新卒で監査法人へと入所し、修了考査の前後で次のキャリアについて考え始める方は非常に多いです。
最近では監査法人から転職される公認会計士の方は非常に多いため、外に出た会計士の方から様々な情報や意見を聞く機会も増えていることもあるのか、刺激を受けて転職を焦るケースも少なくありません。
ただ、監査法人でも学べること・経験できることはたくさんありますので、ご自身がどのようなキャリアを歩んでいきたいのか、どのような会計士になりたいのか、
よくよく考えたうえで次の転職を決めることをおすすめします。
周りに流されて転職をしてしまうのはあまりよくありません。
監査法人から飛び出して成功している方もたくさんいますが、それと同じくらい、やっぱり監査法人にいればよかったと感じている人もいるのです。
1年も経たずに監査法人への出戻り転職を相談しに来る方も多いです。
なので、イメージだけで転職するのではなく、しっかり情報収集を行い、根拠のある決断をする方が後悔がないでしょう。
公認会計士は比較的じっくり時間をかけて転職活動をされる方も多く、半年~1年かけて情報収集を行い転職される方も少なくありません。
本記事では、公認会計士が転職するタイミングや転職に適した時期に関してみていきますが、現在の業務の状況や今後どのようなキャリアを描いていきたいかによって大きく変わってくるためケースごとにわけて見ていきたいと思います。
キャリアの形成という視点と会計士の業務の都合という2つの視点で見ていきます。
目次
はじめに:コロナ前と後で状況が違う
初めに、転職市況について簡単に記載させていただきます。
2013年頃から2020年初め頃(コロナ前)までは超超売り手市場(転職者有利)が続いていた状況であり、会計士資格を持っていればほぼ内定間違い無し、という求人も正直多くありました。
FASを始めとする会計コンサル分野では会計士の転職のハードルはものすごく低くなっていたので、タイミング・年齢に関わらず転職がしやすい状況でした。
長くこの状況が続いていたのでこれが当たり前、という感じになっていましたが、コロナ以降超超売り手市場から、やや売り手市場くらいに変わりつつあります。
そして、今まで監査経験しかない30代以降の方も比較的簡単に転職できていたのが、転職先のフィールドによっては難しかったりするケースも増えているので、しっかりエージェント等から最新の情報を収集しつつ転職活動されるのが得策です。
会計士の場合、他の職種と比べれば年齢はそこまで大きく影響しませんが、それでもフィールドによってはなんだかんだ年齢が上がると転職しづらいのは今も昔も変わりありません。
これらの若干の状況の変化を加味した上でご覧ください。
キャリア形成の視点で会計士の転職のタイミングを考えてみる
監査業務経験は確かに一定程度評価されますが、年齢が高くなると、会計業界から外に出て働くことを考えた際にスキル不足と捉えられ転職できなくなるケースもあります。
そのため、あなたがどのような業務をやりたいかによって転職するタイミングは変わってくるでしょう。
基本的な考え方としては、ビジネスよりの仕事がしたい方や会計士でなくても良い仕事をしてきたいのであれば早めに監査法人から転職してしまって問題ないです。基本的に監査の経験はそんなに評価されません。
一方で、財務・会計を中心とした業務を行っていくのであれば、それほど転職を焦る必要はなく、監査の経験も評価されます。マネジャー等の管理職経験等も評価の対象になるでしょう。
M&Aや事業再生等のFA業務業務がやりたい会計士の転職時期
こうした業務がやりたいという会計士の方は非常に多いのですが、監査法人での経験が評価される一方で、会計士ではない方も広く活躍しているフィールドでもあり、このケースでは比較的早めに監査法人から転職してしまって問題ないです。
M&Aや再生に関する業務は財務デューデリジェンス等の一定部分において監査業務の経験が活かせるため、監査法人での経験も評価されるのですが、あくまで部分的な話になり、新しい知識やスキルの習得も求められるため、年齢が高くなるにつれて転職がしにくくなる傾向にあります。
財務分析やモデリング、ファイナンス、ディールマネジメントなど新しい知識の習得も必要になるため、若いうちに転職した方が良いでしょう。
そのため、公認会計士資格を取得した段階、もしくは監査法人の経験が4、5年程度というタイミング(20代中盤~30代前半あたりまで)で転職活動を始めるのが一般的には良さそうです。
監査経験も3年程度あれば問題無いと判断されるケースが多いため、監査法人で3年~5年程度経験を積んでいる会計士であれば転職を考えても良いでしょう。
なお、Big4系のfasやその他監査法人系のfasへの転職ということであれば、30代前半から中盤あたりまでなら監査の経験しかなくても、現在の転職市況であれば転職が可能です。
この場合、インチャージの経験やマネジャー経験も評価されるため、30代のタイミングでも転職は十分可能です。
ただし、FASの先のキャリアまで考えている方は、今すぐの転職をお考えでなかったとしても、いちど転職エージェント等から情報を仕入れておいた方が良いでしょう。
年齢が上がってしまったからと言って、ダメになるわけではありませんが、どうしても年齢が上がると求められるスキルも違ってくるものです。
そのため、あなたが考える業務において、どのようなスキルが必要になるのか?年齢により求められるものが変わってくるのか?情報を仕入れるためにも一度会計士の転職に詳しいエージェント等から情報を仕入れておくと良いです。
特に2014年~2020年頃までは異常な売り手市場が続いていたので、年齢が高め(30代中盤)の会計士でもかなり各種コンサルで採用されるケースは多かったのですが、新型コロナ以降の転職市場は、超売り手市場でなくなりつつありますので、キャリアを考えるうえではある程度若いうちの方が良いです。
※現在超売り手市場ではありませんが市況はやや良くなりつつあり、会計士は転職しやすい状況は続いています。30代中盤以降の会計士の方でも転職実績はまだまだ多いです。
このあたりの分野の転職マーケットは変化しておりますので、情勢や内情に詳しい転職エージェント等から話を聞いておくと良いでしょう。
なお、将来投資銀行に勤務することを視野に入れてこの分野への転職を検討される方もいますが、投資銀行への転職はハードルが高いので以下も合わせて確認ください。
投資銀行に転職したい
監査法人の経験しかない会計士の場合、年齢が上がれば上がるほど転職は難しくなります。
20代中盤(25,6歳前後)までに転職する必要があるでしょう。
ただし、投資銀行への転職の場合、年齢の問題に加えて学歴と語学力が求められるため、非常に狭き門となっています。
外資系投資銀行のみならず日経の投資銀行でもクロスボーダー案件は増えているため、英語ができる方の方が好まれる傾向にあるでしょう。
30代の場合、スキルによっては転職が可能ですが、この場合公認会計士の転職という点で行くと、FA業務の経験は必須と思われます。
投資銀行への転職の場合、応募要件を満たしていたとしても、面接のハードルも高いため、面接対策等を行ってくれる転職エージェント等を利用し、しっかり準備をして転職活動に臨んでください。
事業会社で経理・財務や経営企画ポジションに転職したい会計士の転職時期
事業会社への転職を検討される会計士の方が近年では最も多いでしょう。
特に多いのが経理・財務への転職です。
ポジションや企業によるところもあるので、一概には言えませんが、新しい知識の習得は求められるものの、監査経験が十分に活かせるので、インチャージの経験やマネジャーとして勤務した経験もそれなりに評価されます。
そのため、20代若手の方が転職しやすいものの、30代前半でも転職ができます。
注意点は、事業会社への転職の場合、年齢が上がれば上がるほど年収面で折り合いがつき難くなっていくところです。
30代で監査法人勤務となると年収が1000万円を超えてくる方もいらっしゃるかと思いますが、
事業会社ではそんなに高い年収は出ません。
年収はスキル・役職次第ですが、100万円~250万円程度は年収が落ちることを覚悟しておきましょう。
その分監査法人よりも優れた福利厚生があるケースは多いので、総合的な判断が必要となります。
20代の公認会計士の場合、年収ダウン幅が許容範囲であるケースも多いので、若手であれば比較的転職がしやすいとは思いますが、監査法人よりも年収の上り幅が遅いので、年収を気にされるケースでは注意しておきましょう。
企業の給与体系や既に転職している公認会計士がどのような待遇になっているかなどは、転職エージェントが情報を持っているので、エージェントに聞いても良いておくと良いです。
経営企画等のポジションの場合、企業により求められるスキルや業務内容、収入が大きく異なるため、注意が必要です。
経営企画の場合、年齢というよりはスキル・知識が重要となり、財務・会計・ファイナンスに関する知識のみならずビジネススキルも求められる傾向にあるため、コンサルティング会社での勤務経験を積んでから転職するのも良いでしょう。
ベンチャー企業等でIPOに携わりたい会計士の転職のタイミング
ベンチャー企業のCFOとしてIPOに携わりたい!という方もいます。
ここ最近は20代、30代前半でベンチャーのCFOとして活躍している方も増えています。
ベンチャー企業の経営者は若い方が多く、年齢が近くて気が合う優秀な方を求める傾向にあるので、若い方の活躍が増えているものと考えられます。
ただ、40代の方でもマインドが若ければ問題ないことも多いので、スキルや実年齢も確かに重要ですが、マインドセットの方が重要かもしれません。
経験という面で見ると、監査法人での経験が、年数でいえば5年程度あれば、スキル的には問題ないのではないかと考えられます。
このケースにおいては、当然監査法人にてIPO支援関連の業務に携わっているかと思いますが、スタッフとしての経験だけだと、一般的な監査業務経験とそれほど変わりないため、自分が主として動く経験を積んでおくのが良いかと思います。
金融機関や証券会社との折衝の場に出れるくらいまでにはなっておきたいところです。
また、実際に上場させた経験を持っておくと尚良いかも知れません。
年齢というよりは、こうした経験をした後に転職を考えるのが良いでしょう。
いちスタッフとして割り当てられた業務だけを淡々と行っている経験だけだと、少々苦しいと思いますので、もう少し監査法人で経験を積んでも良いでしょう。
早く業務経験が積みたいという人は、大手の監査法人ではなく、中堅規模の監査法人に転職しても良いでしょう。
中堅規模の監査法人の方が早い時期から多くの経験を積むことができます。
そのため、あえて中堅監査法人へと転職される方もいらっしゃいます。その場合、年齢は若い方が良いでしょう。
監査法人から直接ではなく、コンサルティング会社での経験を積んだ後ベンチャーのCFOとして転職するケースは多いでしょう。
20代中盤あたりでコンサル会社へ転職し、3,4年経験を積んで30代に差し掛かるあたりにCFOとして転職される方も多いです。
IPOのみならず、M&Aや資金調達など幅広い業務を行う必要があるため、コンサル会社での経験は有用です。
現在のご年齢から逆算してキャリアを構築してみると良いでしょう。
いずれにせよ、このケースでは転職先企業との出会いも重要であり、あなたが転職したいと思っても、なかなか企業と出会えないという問題も多くあります。
また、企業や経営者を見る目も重要となります。
IPOを目指していたものの頓挫することも少なくないので、企業を見る目も養うという点で、監査のみならずコンサルなどへ先に転職し、ビジネスに関する知見も高めておくのが良いのではないかと思われます。
実際に、監査法人からベンチャー企業のCFOとして転職したものの、転職した先の企業のビジネスモデルがそれほど魅力的ではなく、IPOを断念するケースというのは多いです。
そのため、ビジネス視点のスキルを伸ばすという意味で、先ほど紹介したコンサル等を経験しておくのも悪くないでしょう。
だいたい20代で監査法人から転職し、コンサルを経験して30代前半から30代中盤あたりまでにベンチャーのCFOになる方が多い印象です。
ベンチャー企業への転職では、タイミング・縁が重要となりますので、粘り強く自身に合いそうな求人が出てくるまで情報収集を行うようにしてください。
ここまで、キャリア形成の視点から公認会計士の転職のタイミングを見てきましたが、情報収集にあたっては会計士専門転職エージェントの活用も視野に入れている方もいるかと思いますので、以下にまとめておきます。
情報収集をするだけでも問題はありません。
公認会計士の業務都合から転職時期を考えてみる
ここからは、公認会計士の業務の都合を軸に転職時期を考えてみたいと思います。
主に監査法人に勤務する会計士が多いとは思いますが、勤務先により繁忙期が異なるため、転職に動き出せるタイミングは勤め先や担当によりまちまちでしょう。
監査法人に勤務する会計士の場合
3月決算の企業が多いことから5月末あたりまでは転職活動ができないという会計士が多いのではないでしょうか。
そのため、6月から実際に転職に動き出す会計士が多いです。
次のプロジェクトにアサインされ時が経ってしまうとまた転職が1年後に、なんてことも考えられるため、早め早めの動き出しが重要です。
転職エージェントを利用する会計士の方の場合、6月にエージェントに登録をする方も多いのですが、
賢い方は、6月からすぐに動き出せるように、その半年前の12月~3月あたりに転職エージェントに登録し、情報収集される方も多くいます。
自身の担当の決算月がどこに多いかにもよるかと思いますが、転職エージェントに登録し、情報収集するだけであれば、それほど時間もとられないので、なんとか時間をみつけて相談し、内容に基づいた情報を送ってもらうという方も多いです。
エージェントを利用するにしろしないにしろ、情報収集や書類の作成の準備には時間がかかるので、可能であれば早めに動き出すのが良いでしょう。
そして、6月に動き出し、月内に内定を取る方も少なくないです。7月になると少し忙しいと思うので、8月に決定される方も多いです。
転職エージェントを活用する際は、会計士の転職事情に詳しいエージェントを利用することで、業務理解も深いことから転職活動がスムーズに行えるでしょう。
なお、現在の転職市況であれば、1年中転職すること自体は可能で、どの時期が転職しやすいとかそういうものはありません。
あなたのタイミングで転職を考えればよいでしょう。
事業会社やコンサルに勤務している方の場合の転職時期
このケースだと、正直ケースバイケースなので、一概に定義するのが難しいです。
ただ、事業会社の経理部門であれば、決算前後は当然忙しいでしょう。
経営企画部門であれば、期の変わり目は予実のチェックや来期の計画などで忙しくなるため、この時期に転職活動を行うのは難しいです。
そのため、自身が務める企業の年間スケジュールを意識して転職活動を行うようにしてください。
コンサルティングファームへ勤務されている方は、かかわっているプロジェクトや担当企業により大きく異なります。
いずれのケースにしろ、現在行っている業務に支障が出ては問題になりますので、余裕をもった転職活動のスケジューリングをたてることをおすすめします。
会計士の場合、忙しい方が多いので、面接の設定から日程調整まで何でもサポートしてくれる転職エージェントを活用される方が多い傾向にあります。
エージェント側も平日の夜や土曜日に転職相談を行ってくれるので、うまく活用しましょう。
公認会計士の転職のタイミングや時期はあなたの描くキャリア次第
キャリアの考え方は100人いれば100通りの可能性があり、一般化するのは少し難しいのですが、
どこかのタイミングで自身のこれまでと将来について考える時間をとってみても良いと思います。
思い描くキャリアがあるのであれば、逆算して転職時期やタイミングを考えて見ても良いでしょう。
ただ、そろそろ先のキャリアについて考えてみようと思ってはいるが、
やりたいこともないし自分には何ができるのかわからないからどうすればいいのかわからない、
という方も多いです。
そうなってくると、転職時期やタイミングを考えてみる前に、いろんな人に会い、様々な可能性を探っていくのが良いと思います。
公認会計士の集まりなんかもありますので、そうしたところで話を聞いてみても良いでしょう。
フェイスブックやツイッターなどでコンタクトをとるのも有りです。
意外と返事をくれたりします。
また、ここでは転職エージェントの紹介もしましたが、エージェントに相談してみても良いです。
彼らは多くの会計士のキャリアを見ているので、意外と有用な意見をくれるものです。
会計士に詳しい転職エージェントであれば、転職ありきではなく、キャリアや可能性をしっかり相談できるところがほとんどです。
とにかくたくさんの人に会い、情報を入手ししっかり分析してみてください。
※大手総合型の転職エージェントということもあり、事業会社やコンサルを始めとして様々な転職先の情報をお持ちです。
多くの公認会計士の転職支援を行っているので、転職後のキャリアパスまで含めて転職相談できるのは良いでしょう。
転職活動に不安のある方は面接対策や書類作成サポートも行ってくれるのでおすすめです。
・MS-Japan
※税務を経験しておこうと思っている会計士は会計事務所の求人数がトップクラス且つ事務所内情までしっかり教えてくれるこちらのエージェントを利用しておきましょう。もちろんご存じの通り事業会社の転職にも強いので広い選択肢から検討したいケースでもおすすめです。
・ヒュープロ
※AIと膨大なデータを活用した転職サービスを提供しています。
非常に効率的に情報収集・転職活動が行えるので、忙しくてなかなか時間がとれないという方やとりあえずどのようなところへ転職できるのか知りたいという方におすすめです。
※キャリアの視点による適切な転職時期のアドバイスはもちろんのこと、長期的なキャリア・転職支援も得意としているので、無理に転職を急かされることもなく落ち着いて転職について考えることができます。キャリアだけでなく生活視点(ライフイベント等)も交えたアドバイスも必要に応じて提供頂けるので、頼りになる存在と言えるでしょう。
・
マイナビ会計士
※大手総合型の転職エージェントということもあり、事業会社と会計士向けコンサルの求人が豊富です。転職ノウハウと情報はかなり持っているので、キャリアの相談や年齢ごとに応じたキャリアパス、転職事例を聞くのに良いでしょう。
・MS-Japan
※会計士の転職支援の歴史が長い企業です。会計事務所で税務経験しておこうかなと思っている会計士の方はこちらは登録しておくと良いでしょう。会計事務所に非常に詳しいので年収落とさずに税務経験しつつ独立に備える際の助けになってくれます。
・ヒュープロ
※AIと膨大なデータを活用した転職サービスを提供しています。
AIとデータで客観的な見地から現時点であなたにマッチする転職先の紹介をスピーディーに受けられるため、市場価値を知りたいといった会計士の利用も良いかと思います。