営陣の労働に対するスタンスや考え方を知ることが重要ですので面接時に積極的に質問をしたりするなど情報収集を行っていくのが良いでしょう。
また、転職エージェントを通じて質問をすることも可能なので自分で質問をするのが苦手だったり、あるいは聞きそびれてしまった事項があればこうした活用法もあります。
経理としてどのようなキャリアを考えているのか、各種事例も踏まえた上で転職を決定しましょう
経理職がリモートワークできる環境への転職のポイントなどを記載させていただきました。
そもそもリモートワーク環境で働くのがいいのか?その場合はどんな会社で働くのかいいのか?結局のところあなたが現在どういった状況にあるのか、将来的にどういったキャリアを考えているのかなどにもよるところがありますので、各種事例も交えながら求人の案内がもらえるエージェントなどを活用することでマッチする職場が見つかりやすいのではないかと考えます。
いずれにせよ、単にリモート環境があるということだけで職場を決めるのではなく、総合的に判断するようにしてください。
- 以前は経理職はリモートワークができないと言われていたがここ最近はデジタル化も進み全体的に可能となって来ている傾向にある
- リモートワーク可と書かれている経理の求人であってもその内情は企業ごとで異なるため、あなたが何を重視するのか次第で転職先は変わってくる
- 大手企業とベンチャーとでは傾向が異なるが、働きやすさを重視するなら大手上場企業を目指すのが安定する傾向にある
- 求人探し、選定にあたっては経理向けの転職エージェントからしっかりと企業の内情などの情報も取得し、あなたの置かれている状況と照らし合わせた選択が重要
- エージェントだとヒュープロで経理のリモートワーク転職実績や事例が掲載されているので一つ参考にしてみてください
- リモートなのか出社なのかなど自身で働き方を柔軟に選択できる職場も増えてきている キャリアの棚卸と希望の整理を行い最適な職場を総合的に判断していくことが重要