AIやRPAの登場で士業の需要が無くなるといった話題が流行った時期がありました。
ただ、現在税理士を始めとする士業の需要は比較的高いと言えます。
税理士を目指している人は、会計事務所へ就職・転職するのが一般的です。
しかし、税理士業界は非常に転職が多く、いくつもの会計事務所を渡り歩いたという人も少なくないことから、これから税理士を目指して業界に入ってこようとしている方から、事務所そのものに将来性が無いから、税理士の仕事に将来性が無いから転職が多くなるのではと思っている方もいらっしゃいました。
税理士が転職を繰り返す理由は所属会計事務所に将来性がないからなのでしょうか。
今回はその理由を説明したいと思います。
税理士の転職理由で多いものは?
税理士業界では転職が多いです。その理由をこれから5つ解説します。
税理士という仕事の特徴や勤め先の特徴など様々な理由で転職を考える方がいます。事前に把握し、業界の特徴を把握しましょう。
将来性の不安
日本は高齢化が進んでいますが、税理士も高齢化が進んでいます。所長を務めている税理士の方が高齢であれば、その先どれくらい存続するかも不安になるでしょう。
また、後を引き継ぐ方がいても、方針の変化なども考えられます。その方針に従っていけるかなども将来性の不安につながります。
その他、取り扱っている業務が記帳や申告等の単純な業務ばかりという会計事務所では、自身のスキル向上に対する不安と事務所そのものの将来性の不安から転職を検討される方もいらっしゃいます。
業界全体でみれば伸びていて将来性の高い事務所も多いので、そうしたところへ転職を考える税理士の方も多くいらっしゃるという背景が一つあります。
労働条件の不満
税理士は高度な専門知識が必要とされる仕事ですが、「年収が低い」「各種手当が物足りない」という会計事務所が多くあります。
また会計事務所は確定申告時期や決算が集中する時期など繁忙期には毎日終電で帰宅など、拘束される時間が長くなります。労働条件の不満から転職する人も多いです。
会計事務所内の人間関係
会計事務所は少人数であるところが多く、所長税理士や長く働いている番頭さんの影響力があります。代表税理士や上司との相性が良くなければ、職場の人間関係に疲弊して転職に繋がるケースがあります。
キャリアアップが望めない
入力代行が主である税理士事務所に勤めている場合、単純作業の繰り返しであることも多いです。税理士の資格を取ってもキャリアアップが望めない場合があります。もっと自分のスキルを磨くことができる会計事務所への転職を考えるケースもあるでしょう。
独立を視野に入れており必要なスキルを身につけるため
税理士試験勉強中の際は試験勉強に理解のある会計事務所で勤務したいという方が一般的ですが、税理士試験に突破し、税理士登録するようになるとキャリアに目を向ける方も少なくありません。
一通り法人税務を経験したのち、自身の強みを身に着けていくため(例えば資産税等)、それらが可能な他の事務所へと転職されるケースが非常に多いです。
また、将来独立を考えている、というケースも多いため、独立に備えて経験しておきたい事をするために転職するケースも多くなっています。
税理士業務に適性を感じなくなった
税理士の仕事はお金にかかわることであり、地道な作業が続きがちです。業務でミスがあると、クライアントに影響し、場合によっては会計事務所が損害賠償を求められるケースにまで発展します。
数字が苦手な場合や経理や財務の仕事に魅力を感じなければ、税理士業務を続けるのは難しいでしょう。
税理士に将来性はないのか?
AIやRPA(人工知能)が目覚ましい発達を遂げており、作業的要素の多い「士業は消滅するだろう」と言われています。そのような技術の発展を考えると、税理士の将来性も気になるところです。
ここからは、税理士の将来性を解説します。
「税務申告代行者」が消滅の可能性がある職業になっている
英国のオックスフォード大学が出した「10年後に消える職業・なくなる仕事」という論文で、税理士が行う仕事の中心である「税務申告代行者」が将来なくなる仕事の1つとしてあげられています。
なぜ、税理士の仕事が減るのか
税理士の仕事減少には作業を得意とするAIやRPAの台頭があげられます。
税理士の仕事の中心は、会計ソフトへの入力や税務申告書の作成という作業的要素が多いです。これらの仕事は税理士に報酬を払ってお願いしなくても、AIやRPAに任せれば済むようになります。現に、クラウド会計が徐々に浸透しつつあります。
ニーズを把握することで税理士として生き残れる
AIなどの先進的な技術により、士業の生き残りは難しいと考える人もいるでしょう。しかし、実際のところ税理士の需要は高くまだまだ税理士として活躍できます。
次のテーマでその方法に触れていきます。
税理士として生き残るには?
ここから、税理士として生き抜いていく方法を解説します。
他の士業資格取得して代行分野を広げる
他の税理士と差別化するため、税理士業務と親和性の高い「司法書士」「社会保険労務士」などの資格を取得して業務の幅を広げることが可能です。
また、税理士資格があれば、「行政書士」の登録をすることも可能です。新たな資格の勉強をすることは大変ですが、ワンストップで解決できるようになれば、クライアントにとってありがたい存在になります。
AIなどを駆使できるスキルを身につける
AIやRPAの台頭が見込まれるとはいえ、まだまだこれらに対応できる人・有効活用して業務展開している税理士は少ないです。
税理士がこれまでの「税務会計の知識」に加え、新たに「AIなどのスキル」を身につけることができれば、クライアントの経営課題やトラブルを解決できる頼もしい存在となるでしょう。
難しい技術的なスキルを身につけるまでいかなくとも、AIやRPAを駆使して税理士としてどのような価値が提供できるのか?それを考え実行していける方は今後伸びていくのではないかと考えられます。
コミュニケーションスキルを身につける
AIやRPAでは代替できないのが、人と人とのコミュニケーションです。
税理士はコミュニケーションを苦手とする人が少なくありません。クライアントとの意思疎通を図り、正しいニーズを把握することが大切です。そして、その人(企業)に合った提案をすることで、クライアントからの信頼度は増すでしょう。
また、テクノロジーで業務は単純化・効率化できますが、お金(税)の不安は経営者から消えることはありませんので、そうしたコミュニケーションをとって、経営者の助けとなれる税理士は仕事が増えていくでしょう。
これはAIの台頭の有無とは関係なく、そのような傾向にあります。
マネジメント能力を身につける
部下や後輩の指導育成やスケジュール管理などのマネジメントはAIなどで代替することはできません。マネジメント能力を身につけ、頼もしいリーダーになることは、これから生き残るために有効です。
国際業務が経験できる会計事務所や海外展開も視野に入れる
税理士のクライアントは主に中小企業になりますが、中小企業であっても海外展開を図ることは珍しくありません。グローバルな時代となり、海外に資産を持つクライアントも増えつつあります。
税理士の業務は国内にとどまらず海外に渡ります。国際税務や海外進出支援等を行っている会計事務所に転職し国際税務の先端を担うことも考えられます。
会計事務所の採用ニーズが高まっているのも事実
近年、会計事務所の仕事が増えているにもかかわらず、税理士の成り手が減少しています。そのことから、採用ニーズが高まっています。ここでは、会計事務所の採用ニーズを取り上げます。
税理士試験の受験者数が減少
税理士試験といえば難関資格の1つに数えられますが、受験者数は年々減少しています。令和元年度の税理士試験申込者数(延べ人数)は5万5,000人であり、5年前である平成26年度の7万9,000人に比べ、2万人以上減少しており、今後も傾向が変わらないものと考えられます。
会計事務所の大型化が進み、採用ニーズは高まっている
昨今、会計事務所の大型化が進み、従業員も数百名規模の事務所が増えてきました。これらの大型事務所は採用ニーズが高く、就業環境も「残業時間の減少」「産休・育休制度の導入」「効率化の促進」など、良い人を採るための努力を重ねています。
20代〜30代の若手税理士は特に重宝される
税理士の受験者が減少したため、20代~30代の若手税理士は会計事務所の就職市場では大変貴重な存在です。
また、かつては「税理士有資格者」や「税理士試験の合格科目〇〇以上」と採用ハードルの高かった会計事務所が「会計実務未経験」でも採用するケースがあります。
税理士は努力次第でまだまだ将来性のある仕事!
税理士はAIにとって代わられると言われていますが、努力次第ではまだまだ将来性のある仕事です。
「選ばれる税理士」になるために努力していきましょう。クライアントに貢献できることを追求できれば、今まで以上に魅力ある仕事になるでしょう。
現在勤務している会計事務所に不満があったり、もっとスキルアップできる環境へ転職したいとお考えのケースでは転職エージェント等に相談してみるのも良いでしょう。
多くの税理士の転職支援を行っている実績からあなたにマッチする会計事務所の紹介が受けられます。