コンサルティングファームへの転職に興味のある会計士は多く、各ファームでの仕事の違いや求められるスキルの違いなど各種コンサルへの転職に関して気になっている事項は多いかと思います。
ここでは、公認会計士のコンサルへの転職に関する市場動向や各コンサル領域の特徴、転職に当たっての注意点について説明していきたいと思います。
目次
- 1 会計士のコンサルへの転職は売り手市場ではあるがハードルはやや上がっている
- 2 会計士の転職先としてどのようなジャンルのコンサルティングファームが考えられるのか
- 3 現実的には財務・会計系コンサルティングファーム(FAS)へ転職する会計士が多い
- 4 戦略系のコンサルティングファームへと転職する会計士もいる
- 5 ハンズオンでガッツリ支援を行う再生系のコンサルティングファームへ転職する会計士も
- 6 なぜコンサルなのか?失敗を避けるためにも転職の動機は明確にしておいた方が良い
- 7 どのコンサルへ転職するかでその先のキャリアも変わってくる
- 8 コンサルへ転職するとワークライフバランスが取れない?
- 9 コンサルティングファームへと転職したい会計士が活用すべき転職エージェントや転職サービスについて
会計士のコンサルへの転職は売り手市場ではあるがハードルはやや上がっている
ここ数年はM&Aに係わるコンサルティング分野で会計士の採用需要が高まっており、当該領域においては大手から独立系中小のコンサルまで広く選択肢がある状況です。
その他の領域においても採用需要は高く、各種領域で会計士の採用は増えており、転職マーケットが売り手市場だったことからもなかなか人材確保できないコンサルティングファームも多くなっていました。
そのため、多少経験が足りないと思われるケースでも、確かな財務・会計スキルをお持ちの会計士資格者であれば対応可能な案件もあることから会計士の採用は多少上向きであったことは間違いありません。
また、戦略系コンサルティングファームにおいては依然として転職の難易度は高いものの、ここ数年は若干採用のハードルが下がっていた時期もあり、会計士の方で応募されるケースにおいても書類選考で門前払いというケースは少なく、チャレンジできるケースもありました。
戦略系のコンサルティングファームなどの通常なかなか突破できない領域への転職を希望されている方にもチャンスは広がっている時期ではあります。
ただ、直近は社会情勢や国際情勢が不安定であり、一概にこの転職のしやすい状況がずっと続くとは言い切れない要素も増えてきています。
会計士の転職市場を全体的に見れば売り手市場であることに変わりはないのですが、2020年頃までの超売り手市場と呼ばれていた時期よりも多少選考のハードルは上がっているという認識は持っておいた方が良いでしょう。
今後も引き続き売り手市場が続くことが予想されており、現時点では採用は多いのですが、少し状況が変わってきていることだけはご認識ください。
そのうえで会計士のコンサル業界への転職について見ていきましょう。
会計士の転職先としてどのようなジャンルのコンサルティングファームが考えられるのか
コンサルと言っても様々なジャンルがあります。
ほとんどの方がそれくらいは知ってるよ、と思うかもしれませんが念のため最初に簡単に見ておきましょう。
なお、分類については各人によって解釈が異なるケースもあろうとは思いますが、説明の都合上という部分もあるため、一定度認識に違いがあってもご了承ください。
- 財務・会計コンサル(FAS等)
- 事業再生系コンサル
- 戦略コンサル
- シンクタンク系コンサル
- 総合コンサル
基本的に会計士が転職するコンサルとしては、「FAS」「再生」の2つかなという印象です。
もっとも、FASと再生など明確に分けられるものでもないのですが、再生系のコンサルの場合ハンズオン主体のところも多く、仕事の進め方や求められるものも大きく違う傾向がありますのでここでは分けて考えています。
現実的には財務・会計系コンサルティングファーム(FAS)へ転職する会計士が多い
他の記事でも記載しましたが、監査法人の経験しかない会計士の場合、FAS等の財務・会計のコンサルティングを行う会社に転職するのが一般的です。
Big4系のFASが最も一般的な転職先の一つとなります。
- デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
- KPMG FAS
- PwCアドバイザリー合同会社
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
※EYは従来まではEYTASにてFASを行っていましたが、コンサルのEYACCが統合され、2020年10月にEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社となりました。
監査法人で3~6年勤務した会計士で「なんとなくコンサルっぽいことやってみたい」と言うような方はBig4FASへ転職するケースが多くなっています。
結局のところ、公認会計士としてのスキルを活かす・伸ばすという方向性で考えると、財務・会計に関連したコンサルティングファームへの転職が一番リスクが少ないと考えられます。
また、待遇面を考えても監査法人から転職すると多くの場合年収が落ちてしまうのですが、年収を落とさず、尚且つこれまでの業務経験が活かせてその先のキャリアまで見据えてとなるとBig4FASが最もポピュラーなコンサルっぽい仕事ができる転職先となります。
特に監査法人からの転職であるならば監査と似通った業務プロセスである財務DD・バリュエーションなどの業務は経験を活かしてコンサル業界へと入っていくことができる業務内容となり、チャレンジしやすいのも要因としてあるでしょう。
その先のキャリアの汎用性も含めて考えると、財務・会計系のコンサルティング会社へと転職を決めるケースが多いです。
ここではBig4Fasが一般的であると記載しましたが、志向性によっては独立系の中小FASの方がマッチするケースもあるため、FASについて詳しく知りたいという方は以下の記事に記載しておりますのでこちらを読んでください。
同じFASでもファームごとで経験できる業務領域は大きく異なり、財務DDしかやっていないというような方もいらっしゃいます。
コンサルで何がやりたいのかにより転職先は大きく変わってくるのでしっかり情報収集を行いましょう。
戦略系のコンサルティングファームへと転職する会計士もいる
戦略系のコンサルティングファームに興味を持たれる会計士の方もいらっしゃいます。
ただ、採用のハードルは高く、売り手市場とはいえ簡単ではありません。
コンサルティング業界において、先ほど記載したFASをはじめとして各コンサルティングファームでは専門知識を持った人材の需要は大きく、特に財務・会計のスキルをお持ちの会計士がすぐに活躍できるフィールドは多く存在していることから採用需要は基本的に高いのですが、戦略系コンサルの場合、どちらかというと専門領域のスキルは活かしにくくなっています。
財務分析に関するスキルは確かに有用なのですが、それらだけでは仕事になりません。高い論理的思考能力とビジネススキルが要求される業務であるため、財務やファイナンスのスキルに関するアピールだけでは足りません。
ビジネスセンスが要求されます。
そのため、監査法人での勤務の経験しかない会計士の場合このビジネスセンスや知識が大きく欠けているケースが大きく、不採用になるケースは多いでしょう。
ただ、これらの能力は面接で確認される事項なので、書類選考に突破できればチャンスはあると考えられます。
書類選考では、学歴・語学力・職歴が主に確認のポイントになるのですが、学歴は最低ラインが早慶・旧帝大卒となります。
語学力はファームによるためなんとも言えませんが、ビジネスレベルでの語学力が要求されるケースがほとんどです。
職歴に関しては、大手上場企業やグローバル企業等の大企業を相手に業務をしてきた経験が求められますが、Big4監査法人等での勤務経験があればこの要件はみたせているのではないかと考えられます。
いずれにせよ、多少足りない部分があったとしても書類審査で問答無用に落とされるということは少なくなってきているので、チャンスはあると言えます。
書類選考に突破した後では、一般の企業の面接とは異なり、ケース面接が行われますので、専用の対策が必要になることから、転職エージェントやヘッドハンターなどから詳細な情報を入手しておくことをおすすめします。
ハードルは確かに高いのですが、チャンスはあるのでご年齢によってはこの機会にチャレンジしてみても良いでしょう。
- ボストンコンサルティンググループ
- マッキンゼー
- ATカーニー
ハンズオンでガッツリ支援を行う再生系のコンサルティングファームへ転職する会計士も
クライアントとじっくり向き合って人と人とのコミュニケーションをとり、反応が見える仕事がしたいという方に人気の転職先です。
監査法人にいると人の顔が見えず、反応がわからないためイマイチやりがいにかけると感じている方も多いのですが、ハンズオンでみっちりクライアントと向き合うことで、自分自身がどれくらい役に立っているのか感じながら仕事を遂行することが出来るでしょう。
こうしたコンサルティングファームの場合、担当者が一気通貫でクライアントとやりとりをするケースも多いので、財務・会計・ファイナンスの知識だけでなく、その他の経営に関する知識、例えば法務やビジネスモデル、マーケティングに関する知見も身につき、かなりレベルアップできます。
監査法人から転職するケースにおいては、知識不足、経験不足により初めは苦労することも多いかと思います。
ただ、こうしたコンサルファームは様々なジャンルのプロフェッショナルの方が働いているので、仕事を進めながら刺激を受け、成長していけることは間違いありません。
- 経営共創基盤
- AGSコンサルティング
- 山田コンサルティング
- GCA
- フロンティア・マネジメント
- アドバンスト・ビジネス・ダイレクションズ
※ジャンルの線引きが難しく、一部解釈の違いがある可能性があります。
ジャンルごとに代表的なコンサルティングファームも記載しましたが、同じ領域でもファームごとで内容は全然違いますので、エージェント等からしっかり各社の特徴を聞いて転職先選定を行うようにしてください。
なぜコンサルなのか?失敗を避けるためにも転職の動機は明確にしておいた方が良い
コンサルと一口にいっても本当に様々です。同じ領域のファームでも仕事の進め方やクライアントの性質が異なるので身につくスキルも変わってきます。
先ほど記載した通りハンズオンで経営者と膝を突き合わせて難題の解決策を探っていく重たいコンサルもありますし、どちらかと言えば分析主体であまり経営者等とガッツリ絡まないポジションのコンサル求人もあります。
何がしたいのか、なぜコンサルなのかを今一度自分に問い、どういったコンサルティングファームがマッチしやすいのか整理しておかないと早期退職も有り得るので注意しておきたいところです。
監査法人に勤務しているとクライアントの顔や全体像が見え難いという悩みをお持ちの方は多いため、監査法人から転職するならクライアントの顔が見えるコンサルという仕事が良いということでコンサルを希望されるケースもあるのですが、そうしたケースにおいてコンサルティングファームの中で財務DDばかりやるポジションに就いてしまうとそれはそれでミスマッチとなります。
また、なんとなくコンサルっぽいことをやってみたいぐらいの感覚のケースで顧客先へ常駐しガッツリ二人三脚でやっていく見たいなコンサルの案件のところへ転職すると、それはそれでミスマッチとなります。
業務内容・経験できる内容なども重要なのですが、あなたの性格的な部分も含めてコンサルに合うかどうか、なぜコンサルなのか、その辺をしっかりまとめてマッチするコンサルティングファームへ転職するようにしましょう。
コンサルといってもいろいろあります。
どのコンサルへ転職するかでその先のキャリアも変わってくる
コンサルといっても何をコンサルするのかによって経験値は変わってきますし、同じようなジャンルのコンサルでもクライアントの業種や規模などによっても変わってきます。
また、業務の遂行方法もファームごとで異なり、キッチリ分業で行っていくところもあれば一人の担当者が全体を見ながら進めていくケースもあります。
そのため、コンサルへ転職する前に、その後どうなっていたいのか、ちょっとでもいいので考えておくと良いと思います。
例えば、会計士の場合であれば将来ベンチャー企業のCFOになりたいという希望を持つ方もいらっしゃるのですが、そうした方が積んでおいた方が良い経験というのもありますので、それに即したコンサルティングファームというのもあります。
そうした具体的にどのようなキャリアパスがあるのかといったことは転職エージェント等に相談すると様々な事例をもとに参考意見をもらうことができ、どこのコンサルティングファームへ転職すると叶えやすいのかなどの情報を知ることができます。
コンサルへ転職するとワークライフバランスが取れない?
コンサルには興味があるが残業の多さが気になるという会計士の方は意外と多いです。
コンサルに転職するとワークライフバランスはとれないものと思えと言われることも多いのですが、近年は必ずしもそのようなことはありません。
もちろん案件にもよりますし基本的には忙しいファームが多いのは間違いありませんが、働き方に柔軟性を持たせるファームも増えており、例えば在宅OKなコンサルもありますし、時間に縛られずに働くことができるコンサルもあります(担当する案件や部門等によるところもあります)。
会計系のコンサル案件はリモートで対応できるものも増えているので、時間の確保という意味では昔と比べると融通が利くようになり、自分の時間は持ちやすくなったと言えます。
どのようなコンサルになりたいのかにもよるので一概には言えないものの、働きやすい環境を整えているコンサル会社もありますので、コンサル経験を積みつつしっかり自分の時間も欲しいといった方は以下の求人等を参考にしてみたり、転職エージェント等に相談してみると良いでしょう。
また、コンサルを経験することで将来的に働きやすい環境へ身を置きやすくなる可能性が高まりますので、今現在だけを考えるのではなく、将来的なところも含めてワークライフバランスを検討してみると良いでしょう。
ワークライフバランスを主軸にお考えの会計士の方は以下も合わせてご参考ください。
コンサルティングファームへと転職したい会計士が活用すべき転職エージェントや転職サービスについて
コンサルティング会社の採用選考では特殊な面接が組まれるケースもあるため、自己応募ではなく転職エージェント経由で応募することをお勧めします。
特に戦略コンサルなどでは専用の対策が必要になるケースがあるためしっかりと面接準備ができるような体制で臨みましょう。
また、公認会計士がコンサルティングファームへ転職する際に関しては、そもそもコンサル業界についての知識があまりないというケースも多くなっていますので、求められるスキルセットや具体的な仕事内容、各ファームの特徴など全体像を把握することも必要となってくるでしょう。
そうした方の場合は転職エージェントに相談してみると良いです。
会計士がコンサルへ転職するという視点においての各コンサルティングファームの特徴やファームごとの差異等も詳細に聞くことができます。
以下に公認会計士がコンサルティング業界の転職する際に良さそうな転職エージェントを記載しておきますので興味のある方はご参考ください。

エージェントサービスではありませんが、戦略コンサルをはじめとして、ハイクラスの求人を多数保有している転職サービスです。
企業や上質なヘッドハンターからスカウトが届く転職サービスとなっています。
戦略系コンサルをはじめとして、ハイクラスの求人に応募したい方は必ず登録しておくべき転職サービスです。
こちらのサービスは無料プランと有料プランがあるのですが、有料プランに登録すると転職希望者(あなた)の方からヘッドハンター等に相談を持ち掛けることができます。
無料プランの場合は、スカウトを待つという、待ちの姿勢での転職活動になります。
普通に登録すると無料での利用になるので、まずは無料登録を行い、スカウトを待つのが良いと思います。
その間に転職エージェント等から情報収集を行い、エージェントとビズリーチを併用して活動するのが良いでしょう。
準備が整い、本格的に活動することになった際に有料プランに移行することで効率よく転職活動が行えるでしょう。
なお、ヘッドハンターの方は多くのハイクラス人材の方と接点を持っており、役に立つ情報をたくさん保持しているため、
かなり勉強になります。
そのため、こちらも登録しておくと将来的に役に立ちますのでおすすめです。
一部ですが会計士がコンサルへと転職する際に利用するエージェントについて記載させていただきました。
エージェントに関する情報は以下で記載しておりますので、詳しく見たい方はこちらをご覧ください。
なお、公認会計士の転職先はコンサルティングファームのみならず、事業会社や会計事務所など幅広いため、コンサルティングファームに興味はあるけどまだどこに転職するか決められていないという方は以下の記事も参考にしてみてください。
公認会計士のコンサルティングファームへの転職実績が近年高まっています。
特に20代から30代中盤の方の転職実績が豊富で、コンサルにチャレンジしてみたいという方は必ず登録しておくべきでしょう。
Big4系FASをはじめとして、会計士としてのスキルを活かしたコンサルティングにチャレンジしたいという方には特におすすめで、監査法人からコンサルティングファームへの転職という点においては、高い実績を誇ります。
その後のどのようなキャリアを歩んでいるのかといったところまでしっかり把握しているので、キャリアに悩んでいる方が相談するのにも良いでしょう。
書類や面接対策等の転職サポートも手厚いのですが、業界動向や転職に関するお役立ち情報の提供などにも力を入れているため、
はじめに利用する転職サービスとしてもっともお勧めできます。
FAS以外への転職に興味のある方も、現在のスキルや経験で内定の可能性はあるのか、公認会計士としてのスキルがどの程度有効なのか、そうしたものを確認する上ではとても良いでしょう。
コンサルへの転職にあたっては会計士の転職に強いエージェントを使わなければならないわけではありませんが、他の公認会計士がどのように転職していったのか確認する上でも一度は相談しておくべきでしょう。
公認会計士のコンサルティング関連の企業への転職実績は豊富なので、コンサルへの転職を考えているのであれば登録しておくのも良いでしょう。