世界経済のボーダレス化により「ヒト・モノ・カネ」が国境を越えて行き交う国際的取引が大企業のみならず中小企業にまで広がっています。
国境を越えた取引が行われる場合には、その取引から生じた所得がどちらの国で課税されるのか、はたまた両国で課税され二重課税となってしまうのか等、国際間の税務問題が生じます。国際税務という言葉の明確な定義はありませんが、そのような2国間以上の税務問題を扱う分野をいいます。
税理士のキャリアという視点でも国際税務は注目の分野となっておりますので、ここでは、税理士の国際税務の業務の基礎事項と転職で国際税務に関わる方法について見ていきたいと思います。
目次
国際税務の仕事の全体像
先ほども述べたとおり「国際税務」に明確な定義は存在しませんが、あえてそれに定義づけしてみましょう。国際税務とは大きく分けて3つの業務をいい、
①国境を越える取引(特に親子会社間)に存在する税務リスクの軽減
「移転価格税制」や「国外関連者寄附金」、「タックスヘイブン対策税制」への対応などがこれにあたります。海外子会社に対し通常より安価もしくは無償での商品譲渡や役務提供が行われれば、日本に入ってくるべき税金が海外に逃げてしまいます。また税率の低い国で会社を設立しそこへ収入を移してしまった場合も同様です。こういった国際的租税回避に対する税務当局の対応は強化の一途をたどっているため、それに対抗するだけの理論武装や価格設定を提案できる税理士への需要は高まっています。
②課税地国の決定と租税条約の運用
例えば日本の会社が外国で何かしらの収入を得た場合、その収入はどこの国で課税されるのでしょうか?それとも両国で課税されるのでしょうか?国際取引を行うとこのように課税地国の問題が必ず生じますがこれを解消するために租税条約が日本と外国の多くとの間に締結されています。その租税条約を理解・運用することで課税地国の決定、税率の決定を行っていく、こうした業務も国際税務の範囲となります。
③国際的二重課税の排除
先ほどのように日本の会社が外国で収入を得た場合、日本とその外国の両国で課税される場合が非常に多いです。
一つの収入に対し両国で課税されるのは不合理ですから二重課税を一重課税に直していく作業が必要です。
「外国税額控除」や「外国子会社の受取配当等の益金不算入」などの業務がこれに該当します。これらの税務申告書の作成はとても難解ですから税理士の関与が必要です。
ご覧いただいた項目以外にも、海外子会社に出向する従業員の出国時や帰国時の所得税の扱いなど、国際税務と言葉では簡単ですがその実務は非常に広範囲に及びます。
会計事務所の規模ごとの国際税務への対応
ひと昔前までは企業の海外進出やそれらに係わる国際税務は大企業に限られていたため、税理士として国際税務に携わるのもBig4税理士法人などの一部の大規模事務所に限られていました。
しかしながら昨今は中小企業において海外進出も増えており、海外進出とまではいかなくとも海外の法人や個人との取引は急増といってよいほど増えています。
中堅・中小の会計事務所でも国際税務の知識は必要となりつつあり、実務経験も積むチャンスはあります。
ただし前項の①の移転価格税制へのリスク対応などは取引価格の相場や相手国のビジネス慣習等、単なる税務知識いがいの要素も必要となるため海外ネットワークが豊富なBig4税理士法人などの大規模事務所でないと難しいかもしれません。
しかし②や③、課税地国の決定や外国税額控除の実務などは中堅中小事務所でも関与している顧問先次第では十分に実務経験を積むことは可能です。
とはいえ大半の事務所はまだ国際税務への対応が不十分であり、この分野に自信のある事務所はHPなどで国際税務業務をアピールしているでしょう。
参考にされるのも良いかもしれません。
今後国際税務は税理士のマストアイテム?転職・キャリアについて考えてみる
事業の規模を問わず特に企業における海外進出や海外取引が増えていることはすでに十二分にご理解頂いたかとは思います。
この流れは今後増えることがあっても減ることはありません。さらには進出するだけでなく海外から外国人や外国法人がどんどん日本にやって来ています。
国際税務への需要は高まる一方であり、ごく一部の税理士だけが行っていた業務であるというのはもう昔の話です。今後の税理士としてのキャリアを考える上で国税税務の知識と実務経験は税理士を名乗る以上はマストアイテムとなる日もそう遠くはないかもしれません。
また、グローバル展開する事業会社の内部には税務室を構えているところも少なくありません。
そうした税務室への転職なども視野に入れた場合、単純な税務の経験のみならず連結の実務経験や高い英語力が求められます。
こうした企業への転職となると現状ハードルはかなり高いのですが、先のことを見据えながらキャリアを積んでいくことで、幅広いフィールドで活躍できる税理士になれるのではないでしょうか。
英語が苦手だけど国際税務にチャレンジしたい税理士はどうすればいい?
国際関係業務をやっていきたいと考えているが現時点で英語が全然できないと難しいのだろうか?と疑問を持つ方もいらっしゃいます。
私の知っている税理士で、TOEIC300点代からわずか1年あまりの勉強で英語のレベルを大きく上げ、税理士法人の海外支社へと勤務し、その後、海外で独立された方がいらっしゃいます。
その方は中学の英語からやり直したようです。
当然、かなりの勉強をしたようなので、楽な道ではなかったと思いますが、不可能ではないでしょう。
また、転職時点では高い語学能力がなかったとしても受け入れてくれる事務所はあります(とはいえTOEIC等では700点は欲しいですが)ので、チャンスはあります。
税理士の国際税務関連の求人は意外と多い
国際税務というと転職先としてBig4税理士法人などの大手税理士法人をイメージされる方も多いのですが、昨今は少数精鋭の国際税務を取り扱う会計事務所も増えており、転職の幅は広くなってきたように感じます。
こうした少数精鋭で運営されている小規模な会計事務所であっても、国際税務をメインに取り扱っているケースでは待遇も良いケースが大半なので、転職先としては有りだと感じます。
こうした事務所がどこで求人募集をしているのかというと、一般的な求人媒体を活用しているケースもありますが、それほど積極的に多くの募集者を集めたいわけでは無いケースが多いため、非公開で転職エージェントに依頼していたり、後は自社サイトのみで応募を受け付けているケースもあったりします。
なので、地道に探していく必要はあると言えます。
待遇面がしっかりしている事務所はエージェントを活用するケースも多いため、税理士向けの転職エージェントの利用などもしておきましょう。
以下で一例をご案内しておきます。
国際税務や英語を活かした業務がしたい税理士向けの転職エージェントの一例
グローバル企業を相手にしているBig4を始めとする大手税理士法人のみならず、中小企業を相手に国際税務を取り扱う中小規模の会計事務所が増えています。そうした事務所は中小でありながらハイレベルな業務・ハイレベルなコンサルティングを行っているので、今後自身が独立するという視点にたった場合や、スキルを伸ばしていきたいと考えた場合には良い職場でしょう。
年収もBig4税理士法人ほどまではいかないまでも、それなりにもらうことはできます。
そのため、そうした国際税務を取り扱う会計事務所に転職したい税理士向け転職エージェントを紹介します。
国際税務に強い会計事務所への転職はもちろん、グローバル企業などの求人も取り扱っており、税理士事務所での経験と英語が活かせる事業会社の経理部門の求人や税務室の案件なども多数あるようです。
求人数が豊富なので、広い選択肢の中から転職先を選ぶことができます。
国際税務と一口に言っても各事務所で得意領域が異なり経験できる業務も違ってきます。クライアントの質も違う傾向です。
そのため、各会計事務所の特色を理解しているMS-Japanに相談することで、あなたが思い描く国際業務の経験がつめる事務所へ転職が可能となるでしょう。
また、国際分野で行くとBig4税理士法人からの転職先で困る方も多いのですが、そうしたケースでもMS-Japanであれば事業会社も含めて求人が豊富なので転職先が見つかりやすいため、おすすめです。
国際税務というとBig4税理士法人を思い浮かべる方も多いのですが、昨今は中小企業での国際税務ニーズは強いので、Big4等の大手税理士法人だけでなく、少数精鋭でやっている会計事務所で国際が経験できるケースも多いことから、将来の独立等も見越した経験を積める転職先なども増えており、Rexでは広く税理士業界の求人を保有していることから、国際税務の経験がつめる求人やキャリアの相談という視点で役に立つアドバイスが貰えるでしょう。
会計業界での転職サポートに関してはご存じの通り実績はかなり豊富であり、利用したいエージェントの1つと言えます。
大学との共同研究による独自開発の「AI」を用いた転職診断が行えます。
豊富なデータに基づいた解析を行っており、AIと専任のエージェントがスピーディーにあなたの希望にマッチしたあなただけの求人を提案してくれます。
Big4の求人は自身で見つけられるかと思いますが、それ以外の中小・中堅規模の会計事務所で国際税務をやりたいとお考えの方など、幅広く国際関係の求人をサーチしたい方にはとても良い転職サービスでしょう。
たった5分のAI転職診断であなたにぴったりの転職先を見つけることができるので、この機会に転職診断をしてみてはいかがでしょうか。
※転職診断等のコンテンツは会員登録後に利用できるようになります。
国際税務や海外進出支援のコンサルティングを行っているファーム等の募集もあります。
特にBig4税理士法人からの転職の場合、年収で折り合いがつかないという方もいるでしょう。
そうした方は一般的な転職サイトではBig4より年収の高い求人というのはそれほど出てくるものではありませんので、こちらのサイトに登録しヘッドハンターなどを活用しましょう。
国際税務に絞ってここまで見てきましたが、キャリアの幅が広い職業ですので、税理士・税理士科目合格者の転職先はどんなところがある?の記事なども見て頂けましたら幸いです。
求人情報
税理士向けの求人情報は以下よりご参考頂けます。
・課税地国の決定と租税条約の運用
・両国で課税された場合の二重課税の排除