一般企業の経理から会計事務所へ転職されるケースは一定度あります。
経理からの転職先を探すにあたり、より高い専門性を求めてIRや内部監査などさまざま領域を模索する中で、会計事務所で税務や経営コンサルを行っていく道に興味を持ち、転職を決める経理の方がいらっしゃいます。
将来税理士資格を取得し独立を考えるなど、大きな希望を抱く方も多いのですが、取り急ぎ転職するにあたっての問題は、会計事務所側がどういう人材を必要としているかという部分です。
当たり前ですが会計事務所側のニーズに合わないと採用されません。今回は一般企業の経理からどうやって会計事務所に転職したら良いか解説します。
目次
会計事務所と一般企業経理のちがい
大手上場企業と中小企業、製造業とサービス業など、規模や業種により経理職の仕事内容が異なるように、会計事務所にも規模などによって仕事の内容に差が出てきます。
このページでは会計事務所の中でも比較的数の多い、中小規模・中小企業のクライアントを多数持つ一般的な会計税務を行っている事務所を例にあげて解説していきたいと思います。
大手会計事務所やハイレベルな業務を行っている会計事務所を目指したいという方もいるかもしれませんが、経理から会計事務所へ転職される方の大半がまずは一般的な中小規模の会計事務所へ転職し、経験することとなりますので、まずはこのケースでの例を知っておいて欲しいと思っています。
※あなたが大手上場企業の経理に勤務し、一定度以上のスキルなどをお持ちといった背景がある場合など、大手を狙うケースではBig4税理士法人は今なら転職しやすい?等のページも合わせてご参照ください。
はじめに、会計事務所職員が一日どういう動きで仕事をするか見ましょう。
会計事務所職員のスケジュール例 | |
9:00〜10:00 | メール確認 スケジュール確認 担当顧客の電話応対 |
10:00〜12:00 | 担当顧客の月次監査訪問 決算の打ち合わせ |
12:00〜13:00 | 昼休憩 |
13:00〜15:00 | 担当顧客の月次監査訪問 決算の打ち合わせ |
15:00〜16:30 | 事務所で月次入力 給与計算 申告書類の作成 |
16:30〜18:00 | 翌日の予定確認 翌日回る担当顧客へ提出する書類の作成 |
いわゆる閑散期ではこのような形で動くことが多いです。ここで中小会計事務所の特徴について言うと、
一般企業の経理と違うところは、やはり外回りが多いという点でしょうか。
会計事務所と言えば室内にこもって作業しているイメージがありそうですが、意外と外で仕事するということが多いです。
※新型コロナウイルス以降、出かけていくことももちろん多いのですが、リモート・オンラインでの打ち合わせの機会も増えました。
※所属する税理士事務所によっては完全分業制となっており、訪問業務無しのポジションがあるケースもあります。
近年は完全分業制の事務所もありますが、基本的には中小規模の会計事務所であれば担当顧客に関する処理は全て自分で行うことが多くなっています。
新人のうちは覚えるためにも多くのことを指導等を受けながら一人でやることになるでしょうからそれなりに忙しいと感じるかもしれませんが、先のキャリアのことを考えてもある程度広く経験できる税理士事務所でまずはスキルを磨いた方が伸びるかと思いますので、いろいろやらせてくれる会計事務所へ転職することは悪くありません。
なお、上記は通常期での例となりますので、繁忙期に入ると年末調整、個人の確定申告、償却資産税の申告などいつもの処理と並行してすべき仕事も入ってくるのでさらに忙しくなります。
経理ではあまり求められないが会計事務所で働く上で必要となる能力
上記の会計事務所と経理の違いとして特に重要とされる能力は折衝・コミュニケーション能力です。
会計事務所の場合、月に一度顧問先である顧客の所へ足を運び(近年はリモート面談も多くなっています)、現状の確認や税務相談、今後の動向などについて話をします。
社長や経理部長と話をする際にきちんと事前準備をしていかないと顧客の知りたい情報が出ず、関係悪化に繋がります。そのため前もって最新の財務内容を頭に入れて、顧客に説明できるよう資料を作っておく必要があります。時には簡単なプレゼンテーションが必要になるケースもあります。
顧客との会話において、特に中小企業のクライアントが多いケースでは社長と直接話す機会がたくさん出てきます。その時に戸惑わないように普段から会話をする能力は磨いておくと良いでしょう。
ハイセンスなコミュニケーション能力が求められているわけでは無く、簡単なヒアリングを行ったり、アイスブレイクでちょっとした世間話をする程度であることが大半です。中小企業の社長さんは喋りたがる人が多いので、世間話をし、話を聞きつつ必要な情報を聞き出す能力が求められるといった感じです。しゃべることに関してそれほど高度なスキルが求められるわけではありませんが、経理の方の場合苦手にされている方も多いので、日常生活の中でできることはしておいた方が良いかなとは思います。
なお、昨今はオンラインでの打ち合わせが増えているので、世間話をする機会は減ったように感じます。ただ、それ故に逆に日々の顧客とのやりとりの重要性は増しており、広い意味でのコミュニケーションスキルの重要性がむしろ高まっていると言えます。
自分から顧問先等に対して何かしらアクションを起こすなどして、相手と信頼関係を築いていくことができるかどうかのスキルは今後ますます重要なスキルの一つになっていくと考えられます。
そのため、コミュニケーションスキルはかなり重要なものとなっていくと考えられます。
※コミュニケーションが苦手な方はしっかり分業になっている会計事務所へ転職するのも良いのですが、今後AIなどが台頭してきた際に事務処理業務は減っていくことが考えられるので、どちらにせよコミュニケーションスキルは磨いておいた方が良いと感じます。
経理職の人が会計事務所に転職するためにするべき3つのこと
上記でも挙げた折衝能力・コミュニケーションスキルはあれば仕事をする上で円滑になり、非常に重要な能力であることがわかるかと思いますが、転職する上ではそもそも実務ができそうかどうかという視点もかなり重要です。
そのため、ここからは転職をしようとしたときに予めしておいた方が良いことについて説明します。中には当たり前だと思うようなこともありますが、実際その当たり前のことが最も大切なのにも関わらず現状できない人も多いです。今一度確認してみてください。
・最低限のビジネスマナー
・転職活動時期を考慮
簿記2級や3級程度の知識を身に着けるについて
まず簿記二級程度の知識ですが、事務所によっては経験値に応じて筆記試験をするところもありますのでそれに向けての勉強という意味合いもあります。
具体的には給料に関する仕訳、減価償却やリース取引、消費税に関する仕訳は完璧にしておきましょう。
経理経験者であれば通常問題無いことばかりです。
なお、ここ数年は経理経験すらない全くの未経験者で且つ簿記3級レベルという方の採用をする会計事務所も増加傾向にありますので、今後勉強していく意識をしっかり伝えられるのであれば簿記の知識がなくても問題無く採用されるケースが増えており、以前と比べると転職のハードルはかなり低くなっています。
ビジネスマナーについて
次に最低限のビジネスマナーに関してですが、これは面接対策と言い換えてもいいかもしれません。
会計事務所よりも一般企業の方が面接のハードルが高く、マナー面は厳しいと思うので、企業の経理として勤務できている時点で問題無いかと思うのですが、稀にあまりにもビジネスマナーが酷い(幼い等)という理由で落とされる方をみかけるケースもあるので、最低限の対策はするようにしておいてください。会計事務所は経営者とコミュニケーションをすることも多いですからマナーも重要です。
また、当然ですが面接をするにあたって志望動機をしっかり固めておくのもビジネスマナーになります。なぜ経理から会計事務所へ転職したいのか?などしっかりと言えるように準備しておきましょう。やる気のない人を採用したい会計事務所はありません。
こうした志望動機含めた面接対策が心配であれば会計事務所の転職に詳しいエージェントに相談しても良いでしょう。
繁忙期を避けることについて
3つ目の転職活動の時期についてですが、一般的に会計事務所は12月~5月は繁忙期です。その時期に転職もできなくもないのですが、入ったところで中は忙しく、ゆっくり教育などしている暇がありません(一般的な中小会計事務所の場合)。
そのため、どのような会計事務所に転職するのかにもよりますが、まずは仕事を落ち着いて覚えるためにも繁忙期を避けた6月以降あたりが入社時期のベストなタイミングと言えます(ただし取り扱い業務やクライアント属性にもよるためあくまで一般論です)。
6月に入社するためには、本当の意味での繁忙時期に突入する前段階の1月や2月あたりに面接を受けておくと良いと一つ考えられます。この時期は求人も増えます。
あるいは、5月、6月に入ったらすぐに動けるように転職エージェントサイト等に登録して準備だけ整えておくというのも手です。
会計事務所の採用面接は2回前後が通例ですので、早ければ1週間程度で内定となるケースもありますので、繁忙期明け付近からの動き出しでも十分に良い時期に入社することは可能です。
近年は採用・教育・実務を分業するケースも増えており、時期を考えなくても良いケースが増えている
ここ数年で会計事務所業界も大きく変わってきており、教育体制の強化(繁忙期であろうとなかろうと教育できる体制が整っているところが増えた)が進み、未経験者を育てていく方針を取っている事務所が増えたことから転職の時期という点はそれほど意識しなくても大丈夫な状況にはなりつつあります。
そのため、今すぐにでも転職したいと思っているけど丁度会計業界の繁忙期だし迷っているという場合でも思い切って転職活動してみてもよろしいかと思います。
その際はエージェントに頼った方がそうした環境のある求人が見つかりやすいと思いますので、エージェント利用も検討してみてください。
大手の会計事務所・税理士法人よりも中小の方が良いケースが多い
冒頭でも記載しましたが、大手よりも中小会計事務所へ転職されるケースの方が多いです。
一般企業の場合は中小企業より大手企業の方が給与・福利厚生・労働環境が良いというケースが多いかと思うのですが、会計事務所の場合はそうとも限りません。
年収・給与という点ではBig4税理士法人を始めとする大手の方が確かに良い傾向にはありますが、労働環境という点で見ると小規模会計事務所の方が働きやすい傾向のところも多く、また、税理士資格を目指していくということを考えた際は融通の利く事務所で働いた方が良いケースがかなり多いです。
また、小規模の会計事務所だからといって業務レベルが低いとは言えず、Big4税理士法人やそのほかの事務所経験を経て独立している先生が運営する事務所などでは質の高い業務を行っており、良い経験を積めるところも数多くあります。
あなたがなぜ経理から会計事務所へ転職したいのか、その動機によって転職すべき事務所は変わってくると言えますが、基本的に税理士資格を目指していく方が多いと思いますので、勉強時間がそこそこ取りやすく、実務経験もそれなりに良いものが積めるところとなると中小規模の会計事務所が多くなってきます。
なお、このページではよくある会計事務所像を例にあげて経理から会計事務所へ転職することに関してご案内しておりますが、近年は事務所ごとで内情や方針がかなり違う傾向になってきているので、各会計事務所の詳細についてしっかりと情報収集する必要もあると考えます。
特にIT化・デジタル化という視点では各会計事務所の対応にかなり差が出てきてしまっており、今後を考えるとこのあたりは重要になってきているので、そのあたりの対応という面もしっかり情報を取得しておきましょう。
会計事務所への転職は事務所選びが難しい
本記事では一般的な中小会計事務所へ転職した際の仕事内容やポイントを中心に紹介させていただきましたが、会計事務所は全国に3万事務所存在しており、やっている業務も経験できる業務も中で働く人の雰囲気も事務所ごとで当然違いはあります。
中小規模の会計事務所の場合、一見するとどこの会計事務所も似たようなことをやっているように感じるかと思いますが、細かく見ていくと事務所ごとにクライアントの特性や規模が違ったり、案件の獲得ルートが異なったりして仕事内容・安定性が異なる他、身につくスキル、待遇も細かく見ていくと変わってくるものです。
そのため、具体的に転職を考える際には会計事務所選びは慎重に行う必要があります。
会計事務所の情報というのはなかなかとり難いので、経理から会計事務所へと転職される際には、必ず会計事務所業界に詳しい転職エージェントを利用し、各事務所の違いなどについてしっかりと情報を仕入れることをおすすめしたいです。
また、会計事務所に加えて経理の転職にも詳しいエージェントというのもそれなりに多く存在しており、あなたが持っている経理としての経験・スキルに対して合致する会計事務所の求人の紹介が受けられるので、スムーズに業務に入っていきやすい会計事務所の紹介も受けられます。
会計事務所・企業の経理の双方に詳しい転職エージェントの紹介
事業会社経理から会計事務所への転職であればMS-Japanの利用が一般的にはおすすめなのですが、背景としては、同社が事業会社の経理と税理士事務所の転職支援双方に強く詳しいことが理由としてあげられ、事業会社経理の経験が具体的にどう会計事務所で活かせるかを視野に入れながら転職を検討することが可能なので登録しておきたいです。
税理士資格者から科目合格者・簿記2級レベルの方の転職支援もしっかり行ってくれますので、経理から会計事務所への転職を目論むのであれば相談してみるのも良いでしょう。
後は、20代若手の方や経験が浅い方、簿記2級レベルから税理士を目指したいということであれば、昨今はHUPROの実績がかなり高くなってきているので、こちらの利用も合わせて検討しておくと良いかもしれません。
この辺りのエージェントに関する事項は話が長くなってしまいそうなので、利用を検討している方向けに別途後ほど詳しく書くので興味のある方は後ろの方で確認ください。
なお、エージェントに登録したからといって転職を急かされることはなく、転職時期を見た転職活動スケジュールを提案してもらえるので、安心できるかと思います。
いずれにせよ、会計業界は今、売り手市場と言われており、転職するには最適な状況です。準備をきちんとすることで良い転職ができるはずです。まずは今回お話しした内容を十分に理解するところから始めてください。きっと今よりステップアップできるはずです。
大学との共同研究による独自開発の「AI」を用いた転職診断が行えます。
会計事務所と経理の転職に強いエージェントです。
近年会計事務所領域での転職実績が非常に高くなっており、税理士資格者だけでなく、これから会計事務所業界を初めて目指すといった方の転職支援実績も豊富であり、経験が浅い方の利用にもおすすめできます。
データに基づいた求人等の解析を行っており、簿記2級程度の知識で経験の浅い方でも転職できる求人先から公認会計士や税理士等のプロフェッショナル向けの求人先まで含めてあなたの希望や経験にマッチする求人を、膨大なデータとAIなどのテクノロジーも活用して素早く提案してもらうことができます。
有給消化率や残業時間に関するデータも踏まえているので、「仕事と自分の時間の両立」などの観点での求人探しもしやすく、そのあたりを重視している方にもおすすめです。
一般の転職エージェントの場合、大量に求人が送られてきて求人選びに困ってしまうというケースもあるかと思いますが、こちらの転職サービスではテクノロジーを活用して最適な求人の提案が受けられるので、転職にかかる手間も大きく削減できます。
サービスに登録することで、本来エージェントに相談しないと得られないような求人先の深い情報等もサイト上で見られるため、自分でいろいろ調べたい方にも良いでしょう。
なお、当然エージェント担当者さんにも転職相談をすることが可能であり、多くの経理や会計事務所人材の転職支援実績のある専門のエージェントにLINEやメール、電話で24時間相談ができるので、転職相談を重視したい方にもおすすめです。
テクノロジーと人の双方の良い部分を活かした転職サービスとなっており、会計業界での転職においてはかなり実績が高くなってきているのでこの機会に是非利用してみてください。
以下の記事でも会計事務所と経理の転職に詳しい転職エージェントについても紹介しておりますので、こちらもご参考ください。
最近は会計事務所の転職支援を行っている転職会社も増えておりますので、いろいろ見比べてみると良いでしょう。
また、企業の経理から会計事務所への転職を検討されている方は、下記の記事も参考にしてみてください。
企業での経理経験がどのように会計事務所で活かされるのか具体的に解説しています。
・月次処理から決算まで一人完結の場合が多い