経理が採用できなくて困っている、という相談は非常に多くなっており、現在最も転職がしやすい職種と言っても過言ではありません。経理は年収UPなど希望が叶えやすい状況です。
その一方で、求職者目線で見ると、能力はあるのに年収が上がらない、職位が停滞しているなど、何らかの不満を抱えている方が少なくない状況です。
このページでは、経理が転職しやすい理由を説明するとともに、希望を叶える転職を実現するための方法について説明していきたいと思います。
目次
経理が転職しやすい理由
経理が転職しやすい理由は、「求人の増加」、「経理の仕事の特性上つぶしがきく」「転職する人が少ない」という3点があげられます。
転職しやすい特に大きな理由としては、求人の増加がメインとなります。
当たり前ではありますが、求人が増えればそれだけ転職がしやすくなります。
ただ、なぜ求人が増えているのかを理解しないと、希望を叶えることはできません。
経理職の求人が増加している背景
ここ数年、スタートアップベンチャーから大手上場企業まで、幅広い規模の会社で経理の採用依頼がある状況です。
個人的に採用関係の人との話でもそう感じているのですが、転職エージェントのMS-Japanが具体的な数値を出していたので見てみると、求人倍率等は右肩上がりで伸びており、前年比+140%以上、前々年比+190%以上という数値が示されています。
参考:経理・財務の転職市場レポート2024
個人的な見解を多く含みますが、企業側の募集背景を紐解くと、その理由は、以下のようなものが考えられます。
- マネジメント人材の不足
- グローバル化による経理処理の複雑化
- 事業構造の複雑化に伴う経理実務の高度化
- M&Aの増加に伴う経理処理やフローの統合
- Dx化などIT対応
- IPOの増加によりベンチャーでの経理人材の需要増
- 製造業の求人の伸び
- 単純な労働者不足
- 未経験者を育てる意識・風潮が増えた
まずは経理の採用募集がなぜ増えているのかを説明していきます。
これを知ることで、どういったアクションを取れば希望が叶いやすいのか、また、どういった人であれば転職がしやすいのかが見えてくるからです。
マネジメントができる経理職が足りない
働き方や働くことに対する価値観が変わり、マネジメントの重要性が増しています。
教育、工数管理、評価など含めたマネジメントができる人材を求めている企業は多くありますので、マネジャーから部長レベルの需要は高くなっています。
逆に言うと、このスキルを高めておくことで、希望を叶える転職がしやすくなると言えます。
グローバル化
今や大企業のみならず、中小企業も海外展開するのが当たり前です。
大手企業はもちろん中小企業では特に海外取引に係わる会計・経理・税務の処理に課題を抱えている企業も少なくありません。
そのため、海外取引に係わる経理処理ができる方の需要が高く、求人が増えている状況です。
海外子会社管理における財務経理責任者など、海外展開する企業の経理人材の採用が追い付いていないのが現状であり、一定以上の経験がある方にとっては転職が実現しやすい状況です。
また、経験が浅い方でも、ご年齢や募集企業にもよるところはありますが、語学力が高ければ問題無い(教育できる)とする企業も増えているので、若手で語学力がある程度あればチャンスはある状況です。
事業構造の変化など会計・経理の高度化
近年はビジネスモデルの変革や複合的な事業展開、新規事業の立ち上げなど、会社自体が大きく変化しています。
それに伴って、経理業務も複雑化しています。
経理方針の策定から変わっていく傾向もあるため、公認会計士などの会計の原理原則を理解していて更に経理実務にも明るいなど、本質的な改善ができる人材が求められる場面も増えています。
公認会計士資格はあくまで例えとなりますが、30代・40代はもちろん50代の経験豊富な経理パーソンが求められる場面は相応にあり、実際にミドル層以上の転職が増えているのが特徴です。
M&Aの増加による経理人材の需要増
先程の事業構造の変化と重なる部分もありますが、M&Aに伴って経理実務の統合や内部統制の統合、M&Aに係わる経理処理など、バックオフィスの仕事はかなり増加しています。
IT化・デジタルに強い経理の需要増
業務効率化などの観点からデジタル推進を進める企業は増えており、経理実務においてもその傾向にあります。
経理+ITスキルの高い人材の需要は高くなっており、給与も期待できる状況となっています。
IPO件数の増加からわかるベンチャー界隈の経理需要増
IPOを目指すベンチャー企業は増えております。
IPOをするにあたっては、経理部門を上場企業基準にまで引き上げる必要があるため、そうした体制構築ができるハイクラスの経理人材はもちろん、実際に手を動かす実務ができる経理人材まで含めて人が必要となっています。
ベンチャーのいいところは、頑張り次第で高い給与とポジションが得られる可能性があることです。
経理は年収が上がらない、ポジションが上がらないと悩む方が多いので、そういった場合はベンチャー企業も視野に入れてみるのも悪くないでしょう。
製造業で原価計算経験のある経理人材の需要が増加
製造業での求人募集が増えたのも転職しやすくなった大きな要因でしょう。
原価計算+英語力を求める求人が増加しています。
グローバル化とも関連するのですが、製造業の経理に興味のある方は意外と多いので、チャンスの時期になっているかと思います。
原価計算の経験がなくても、一般的な経理経験(月次決算できる等)があり、語学力があれば、若手であれば製造業界未経験でも転職可能な求人も増えたと感じます。
労働者不足と未経験者を育てる風土
2つは密接に関連するのでまとめて記載しますが、近年は労働者人口そのものが不足しており、経理職にかかわらず採用に苦戦する企業が増えています。
元々経理は実務経験者しか採用しない傾向にあるポジションでしたが、上記のような理由から、そもそも経験者の採用は困難である、という状況になっております。
そのため、育てていく方向にシフトする企業が増加しており、若手を中心として、ポテンシャルの高い人材を第二新卒などで採用し、教育していくところが増えたことから、転職しやすくなっています。
スキルが高い人ばかりでなく、未経験者なども転職しやすいことがわかる
経理の求人が増えた背景をまとめると、高度な経理処理に対応できるハイクラス人材が求められていることがわかります。
そのため、経理として実務経験の高い方であれば、転職がしやすい状況と言えます。
また、若い人を育てる風潮も出てきているので、20代や30代前半などの若手であれば経験が浅くても転職が出来る傾向にあると言えます。
経理は未経験者を採用することはあまりないので、チャンスは広がっています。
ただ、30代後半や40代で経験が浅い方々はなかなか転職しにくい状況となっています。
氷河期世代と重なるため、経験が積みにくかった方々となり、とても不公平な気もするのですが、現時点では残念ながら若手優先の採用状況となっています。
ただ、求人の数そのものが増えているので、昔に比べるとチャンスは広がっています。
ハイクラスの方も若手の方も含めて、この転職がしやすい状況を活かして希望を叶えていきましょう。
転職にあたっては、経理に強い転職エージェントの利用もご検討ください。
求められるスキルを磨くことで希望が叶う
上記で記載した事項は、年収などの希望条件を叶える上で高めておきたいスキル等となります。
転職はしやすいのですが、良い条件をもらおうと思うとそれなりに大変ですので、意識して業務に取り組むと良いでしょう。
また、現在の職場でスキルアップが叶わないのであれば、年収など諸条件はスライドかやや増減くらいで手を打ち、経験を作るための転職というのもしやすくなっています。
経理以外の職種の方は複数回転職し、スキルアップ、キャリアアップを狙っていくのが当たり前になっておりますので、そういう考えも取り入れるようにしましょう。
経理はつぶしがきくから転職しやすい
これはそもそも経理を目指す動機にもなっているのですが、経理はつぶしがききます。
どの規模の会社でも、どの業界でも経理はある
単純に、どこの会社にも経理部門・経理担当者は存在しています。
業界ごとに経理として必要なスキルは異なるものの、基本的なことをマスターしていれば応用はきくので、転職しやすくなっています。
たとえば、メーカーの経理へ転職したいとお考えになる方は一定数いらっしゃるのですが、メーカーのような製造業では原価計算のスキルが求められます。
これまでは原価計算の実務経験がないと転職不可というケースが多かったのですが、何かしらの経理経験があれば、プラスアルファで教えていくことは可能なので、採用される事例が増えています。
同じ業界の経理ばかりでなく、異業種への転職もしやすくなっている状況です。
スキルが可視化しやすい
営業職などと違って、具体的に何ができるのか、スキルが可視化しやすいので、自分を必要とする企業を見つけやすくなっています。
企業側も募集要件が作りやすいため、スキルマッチという意味では、しっかりと情報すればミスマッチし難く、転職しやすいと言えます。
※職場の雰囲気など別の視点で見た際は注意も必要です。
経理はなかなか転職しない人が多いが、だからこそ転職しやすい
経理職の方は、1社で長く働きたいと考える傾向にあります。
そのため、人材の流動性が低くなっており、企業側は求めているけど動いている人が少ないという特徴があります。
営業マンやエンジニアなどは良い環境を求めてドンドン転職するのですが、経理の方はどちらかというと保守的な方が多く、腰が重い傾向にあります。
逆に言うと、なかなか応募すら来ないという状況なので、ライバルが少なく、スキル不足の問題さえクリアすれば比較的転職がしやすいと言えます。
しかしなかなか転職しないことが年収が上がらない要因にもなっている
記載した通り、経理職の志向性として、安定を求める傾向にあることから、なかなか転職しないという特徴があります。
上位のポジションになればなるほどその傾向が強いです。
なので、あなたの会社の上位役職者がこうした状況なのであれば、ポストに空きが生まれず、職位・年収が上がらない要因ともなっています。
転職はしやすいのですが、年収も上がり難いという状況になっています。
希望を叶えるには?転職しやすいといっても注意が必要
転職しやすいからといって、あなたの悩みや希望が叶うとは限りません。
幾つか注意して求人を探す必要があります。
年収アップや上位の職位を狙っての転職であれば、上層部が詰まっていないかどうかチェック
先程記載したように、経理職の方はなかなか転職しない傾向にあり、上位ポジションがなかなか空きません。
そして、経理部門の悪い特徴として、ポジションの数が少ない、増えないという問題があります。
どこの企業にも経理はありますが、経理部門がどんどん大きくなることは稀です。
そのため、部長の椅子、課長の椅子の数は決められており、そうした役職についている方の年齢が若い企業はポジションが空かない可能性があります。成長企業でも上位ポジションは増えません。
営業職と違って、圧倒的な成績を上げて出世する、見たいなことがしにくい職種なので、なかなか職位の入れ替えというのが起こりにくくなっています。
そのため、上位ポジションに就いている人が若いのか、それとももうじき定年なのか、しっかりと見極める必要があります。
現在勤務する会社の経理部門の上司(部長等)が若い場合、あなたのポジションも上がらない可能性が高いですので、ポジションが上がらなければ年収も上がらない可能性が高いです。
その場合は転職によって職位を上げていくことを検討してみましょう。
そして、転職先企業の役職者の年齢やポジションもしっかり確認しておきましょう。
中小企業やベンチャーの場合、経営陣の志向性と管理部門の給与体系をチェック
そもそも経理の給与が抑えられている企業は少なくありません。
上場企業であればそんなこともないのですが、中小企業やベンチャー企業などで、経営陣が営業出身者で固められているような会社ですと、管理部門を軽視しているケースがあります。
こうした企業に入ってしまうと、給与が上がらないばかりでなく、何となく会社の中での地位が低いような扱いを受けることがあります。
せっかく転職しやすい状況でこんなひどい会社に入ってしまっては意味がありませんので、しっかり情報収集をしてほしいと思います。
執務室の見学ができるかどうか確認
待遇面を含めた諸条件の確認ばかりでなく、雰囲気やどんな人がいるのかの確認も重要です。
多くの方が年収UPなどが転職目的になるのですが、そこばかりに目が行き、他の部分の条件が悪化して後悔するケースは結構多く見ています。
職場の雰囲気や人柄などはちょっと見学したくらいじゃわかるものでもないのですが、しないよりはマシです。
むしろ、1回なんとなく執務室を見させてもらって、そのときにかなり嫌な予感、悪い感じを受けた場合、要注意の職場であるケースが多くなっています。
大外れの職場を回避するためにも、最終面接前後で中を見せてもらえないか、あるいは実際に働いている人と会う機会がもらえないか、確認してみましょう。
こうしたことはエージェントに相談すると、やってくれる場合があります。
転職はしやすいが求人を見つけるのは難しい
経理の求人そのものが非公開で募集されるものが多いので、一般的な求人サイトのみを利用していると選択肢が限定されると言わざるを得ません。
特にハイクラス寄りのポジションを目指す経理の方であれば尚のことです。
M&AやIPOなど企業の重要な意思決定が背景にある場合は、なぜ経理を募集するのかが詳しく書けない場合も多いため、非公開求人を持っている転職エージェントの力も借りながら活動すると良いでしょう。
MS-Japanは有名なのでご存じかもしれませんが、管理部門の転職実績はかなり高くなっています。
同社の場合、公認会計士の転職支援を行っている関係で、IPO関係のポジションから大手上場企業まで広く経理の求人を保有しているという特徴があります。
希望を叶えようと思ったら、幅広い選択肢から選んでいくことも重要です。
また、高いレベルの方を求める求人を保有しているエージェントを使う必要があります。
そういった意味では、登録しておかないわけにもいかないと言えるため、利用を検討してみてください。
他にもエージェントはあるので、エージェント関連のページもご参考ください。
経理の求人
経理の求人をお探しの方は経理の求人情報ページもご覧ください。