多くの監査法人で働き方改革を推進しており、昔と比べれば労働環境・状況は良くなっているという話を聞く機会は増えました。
残業規制や新規案件の受け入れをやめるなど、各種制限を設けることで現場で働くスタッフ層は精神的・身体的に参ってしまう方は一昔前に比べれば多少少なくなったようにも見えます。
Big4監査法人を始めとする大手監査法人各社で取り組みの方向性はそれぞれ異なるものの、3月~5月末までの繁忙期を除いては残業は昔と比べれば少なくなり、繁忙期明けは長期休暇も取れる環境ですので、悪いことばかりでもありません。
実際にスタッフ・シニアスタッフ層の職員は残業は減っており、以前に比べれば早く帰宅できるようになっているという声も聞きます(とはいえ繁忙期は忙しいとは思いますが)。
ただ、そうした反面、スタッフ層が処理できなかった仕事を管理職であるマネージャーがさばかなくてはならなくなり、管理職層は逆に残業が増えて激務になっているという話も聞きます。
肉体的・精神的に疲弊しているマネージャー層は昔よりも更に多くなったという声が聞かれます。
目次
監査法人の業務の複雑化と人手不足によりマネージャーは激務
監査法人の仕事が忙しい理由として、様々なタスクを並行して抱えていて忙しいということもありますが、昨今は不正やミス防止のために監査手続きも複雑化しており、これまでと違った面で業務が増加していることも要因としてあげられます。監査基準などが変わることも多いため、手続き・チェック項目が増えていくなどの問題もあります。実務をするケースだけでなく、役職者としてメンバー管理する側もこれは大変です。
また、近年は公認会計士のキャリアの多様性が認知されるようになっており、監査法人ではない別の領域(事業会社やコンサル)で活躍するケースが一般的となってきていることから、監査法人から転職することが一般的となってしまっており、監査法人での人手不足が顕著になっています。加えて先ほど記載したように残業規制などもあり、結果的にマネジャーにしわ寄せが来るケースも増えています。
元々マネージャーあるいはその一歩手前で転職を考える公認会計士は多かったのですが、こうした背景もあり更に監査法人から転職される会計士は増えてきているように感じています。
マネージャーを見ていてマネージャーになりたくないと思うのも要因でしょう。
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マネージャーに昇格する頃になると環境も変わりワークライフバランス意識が強くなる
マネージャー等の管理職クラスの年齢が見えてくると結婚して子どもが産まれ、家族が出来てくる時期に差し掛かってくるのですが、そうなってくると人生における価値観も変わってくることが多いです。
家族との時間や健康を意識するようになるため、ワークライフバランスを意識し、転職を考えるマネージャー前後の公認会計士の方が増えてくる傾向にあります。
ただ、ワークライフバランスを意識しつつもキャリアを軽視しているわけではないため、転職先選定で悩むケースが多くなっています。
監査法人のマネージャーがワークライフバランスを考えた際の転職先を見ていきましょう。
激務を回避するための転職先
激務を回避する転職先として考えられるのは「事業会社」「会計事務所」「中小監査法人」が主な転職先として考えられます。
ただ、企業によるところも大きいため注意が必要です。
監査法人から事業会社へ転職することでワークライフバランスと希望のキャリアを実現する
現在マネージャーあるいはその手前という方は基本的に転職市場で求められるキャリア・スキルをお持ちであると言えるため、転職するという事だけを考えれば容易です。
ただ、ワークライフバランスを求めて、という視点で見ると失敗されるケースもあるため注意点もあります。
事業会社へ転職する会計士は多いのですが、思ったような働き方ができるかどうかは、企業次第となるため、情報収集がカギを握ります。
公認会計士が事業会社の経理へ転職しても激務からは解放されないケースがある
公認会計士の監査法人からの転職先として多いものの一つに事業会社の経理・財務があります。皆さんの周りでも事業会社へ転職する人は多いのではないでしょうか。
繰り返しの記載になりますが、激務や残業が原因で監査法人を退職するケースにおいて、ワークライフバランスや安定を重要視し、男性・女性問わず福利厚生や制度設計がしっかりしている大手企業の経理・財務等への転職をお考えになる公認会計士は比較的多いです。
公認会計士を求める事業会社は増えており、現在の転職市況であれば比較的転職がしやすい状況なので、希望年収などの条件を高望みをしすぎなければ転職できないということはないでしょう。
ただ、事業会社の経理に転職したら絶対に激務ではないかというとそんなことはありません。注意は必要です。
確かに監査法人時代の繁忙期のような忙しさはありません。あの時のような状況に陥る可能性はほとんどないと言えます(IPO準備ポジションなど除く)。
ただ、例えば上場企業では外部向けの資料の作成を含め、関連する部門とコミュニケーションを取りながら業務を進めていかなければならないケースは多いので、人によっては割と一年中そこそこ忙しいといった状況の会計士もいらっしゃいます。
また、会計士がその企業にあなたしかいないというケースにおいては、難しい経理処理や解釈が必要なケースが発生すると相談されることも増えるので、あなたにタスク(相談)が多数回って来て精神的な忙しさ、プレッシャーを感じる機会は結局多くある場合があります。
四半期決算開示は廃止ですが、こうした法で定められたもの以外にもその企業独特の数字を作る業務というものが存在しており、仕事のための仕事みたいな状況が発生しやすいポジションでもあるため、労働時間・拘束時間という意味では長くなりがちです。また、加えてこれやってて意味あるのかな?という仕事も増えてくる傾向にあり、ストレスを抱えることも多いので、監査法人のマネージャーの時とは違った疲れ方をするケースもあります。
監査法人のマネジャーとはいっても、経理実務は未経験だと思うので、仕事をキャッチアップしながら期待に応えるのは結構疲れるものです。
その他、人手不足の問題は監査法人だけではなく事業会社でも起きている問題です。労働力不足からくる業務過多の可能性も考えなければなりません。
忙しさを緩和するために事業会社に転職したのに1年を通してみるとかえって残業が増えたというケースも少なからず存在しています。
そのため、事業会社の経理へ転職すれば忙しくないというわけではなく、どの企業に転職するのかという部分で忙しさがある程度変わってくることは認識し転職エージェント等からしっかり情報収集を行っておくことをおすすめします。
安全な転職先を見つけるにあたっては会計士が在籍している事業会社管理部門を選ぶのがいろんな意味で安全でバランスがとれるかと思います。
事業会社も忙しいというイメージを強く記載しすぎましたが、当然ワークライフバランスに優れた企業もたくさんありますので情報収集と見極めが大切であるということです。
監査法人から事業会社の内部監査・常勤監査役や経営企画など別部門の方が働きやすいケースも
ワークライフバランスを求めるなら内部監査・常勤監査役も狙い目です。
女性会計士が家庭の時間を増やしつつといったことを考えるケースではこうしたものを選択されるケースも多くなっています。
内部監査等への転職を希望する方が母数としては少ないので詳細は省きますが、気になる方は以下の記事をご覧ください。
常勤監査役はIPOを目指すベンチャー企業などで募集しています。
週2,3日稼働で在宅OKなので、子育てを優先したい女性会計士などがマッチするケースがあります。
ただ、年収はかなり低いこと、ベンチャー企業は経営者次第で超絶マズイ状況に陥ることもあるので、慎重に検討してください。
また、経営企画部門で活躍する公認会計士も多数いらっしゃいます。
中期経営計画の策定、予実管理、M&A戦略等を企業の内部から行いたいという方は多くいらっしゃり、キャリアという視点では大きなプラスになるでしょう。
ただ、監査法人の経験しかないケースにおいては転職のハードルは高く、マネージャー職になる前のポテンシャルが評価される20代のうちにコンサルティングファームなどへ転職をし、キャリアを積んだうえで経営企画を目指す方が良いかもしれません。
※経営企画という職種の業務内容自体が企業により大きく異なりますので注意は必要です。
経営企画に興味のある会計士の方は以下の記事もご参照ください。
激務を回避したい公認会計士は会計事務所へ転職するという選択肢も
将来の独立に備えて税務を経験するためなど、特殊な要望以外において会計事務所への転職を希望する公認会計士はそこまで多くないのですが、忙しさを緩和するという点では狙い目の会計事務所も多数あります。
監査法人同様繁忙期は忙しいのですが、年間で見た場合はそこまで忙しくなく、ワークライフバランスへの取り組みが進んでいるところも増えてきているので大手クライアントに対する業務がしたいといった拘りがないのであれば、中堅規模の企業を対象に業務を行っている会計事務所に転職することでワークライフバランスを実現することができるケースもあります。
キャリアとしては、税務を経験したい会計士、あるいは税務もやりつつ中小企業向けのコンサルティングやM&Aに関連したデューデリジェンスなど、新しいことにチャレンジしつつ監査法人で培った公認会計士としての経験を活かした業務ができるケースもあるため、キャリアアップという視点でも新たなスキルを身につけるチャンスはあります。
特に中小企業向けにサービスを展開しているケースでは、一気通貫で業務に関われるという点と経営者と顔を突き合わせて業務をすることも多くなるので、直に相手の反応を見ながら仕事をすることができます。
少し視点を変えてみるのも選択肢としては有りでしょう。
中小監査法人も働きやすさという点ではおすすめできる
Big4監査法人経験者を求める中小監査法人は多くなっています。
Big4と異なり、働き方に融通が利く他、監査手続きも簡素化(良いかどうかは一概に言えませんが)されているので、忙しさはだいぶ緩和されます。
加えて年収もBig4と比較しても遜色ありません。
監査の仕事は好きだけど、Big4の忙しさにはちょっと耐えられないというケースでは中小監査法人の検討はありです。
副業OKなところもあり、会計事務所をやりながら中小監査法人で働く人もいます。
注意点は、ブラック監査法人も結構多いので、監査の質が悪いところへ転職し、変なトラブルに巻き込まれないように注意してください。
こうした中小監査法人や会計事務所などの会計業界での転職を視野に入れるケースにおいては、レックスアドバイザーズに相談してみても良いでしょう。
公認会計士及び会計事務所の求人が豊富という点と、会計業界に対する知識が深いエージェント担当者が多いので、希望に叶う転職先が見つかりやすい他、会計士としてのスキルも活かしつつ新しい領域も経験できるといった求人等の紹介も受けられることも多いので、幅が広がります。
また、事務所の内情や残業時間や有休日数等も考慮して転職先をしっかり分析しているため、激務で苦しんでいる会計士が転職する際は客観的なデータを根拠に求人を提案してくれる同社の転職支援サービスはマッチするものと考えられます。
残業等で悩む管理職クラスの公認会計士は増えておりますが、転職により状況を改善することは十分可能です。
IPO支援を行うコンサル等で監査法人のマネージャークラスの働きやすい転職先もある
IPOやベンチャー支援を中心に行うコンサルでも監査法人勤務者を募集する求人は増えております。
IPOの件数も比較的好調なこともあり、まだまだ採用需要は高い状況です。
過去数年は経験の浅い若手をポテンシャル採用するところも多かったのですが、現在は管理職クラス(監査法人だとマネージャー前後)の経験がある方の募集が多い状況です。
働き方も柔軟なところがあるので、そうしたところへ転職することで労働環境を改善しつつスキル・キャリアも伸ばしていくことは出来るでしょう。
ただ、監査法人でIPO支援に携わっていない場合、このケースの転職は難しいことも多いのですが、転職可能なケースもあるので転職会社等に問い合わせて見ても良いでしょう。
エージェント経由での転職をかんがえるのであれば先ほど記載したレックスアドバイザーズではこうしたケースでの転職先をいくつか保有しているケースがありましたので頼ってみても良いかと思います。
その他本記事に関連して事業会社への転職を解説した記事やワークライフバランスを重視したい方向けの内容の記事もございますので、気になる方はご覧ください。
監査法人から転職した後のキャリアについて
激務から解放されるとうれしいと感じる反面、キャリアについて不安を覚える方も少なからずいらっしゃいます。
どのような企業、あるいはファームに所属するかによりその後のキャリアは大きく変わってきます。
そのため、監査法人からの転職に加えてその後のキャリアも踏まえたキャリア設計をしておくと不安は減るでしょう。
基本的に会計士向けのエージェントであればこのあたりはしっかり事例を交えてアドバイスが頂けるかと思います。
例えば多くの会計士が転職を実現させる大手事業会社への転職であれば一般論で記載すると公認会計士に求められる業務と言うのは上記で記載した決算・開示業務となります。
その他、監査法人対応、国際会計基準対応や海外子会社管理、連結といったグローバルな部分への対応を求められることもあります。
昨今のグローバル化・事業の複雑化などの影響により高度な専門知識が期待される場面も多く、財務・会計の原理原則を理解している公認会計士は重宝されます。
公認会計士が事業会社の経理へ転職する上でのメリットとしては、監査法人側の人間として外から企業の数字に向き合ってきたのに対して企業の内側から数字に関与することができることがあるでしょう。
業務を自分事として捉えやすく、モチベーションに繋がっている方も多くいます。
また、内側・外側から数字を見る経験はこの先にも活きていくため、仮にもう一度転職をするにしても事業会社間での転職では大きく活きてきます。
監査法人のマネージャー等の管理職から事業会社に転職するケースにおいては、管理職としての活躍、将来的な幹部候補としての活躍が期待されることもあります。
監査法人から事業会社へ転職することで激務を回避することはできる
ワークライフバランスという点とキャリアという視点で分けて記載したため少々わかり難い部分もあったかと思いますが、事業会社へ転職することで忙しさの緩和とキャリアアップの両方を実現することは可能です。
また、監査法人でのマネージャー等の管理職経験は事業会社の転職においても評価の対象になるので、30代中盤くらいの年齢でも十分に転職ができます。
ただ、忙しさや関われる業務というのは企業ごと・ポジションごとにより大きく変わってくるため求人先に関する情報収集が重要となります。
転職の目的を達成するためにも具体的な個別の企業ごとの情報を集めるようにしましょう。
公認会計士向けの事業会社の求人は非公開の案件が多く、情報がとり難い傾向にあるため転職に際しては転職エージェントを活用するようにしてください。
事業会社の情報が豊富で事業会社で具体的にどのようなキャリアパスが描けるのかという情報をしっかり教えてくれます。