2023年に入り、監査法人に限らず多くの業界・職種で転職市況が変わってきております。
過去を振り返ると2014年頃から2018年にかけて、監査法人はかつてないほど採用を強化していた背景もあり、公認会計士の資格さえ持っていれば(試験合格者含む)、年齢や能力などに関わらず誰でも就職・転職できてしまうのでは?と思えるほどの状況でした。
そうしたこともあり、就職氷河期時代に監査法人に入所できなかった方々が監査法人での経験を積んでおくべく事業会社から監査法人への転職がかなり多くなった時期でもあります。
ただ、そんな長く続いた超絶売り手市場も徐々にですが変化が見え始め、2018年の後半あたりから多少採用難度は上がったかなと感じています。
そして、2020年に入り新型コロナなどの影響により社会状況・経済状況は一変し、先行きが見通し難い状況となりました。
2020年だけに限定すると採用状況は安定しませんでしたが、2021年以降は会計士の転職市場という視点だけで見ると大きく回復しており、むしろ人手不足に拍車がかかっている状況なので、公認会計士資格者は2023年も基本的にはかなり転職がしやすいと言えるでしょう。
超絶売り手市場のころと比べると全体的に採用要件は上がっていますが、現在でも売り手市場であり、特に監査法人への転職という意味ではかなり楽に転職ができる状況です。
ただ、市況が目まぐるしく変化している状況なので、転職を考えている方はアンテナをしっかり張って情報収集するようにしてください。
そのような状況において、監査法人の転職・採用状況について触れてみたいと思います。
Big4監査法人は転職のハードルが少し上がっている?
超々売り手市場だった2018までと比べると、2019年以降は若干ですが転職のハードルは上がっているように感じます。
業務過多からくる人手不足の問題はこれまでの採用強化により少しずつではありますが解消されている傾向にあります。
依然として採用意欲は高いものの、監査業務経験あるいはそれらに加えて金融機関やパブリックセクター、外資系企業、事業会社での業務経験がある方など、プラスアルファの何かを持っている方が採用されやすい傾向になってきています。以前と比べると、面接などの選考で不採用になる方の割合が増えている印象を受けます。
ただ、これはあくまで、超売り手市場だった2014年~2018年までと比較した場合です。
2020年、2021年は社会的状況もあり確かに採用数の減少と採用のバーは上がりましたが、採用募集をストップしているわけではなく、むしろ募集はかなり多い状況であり、会計士に強い転職エージェントなどからしっかり情報収集して転職活動に臨めば転職そのものは問題無くできたケースが大半だったかと思います。
2023年は世界情勢が不安定な状況が続く中であり、経済状況の見通しもわかり難い部分はありますが、人手不足が続くことは確定しているので、業界ごとに好不調が出ることは免れないと考えますが、転職市場全体という意味においては安定して採用募集が多い状況が続くと考えられます。監査法人というフィールドに絞れば、先ほど記載した通り、かなり転職がしやすい状況が続くことは間違いないでしょう。
なお、監査法人ではAIの活用も視野に入れており、ワークライフバランスへの取り組みへの強化にもつながり、労働環境の改善もされていくことが考えられますが、もっと長期的な目線で見ると、監査業務をするにあたって今ほど人員が求められる状況は続かないかと思いますので、いつかは今ほど採用に力を入れる必要性がなくなり、売り手市場ではなくなる可能性は高いと言えます。
そのため、監査法人への就職や転職などをお考えの方は早いうちに転職エージェントや監査法人に勤務している友人などから情報を取得しておきましょう。
特にこれから会計士を目指すというケースにおいて、年齢が一定以上(30代前後等)のケースにおいては、今の売り手市場が続くうちに入所しておいた方がよろしいかと思いますので、2024年あるいは2025年など数年間のうちの短期決戦で合格できるようにしたいところです。
いずれにせよ、今の状況においては監査法人だけでなく、会計系コンサルや事業会社などでも会計士採用はかなり多く、監査法人から転職される会計士の方も多いので、監査法人側も補充採用が必要となることから、ご年齢にもよるところはありますが、監査法人へ転職したい、あるいは出戻りしたいというケースでもまだまだ数年は問題無く大丈夫だと言えるでしょう。
中堅監査法人の転職市況は依然として売り手
各監査法人にもよりますが、中堅・中小の監査法人は相変わらず売り手市場で転職募集は割と多いです。
監査難民などの問題もあり顧客を伸ばしている監査法人も多く、そうしたところでは純粋に業務拡大による採用も増えています。
また、監査の品質管理が問題となっており、そうした面での体制強化という側面もあるかもしれません。
後は、マネージメントができる人材は相変わらず不足しているようですので、管理職クラスでの採用はまだ比較的多い印象があります。大手監査法人などと比べると、管理職の経験は早く積めると思いますので、今後のキャリアを俯瞰したうえで、中堅・中小監査法人への転職も視野に入れてみるのも悪い選択肢ではありません。働き方が自由なところも多いため、ご状況によってはベストマッチすることも多いです。
監査法人の転職マーケットはいつまで売り手有利が続くのか?
いつまで売り手市場は続きますか?とよく聞かれるのですが、こればっかりは誰にもわかりません。
例えば事業会社の管理部門、特に経理部門では、AIやITの発達により人手不足は解消されて転職市場は落ち着いてくると言われていましたが、現在時点においては以前よりも人手が足りない状況になっており、経理の転職マーケットは相変わらず売り手市場が続いています。
しかしながらその一方で現在は人手不足ですが2020年に目を向けるとコロナウイルス等の問題により、業界・職種によっては一気に採用募集が少なくなりました。
そういった問題も含めると、何が起こるかわからないので一概にいつまで売り手市場なのかという判断は非常にし難くなっています。
会計士の転職先の一つであるIPOを目指すベンチャーの経理マネージャーやCFO・CFO候補等は2023年現在は変わらず募集は多いのですが、こちらもコロナ禍においては淘汰があり、ジャンルによっては一気に冷え込んだので、何かあれば売り手市場は終わってしまうということが想像されます。
昨今AIやIT技術の発達により業務の効率化・自動化がビジネス現場活用されるようになってきているため、単純な作業員的な立場としての求人募集は減ることが当然予想され、その結果全体のパイは減りますので、そういった意味では今現在存在しているような業務の求人は減ることが考えられます。
ただ、同時に新しい仕事も生まれており、数字の分析だけでなく人の心に寄り添うようなコンサルティング要素の強い仕事はかなり増えているので、時代の変化に合わせた動きをすることが重要ではないかと思います。
現在のところ採用が減っているのはあくまで単純作業や事務作業が中心の職種であり、同じ経理や財務でも、企画系の仕事であれば需要が高く、そこにマッチする人材の一つは公認会計士となります。
そのため、会計の原理原則を理解している公認会計士の将来性は高く、その知識を活かして価値の高い何か(例えば先ほど記載したコンサル等)を提供できるのであれば、相変わらず需要は大きく、比較的転職がしやすい状況は続くでしょう。
単純作業者として従事するのではなく、クリエイティブな業務ができるようになることを目指すことで、社会情勢や経済状況に関わらず市場価値の高い人材として重宝されると考えられます。
監査法人のアドバイザリー部門への転職はどうか?
ここ数年各監査法人ではアドバイザリー部門の拡大が進められていたのはご存知のことかと思いますが、各社とも採用強化を継続しており、監査法人にいながら非監査業務を経験することができます。
公認会計士の場合、財務・会計アドバイザリーの分野での採用になりますが、財務会計アドバイザリー業務は監査業務の経験が活かしやすい点と仮に監査の経験がなかったとしても、事業会社での経理・財務の経験などがあれば転職が可能なため一定の人気の転職先となっています。
ただし、年齢的に比較的若い方が採用される傾向にあるように感じます。
20代~30歳中盤までのイメージがありますが、このあたりの年齢感は近年緩和されつつあるので、もし30以上で監査法人のアドバイザリー部門へと転職をお考えの方がいましたら、転職エージェント等に相談してみてください。
監査法人へと出戻ってくる会計士の転職状況はどうか?
2014年~2016年にかけて、氷河期時代に監査法人に就職できず、事業会社などで就業していた方がBig4監査法人へと転職されるケースが目立ちました。
監査法人の人手不足がピークになった時期でもあり、ある程度年齢の高いかたでも、事業会社での勤務経験がある方は比較的転職は容易でした。
合わせて、監査法人から事業会社やコンサルティング会社へと転職したものの、どうもうまくいかないということで、監査法人へと出戻ってくる会計士の方の転職も増えた時期でした。
よく情報収集せずに、イメージだけで転職したものの、事業会社の雰囲気やコンサルの忙しさに耐え切れず出戻ってくる会計士は結構多かったです。
現在は、冒頭に記載した通り少し状況は落ち着いているように感じていますが、ある程度スキルが想定できる出戻り会計士の転職を歓迎する監査法人は多いという点と、外で身につけた感覚やスキルは重宝される傾向にあるため、現在でも監査法人への出戻り転職は比較的簡単であると考えられます。
年収に関してもそれなりに考慮したものを提示してくれる傾向にあるようです。
なお、監査法人への転職における情報収集はレックスアドバイザーズがBig4のみならず中小まで含めて詳しくて良いかなと思います。
ワークライフバランスを求めて中小監査法人へ転職
Big4監査法人では業務フローの見直しなどにより、一時よりは激務ではなくなっているようです。
ただ、一方で不正防止に伴う手続きの煩雑化により、手続き的な業務は一時増えたようです。
また、スタッフ層の業務量が制限されていることから、マネジャー層は激務となっており、相変わらず世間一般に比べれば忙しいようです。
そのため、ワークライフバランスを求めて転職される方はそれなりに多いです。
残業や労働時間が要因となっている転職においては一般的に事業会社を志向される会計士の方が多いのですが、中小監査法人へと目を向ける方もいらっしゃいます。
監査に飽きたという方が多い中で、監査がやりたいという方もいらっしゃいます。
そうした方は中小監査法人に目を向けることで、ワークライフバランスを保ちながら監査法人で働くことができるでしょう。
また、中小ではアドバイザリーと監査の両方が経験できるところもあるため、転職先として一定の人気はあります。
こうした監査法人に転職したい場合は転職エージェント等を活用した方が良いでしょう。
なお、ワークライフバランスを中心に転職をお考えの方は以下もご参考ください。
希望の監査法人へ転職するには
ここからは公認会計士や監査法人の転職マーケットに詳しい転職エージェントの紹介をさせていただきます。
監査法人といっても様々あり、Big4監査法人の中でも雰囲気に違いはあります。
トーマツが体育会系だとしたらEYは昭和のマッタリ感があるといったように、風土にも違いがあります。
また、Big4以外の監査法人にも目を向けたいという方は、転職する監査法人によって経験できる業務が大きく違ってきますので、
しっかり情報収集してから転職しましょう。
各監査法人ごとにそれぞれ特徴があります。
また、監査法人を軸にどのような転職先があるのか情報収集がしたいという方もいらっしゃるかと思いますので、
転職エージェントからしっかり情報収集してミスマッチを避けるようにしましょう。

監査法人の監査部門のみならずアドバイザリー、コンサル、事業会社も含めて幅広く次のキャリアを模索したい方にはおすすめの転職サイトです。
転職サポートも手厚く、単なる求人の紹介だけではなくキャリアや転職に関する相談にも定評があるため会計士が転職するケースにおいては最もおすすめの転職エージェントとなります。
また、ワークライフバランスを考慮しつつ監査もやっていきたいとお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、そのような個別の悩みに寄りそった転職相談が可能なので希望を叶えた転職ができるでしょう。
監査法人への転職に興味のある方はもちろん、どのようなキャリアパスがあるのか、その後のキャリアパスまで含めた転職相談も可能なため、最初に利用するエージェントとして活用してみてはいかがでしょうか。

監査法人はもちろんのこと、事業会社への転職も視野に入れているという公認会計士に特におすすめの転職エージェントです。
資格者(税理士なども含めます)向けの管理部門の求人数は恐らくトップクラスなのではないでしょうか。たくさんの求人を見ながらいろいろ見て検討したいという方にはおすすめです。転職事例も豊富で様々なケースの転職を支援していることから、相談することでいろいろな気づきがあるかもしれません。
中小規模の監査法人の情報にも詳しいため、こちらの転職エージェントであれば監査法人への転職という点では間違いはないでしょう。
監査法人の次のキャリア・転職をお考えの会計士も多い
近年は監査法人から転職することが当たり前となっており、監査法人の次のキャリアに悩む会計士の方も多くなっています。
士業Jobでは会計士の監査法人の次のキャリア・転職先に関して解説した記事もありますので、このような方はこちらの記事もご参考ください。
監査法人ではシステム監査やITリスクコンサルタントの需要が大きい
システム監査やITリスクコンサルタントの採用にも監査法人は力を入れています。
このあたりは会計士の方にはあまり関係ない領域かも知れませんが、昨今IT化やシステムの活用は避けては通れないため、
IT・AI・RPA・セキュリティリスク等の知識は頭に入れておいた方が良いでしょう。
ITコンサルやベンダー等でシステムエンジニアとして勤務していた方が監査法人へと転職されるケースは増えており、
IT知識のみならず内部統制や経営に関する知識も身につけられるということで、人気、とまでは言えませんが、システムエンジニアのキャリアパスとして認知され始めております。
まとめ:監査法人の転職市況は2023年も売り手市場
2023年現在、監査法人へ転職という視点だけを切り取るのであれば売り手市場で転職がしやすいフィールドと言えるかと思います。
例えば30歳前後で会計士試験に合格し、事業会社から監査法人への就業を目指すケースにおいても、会計士試験合格(論文)していればBig4監査法人含めて転職が充分可能ですので、既に会計士として働いている方だけでなく、これから会計士を目指すという方々にとっても良い状況であると言えます。
ただ、ここまでで記載した通り、昨今市況変化が激しいので、詳しくは最前線で情報を逐一取得している会計士に強い転職エージェント等に相談しておきましょう。
いざ転職したいと思ったときにすぐに動けるように事前に情報収集しておくことも重要です。特に繁忙期に差し掛かってしまうとなかなか時間は取れないので、時間のあるうちにやっておくことをおすすめします。
情報提供能力に長けており、違いの分かりにくい監査法人各社の情報がしっかり手に入るのでおすすめです。
監査法人から先のキャリアの相談も可能なので、トータル的に良いと言えるでしょう。