2023年11月30日(木曜日)、令和5年度第73回税理士試験合格発表がありました。
受験者数は昨年比で約127%(約4000人増)と大幅に増加している他、合格率も21.7%と2%以上上昇しています。
特に財務諸表論の合格率の上昇具合が大きなポイントと言えるでしょう。
税理士試験合格発表の数字を見ていくとともに、この時期は求人募集も増える時期なので、昨今の求人トレンドについても見ておきたいと思います。
目次
2023年(第73回)税理士試験合格者数を属性別でみていく
税理士試験合格発表の数値をそれぞれの属性などに分類して見てみましょう。
税理士試験合格発表の全体感の数値
2023年度の税理士試験の基本データは以下のとおりです。
※参考文献:国税庁令和5年度(第73回)税理士試験結果など公式的に公表されているデータを利用しています。
- 受験者数:32,893人
- 合格者数:7,125人(一部科目合格者数:6,525人、官報合格者数:600人)
- 合格率:21.7%
受験者数は昨年度よりも4,040人増えており、32,893人でした。
合格率も上昇しており、昨年から2%以上高くなり、1499人増の7,125人が合格者数となっています。
一時期税理士試験受験者数は減少傾向にありましたが、ここ3年は増えている状況です。
背景としては、社会情勢が不安定になっていることから国家資格の取得による安定を求める方が増えているからだと考えられます。
必ずしも良い増え方であるとは言い切れない部分も多いのですが、目指す方が増えているというのは事実となっています。
直近5年の税理士試験合格者数概要
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
受験者数(人) | 29,779 | 26,673 | 27,299 | 28,853 | 32,893 |
一部科目合格者数(人) | 4,639 | 4,754 | 4,554 | 5,006 | 6,525 |
官報合格者数(人) | 749 | 648 | 585 | 620 | 600 |
合格者合計(人) | 5,388 | 5,402 | 5,139 | 5,626 | 7,125 |
合格率(%) | 18.1 | 20.3 | 18.8 | 19.5 | 21.7 |
先程も記載しましたがここ3年は受験者数は伸びており、特に今年は大きな伸びとなりました。
世相を反映しているとも言えますが、税理士は現在不足しており、求人は多い状況であることから、科目合格された方の税理士を目指しやすい環境への転職などは比較的しやすい状況となっています。
年齢別税理士試験合格者に関するデータ
ここ数年は40代の受験者が多い傾向にありましたが今年はどうでしょうか?
受験者数 | 5科目合格到達者 | 一部科目合格者数 | 合格者数合計 | 合格率(%) | |
41歳以上 | 11,362 | 269 | 1,219 | 1,488 | 13.1 |
36~40歳 | 4,619 | 97 | 865 | 962 | 20.8 |
31~35歳 | 4,973 | 107 | 1,061 | 1,168 | 23.5 |
26~30歳 | 4,916 | 74 | 1,258 | 1,332 | 27.1 |
25歳以下 | 7,023 | 53 | 2,122 | 2,173 | 30.9 |
前年代で受験者数は増えておりますが、特に41歳以上の受験者数が最も多い結果となっており、高齢化が激しい業界であることが伺える要因の一つとなっています。
ただし、昨年から25歳以下の若手の受験者も増加しており、昨年から2000人近く増加しているのは興味深い結果です。
先程記載したように社会が不安定になってきているという要因が大きいとは思うのですが、税理士業界としては若い担い手が増加しているのは悪いことではないと言えます。
求職者目線で見ると、高齢化が激しい業界であるため、世代交代という意味ではこれから税理士を目指す若手にも逆を言えばチャンスは大きいと思います。
2022年税理士試験受験者数 | 2023年税理士試験受験者数 | |
25歳以下 | 4,929 | 7,023 |
26~30歳 | 4,131 | 4,916 |
31~35歳 | 4,581 | 4,973 |
36~40歳 | 4,407 | 4,619 |
41歳以上 | 10,805 | 11,362 |
税理士試験科目別受験者数・合格者数
税理士試験科目別のデータも見ていきましょう。
昨年度(2022年)は、「簿記論」と「住民税」、「固定資産税」の合格率が大幅に上昇しましたが、「財務諸表論」の合格率が9.1%減少と特徴的でした。
2023年度の税理士試験は昨年度の比較すると「財務諸表論」の合格率が大幅上昇(13.3%上昇の28.1%)、一方で「簿記論」は5.6%減少(17.4%)という結果になりました。
変動値というところではこの2科目が大きめあったと言えます。
以下の表で今年度と昨年度の税理士試験の科目別の合格率を比較してみてみましょう。
受験者数(人) | 合格者数(人) | 2023年度合格率(%) | 2022年度合格率(%) | |
簿記論 | 16,093 | 2,794 | 17.4 | 23.0 |
財務諸表論 | 13,260 | 3,726 | 28.1 | 14.8 |
所得税法 | 1,202 | 166 | 13.8 | 14.1 |
法人税法 | 3,550 | 425 | 14.0 | 12.3 |
相続税法 | 2,428 | 282 | 11.6 | 14.2 |
消費税法 | 6,756 | 802 | 11.9 | 11.4 |
酒税法 | 463 | 59 | 12.7 | 13.2 |
国税徴収法 | 1,646 | 228 | 13.9 | 13.8 |
住民税 | 462 | 68 | 14.7 | 17.2 |
事業税 | 250 | 41 | 16.4 | 14.1 |
固定資産税 | 846 | 146 | 17.3 | 18.4 |
合計(延人員) | 40,430 | 6,732 | 18.8 | 16.7 |
税理士試験科目合格者の求人動向は売り手有利な状況
税理士試験合格発表を受けて転職を考えている方もいらっしゃるかと思います。
税理士登録ができるようになった方はネクストキャリアという視点で自身に強みをつけるべくプラスアルファの経験ができる会計事務所への転職を模索するケースにありますが、まだ税理士試験勉強が続くと言う方は少しでも勉強がしやすい環境を求めて求人をお探しになる傾向にあります。
ご年齢にもよるところはあるのですが、現在はかなり良い求人市況であり、選択肢は豊富であることから税理士試験突破を目指すための転職は比較的しやすいと考えます。
ただ、各事務所の内情など情報は取り難いかと思いますが、税理士試験に理解があり応援してくれる会計事務所へ転職するにはどうすれば?税理士科目合格者の税理士試験後の転職活動を解説のページで転職活動について解説しているのでこちらのページも合わせてご覧ください。
リモート環境などの税理士試験勉強時間が確保しやすい事務所が増えたことも合格率上昇の要因か?
リモートも含めて働きやすい環境はかなり増えてきた印象があります。
会計事務所というと堅いイメージで融通が利かないのでは?と思うこともあるのですが、近年はそうした傾向ではなくなってきており、人事制度も含めて働きやすい制度が整ってきているように思います。
良くも悪くもコロナ禍以降は大きな変化が出てきており、IT/デジタルへの対応が進んだことが働く環境の改善という実では大きいかと考えます。
税理士試験に合格するために最も重要なことは勉強時間を確保することにあると考えますが、こうしたIT/デジタルによる効率化が試験突破のカギとなっていると言えるでしょう。
働く環境を変えようと思っている方はリモートワーク可能な会計事務所・税理士法人は増えているが転職において注意が必要のページもご参考頂ければと思います。
税理士試験合格発表後にすぐに転職をする必要もない
税理士試験合格発表後は求人が増えると記載しましたが、だからといって焦って転職活動をする必要もありません。
求人は増えますが、あなたにマッチする求人が増加しているとも限りません。
基本的に年間を通して良い人がいたら採用をするというスタンスの会計事務所が多いため、急ぐ必要がないのであればじっくりと選定してくと良いかと思います。
焦って転職してもミスマッチで後悔することも多いです。転職活動を何度もするのは非効率と言えますので、良い事務所を見定めてタイミングよく転職をしたいものです。
現在の市況であれば求人は見つかりますので慌てなくて良いということは知っておきましょう。
やっておきたいこととしては、転職エージェントなどに各種条件を伝え、求人の紹介を定期的にしてもらうということと、業界に動向など含めた最新の情報を集めるといった情報収集をメインに行ってください。
エージェントには今すぐの転職ではなく、急いではいないが良いところがあれば転職を考えていると伝えておきましょう。
税理士試験撤退をする場合の転職活動
税理士試験を諦める方もそれなりに多くいらっしゃいます。
残念なことではありますが、そういった方の転職も比較的しやすい状況です。
現在のご年齢と経験、何科目まで合格したのかにより選択肢の豊富さは変わってきますが、科目合格と会計事務所での実務経験を活かして事業会社の経理へ転職される方もいらっしゃいますし、逆に全く関係のない営業職などへ転職されるケースもあります。
関係のない未経験職種への転職の場合は20代までが限界だと感じていますが、売り手市場は会計業界だけでなく、一般企業でも続いていますので、昔と比べるとかなり選択肢は豊富であると言えます。
そのため、税理士試験を諦めるという選択をしても問題無く次の転職先が見つかるケースが多くなっています。
経理に興味があるという場合は参考として以下の記事等もご参考ください。
税理士試験合格発表を機に転職をお考えの方に役立つ記事
税理士試験突破を目指す方向けに記載したお役立ち情報をご覧いただけます。
参考文献
国税庁ホームページ:税理士試験