弁護士といえば弁護士事務所に所属し、訴訟や裁判で活躍する士業のトップクラスの職業というイメージがあります。
しかし、近年は法律事務所ではなく企業に属して働く企業内弁護士が増えてきています。
その理由とは一体どんなものなのでしょう。
目次
企業の法務部門・企業内弁護士のキャリアを選ぶ人が増加中!理由はこちら!
企業内弁護士が増えた背景には、いくつかの社会的動向が関係しています。
弁護士の絶対数が増え、企業が直接雇うことができるようになったことも要因の一部でしょう。
数の上では法律事務所に所属する弁護士の方がまだまだ多いですが、弁護士自身が自分の働き方を選べるようになったともいえるかもしれません。
企業がグローバル化を進展しているから
大企業のほとんどが海外進出をしています。
中国やアメリカといった国だけでなく、発展途上国への進出も活発に行われているでしょう。
こうした途上国への進出は法的なリスクも伴います。企業は自社内に弁護士を雇うことで、そのリスクに対処しているのです。外部の弁護士ではなかなか対応しにくい細かな業務に従事します。
法務分野での規制緩和があったから
小泉内閣の下で、会社法などの金融関係の法務分野で大規模な規制緩和が行われました。
企業は今まで官庁の指示を仰ぎつつ行っていった行為を、自社内での判断で決行できるようになったのです。
それに伴い、企業の法的リスクも高まりました。従来の企業内の人材では判断が難しい案件も増えているため、企業内弁護士が対処するようになったのです。
企業の事情に精通した弁護士が求められているから
企業が新規事業に乗り出す時や、既存事業の拡充に踏み切る時など、素早い動きが求められます。
情報化の進んだ現代で他社に抜きんでるためには、先手を取る必要があるのです。
外部の弁護士に担当を頼むとなると、どうしてもタイムラグが生じます。
自社内に弁護士がいれば、内情を把握した上でのスピーディーな対処が可能になります。現代の競争社会では、自社内に法律の専門家がいる事は強みとなります。
企業内弁護士は大きく分けて2タイプ!
所属する企業により、企業内弁護士の役割も変わってきます。
どんな企業に属するか、またどんな業務内容を担当するかによって大きく分けて次の2つのタイプに分けられます。
自分の適性によって、また自分が専門としたい分野によって、どちらのタイプを目指すのかが変わってくるでしょう。
スペシャリストタイプの弁護士
M&Aやファイナンス事業、知的財産法などの専門的な分野に長けた弁護士が、スペシャリストタイプです。
個別の分野に対し高度な専門的な知識を持って対処することができます。企業系の法律事務所で自分の専門分野や得意分野を生かし、活躍することが多いです。
企業にとってはなかなか手の出しにくい部分を請け負っていると言えるでしょう。
ジェネラリストタイプの弁護士
企業の契約法務や、コンプライアンスといったジェネラルコーポレートという分野を得意とする弁護士です。
企業の日常的な活動に深く関わる分野でもあります。契約やコンプライアンスといった企業活動には専門知識が必要であり、一般の従業員ではなかなか詳細までは対処が難しい部分です。
企業の業務内容に精通していればそれだけ柔軟に動ける弁護士となるでしょう。
企業内弁護士はジェネラリストタイプの弁護士の方が評価されやすい?理由はこちら!
ジェネラリストタイプの弁護士は企業内の日常的な活動に深くかかわってきます。
企業間の契約には契約法務が必要となります。売買契約はもちろん、土地の売買や金融機関との契約などその内容は様々です。
コンプライアンスの遵守は昨今声高に叫ばれているところです。法令遵守は企業に特に求められているところですが、その内容は専門の知識なしには理解しにくいものでもあります。
こうした企業内で恒常的に求められるジェネラルコーポレートの経験を持った弁護士は、企業からの評価も高い傾向にあります。
外資系企業の場合はスペシャリストタイプの弁護士の方が評価されることも?
外資系の企業に関しては、スペシャリストの弁護士が評価される傾向もあります。
これは、外資系企業は専門性やある分野に特化した知識、経験を重視する向きがあるためです。
スペシャリストの知識と高い語学スキルを持ち合わせていれば、外資系企業で活躍することができるでしょう。
経験や専門性をアピールできれば、高い評価を受けて企業内弁護士として満足のできる報酬を得る事も難しくないはずです。
一般的にスペシャリストの弁護士の分野が日常茶飯事に取り扱われている企業への就業となるので、選択肢はそう多くはないかもしれません。
企業内弁護士と法律事務所の年収の違いをチェック!
弁護士の年収は一般的に普通のサラリーマンなどよりは高額な金額を得ている方が多いでしょう。
弁護士としての報酬は人それぞれであり青天井でもあるかもしれません。企業内弁護士は法律事務所勤務に比べて年収の差はあるのでしょうか。
法律事務所の年収
事務所の規模や本人の経験によってもかなりの年収の幅がありますが、大規模なところでは1年目から1000~1200万円、3年目で1300~1500万円、5年目で1500~2000万円程となります。
外資系の法律事務所ではプラス100~200万円といったところです。
一般的な法律事務所では、企業系の事務所で1年目500~800万円、3年目600~1000万円、5年目で800~1200万円程となるようです。
民事系の事務所では1年目350~500万円、3年目400~700万円、5年目で500~1000万円ほどが目安となるでしょう。
企業内弁護士の年収
企業内弁護士の年収は、入社1年目で400~600万円、3年目で500~700万円、5年目には600~800万円程が相場となっています。
これは一般的な民事系の事務所と同程度の水準であると言えるでしょう。
企業によっては1000万円を超える年収を提示する企業もあるので、一概に低いとは言えません。
また、企業による福利厚生が適用になったり、法律事務所では経験できない企業の内情を理解することができたりなど、企業内弁護士ならではの利点もあります。
所属する業界や外資系企業であるかどうかの違いによっても年収の幅は変わってくるため、自分のスキルをアピールできればさらに高い年収を得る事も可能となるでしょう。
弁護士の仕事はAIの発展でも増えていく可能性大!生き残るために今から行動しよう!
企業の業務のAI化が進み、ルーチン業務は減り続けています。
しかし、法務系の仕事は業務や法律の複雑化に伴ってさらに増えていく可能性が高いです。
高い専門知識を兼ね備えた企業内弁護士の存在が、これまで以上に求められていく時代となるでしょう。
独立を目指すのも、企業内での自分の価値を高めていくのも良いでしょう。様々な視点を持って選択できるといいですね。
なお、弁護士の方が企業の法務部門への転職を考える際は転職エージェントの利用が必須となりますので、転職をお考えの方は以下の記事もご参照ください。