人材紹介会社でエージェントとして勤務している方が人事への転職を希望されるケースは比較的多いですが、採用担当者募集の求人であってもエージェント経験しかない方はNGという求人が多いのが実情です。
また、転職先企業にもよりますが、転職後の仕事のギャップが大きいことは多く、意外と通用しないこともあります。
ただ、ご存じの通り昨今は企業側の採用志向性も大きく変化してきており、人事部門に求められる役割も変化してきていることから、例えばダイレクトリクルーティングに力を入れる企業等においてはエージェントとして培った能力が大きく発揮できるポジションでの採用も増えています。
ここでは、そんなエージェント経験者が人事へ転職しようと思った際にどういったことに気をつければよいか、実際転職してどうかといったことを見ていきたいと思います。
目次
エージェントから人事へ転職したいなら若いうちに転職しておくのがベスト
職種に関わらず、別職種へ転職するケースでは年齢が高いよりも若い方が有利なケースが多いです。
年齢があげれば上がるほどスキル・経験が重要視されますので、人事経験のないケースでは年齢が高くなるほど採用される可能性は低くなっていきます。
また、一部を除いて、基本的に年齢が上がり管理職クラスになってくると、採用関連業務だけわかればよいというものでもなく、労務や人事企画などの領域も見られることが条件になってくることも多いので、選考のハードルがどんどん上がってくる傾向にあります。
エージェントとしてどんなに優秀であっても、企業内の人事として働く上ではまた違った能力が求められるため、転職成功の可能性は低くなっていくと言えるでしょう。
そのため、人事に興味があってエージェントとして働いているというケースであれば、20代か30代前半のうちに企業人事へと転職して経験を積むことが必須となるでしょう。
採用業務メインの人事ポジションがある企業じゃないと転職は難しい
人事部門の仕事内容は企業により異なり、細分化されている企業もあれば1人の担当者が幅広くカバーする企業まで様々です。
企業の人事部門の業務内容をざっくり分けると以下のような内訳になるかと思います。
- 採用関連業務(採用計画立案から採用手法の検討、応募者対応、面接、フォロー等)
- 労務関連(入社手続きから社保・給与等)
- 教育関連(研修プログラムなどの入社後の教育に関連した業務全般)
- 人事制度企画(規程の整備や評価制度構築など人事企画関連全般)
- 採用広報(採用を主眼としたブランディング業務等)
例えばベンチャーであればこれらの業務を1人で全てまんべんなく行うというケースも多くありますし、規模の大きな企業になれば、採用と労務で分かれているケースが多いかと思います。
このような状況の中で、エージェント経験者が人事へ転職して即戦力として役立つには「採用関連業務」に携わることを主として転職活動することとなるかと思いますが、その採用担当者においても業務範囲は細かく分かれており、エージェント勤務経験が活かせるのはその中のごく一部と言っても過言ではありません。
- 採用ニーズ(社内)の取りまとめ
- 採用計画立案(予算や時期、人数など選定事項は多い)
- 採用手法の検討(職種により最適な採用手法が異なるため幅広い知識が必要)
- 各人材関連企業の管理業務
- 求人票の作成
- 書類選考対応
- 応募者対応
- 面接対応
- 内定後フォロー
- 入社手続き
- その他フォロー業務
例えば企業においては採用計画は非常に重要で経営に直結する課題となりますが、どの部門にどれだけの人員が必要で、どの程度予算をかけて採用活動を行うかなどを決める業務はエージェント勤務時代に行うことは稀かと思います。
求職者を1人確保するのにどのぐらいのコストがかかるのか、各手法ごとの予算感やメリットデメリットなども把握しておく必要があります。
また、採用フロー等においても、求人票の作成業務というものがありますが、エージェントとして求人票の作成は当たり前にやったことがあるという人もいますが、そもそもの元となる求人票を作る業務になるので、各部門の責任者などともしっかりコミュニケーションをとり、作り込んでいく必要があるのと求人票の出来栄えの可否が応募率にも大きく係わるので人事担当者としてはかなり力を入れる必要がある業務です。
エージェントさんの場合、求人表作成をかなり適当に(人事からもらったやつそのまま等)やっている人も多いので、ここの業務が意外と弱い人も多い印象です。
もっとも、エージェント企業の場合求人表作成はマーケティング部門が担当しているケースも多いのでやったことが無いという人もいるかもしれませんね。
その他、法令や税(労働関連に関する法律や所得税、住民税など)などの基礎的な知識は人事として働くのであれば押さえておきたいところです。
税や社会保障に関する質問を従業員から受ける機会も結構多いですし最近は働き方改革などの影響も有り、労働者目線の組織構築は必須ですので最低限の知識は必要となります。
面接で質問されることもあるでしょう。
いずれにせよ、エージェント経験者であったとしても、人事部門の行う採用関連業務の一部(上記番号の5~9あたり)しかやっていないケースが大半なので勉強が必要となることから、即戦力を求めるケースでは応募要件にすら届かないということも多々あります。
エージェントから人事へ転職することはもちろん可能
ここまでは少しネガティブな内容となりましたが、実際のところ転職できるのかどうかという話で行くと転職は可能です。
転職エージェント経験者応募可とするケースでは以下のようなものがあげられます。
- 年齢が若い
- 採用に課題を抱えるベンチャーの人事
- 人事部の中で採用を専門に行うポジションがある企業
- ダイレクトリクルーティングに力を入れている企業
- エンジニア採用で困っている企業
年齢が若い
これは必須の要件というわけではなく、若ければ転職がしやすいという話です。
冒頭で記載した通り、人事として新たに覚えなければならない事項は多いので、単純に若い人の方が採用されやすいという事実は有ります。
ただ、エージェントとして経験豊富で、組織人事コンサル領域まで踏み込んでお仕事をされているような方であればこの限りではありません。
面談とマッチングと求人開拓が主な仕事内容、というケースですとある程度若くないと厳しくなってくるかと思います。
ベンチャーの人事はエージェント経験者でもOKなことが多い
伸びているベンチャー企業の特徴として、常に人が足りない、採用が計画通り進まず事業拡大に支障が出ているという課題を抱えているケースが多いので、とにかく採用をメインにできる人事担当者を探しているケースも多いです。
そのため、エージェント経験者が採用されるケースも多くあります。
ベンチャーの場合多くのケースで手探りで事業を進めていく傾向にあるので、採用業務に関してもある程度手探りで進めつつ融通をきかせながら進められる人が好まれる傾向にあるので、突発的な対応を多く行うことも多いエージェント経験者が意外とマッチすることも多いです。
ただし、採用業務がメインで入社したはずが、気づけば労務や総務、庶務まで幅広くやらされていたというケースも多いので、採用に特化してやりたいというケースでは注意も必要です。
幅広く何でもできるようになりたいというケースではおすすめです。
採用を専門に行う部隊がいる企業の人事
採用、労務、企画と完全に分業して業務を行っている企業もあります。
年間数百人を採用するような企業では採用特化して業務をする必要があるためこうして分業されているケースもよくありますが、このようなケースではエージェント経験者が募集されるケースも多いです。
特にヘッドハンティング経験者はエグゼクティブ層を引っ張ってくるにあたって重宝されるケースもあります。
また、ダイレクトリクルーティングが主流になっている企業も多いので、エージェントとして自ら人材を発掘して紹介をしていたような方であれば需要は高いと言えるでしょう。
エージェントとして面談だけ、マッチングだけしていたといったケースでは年齢と成果(プロセス説明含)によって採用の成否がわかれてくるかなと思います。
エンジニア採用ポジション
数ある職種の中で採用難易度が高いのがエンジニア職と言えるでしょう。
そのため、エンジニア採用の知見のあるエージェント経験者は企業側からの需要も高いです。
意外と採用が難しいのがエンジニアのスタッフ層の採用です。
まず、そもそも人数が足りていないので少ないパイの奪い合いとなる他、給与もスタッフ層だとそこまで高く設定できないケースが多いので、グリップするのが難しいなどの問題が起こりえます。
また、フリーランスとしても簡単にお金を稼げる職種なので、応募者を増やすことができ内定まで出せても入社承諾をとるのが難しいということも多いので、エンジニアに対する理解だけでなく、自社の経営陣等にも状況を理解してもらい、協力してもらう必要があったりもします。
ただ、この領域で結果をだしているエージェントであれば人事として転職するのに困ることは無いかと思います。
ここまでエージェントが人事へ転職するケースについて簡単に見てみました。
次は実際に転職活動をすることを念頭においた事項を見ていきましょう。
エージェントから人事へ転職する際はエージェントを利用すべき?
エージェントとして働いてきた人も自分自身の転職となると冷静な判断や見極めができないという人も多いです。
そうしたケースではエージェント利用をした方が良いかとは思います。
ただ、求人自体はエージェント経由でなくとも応募できるものも多いです。
そのため、エージェントを利用すべきかどうかは人によるとしか言いようがなく、好きにすればよいかと思います。
例えば、ベンチャー人事に興味あるというケースでは、ウォンテッドリーやGreenなどを利用すればベンチャー人事の求人は多数見つかります。
しかし一方で非公開で募集しているベンチャーも多いです。また、大手企業などでは媒体等に求人を出さないケースも多くあるので、選択肢を増やしたいのであればエージェントの利用の有無や媒体等にこだわるというよりは、いろいろ登録するのが良いでしょう。
転職エージェント経験者なので一般的な媒体やエージェントさん(リクルートなど)に関する知識は豊富だと思いますのでここでは詳しく紹介しませんが、一般的なエージェントを利用しておくのがよろしいかと存じます。
また、IPOコンサルサービスを提供するコンサルファームが行う人材紹介サービスを利用すると会社多くのベンチャー企業に組織コンサルとして入り込んでいるので企業そのものの内情からどういった人材を欲しているかまでしっかり把握しており、ハマるとかなり良いケースもありますのでご参考ください。
とりあえずのところは、面談を重視したいケースでは大手どころを1,2社登録しておけば十分かと思います。
人事職として転職する際に有用なエージェント情報は別記事でまとめているのでもし情報を探しているなら以下ご確認頂ければと思います。
転職エージェントから人事への転職まとめ
エージェント経験を活かして人事へ転職することは可能ですが、採用業務であったとしてもエージェント会社勤務時には経験したことのない業務も多いので、業務キャッチアップの観点からある程度若い(人事未経験であれば30代前半あたりまで)方が有利となります。
ただ、これまでどういった業務を経験してきたかにもよるので、気になる企業があればチャレンジしてみると良いかと思います。
求人募集自体は比較的多くあり、転職すること自体は問題無く出来ると言えますので、後はあなたの志向性にマッチする求人が見つけられるよう利用できる媒体あるいは転職サービスをしっかり使いこなし、希望を叶えてください!