IPOが活況ということもあり、IPO準備企業を中心に常勤監査役へと転職される会計士が増加しているように感じます。
特に女性の公認会計士での事例が増加しており、監査法人での働き方に疲弊したケースで魅力的に映る場合があるなど、ワークライフバランスを重視する方にマッチする傾向にあるように思います。
その一方で、ベンチャーという不安定な基盤であるが故の注意点や経営者の志向性とのミスマッチというのも多く発生しているように思います。
ここでは、ベンチャー企業を中心として、常勤監査役のポジションへ公認会計士が転職する場合の注意点などを見ていきたいと思います。
目次
子育て中の女性会計士など、ワークライフバランス重視の方に常勤監査役のポジションがマッチ
IPOフェーズや企業の状況によるところはあるものの、ポジションの傾向として、週3日程度の稼働であること、在宅勤務がそれなりに認められていること、就業の時間についても融通がきくという特徴があります。
こうした条件から、年収はある程度抑えられてしまうのですが、働きやすさという視点で見た際は家庭を重視したい女性の公認会計士にマッチするケースが多くあり、子育て中の主婦の会計士の方とマッチングする傾向にあります。
稼働が少ないから楽な仕事、責任がない仕事というわけではなく、公認会計士としてプロフェッショナルの立場で経営陣に提言していく必要があるため、やりがいやスキル、キャリアという視点からも悪くありません。
そのため、公認会計士からみても需要のあるポジションとなっています。
女性を採用したい求人企業側とのニーズマッチ
ほとんどのケースで、基本的に女性会計士を採用したいというオーダーが大半です。
男性不可としているわけではありません。
ただ、求人募集の特性と企業側の状況から女性の採用が必要となっているケースが多くなっています。
ベンチャー企業の場合、キツイ労働が多くなりがちなので、女性が集まり難い場合があります。
そのため、管理部門の管理職(役員)や常勤監査役などのポジションに女性を入れたいという意思が潜在的にあります。
監査法人からの転職が可能
ベンチャー企業の要職の場合、監査経験だけだと不十分なケースも多くありますが、常勤監査役のポジションは監査法人からの転職者でも十分活躍が可能です。
ベンチャーの常勤監査役は大手企業とは違い、自身で手を動かしてできる感じの人の方が好まれます。経営陣に対して具体的な指示や改善案を提示できるレベル感が必要であり、そうなると割と最近まで監査法人で勤務していた会計士はマッチすると言えます。
監査法人での繁忙期の働き方がきつくて厳しいと感じている会計士は多いかと思いますが、その一方で監査的な業務は嫌いではないという方もいらっしゃいます。
そういったケースでは、中小監査法人も選択肢に入ってくることもあるのですが、違ったキャリアとして、常勤監査役を選択されるケースもあります。
監査法人とは異なり、経営者に直接提言などを行うポジションであり、また自分の行動が企業経営に直結するので、やりがいと責任という意味では違った大変さと楽しみがあります。
監査はきらいではなかったが、そこではないフィールドのキャリアも、と考えている方にもおすすめできるポジションです。
常勤監査役の仕事内容
そもそも常勤監査役の仕事内容はなんでしょうか?
大きな分類としては、業務監査と会計監査があります。
ベンチャー企業の場合、各種規程からしてない場合が多いので、法定監査すらままならない状況だと想定されます。
そうした「ないないずくし」の状態から、最低限のレベルにしていくにあたって、内部管理体制を整えるための提言などを行っていくような仕事です。
なお、企業の業務に携わることはありません。あくまで監査役として監査する立場です。
常勤監査役に就く前に、経営者・経営陣と話をする機会を設けておく
実際に仕事をするにあたっては、経営陣とのコミュニケーションが多くなります。
経営者が必ずしも人間性に優れているとは限らず、売上が凄い伸びていてもちょっとこの会社とは関わりたくない、と思うような場合も結構あると思います。
コンプラ意識の欠片もないといったら語弊があるかもしれませんが、問題のある人というのは結構いますので、経営陣の人柄、考え方、ビジョンなどは確認しておくようにしてください。
経営陣と信頼関係が築けそうにないなと思ったら、やめておいた方がいいです。
常勤監査役の年収(ベンチャーの場合)
常勤監査役の報酬は結構幅が大きいのですが、週3、4ぐらいの稼働で1日5、6時間稼動というものが多い印象となっています。
そういった場合の年収は約400~600万円程度かなと感じます。
役員なので、いわゆる従業員ではないため契約になることから人により異なります。
ただ、相場感はあります。
このあたりはエージェントなどにも相談をしておいた方ががいいでしょう。
IPOできずに終わるケースも多い
常勤監査役のポジションに限った話ではないのですが、ベンチャー企業は経営基盤が脆いです。
すごい伸びていると思ったら急にしぼんで破綻というケースもあります。
ワークライフバランスが取りやすいなど、メリットばかり記載してきましたが、先程記載した経営者との相性含め、キャリアとしてのリスクは多少あることを理解した上で転職するようにしましょう。
特に経営者との相性は重要なので、繰り返しになりますが、しっかりと事前の面談を組むようにしてください。
ベンチャーの常勤監査役は転職エージェント経由でも求人が多い
上場企業の常勤監査役は人的ネットワークによる紹介で成立するケースが多いのですが、ベンチャーの場合は転職エージェント経由での採用も多いです。
特に公認会計士が良い、というケースが多いことからそうなっています。
また、IPOするにあたっては常勤監査役以外にもCFOや管理部門長、経営企画、経営管理責任者、上場準備責任者など各種の採用が必要なため、ついでに募集するケースも多くあります。
そのため、エージェント利用も検討してみると良いでしょう。
マイナビ会計士、MS-Japanあたりを登録しておけば問題無いかなと思います。
常勤監査役以外に、大手事業会社(経理等)を考えているならマイナビ会計士やMS-Japanなどの事業会社求人が多いところを利用しましょう。
ベンチャー界隈はいろんなところに求人を出すため複数登録しておくと良いかと思います。いずれにせよ、常勤監査役はエージェント経由での転職が可能です。
常勤監査役も含め、ワークライフバランスが取りやすい先への転職を検討しているという相談をしてみましょう。
常勤監査役のキャリア
そのまま当該企業の監査役としてキャリアを構築したり、他の企業の社会監査役や会計事務所を自分で立ち上げ、監査を行うケースなど様々です。
ただ、監査法人の経験しかないまま常勤監査役になったケースなどにおいては、コンサルティングファームなどで経験を積んだ会計士よりもキャリアの選択肢は狭まる印象がありますので、もっと先の将来まで考えた場合はどうなのか?ということも考えてみた方がいいかなと思います。
ワークライフバランス的には良いかもしれませんが、あなたが思い描くキャリアがどんなものか、しっかりと考えましょう。
そういった意味でも、先程記載したようなエージェントに相談しておくのは悪くないかなと個人的には思います。
ワークライフバランスが魅力なら常勤監査役ではない方がマッチすることもある
働きやすさという視点から常勤監査役に興味を持つ公認会計士が多い印象なのですが、そこが転職の主目的であるならば、他の領域への転職も検討した方が良い場合もあります。
例えば、近年であれば中小監査法人へ転職し、ワークライフバランスを実現しているケースも増えています。
常勤監査役よりも監査法人で働く方が合っているという方も少なくありません。
IPO準備企業はリスクも大きいため、精神的な面での安定を求めるならば、別の業界の方がマッチすることがあります。
こうしたことも踏まえて転職先を検討すると良いでしょう。
ワークライフバランス転職にあたっては、マイナビ会計士などの会計士のキャリアを比較的良く知っているエージェントに相談した方がミスマッチは少ない印象です。
単に働きやすさだけを重視すると、別のところで後悔することも多いので、広い面で提案してくれるエージェントを利用した方がいいかと思います。
転職相談にあたっては、常勤監査役だけでなく、事業会社経理や中小監査法人など、働きやすい職場(あなたの状況に合わせた)を探しているという形で相談されると良いでしょう。
ただ、ワークライフバランス感を出しすぎるとエージェント相談時は大丈夫かもしれませんが、面接ではマイナス印象を与える可能性があるので、そのあたりはご注意ください。