※本記事は元々2021年に執筆しましたが、社会情勢の変化が目まぐるしく、適宜修正を行っています。
そのため、加筆・修正を加えながら編集しておりますので少し文章のつなぎ目がおかしくなったりするところがあるかもしれませんがご了承ください。
公認会計士に限らず、現在でも転職市場は超売り手有利の状況が続いています。
大手の人材会社の調査によると、2019年4月の数値としてはIT分野では有効求人倍率が6倍を超えており、技術職だけに限って言えば8倍を超えています。
その後、コロナの影響も有り一時有効求人倍率等は低下しましたが、現在では結局のところ極度の人手不足に陥っており、比較的求人が少ないと言われていた会計・経理系であっても現在はかなり募集は多いです。特に公認会計士の採用領域は売り手市場が続いていると言えます。
一方で、特別なスキルを要しない傾向の強い単なる事務職の有効求人倍率は1倍をきるなど単純業務を行うポジションはほとんど需要がなくなりつつあります。
会計業界(監査にかぎらず)でも単純業務はAIを始めとするテクノロジーに置き換わって需要が無くなっていくと言われております。先ほど記載した通りまだまだ人手不足が目立つ状況ではありますが、単純な仕訳や機械的なチェック業務に関していえば随分と労働時間が短縮できるようになってきています。
監査法人ではまだまだ採用意欲は旺盛です。
※2019年終盤に差し掛かり追記しますが、監査法人での採用意欲は普通くらいかなと感じます。
地方に行くと、採用しない、というところも出てきておりますので大手監査法人ではそろそろ止まってくるかなという印象もあります。
※2022年現在追記しますが、監査法人は人手不足なので今のところ転職・就職は問題ありません。2024年3月時点でも採用需要は高いです。
ただ、一方で税務の現場では記帳業務しかしないパート人材の需要は減りつつあるように感じています。パートさんも足りない状況ではあるのですが、どこかの段階で一気に効率化されそうな雰囲気はあります。
少しずつですが、状況は変わってきています。
数年前であれば、採用側もとにかく人手不足を埋めるためにえり好みなく採用するケースは多かったのですが、最近は人手は足りないものの採用を厳選する動きも見えてきています。
そのため、転職市場は空前の売り手市場と言われておりますが、そんな中でも転職できない人もチラホラ見かけるようになりました。
仕事柄、スタートアップ企業を始めとして、エンジニアの採用をお手伝いすることも多いのですが、有効求人倍率が8倍を超えるような職種でも転職できる人といつまで経っても転職できない人がおり、人手不足だから簡単に転職できるものでもなくなっていくのかなと感じております。
また、エンジニアを採用する傍ら、IPO準備企業等では公認会計士も採用したいという企業も多く、会計士の方とお会いすることも多いのですが、エンジニア等の技術職と公認会計士や税理士などの士業の方は、一見全く違う分野に見えて、スキル重視であったり、職人気質でスペシャリストを目指す人がいたりと、意外と共通点も多いので、似たようなところもあるなと感じています。
ただ、それ故ベンチャー企業の面接では不採用になる会計士も多く、会計士じゃない方を採用するケースも増えています。
会計士じゃない方が良いね、という声も増えているので、転職市場だけの問題ではなく、スキルセット・マインドセット含めて転職市場を考えていく必要が今後は出てくるでしょう。
ここでは、技術職等の他の職種の転職動向も参考にしつつ、公認会計士の転職市場を見ていきたいと思います。
目次
人材不足は続くが、転職の要件は上がっていく
エンジニアなどの技術職と同様に、おそらく公認会計士の転職マーケットも売り手市場はしばらく終わらないかと思います。
事業会社への転職という視点で見ると、会計・ファイナンス・内部統制等のプロフェッショナルを採用したいという企業は多い中、採用できずに困っている企業もまだまだ多いです。
人手不足という問題ももちろんありますが、提示される給与が低く敬遠されるということが多くて人が集まらない傾向もあります。
実際大手の企業でも、会計士のスキルが活かせる重要ポジションの職種求人があるのですが、年収650万円~900万円程度と提示されることが多く、給与を重要視される方はこれならコンサルにいた方がマシということで、興味はあるものの転職しないというケースは多くあります。
そのため、会計士の方も転職しませんし、企業側もなかなか採用に至らないというケースが増えています。
ただ、上記のようなケースでいくと、必ずしも会計士である必要はないので、会計士以外の方をアサインしてハマるケースも増えております。
人事担当の方もなんとなくこのポジションに合うのは「会計士だろう」ということで会計士を募集するのですが、会計士じゃなくても大丈夫だよと教えてあげると採用枠が埋まることは多いです。
そのため、会計業界以外での求人動向を見た場合、会計士でも良いというポジションは多いものの、逆に見れば会計士じゃなくても問題はないので、徐々に面白そうなポジションはうまっていきます。
会計士の方は口では年収に拘らないといいつつも、監査法人時代の年収に慣れているのでなんだかんだ年収を気にする方が多いのも要因の一つです。
そのため、今は募集はたくさんあるものの、徐々に会計士だからといって転職先が豊富にあるという状況はなくなっていくでしょう。
後は、年収とスキルのバランスが悪いということも要因としてあり、事業会社へ転職するケースでは年収の高さほどスキルやマインドが高くないという意見をもらうことも最近は多く(マインド面での差が特に激しいと聞きます)、意外と落ちるケースも増えてきました。
ちなみに事業会社と言っても、経理部門等での転職は現状でも問題ないかなと感じており、作業的というかルーティングな業務が多いポジションでそれでいて専門知識が必要となる部門ではまだまだ需要は大きいと感じております。
ビジネスマインドやクリエイティブな仕事が求められるポジションでは一部の会計士の方は引く手数多なのですが、最近の若い方の場合、積極性やスキルが乏しいという意見も多いため、マインドセットを変えていく必要はあるように感じています。
それこそBIg4監査法人に現在勤務しているのであれば、系列のコンサルティング会社やFAS、後は独立系の会計系コンサル等で揉まれて修行するのも良いかと思います。
監査法人にいても正直それほど外に出て役立つスキルは身につかないので、監査法人からいつか転職するのであれば早めに動いておいた方が良いでしょう。
これらのことに関して、逆の見方をすれば、単純にマインドやスキル向上を目指した取り組みを行っていれば、会計士として大手監査法人での勤務経験等は正直経歴としては大きいので、他の一般の方よりも有利に働き、転職はしやすいかと思います。
転職市場は人手不足が続きますが、「会計士の資格を持っているから転職できる」という求人は減っていき、経済動向や企業動向に合わせたプラスアルファーのスキルとマインドの変化は求められていくでしょう。
そういう意味において、今ほど転職が楽にできるという状況は少なくなっていくと思います。
実際今は転職するのかなり簡単ですので動くなら今かなと個人的に思います。
転職を少しでもお考えのケースでは以下の記事も参考にしてみてください。
良いところがあれば転職したい、の良いところは少なくなっていく
一方で、良いところがあれば転職したいと考える方は、エンジニアにも公認会計士にも多いのですが、希望や条件に見合う企業があった際に、そこに転職できる人材も限られていく傾向にあります。
企業の担当者に話を聞きましたが、採用人数そのものをKPI等の指標においていた企業においては、マインドの低い人の採用を増やしてしまった結果、仕事が円滑に進まなくなり、管理職層の疲弊が大きくなり、かえって状況が悪くなったという話も一部ではあります。
今後も採用を厳選されていく動きは少しずつ出てくるのではないかと考えております。
公認会計士でいけば、ベンチャー企業へ転職したいとお考えの会計士も多いのですが、そうした方の中にはスキル不足の方ももちろんいるのですが、それ以上に先ほど記載したようにマインドセットなどのヒューマンスキルの部分が足りない方が多い印象です。
後は、ビジネスセンス・ビジネス志向の方も意外と少なく、財務・会計・ファイナンスの勉強はよくしていて知識も豊富なのですが、ビジネスへの理解が足りない方が多いように感じます。
数字を通した企業価値の判断はできても、ビジネスの目線を加味した考え方ができない人はいらっしゃるのかなと感じました。
エンジニアとの違いという面でいくと、エンジニアの場合、コミュニケーション能力は最低限あればいいという考えの企業も多く、技術力重視なのですが、公認会計士の場合、コミュニケーションやプレゼンテーション能力を求められることも多いです。
経営者とのコミュニケーションも重要になりますし、お客様の利益を追求するための動きも重要です。
提案していく姿勢も必要になりますので、そのあたりの足りない部分を補っていかないといけない人も多いのかなと感じています。
確かに財務・会計の知識は優れているのですが、そのあたりは資格をお持ちでなくても詳しい方はおり、その他の部分で大きく優れている方もいるので、そうした方々と転職市場で競争していく必要はあります。
そうした方々と比べられた際に、転職できないというケースは出てきているように感じます。
財務・会計の分析はAIで出来るから会計士はいらないという話も聞きますが、
原理原則を理解し、正しく判断を下す人材はまだまだ必要で、そうした部分においては会計士の知識は間違いないと思うので、
監査法人から出て仕事がしたい人は、財務・会計以外にどういったスキルが必要になってくるのか、一度しっかり情報収集し、外の世界を知ったうえで監査法人での業務に取り組んだり、他の足りない分野の勉強をしたりしたらかなり伸びるのではないかと感じました。
※もちろんマインドもビジネスの勉強をしている会計士の方がたくさんいることも知っています。
少し長くなってしまいましたが、公認会計士が転職しようとした際に、現状テクニカルスキルというよりは、マインドやコミュニケーション等の部分、ビジネスへの理解という部分で転職が叶わない方がいらっしゃる傾向にあり、こうした部分で転職できなくなってくる人は増えてくるのかなと感じています。
監査法人や会計系のコンサル以外では基本的に公認会計士じゃなくても良いポジションが大半なので、そうした方々に負けないようにしていかないと、売り手市場だけど希望する転職先に転職できないというケースも今以上に出てくるかなと感じています。
転職時の年収要求が高すぎる
監査法人は非常に年収が高く、監査法人から転職しようと思ったらなかなか年収で折り合いがつかないことも多いかと思います。
実際ベンチャーに転職すると600~700万円程度というところも多く、年齢が上がれば上がるほど年収の折り合いはつき難くなるでしょう。
上場企業でも監査法人程年収がでるところは多くありません。
企業側もそこまで高い金額払ってまで普通の公認会計士が欲しいというケースは少なくなっていくので、年収で折り合いがつかなくて転職できないケースは増えるのかなと思っています。
このケースだと、最近の傾向だと一般企業ではなく、最終的にコンサルティング会社へ転職される会計士の方が多いのですが、良い判断じゃないかなと思っています。
特にM&Aのアドバイス等を行うコンサルティングを経験しておくと良いかと思います。
コンサルティング会社であれば監査法人と同程度の年収が貰えるという点とM&Aに関する業務を行っておくと一般企業へ転職するにしても独立してコンサルやるにしても今現在はとても需要が大きいので、それなりの年収が貰えるかと思います。
ただ、このM&Aの領域も公認会計士以外の方々が活躍している領域であり、やはり財務DD以外にも法務やビジネスデューデリ、経営者を見る目など様々な要素が必要となります。
PMIで問題が起きるケースもよく見ており、特に国外のM&Aにおいては再PMIを行うケースも増えているので、様々な視点でのスキルアップを目指すことで、ビジネス市場での価値は上がっていくのではないでしょうか。
このあたりもレックスアドバイザーズのような会計士に精通した転職エージェント等からスキル要件等を聞いて転職に備えておくと良いでしょう。
公認会計士の転職市場はしばらくは売り手有利が続くものの、そこまで超売り手市場が続くわけではない
少し本題と趣旨がズレてしまったかもしれませんが、人手不足は今後も続いていき、転職マーケットは売り手市場が続くものの、楽々転職できるという相場は続かないのではないかなと感じています。
時代の流れとともに求められる要件は変わり、当然それは公認会計士といえど避けられないことなので、勉強熱心な公認会計士が多いので言うまでも無いかと思いますが、アンテナをはりスキルアップしていく姿勢を持つことが重要かと思います。
ただ、現時点においては、公認会計士を求める企業は多く、キャリアチェンジ、キャリアアップを目指した転職は比較的しやすい傾向にありますので、売り手市場が終わるかどうかを考えるよりは、この先どのようになっていきたいかを軸に転職先を考えていくのが良いでしょう。
会計業界での転職であれば超売り手有利な状況は続く
監査法人での採用意欲は普通くらいだと思うのですが、それ以外の会計事務所系のコンサルティング会社やFAS等では会計士を超積極採用しています。
特にM&A等の領域では人手が不足しており、割と簡単に転職できます。
監査以外のスキルを身につけたいという方は多いのですが意外と腰が重く転職に至らない方も増えています。
監査法人でももちろん手をあげればいろいろなことにチャレンジできる傾向にはありますが、それでも特性上関与できる範囲は限られており、潰しがきくスキルというのは身につき難いです。
一度外に出てチャンレンジしてみるのも良いかと思いますので興味のある方は諸先輩方の意見も聞きつつ、会計士ではない第三者の方の意見も聞いてみると良いでしょう。
後は転職エージェントは転職した会計士がその後どうなったのかまでを見ていますので、どのようなキャリアを歩んでいるのか参考に聞いてみても良いかと思います。
情報収集するにあたり、転職エージェントや転職サイトの利用をお考えの方は以下の記事もご参照ください。