AIで司法書士の仕事はなくなるのか?司法書士のキャリアを考える

AIの登場によって、人間が担ってきた様々な仕事がAIに取って代わられるのではないかと言われるようになりました。

司法書士の仕事についてもそのリスクがあると考えることができますが、実態はどのようになっているのでしょうか。

司法書士の業務は大きく分けて3つ!

司法書士の業務がAI技術の発展によって不要になってしまうのかどうかについて考える上では、まず司法書士が世の中でどのような業務を担っているかを理解する必要があります。

司法書士の資格を保有していることで、法的にできるようになる業務は大きく分けて3つです。

登記業務、裁判業務、後見業務のそれぞれについてどんな仕事なのかをまずは把握しておきましょう。

登記業務

登記業務は司法書士の業務の中でも最も多いものとして知られています。

登記業務として主なものは、不動産登記と商業登記です。

土地や建物などの不動産や、商業を行っている会社については登記簿に記録する管理体制が整えられています。

不動産登記なら土地などの所有者や所在地、面積や形状などといった情報を全て正しく登記しなければなりません。

商業登記では会社の事業内容や役員名簿などを記録する必要があります。

この手続きをクライアントからの依頼に応じて正確に行うのが登記業務です。

裁判業務

裁判は弁護士が担うものと考えられがちですが、司法書士も簡易裁判所の訴訟代理権を持っています。

交通事故や強盗などの様々な訴訟の際に代理人として法廷に立ち、クライアントの権利を守るのが裁判業務です。

被害者と加害者のどちらの立場でも簡裁代理権を持っていて、権利擁護のために様々な情報収集を行うのも仕事となっています。

高等裁判所や最高裁判所では代理人になることはできないものの、大半の裁判は高等裁判所に上がることなく終結するという影響もあり、依頼数も着実に増えてきているのが現状です。

後見業務

日本では20歳以上の成年者で、自分の力では正しい判断をする能力が不十分となっている人の意思を補完するための制度が整えられています。

その制度が成年後見人制度で、司法書士は成年後見人になることができます。

後見業務は成年後見人としてクライアントの財産管理を行ったり、不当な契約を結ばされたりすることによって不利益を被ってしまう状況を生み出さないようにするのが仕事です。

認知症や精神障害などによって、判断能力が不十分になっている人の利益を重視して適切な判断を下すことが求められる重要な業務として知られています。

司法書士の業務の中で登記業務がなくなると言われている理由は何?

司法書士の代表的な業務の中でも、登記業務についてはAIの本格的な活用が進めばなくなってしまうのではないかと考えられています。

登記業務が裁判業務や後見業務と異なるのは、基本的には機械的な作業になっていて、その作業の正確さが求められるために有資格者の司法書士の業務として位置付けられている点です。

基本的には登記情報は財産に関わるもので、登記手続きをするときには正しい登記内容にしなければなりません。

誤った登記をすると会社の存在自体が認められていなかったり、買ったはずの土地が自分のものになっていなかったりするというようなトラブルが発生してしまいます。

その役割をAIに行わせることは不可能ではなく、むしろ正確性という観点からは誤解がない点で優れているとも考えられます。

申請する人の希望や申告内容に応じて書類を自動作成するだけではなく、その入力内容のパターンからどんなミスの可能性があるかを見出し、確認を促したり自動修正したりすることができるでしょう。

このような機械的な処理が求められる登記業務だからこそ、AIに取って代わられる可能性があるのです。

AI化が進んでも後見業務・後見人は重要に!?理由はこちら!

AIが世の中に浸透していって様々な業務が機械によって担われるようになったとしても、司法書士の仕事自体はなくなることがないと考えられています。

3つ挙げた主要業務の中でも後見業務については、どれだけAI技術が発達したとしても機械任せにすることはできないものだからです。

成年後見人制度が正しく運用されるためには、知的障害などによって判断をする力が不十分になってしまっている人の本来の意志を尊重して財産管理などをしなければなりません。

人によってこの財産をどうすべきと考えるかが異なるのは明らかで、AIによって通常はこうするべきだと示せたとしても、それがその人にとって最良の判断とは限らないでしょう。

個人を大切にした対応をする上では、やはり柔軟な考え方で対応できる司法書士の力が必要になるのです。

後見業務は需要が伸びているという点からも、司法書士の必要性は高い水準で維持されるでしょう。

高齢化に伴って認知症により判断力が不十分になってしまう人も増えてきました。

この社会状況の中で高齢者やその家族の暮らしをより良いものにする上では、後見業務の担い手である司法書士の活躍が不可欠なのです。

AIを司法書士業務の武器にしよう!

AIによって司法書士の仕事がなくなる心配はほとんどないとはいえ、技術の発展に伴って主要業務である登記業務はなくなる可能性もあります。

ただ、使い方によってはAIは司法書士にとって役立つ武器にもなるので、AIの技術開発の進展を肯定的に捉えるようにしましょう。

裁判業務では莫大な量の情報収集をする必要があり、法律の条文の解釈例や関連する事件の判例なども集めて吟味しなければなりません。

その情報検索や整理をAIで自動化してしまえば、業務負担を大幅に軽減できます。

この他にも法的書類の作成をするときにはエラーチェックを自動で行えるようにするなど、活用範囲はたくさんあるでしょう。

一方、独立したときには新規顧客開拓が大きな課題になります。

入り口の敷居を下げるために初回は無料相談可能とすることが多くなっていますが、30分から1時間くらい話をしたのに一文のお金にもならないことも珍しくありません。

その初回相談の窓口をAIによって行ってしまい、具体的な依頼をもらえるときにだけ直接相談に応じるといった事務所の運営もできます。

AIは技術的に活用の幅が広いので、機械に任せられるのではないかと思える部分が見つかったときに導入していくと業務効率を大幅に上げられるでしょう。

司法書士の仕事とAIは共存する!AIを使いこなせる司法書士になろう!

AI技術の開発が進むことで、司法書士の仕事の一部はAIによって担われるようになる可能性があります。

それをポジティブに捉え、上手に業務負担を軽減しながら、人でなければできない業務に時間も労力も費やしていけるようにするのが賢明です。

AIを使いこなして共存できるようにしていくことがこれからの司法書士には求められています。

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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士として事務所を開設しており、自身も士業として活動しております。 執筆者・監修者・編集者情報へ