認知症などの理由で判断能力の不十分な人は契約や財産管理などを自分ですることが難しい場合があります。このような場合に本人に代わってそれらの行為をする人「成年後見人」を家庭裁判所で選任してもらうことができます。司法書士は、その選任申立ての書類を代理して作成することができます。また、後見人に選任される場合もあります。
成年後見制度とは
成年後見制度の利用が考えられるのは、認知症や知的障がい、精神障がいの場合です。認知症で判断能力が十分でなくなると、預金など財産の管理をしたり、契約をしたりすることに支障がでてきます。悪徳商法などの被害を受けるおそれもあります。
また、知的障がい者や精神障がい者についても、未成年者のときは、親権を行う親が法律行為について同意を与えたり代理をすることができますが、成年に達すると親権が消滅しますので、親であっても同意を得ずにした行為を取り消したりすることができなくなります。
成年後見制度はこのような判断能力の不十分な人を保護し支援するための制度です。成年後見
制度には、大きく分けて法定後見制度と任意後見制度の二つがあります。
法定後見制度
法定後見制度は、本人、配偶者、4親等内の親族などの申立てによる家庭裁判所の審判によっ
て開始します。
判断能力の程度に応じて、「後見」、「保佐」、「補助」があります。これらのいずれに当てはまるかは民法の条文だけでは判断がつきません。民法では、後見=能力を欠く常況にある、保佐=能力が著しく不十分である、補助=能力が不十分であると規定しています。
最高裁判所が「成年後見制度における診断書作成の手引き」というものを出していますが、これによると、少し具体的に、次のように示されています。
保佐が開始されると保佐人が選任されます。本人が行う重要な財産行為には保佐人の同意を要することとされ、保佐人の同意を得ないで行った行為は取り消すことができます。補助が開始すると補助人が選任されます。補助人には、本人を代理する権限や、本人の行為について同意する権限が与えられます。代理権や同意権の範囲、内容は家庭裁判所によって決められます。
補助人に同意権を与えられた行為について、本人が同意を得ないで行ったときは取り消すことができます。補助開始の審判の申立ては、本人による申立てか、本人の同意を得なければ行うことができません。補助の対象者にはそれなりの判断能力があり、本人の意思を尊重する必要があるためです。
任意後見制度
任意後見制度は、将来、認知症などの精神上の障害によって判断能力が低下した場合に備えて、判断能力のあるうちに、本人が自ら、任意後見人となるべき者と権限の内容をあらかじめ契約しておくものです。公正証書を作成することによって行います。
本人の判断能力が低下したときに、関係者からの申立てによって家庭裁判所が任意後見人を監督する任意後見監督人を選任し、任意後見契約の効力を生じさせます。任意後見人には契約で定められた代理権のみが与えられます。
成年後見登記制度
成年後見開始の審判や任意後見監督人選任の審判がされたときは、家庭裁判所の嘱託によりその内容が登記されます。また、任意後見契約の公正証書を作成したときも、公証人からの嘱託によって登記されます。
成年後見人等は、本人に代わって契約等を行う際に、登記事項証明書を相手方に提示することによって権限を確認してもらうことができます。
成年後見を始めとして、司法書士として転職をお考えの方は以下をご覧ください。
日常的に必要な買い物も自分ではできず誰かに代わってやってもらう必要がある程度の者
② 保佐
日常的に必要な買い物程度は単独でできるが、不動産、自動車の売買や自宅の増改築、金銭の貸し借り等、重要な財産行為は自分ではできないという程度の判断能力の者
ただし、自己の財産を管理・処分できない程度に判断能力が欠けている者は後見の対象者
③ 補助
重要な財産行為は自分でできるかもしれないが、できるかどうか危ぐがあるので、本人の利益のためには誰かに代わってやってもらったほうがよい程度の者
ただし、自己の財産を管理・処分するには常に援助が必要な程度に判断能力が著しく不十分な者は保佐の対象者、自己の財産を管理・処分できない程度に判断能力が欠けている者は後見の対象者