社会保険労務士の主要業務の一つに「就業規則の作成」があります。クライアント企業の依頼を受け、就業規則の新規作成や既存の規則の改定などを行います。ここでは、社会保険労務士業務の中の、就業規則作成の仕事について説明します。
就業規則とは?
就業規則とは、その会社の就業上のルールを定めたものです。
労働時間や賃金、休日、休暇、退職に関する事項といった法定の絶対的記載事項に加え、その会社独自の社宅制度、休職制度、教育訓練制度、また個人情報保護やハラスメント関連など、就業規則で規定すべきことは数多くあります。
就業規則作成業務の概要
こうした就業規則作成の業務は、社会保険労務士の主要な業務の一つです。
新規の就業規則作成を依頼されることもあれば、既にクライアント企業にある就業規則の見直しを頼まれることもあります。別規程を作成する仕事もありますし、「うちの会社の就業規則、このまま運用して大丈夫かどうかチェックしてください」といった依頼を受けることもあります。
就業規則関連の業務報酬は、ボリュームや内容により、数万円~数十万円以上と、大きな幅があります。業務の所要時間も同様で、大方は報酬に連動します。
就業規則作成業務は、社会保険労務士業務の中では比較的単価が高く、労働関係の知識を直接役立てることもできるため、やりがいの大きな仕事であるといわれています。
また労働関連法規は改正が多く、それに連動して就業規則の改定も必要になりますから、単発で受託した仕事でも、長期的・継続的な仕事になりやすいという特徴もあります。
就業規則作成の具体的な仕事
就業規則を作成(変更)する業務は、通常、次のような手順で行うことになります。
就業規則作成に必要な能力は
労働法規に精通していることはもちろんですが、就業規則作成業務には「コミュニケーション力」も重要です。
先ほどもお話しした通り、就業規則を作成するときには、クライアント企業の方針や現状などを的確に聴取する必要があります。クライアントの本音や理想、要望などを聴き出していかなければならないのです。
同じ社会保険労務士業務でも、社会保険手続きの業務などはどちらかと言えば「几帳面さ」が要求されますが、就業規則作成業務には「コミュニケーション力」「聴き上手であること」も必要な能力なのです。
就業規則作成業務のこれから
労働基準法では、就業規則の作成義務があるのは「常時10人以上の労働者を使用する事業場」です。しかし近年は10人に満たない企業でも、就業規則を作成するところが増加しています。
従業員の権利意識の高まりとともに労使紛争も増加しており、そうしたリスクに対処していくためにも、会社がまだ小規模な時期からしっかりとした就業規則を作っていくことが必要な時代になってきたのです。
また、最近の働き方の多様化に伴い、「在宅勤務規程」や「短時間正社員規程」といった、従来は比較的大きな企業にしかなかった規程を作成する小企業も増えてきました。
このように、就業規則作成の需要は増加していくと予測され、これからも社会保険労務士業務の重要な一角を占めていくと考えられます。
■執筆・監修
行政書士事務所勤務、社会保険労務士事務所勤務の後、現在は独立開業をしている社会保険労務士が執筆を行っています。
所持資格は、特定社会保険労務士、行政書士、FP1級。
2 聴取した内容を反映させた就業規則を作成します。一から作成することもありますし、雛形を基に、その企業に合うように修正を入れていくこともあります。
3 2で作成した就業規則案や就業規則変更案について、クライアント企業の担当者と検討をします。社会保険労務士が作った案がすんなり通ることもあれば、検討を繰り返すこともあります。
4 クライアントのOKが出たら、労働基準監督署へ届出をし、受領印のある就業規則をクライアントに納品します。(この届出は、クライアント企業がすることもあります)