会計業界は昨今の売り手市場という流れもあり、求人が豊富で非常に転職しやすい状況にあります。BIG4を始めとする大手税理士法人はもちろんのこと、中堅、中小、資産税(相続・事業承継)、国際税務を取り扱う専門特化型の会計事務所、コンサルティングファーム、一般企業へも転職がしやすくなっています。
また、この機会に専門スキルを伸ばすにも未経験の業務にチャレンジするのにも良い市況だといえます。今回は税理士有資格者及び、税理士科目合格者の求人動向について説明します。
目次
2018年、税理士・会計業界の転職・求人動向総ざらい
2018年の税理士及び科目合格者の求人動向は確実に良くなっているといえるでしょう。特にその変化が顕著に出ている点として、資格保有者を絶対の条件としないところが増加していることです。
求人市場に買い手、売り手という言葉があり常に変化があることから現在の売り手市場には理由があります。その背景を理解した上で今の会計業界が転職に向いているという事をきちんと理解して頂ければと思います。
なぜ売り手市場になったのか、要因を挙げます。
・リーマンショック
・アベノミクス
・人材不足
・受験者数の減少
この4つの要因が現在の売り手市場に繋がっているのです。流れを説明します。
まず2008年のリーマンショックにて会計業界もその影響を受けます。
結果として、大手監査法人はじめ会計業界全体が採用を絞りました。
この頃は就職氷河期と呼ばれ、公認会計士論文試験合格者でさえ就職できない事態に陥っています。
そこからアベノミクスにより2014年には買い手・売り手どちらも均衡する状態にまで回復し、現在は日経株価平均がバブル崩壊後の最高値を記録するほどになっています。
しかし過去の資格を取っても就職できないという背景(トラウマ)から税理士や会計士の受験者数は年々減ってきており、税理士試験の受験者数は平成24年度の48,123人から平成28年度の35,589人まで減っているのが事実です。
それらに加えて、そもそもの労働人口不足という問題も関連し、税理士をはじめとする会計事務所業界の人員は極端に不足している状況なのです。
つまり、リーマンショックで採用を絞ったがその後の景気の回復に合わせた人員の確保ができていない状況であり、
今後も受験者数の減少は続くと思われるため売り手市場はしばらく続くとみられています。
転職市場で求められる税理士・税理士科目合格者の資質とは
2019年も上記のような流れから売り手市場であることに違いは無いですが、そこであわてる必要は無いとゆっくりしていたら良い転職はできません。
なぜなら求められる能力も変わるからです。
これは会計業界に限ったことではないのですが、資格よりもどれだけ実務で動けるかということが重視されています。
税理士で言えば数字に誠実に向き合うことは大切ですが、顧客とどれだけ向き合うことができるか、ひいては昨今の時代の流れに合わせてダイナミックに対応できる人間力が必要とされています。
会計業界にも着実に浸透しつつある「Fintech(=ファイナンス・テクノロジー)」や「AI」、「クラウド」などはまさにそれを表しており、時代の流れとともに会計業界に求められる技術も、人間の資質も異なることを認識しましょう。
そして今後も続くと思われる売り手市場に向けてどのような準備をする必要があるのか見ていきましょう。
今後の税理士業界はスペシャリストの時代?
現在の会計業界はBIG4を始めとする大手税理士法人はもちろんのこと、中堅、中小、資産税(相続・事業承継)、国際税務を取り扱う専門特化型の会計事務所、コンサルティングファーム、一般企業へも転職がしやすくなっています。
つまり転職者にとっては圧倒的に有利な状況なのです。
そこで具体的に今後必要とされる人材がどのような人材なのかピックアップしていきます。今はまだそのレベルに無くとも転職してからだって目指せるんだという事を認識してください。
ずばり必要な人材はスペシャリストになります。具体的に例を挙げると社会福祉法人、資産税、IT、英語です。
もちろんこの他にも必要とされる能力はあるので自分の興味のある分野に進むのがベストです。
では詳しく見ていきましょう。昨今の社会情勢を見ていると高齢化に歯止めが効かなそうなことは誰もが感じています。
そのため社会福祉法人と資産税に関する需要はものすごく高まっており、実際に求人の割合も増えています。
次にITですが、大手企業はもちろん、中小企業でもITツールを活用し、業務効率化や付加価値を高めようと社内改革を行っています。
当然会計事務所側もこうした動きに対応して行かなければなりませんが、未だにITに強いという会計人は少ないといえます。企業の財務内容を扱う仕事のため当然ある程度のIT知識は必須だといえます。
最後に英語ですが、日本でも会計基準のコンバージェンスが進んでおり業界全体が将来的には国際化の波にさらされることは必至です。
しかし現時点で英語を使える会計人の数は十分とは言えないため需要がかなりあると言えます。
しかし税理士も前提としてコミュニケーション能力があることが重視される時代になる
スペシャリストとしてのスキルは確かに重要なのですが、これから先はコミュニケーション能力が極めて重要で、むしろコミュニケーション能力が高いことが前提となってくるかと考えられます。
そのため、顧客折衝や営業的なことをやりたくない、という理由で税理士の道を選んだ方は恐らく淘汰されていくでしょう。
確かに、国際税務や資産税などの特化したスキルというのは有望なのですが、それら一つひとつを取ってみても、作業をする部分に関しては単純なものも多く、ルールさえ把握すればある程度誰でもこなせるようになるものが多いです。
そのため、こうした一見専門的で複雑そうに見えるジャンルの業務であっても、ルールさえ把握できれば出来てしまう作業に関しては、AIやRPAにより代替されていくと考えられています。
しかし、代替されるのはあくまで作業の部分であり、顧問先の経営者等とコミュニケーションをとる部分の業務はなくならないでしょう。
結局、AIやRPAが発達し、作業が単純になったとしても経営者や顧客の不安がなくなることはありません。
そのため、この先は、顧客に寄り添ったコンサルティング業務を行い、不安の解消や未来の展望を一緒に考えていける税理士が生き残っていくと考えられます。
資格があれば大丈夫、という時代はもう終わっています。
週刊誌などが書いているように、記帳代行やって税務申告するという単純業務だけで生き残っていくのはこれから先困難でしょう。
ただ、税理士としての経験や知見を活かして働いていくことは、十分可能だと思いますし、
むしろ、コミュニケーション能力の低い税理士が正直多いので、こうした部分を伸ばしていくことで逆に大きく仕事を増やしていくことができるでしょう。
大手税理士法人から専門特化型の会計事務所までどこも転職がしやすい状況
今やBig4税理士法人でも1科目、2科目合格の方から採用していますし、ハイレベルな資産税業務を行っている事務所でも、
以前は5科目合格している人じゃないと採用しない、と言っていたにも関わらず免除や科目の方の採用も始めています。
出来る人を採用するという考え方から、育てていくという方向に考え方がシフトしています。
もちろん、人気の会計事務所や税理士法人は簡単に転職できるわけではありませんが、それでも採用のハードルは低くなっており、
新たなことにチャレンジしたい方にとっては今がチャンスの時期です。
これまで自身がなく躊躇していた方も、今の転職市況であれば希望の税理士事務所へと転職することも可能な状況ですし、
新たな環境に身を置いてみよう、と考えていた方にとっても良いでしょう。
何かを変えたい、と考えていた方にとってはとても良い状況が到来しています。
税理士・税理士科目の転職マーケットは売り手有利だが求められるスキルは変わってきている
以上、税理士及び科目合格者の求人動向について見てきましたが、はっきり言えることは税理士資格をもっているだけでは時代の波に取り残されるということです。
最近では、資格の有無というよりは、スキルや経験を重要視する企業や会計事務所が増えてきています。
資格を持っていなくとも、付随して必要とされる能力を磨くことで今後一生大事にされる人材になれることは間違いありません。
こうした付加価値の高い税理士になるべく、様々な業務にチャレンジしてみてください。
現在お勤めの会計事務所や企業ではなかなかスキルアップができないということでしたら、転職を考えても良いでしょう。
新しいことにチャレンジするには良い状況ですので、こうした時期にチャレンジして自分を高めていってください。
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