IT化が進むことにより定型的な会計業務はシステム化されますが、税理士の根幹業務でもある会計分野の知識を用いたコンサルティング業務は変わりません。
ここでは、IT化による会計業務への影響と転職に際しての影響を記載します。
目次
IT化が進んだ社会では税理士は存在しない!?エストニアの場合
エストニアはEU諸国のなかでもIT化が進んだ国として知られます。
電子政府化が進み、法人が税務申告を行う際にも個人の確定申告を行う場合であっても、スマートフォンなどのITツールを用いてオンラインで即時に申告することを可能にしています。
電子政府化を推進するに伴い、税務制度自体の見直しも行っています。そのため複雑な課税を施すことも無く、シンプルな税務体系で申告を行えるようにもしています。
エストニアのように税務会計業務のIT化が進んだ国では、税理士は不要になると思われがちです。しかし、実際のところは、企業向けの会計コンサルティングの需要は変わらずに高い需要を維持している状況です。
IT化が進んだことにより税務申告業務が簡素化されてはいますが、月次や年次の会計データを元にした会計コンサルティングの需要は変わることはありません。
電子政府化が進んだエストニアにおいても、税理士の需要は高い状態が維持している状況でもあるのです。
仕訳や税金の計算過程の簡素化は行われたものの、会計データを元にした経営改善については人が意思決定する部分は変わることは無いのです。
AIの導入や政府主導の税務業務の簡素化を手動しているエストニアであっても、税理士の需要は変わらず維持されていことがわかりました。
AI化(RPAの導入)によって税理士・会計業務はどうなる?
会計業界もAIやRPAを導入することで、なくなる業務となくならない業務が出てきます。
ここでは、会計業務のAI化による業務の影響を記載していきます。
なくなる業務
会計業務のAI化が進むことにより仕訳などを行う定型的な業務は、人手を介することが無くなりシステムが自動的に行うように変わります。
営業活動において生じた取引を勘定科目へと仕訳を行う業務は、従来は会計事務所内で行っていた業務です。
月末や年度末などの繁忙期には、勘定科目への転記に多くの勤務時間を割かれるケースも珍しくはなく、長時間労働を強いられる税理士の方も珍しくは無かったりするものです。
会計業務のAI・RPA化が進むことにより、勘定科目への転記のような定型化された部分はシステムで自動的に行われるようになり、ルール化された単純な会計業務は、税理士が担当することは無くなっていきます。
なくならない業務
勘定科目への転記などの単純な会計業務がAIの導入により自動化されていっても、会計業務のなかで定形的な部分がシステムへ置き換えられるだけであり、税理士の根幹の業務は無くなることはありません。
伝票データなどの勘定科目への転記から税務申告に至る流れはシステムが自動的に行うように変わりますが、企業の意思決定に関する資金繰りや銀行との交渉などの専門業務は、AI化が進んだとしてもそのまま税理士が担当する業務として残っていきます。
定形的な業務が税理士の手を離れることにより、より専門性の高い業務が会計事務所には求められるように変わっていきます。
会計基準が国際基準に向かって進んでいる現状では、会計分野のエキスパートに求められる領域も多岐に亘り、単純な定型業務がシステム化されたほうが専門性の高い分野に税理士が特化できる利点もあるのです。
AIやRPAの導入が進むことで税理士の業務が無くなっていくのではなく、より高い専門性を求められるように変わっていくのです。
IT(AIやRPA)に詳しい税理士は需要が高く転職にも強い!?理由はこちら
ソフトウエア開発やゲーム開発などの企業では、IT知識に長けた税理士の需要が高まってもいます。
ソフトウエアの開発を行う企業においては、自社が開発しているソフトウエアをどのタイミングで費用や固定資産に計上するかで悩むものです。ソフトウエア開発などの特殊な税務会計処理が必要になる業界では、IT分野に長けた税理士を求めるものなのです。
IT系企業で従事する税理士には、ソフトウエア開発の費用の計上や無形固定資産として扱うかの判断だけではなく、会計知識を用いて金融系ソフトウエア開発へ助言を行うなどの業務も税理士には求められていきます。
IT系で就業する税理士の業務範囲は幅広いものが求められ、著作権や商標などの権利関係に関するものから、取引先との契約関係に至るまで幅広い領域に及びます。
新興のITベンチャーなどの会計業務に従事する場合には、将来の株式公開に向けた内部統制に関与していくケースも珍しくはありません。
成長著しいゲーム開発の分野などでは、企業業績が急成長する場合も多かったりします。
短期間で企業規模が拡大していく状況では、ソフトウエア開発に長けた専門性の高い税理士を必要とするものです。
外部からコンサルティングするのとは違い、会社の業績に従い、業務内容が変わっていく部分もあります。
自社の成長を肌で実感できる部分もあり、高いやりがいを持って業務に従事することができる魅力もあります。
企業内税理士が増えている?
税理士の業界にも、企業内で会計業務に従事する企業内税理士が増加しています。
社外の会計事務所や監査法人とは立ち位置が違い、自社の業務に寄り添ったスタイルでの税務会計業務を進められるのが企業内税理士として就業することによるメリットです。
クライアントに対して提案型でコンサルティングを行うだけではなく、会計データを元にした意見が自社の経営を左右する部分も多く、高いモチベーションを維持しながら税務業務に関わっていけます。
企業内税理士として就業する場合には、外部からのコンサルティングでは携わることができない経営に関わる深い部分にまで関与することが可能になります。
新商品開発に関しての会計的な視点からの助言や敵対企業の買収に関する会計処理など、内部にいる人間だからこそ関わることができる部分も企業内税理士には多数存在しているのです。
複数の企業に対して外部からコンサルティングを行うのではなく、内部から自社の税務会計業務に携わっていけることで、第三者的視点ではない高いモチベーションを維持した就業を可能にする点も魅力です。
IT化しても税理士は必要!IT・AI・RPAに強い税理士になろう!
IT化が進むことで勘定科目の仕分けなどの定型的な部分のシステム化は進んでいきます。
システム化されることにより、単純な会計業務は税理士が担当することは無くなりますが、会計知識を活用した高い専門性が必要になるコンサルティング業務の需要は変わりません。
IT化が浸透しても税理士に対する需要が減るのではなく、高い専門性が求められるように変わっていくのです。
なお、キャリアに関する相談や転職をお考えのケースでは転職エージェント等にこうしたIT化促進を進めている事務所が無いか聞いてみたりすると良いでしょう。
多くに事務所や税理士を見ている転職エージェントならではの目線でアドバイスをもらうことが出来ます。