公認会計士が内部監査へ転職するとキャリアが狭まる?社内での地位が低い?内部監査の求人が伸びている背景とあわせて今後のキャリアを考える

公認会計士の事業会社への転職というと経理や財務、経営企画への転職が人気で、内部監査のポジションへ転職したいという方はどちらかと言えば少ない傾向です。

イメージとして、企業の内部監査は左遷ポジションあるいは仕事ができない人が行くイメージを持っている方も少なくありません。

また、キャリアパスも広がりが持ちにくいイメージがあるでしょう。

実際のところどうなのでしょうか?一部の方には需要があるポジションであり、興味があるという方もいらっしゃるので、このページではそんな内部監査への転職について考えていきたいと思います。

目次

内部監査の求人需要は増加

近年さまざまな企業でコンプライアンス意識が高まっており、上場企業はもちろんのこと、スタートアップベンチャーなどでも内部監査のポジションで求人募集があります。

IPO準備中の企業が増えたため、上場に向けた体制の構築に関連したポジションが多い他、M&Aが盛んに行われている影響も手伝って求人が増えています。

公認会計士が働くポジションとしては比較的残業が少なく、それでいて年収も悪くない場合も多いので、ワークライフバランスと年収を考えた際に一定の希望はある状況です。

また、内部監査とは異なりますが、常勤監査役の求人も増加しているのも特徴で、ワークライフバランス重視の女性会計士とマッチするケースが増えています。週3、4程度の短い勤務なのと、在宅勤務OKなので子育てしながらでも働きやすいことが特徴としてあげられます。
給料もその分低いのですが、双方の利害がマッチするので、うまくハマります。
企業側も女性を一定のポジションで採用することが課題となっているのですが、そういった意味では常勤監査役はうまく当てはまりやすいというのもあります。

キャリアというよりは、ワークライフバランスを重視される方が増えており、そういった意味で、内部監査は一つ狙い目だと考えて転職するケースがあります。

コンプライアンス意識の向上から内部監査の重要性は上がっている

上記で記載したとおり、コンプライアンス意識とガバナンス強化を課題に挙げる企業は増えています。それはつまり、内部監査のポジションの重要性をしっかりと理解し、運用しているということになります。

実際に海外展開するような比較的規模の大きな企業になると社内通報はそれなりに多くありますし、機能しています。経営との分離がしっかりなされ、経営陣や業務部門に対して強く意見できる立場の内部監査ポジションであればキャリアとしても魅力的だと言えます。特にグローバル展開する企業の内部監査や金融機関などはこの傾向が強いので、内部監査として質の高い経験ができるでしょう。

監査人としてのキャリアとして悪くないと考えられます。

国内のみで展開する企業や経営陣の意識によってはキャリア的にプラスとはいい難い

ただ、国内のみで展開する企業を見てみると、法令順守の徹底含めてコンプライアンス意識向上に向けた取り組みをやってる感は出しているのですが、実際に本当に重要視しているかと言われるとそうでもないと感じます。内部監査のポジションの仕事としても作業化している傾向にありますし、各部門への配慮や忖度が求められる場合が未だに多くあり、そういった場合はキャリアとしてはそれほど魅力的ではないと言わざるを得ないでしょう。

いまだに国内企業の不正・不祥事からの経営危機のような問題は多くおきていますが、やはり機能していないからとなります。ただ、それゆえに、今後は見かけではないしっかりとした体制を作っていくことの重要性が理解されていますので、優秀な人材を配置し、内部監査のノウハウを高めていくことの重要度はあがっていくでしょう。

現時点では軽視されがちな傾向にあり、キャリア的には微妙であるケースが多くなっていますが、変わっていくことも考えられます。

ただ、いま内部監査職へ転職するという場合は、求人選びはしっかりしたいところです。

内部監査としてレベルの高いプレイヤーがほとんどいない

上記で記載したような現状から、内部監査のプロフェッショナルというのは日本国内ではあまり育っておらず、質の高い人材が少ないという問題があります。現状は、そもそも監査の質が低いというケースが多いという話を聞きます。

実際に事業部門などからの声として、内部監査からの指摘・提案のレベルが低いという声もよく聞きますので、現状大きな問題を抱えているケースが多いと言えます。

今後は会計士のセカンドキャリアとしては有力かもしれない

上記に記載したネガティブな内容は現在のコンプライアンス意識・ガバナンス強化の流れがしっかりと浸透していけば、変わるものと思います。そのため、監査のプロフェッショナルである会計士のセカンドキャリアとして内部監査は大きなものとなる予感はあります。

公認会計士のキャリア全般という面でみると、会計監査の実務に加えてファイナンスやコンサル領域で経験を積み、経営企画や財務企画で働く方が魅力的であると感じるケースは多くなっていますが、守りをしっかり考える重要性が高まり、守備重視の会計士の活躍の場が今後は増えるのではないかと思っています。

現時点では、グローバル企業や銀行、証券などの金融領域では質の高さが求められるため、そういった領域では内部監査としてのキャリアとして悪いものではありませんが、国内企業でも需要は上がってくるかと考えます。

ワークライフバランス重視の転職で内部監査ポジションはマッチするケースは多いが注意点も

冒頭で記載した通り、クライアント折衝などはあまりないので、精神的にも労働時間的にもワークライフバランス重視の方に合う傾向の求人はそれなりに多くあります。

ただ、近年の企業経営を取り巻く環境の変化から、必ずしもそうとは言えなくなってきています。

上場企業の内部監査は安定している傾向だが忙しくなることも増えた

上場企業などの事業内容が安定していて変化が少ない会社の内部監査ポジションは業務がルーティン化されており、労働時間という意味では働きやすい傾向にあります。

そのため、時間に追われる仕事がしたくない、安定した働き方がしたいとお考えの場合にはマッチすることがあります。

ただ、近年は事業転換を図る企業が増え、それに伴った大きな組織改革なども行われており、一概にルーティン化されているとも言いにくくなっています。

また、次に記載するM&Aの増加による変化というものもあります。

M&Aが多い企業の内部監査は大変

近年M&Aが盛んに行われていることは多くの方がご存じのことと思いますが、それにともなって必要となる統合でうまくいかないケースというのも増えています。

内部監査もM&Aとは無関係ではなく、ガバナンス強化に向けたプロジェクトが組まれますので、M&Aでどんどん買収し、拡大している企業の内部監査は大変な場合が多くなっています。

ポジションや会社の方針によるところもありますが、ワークライフバランスを意識している場合はご注意ください。

IPOを目指すベンチャーの内部監査室も大変

IPOベンチャーの内部監査も組織が急成長する中での対応が必要となるので、大変です。

上場企業レベルのバックオフィスを作っていくにあたって果たす役割も大きいですので、会計士として仕事のやりがいのあるポジションであると言えます。

ベンチャーの場合、ポジション名とやることがマッチせず、内部監査室といいつつも、良い意味で広く経験できる場合があるので、求人によってはキャリア的には悪くないと思います。

ただ、ワークライフバランス目線だと、キツイ可能性があります。

内部監査のキャリア

グローバル企業など、一定以上の企業の内部監査へと転職した場合のキャリアパスは多種多様です。
一般的な監査業務だけ行っているケースではそれほどキャリアの広がりは望めませんが、監査体制の構築や海外子会社のコントロール・拠点の監査業務などを経験することでキャリアの広がりがもてる可能性はあります。
財務・会計に関する知識はもちろんですが、法務に関する理解も必要になり、企業全体を俯瞰してみる能力が身につくでしょう。

内部監査は、企業にもよりますが、財務・会計に関するチェックだけを行っていればよいというわけではなく、企業内で起こる様々な問題・リスクに対しての対応が必要になるので、柔軟さが必要となります。
会計に関連した監査業務を中心にやっていきたいとお考えの方は注意が必要でしょう。

経営企画や財務へのキャリパスも無いことはない

キャリアパスや仕事内容そのものが企業によるところもあるのですが、会計士であるという前提で、会計の高い分析と内部監査として会社の状況を広く理解できている状況は、経営企画や財務経理ポジションでの活躍も見込めます。

ただ、組織内でのポジションの異動という考え方なので、転職という視点で考えるとまた話は別です。

現時点での、内部監査の先のキャリアが気になる場合は、転職前にエージェントなどを通じて確認しておくと良いでしょう。

キャリアの選択肢が狭まるケースは多いので、現時点ではあまり人気はない

公認会計士という立ち位置で見るなら、内部監査よりも他のフィールドで働いた方がキャリアの汎用性はあります。

そのため、若い方にはそれほど人気はなく、どちらかというと年配の会計士の方が就くポジションというイメージが一定の方々にはあるようです(IPO除く)。

実際に、転職市場でも内部監査から他の企業の財務や経理、経営企画への転職というのはやや難しいように感じます。

ただ、同一企業内からポジションチェンジの事例は結構あります。

内部監査としてキャリアを構築していくか、所属する企業でポジションを変えるあるいは上げていくことを目指していく方向になるかと想定されます。

40代を超えてからでも転職が出来るポジション

上記のように、キャリアの選択がそこまで広くないと考えられているため、若い人にそれほど人気のポジションということにはなっていません。

なので、逆に意外とねらい目のポジションでもあります。

年齢が高くても採用されるケースが多いため、監査という観点の業務が好きな方には一つの考えとしてはおすすめできるポジションでもあるかと思います。

内部監査で役立つ資格は?公認会計士であれば不要だが推奨される資格も

内部監査への転職に際して、CIA(公認内部監査人)やCISA(公認情報システム監査人)、CCSA(内部統制評価指導士)、CISM(公認情報セキュリティマネージャー)などの資格取得で有利になるか?ということを時折質問されますが、資格を取得する価値はあるとは思います。
有利になるかどうかは一概に言えないのですが、これらの資格取得をする際に勉強した事項というのは、内部監査で必要とされる理論を一通り身についているとも言えるため、一定の評価は受けることができるでしょう。特にCIAは高く評価される傾向にあるため、取得を目指しておくことは推奨します。
実際に内部監査人にこうした資格の取得を推奨する動きはありますので、有利かどうかはハッキリ言えないのですが取得する価値はある、という回答になります。

ただ、公認会計士の場合、上記の資格を保持していなくても転職に際して問題はありません。

内部監査に向いている人

内部監査は社内の人間とかかわる機会が多く、向き不向きがでます。

コミュニケーション力がある人は向いている

内部監査は社内の方々とコミュニケーションをとる機会が多いため、対話力の有無は重要です。

そのため、人の話が聞ける、会話ができる人の方が向いていると言えます。逆にコミュ力に自信が無い方は、できないわけではありませんが、向き不向きでいくと不向きな傾向にあると言えます。

指摘や改善を促すにあたっては、言い方、説明の仕方、アプローチが重要になってきますので、単に会話が得意であるといったようなことではなく、総合的な意味でのコミュニケーションが求められます。

コンプライアンス意識が高い人が向いている

また、当然ですがコンプライアンス意識が高く、企業経営に関心がある方が望ましいです。

経営陣や事業部門に意見をする必要があるので、財務会計の視点も含めて会社の状況を広く把握できるタイプの人間に向いていると言えるでしょう。

本記事では内部監査のポジションの地位は低いような書き方をしましたが、それはあくまで国内のみで展開する企業の傾向であり、本来的には高い能力が必要な仕事です。

今後は変わってくると考えております。

効率的な手順を組める人

事業部門に負担をかけさせないためにも効率的な監査が求められます。

規模な大きな会社では監査手順も複雑になってくるでしょう。

限られた時間、人員の中で、確認すべき事項を正確に行っていくことが求められます。

そういった意味では、監査法人で鍛えられている公認会計士は強みがあるといえます。

内部監査は意外と年収が高くておすすめできるポイントもある

内部監査は忙しさの割に年収が高いのもポイントです。

事業会社内である程度経験を積んだ方が異動されるケースも多く、ポジション高めの人が多いのも要因の1つです。

コンサルなどと比べると低いのですが、精神的なプレッシャー、スピード感などはそれほど求められる仕事ではないことが多いため、心身は比較的安定させやすいと言えます。

監査法人で疲れてしまった、ついていけないなど、ある程度年齢が高くなると年収よりもワークライフバランスを重視したくなるケースも多いかと思いますので、見方によってはメリットの大きいポジションだと思います。

公認会計士が内部監査へと転職するには?

公認会計士を求める企業は多く、冒頭に記載した通り、コンプラ・ガバナンス意識の高まりから内部監査の求人は増加しており、転職は比較的しやすい状況です。
昨今は金融機関等では規制が厳しくなっており、金融での内部監査採用を強化する傾向もあります。

金融の監査をしていた公認会計士であれば内部監査へと転職することは問題ないでしょう。

事業会社でも内部の不正や問題を監査する部門を強化する傾向にあり、今後も需要は増えていくことから、公認会計士の需要はますます増えていくでしょう。

内部監査の求人はほとんどが転職エージェント経由での転職となります。
そのため、内部監査に興味のある方は公認会計士の転職に強いエージェントに相談するのが最も手っ取り早い方法でしょう。

会計士の事業会社への転職ということですと、マイナビ会計士を活用しての転職が多い傾向です。
あるいは、会計士の転職支援を古くから行っていて事業会社の管理部門への転職に強いMS-Japanレックスアドバイザーズの利用でも良いかと思います。

会計士の内部監査への転職というところでいくと、正直どこにたくさん求人があるかというのはなかなか判断が難しいところですので、まずはどちらかに転職相談したうえで、不足しているようでしたら、もう片方に聞いてみるという方法が良いです。

なお、常勤監査役に関しては、IPO準備企業での募集となるので、こちらも割とエージェントを介しての採用が多くなっています。上記の利用で問題無いとは思います。

後は、IPO支援を行うコンサルティングファームや投資ファンドなど経由で人が送り込まれるケースがあるので、常勤監査役の場合は少し広くアプローチした方が良い求人に巡り合える可能性は高まるかなと思います。

内部監査の求人情報

最後に、公認会計士向けの内部監査や常勤監査役の求人情報も掲載しています。
求人情報ページよりご覧ください。
基本的に非公開で募集されるポジションなことが多いので、転職をお考えのケースでは転職エージェントに相談しておくと良いでしょう。

公認会計士の転職に役立つ記事

内部監査以外で公認会計士の転職やキャリアフィールドに関することを解説した記事は他にもありますので、興味のある方は是非ご覧ください。

会計士の事業会社の経理への転職

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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士として事務所を開設しており、自身も士業として活動しております。 執筆者・監修者・編集者情報へ