時間の制約が多い社会人が働きながら税理士試験合格を目指すのはとても大変です。
ただ、働きながら税理士試験に合格することは無理ではありません。
多くの方が働きながら税理士試験に突破しています。
しかしその一方で、なかなか合格できず、10年以上も税理士試験勉強を続けている税理士科目合格者の方もたくさんいらっしゃいます。
働きながら税理士試験突破を目指すにあたっては「環境づくり」がとても重要となります。
目次
税理士試験勉強時間が確保できる職場環境で働く必要がある
一部の天才を除いて、税理士試験の各科目に合格していくには1科目ごとに300時間~600時間程度の勉強時間を要します。
※勉強時間はあくまで目安です。
例えば、簿記論・財務諸表論であればそれぞれ概ね400時間~500時間の勉強時間、法人税法であれば600時間程度の勉強時間が目安としてあげられています。
仮に1日平均3時間の勉強時間が確保できたと仮定すると、年間1095時間の勉強時間が確保できるので、理屈の上では簿財の2科目は1年で合格できることとなります。
ただ、これはあくまで1日3時間もの勉強時間を捻出できた場合の話です。
例えば仕事が9時から18時までで残業が1分もなかったとしても、帰宅したら19時頃にはなっているかと思います。
就寝時間を仮に0時とすると、寝るまでに5時間程度時間があるので、なんとなくできそうな気がすると思う人もいるかもしれませんが、お風呂に入ったり、ご飯を食べたりなど、いろいろやっているとあっという間に時間が経ってしまい、平日に3時間の勉強時間を確保するのは意外と難しいなと感じるかと思います。
数カ月だけなど、期間限定であればそういったストイックな生活も可能ですが、1年以上ずっとそれをやり続けるのはかなりのストレスが溜まりますので、途中でダレてしまい、結局毎日それほど勉強時間が取れずに終わってしまうケースが多くなっています。
税理士を目指し始めた当初はやる気も夢もあり勉強を続けることができるのですが、半年経ったころ、1年経った頃、1科目・2科目合格した後あたりから勉強するのがストレスになってきます。
しかも普通の勤務先ですと残業が0分ということはありえませんし、各種仕事の後のお付き合い等もゼロではないでしょうから、なおのこと時間の確保が難しいことがわかるかと思います。
少し前置きが長くなりましたが、こうしたことから、まずは勉強時間が確保できる職場環境を用意する必要があると言えます。
税理士試験に理解のある職場で働く必要がある
時間を確保するためには税理士試験に理解のある職場で働くことが必要です。
それが税理士試験合格に向けての近道となります。
多くの方が会計事務所に勤務されているかと思いますが、各事務所で税理士試験勉強中の方の扱いが大きく異なります。
勤務している事務所によっては、口では「税理士試験勉強頑張ってね」といったようなことを言っていたとしても、心の中では「税理士になったら給料上げないといけないかもしれないから合格して欲しくないな」と思っているケースも結構多くあります。そうしたケースでは合格し難くなります。
小規模会計事務所等では税理士資格者が欲しいというよりは、単に実務の作業的なことをしてくれる人が欲しいというケースで採用を行っているケースも多々あるため、本当の意味で税理士試験をちゃんと応援してくれる事務所とは限らないので見極めが重要となります。
本当に理解のある会計事務所では、極力残業が発生しないように業務量を調整してくれる他、試験前の休みがしっかりとれたり、専門学校に通うための補助なんかも出してくれるケースもあります。
全ての環境・状況が完璧という勤務先は早々あるものではありませんが、少なくとも勉強時間の確保という点において配慮してくれるかどうかは大きな差が出ることは多いので、現在勤務していてなんとなく税理士試験勉強に理解の無い事務所なのかなと薄々感じるケースでは税理士向け転職エージェント等に相談してみるのも良いでしょう。多くの会計事務所と税理士試験勉強中の方の職場選びに関するアドバイスをし事例を多数見ているので、実際のところどうかいろいろを教えてくれます。
また、勤務する事務所のサポート以外の側面として、同じ事務所内に税理士試験勉強中の人がいるのといないのとではモチベーション維持という点で差が出ます。税理士試験勉強に理解のある事務所には基本的に同じ受験生が何名か勤務しているのが一般的ですので、このモチベーション維持という点でも理解のある事務所で働くメリットが高いです。
なお、現在一般企業に勤務していて税理士を目指しているというケースでは、基本的には税理士試験勉強をする環境としてはあまり良くないと言えるのですが、例外として、昨今はフルリモートOKの企業が増え、加えて残業時間0分だったりというところも多いので、そうしたとても働きやすい環境ということであればそれを活かして勉強時間を確保するのも悪くないかもしれません。
ただ、資格取得も重要なのですが、年齢によってはそれ以上に実務経験があるかどうかが重要になってくるので、現在お勤めの会社の仕事内容との親和性を見て諸々判断するようにしてください。
モチベーション維持が可能な環境に身を置く
先ほども記載しましたが、税理士試験勉強は数年がかりの長期戦になるため、1人だけでやっているとモチベーション維持が困難です。
そのため、極力勉強仲間を作った方が良いと言えます。
資格学校に通われている方も多いかと思いますが、通学型だと時間のロスが発生するため、個人的には極力オンラインでの授業を受けることをおすすめします。そうなると同事務所内に一緒に勉強する仲間がいると効率が良いと言えます。
また、税理士試験勉強中の方が一定数所属しているような会計事務所であれば、税理士試験勉強に理解のある事務所かどうかの判断材料の一つとなるため、職場にこうした仲間がいるところを選ぶことが結局のところ最も効率が良い選択なのではないかと考えられます。
ただ、人によっては一人でコツコツ勉強した方が良いという性格の人もいらっしゃいますので、性格に合わせた事務所選びというのも意識してください。個人事務所のようなところでも税理士試験突破を応援してくれる理解のある事務所はございます。
リモートワーク・在宅勤務の制度がある会計事務所で働くと良い
税理士業界でもリモートワークが一般化してきましたが、対応しているところとそうでないところで差が激しいと感じています。
税理士試験勉強中であれば週に2,3日とかリモート勤務OKな日があったりするとかなり1週間の勉強時間の確保がしやすくなるので助かるという方が多いでしょうから、こうした制度がある会計事務所で働くのが税理士試験突破の近道となるかと思います。
税理士試験以外の別領域の難関国家資格(司法書士や行政書士等)受験生もリモート勤務体制を活かして勉強時間を確保し、短期で合格を果たされる方などが増えているようです。
こうした資格試験で最も大事なことは、何度も記載するように勉強時間を確保することなので、通勤時間が無駄だなと感じるケースなどではリモート勤務体制のある会計事務所を探してみるのも良いでしょう。
なお、人によっては通勤時間の歩いている時間や外に出ている時間が良い意味でリフレッシュになっているから出勤したいという方もいるので、あなた自身の性格と照らしてみることも重要です。
実際にリモート勤務を始めてみたら週3日もリモートはいらない、と感じてリモートワークを辞めてしまう人もいるので、あなた自身の性格も加味して選んでみると良いでしょう。
リモートワークに興味のある方はリモートワーク可能な会計事務所・税理士法人は増えているが転職において注意が必要のページもご参照ください。
短期(1年1科目等)での合格を目指すのが基本
1年で5科目合格を目指すような無理のある計画もよくありませんが、勉強期間が長期化してくると徐々にダレてしまって何年も合格できないといったような事態に陥ります。
残り1科目なのに数年かかってしまったという方もいらっしゃいます。
10年以上も合格できず税理士科目合格者のままの方も多いのですが、長期化すると集中力と執念みたいなものが薄れる傾向にあり、惰性で勉強する形となり、低いモチベーションと質の悪い勉強でどんどん知識レベルが落ちていくという現象に見舞われます。
大切なのは集中力と気持ちを保つことなので、長期間の税理士試験勉強が続くことによって限界が訪れる前に合格しちゃうのがポイントです。
短期合格というと語弊があるかもしれませんが、無駄に長期化しないように3~5年以内には合格しちゃいたいところです。
長引くと逆に本当になかなか合格できなくなってきます。
なお、2022年度の税理士試験では5科目一括合格者もいらっしゃったようですが、基本的に働きながら一発で全部合格するのは不可能なので、普通の方は無理しすぎない程度に計画を立ててください。
働きながら税理士試験勉強した方がメンタルが安定して結果的に合格しやすい
基本的に仕事を辞めて税理士試験勉強に専念することは避けた方が良いと言えます。
まず、仕事を辞めてしまうとお金の不安が出てきます。
後は孤独から抑鬱状態になる人も多く、精神的不安定から勉強に集中できず結果的に効率が悪くなる傾向にあるように感じます。コロナ禍で在宅ワークが一般化しましたが、ずっと一人でパソコンに向かって仕事をしていて鬱になる人も増えたように感じますが、一人でいると精神バランスが崩れる傾向にあると感じます。
比較的短期で税理士試験に合格している人は働きながら合格したという傾向も多く、オンとオフ、メリハリをしっかりつけて先ほど記載したように集中と熱意を保って合格までいっています。
また、会計事務所勤務者であれば、先ほど記載したように税理士試験前はお休みがもらえる他、時短勤務等にも対応してもらえるので、働きながらであっても時間の確保は可能です。
それでいて人との関りも得て、メンタル面も保ちながらの受験が可能なので、基本的にはお仕事を続けながら勉強されることをおすすめします。
働きながら税理士試験勉強ができる会計事務所を探すには?
税理士試験勉強に理解のある事務所は昨今はかなり増えておりますが、それでもご自身で情報サーチをするのは難しいかもしれません。
なので、基本的には転職支援サービスの利用をおすすめしています。
人材ドラフトなどの求人広告で職場を探している人も多いかと思いますが、掲載事務所の内情が見え難いというのと、求人を探す手間がかかるので、個人的にはエージェントサービスの利用も検討してみると良いかと思います。
具体的には、最速転職ヒュープロ、MS-Japan、レックスアドバイザーズあたりの利用をおすすめします。
まず、MS-Japanやレックスアドバイザーズは多くの人がご存じかも知れませんが、古くから会計事務所業界で転職支援をしていてかなり業界に精通しているので、各事務所の細かい内情を含めた内部事情まで把握してくれているので、税理士試験勉強に最適な事務所の紹介を的確にしてもらうことができます。
後はキャリアの相談にも優れているので、キャリアという視点と試験勉強という視点の双方から有益な話が聞けるので登録しておきたいエージェントです。担当者によるところもありますが、評判は多いので利用してみる価値は高いと言えるかと考えます。
最速転職ヒュープロはご存じない方も多いのですが、求人媒体とエージェント機能が一体化したようなサービスで、登録するとエージェントの方との相談に加えて、各事務所の細かい情報がサイト上で閲覧できるので、ある程度自分自身で求人を探したいケースの利用でとてもおすすめです。
大きなポイントは、独自のAI・アルゴリズムを活用した転職診断が可能なところにあり、この診断機能を利用することで、これまでの経験・スキルと希望に合致する求人がサクッと探せることです。
なので、税理士試験勉強にマッチする事務所の求人を探そうと思った際も手間なくスピーディーに見つけることができます。
長年の経験を活かしキャリア相談に重きを置いているのがMS-Japanやレックスアドバイザーズなのでいろいろ重い相談したいケースではこうした老舗のエージェントサービス、勉強時間の確保・働きやすい環境の求人を見つけることに重きを置きたいケースではAI・データ分析などのテクノロジーと人の力を活用して転職支援してくれる最速転職ヒュープロといった形でそれぞれの良いところを理解した上でうまく活用して転職活動されると良いでしょう。
どちらも税理士科目合格者の転職支援実績は豊富です。
環境を変えるために転職を検討しているならその時期はいつでもよい
エージェントのサイトなどを見ると、税理士試験後は求人が増えるから動くなら今ですよ!とかいろいろ書かれていて、確かに求人は増える傾向にありますが、昨今は割と1年中採用しているところが多いので時期はあまり気にしなくても良いかと思います。
また、あなたに合う事務所がいつ求人募集を開始するかは正直わからない部分もあるので、税理士試験勉強に備えて転職がしたいとかそういう気持ちが沸いたときに動き出すのがベストかなと思います。
すぐに良い転職先が見つかるケースもありますが、時期(例えばコロナ後とかはあまりなかったです)によるところもありますので、転職サイト等に登録して様子を見つつ動くのが良いでしょう。
転職をお考えのケースでは以下の関連記事などもご参考ください。
働きながら税理士試験に合格することは可能で、むしろ働きながら勉強するべき
結論としては、働きながら税理士試験合格は可能であるとともに、その先のキャリアまで考えても間違いなく働きながら合格を目指した方がメリットが高いと言えます。
仕事をしている関係で1日のうち勉強に割ける時間というのは少なくなりますが、集中力とメンタル面、モチベーションなどのあらゆる側面を総合的にみると、働きながら合格を目指すのが得策と言えそうです。
ただ、個々人ごとで性格や価値観が異なりますし、置かれている状況、ご年齢も違うので一概に断定はできませんので、あなたの置かれた状況と照らし合わせてご判断されるようにしてください。一般的なケースを想像するに上記のようなことが考えられるかなと思います。もし客観的な視点でアドバイスが欲しいケースでは転職支援会社などのコンサルタントに相談してみるのも一つの手段ですので考慮してみてください。
働きながら税理士試験合格を狙うのであれば勤務先の環境に大きく左右されるので、なかなか時間が確保できないなとお悩みであれば、一度職場を変えてみるということも検討してみてください。