公認会計士試験論文式に合格し、監査法人で仕事を始めたばかりの頃は補習所や日々の業務を忙しくこなすだけで精一杯なのが通常です。
ただ、監査法人に入所してから数年が経ち、修了考査も終わって職場での仕事に慣れてくると、私生活を犠牲にして仕事に打ち込みすぎているのではないか、家庭や子供の将来を考えるとより良い職場があるのではないか、といった疑問が浮かんでくることがあります。
そうしたことが契機となって仕事と生活を上手に両立させるためのワークライフバランスを真剣に考えるようになります。
それを実現するための方法の1つが転職です。
ここでは転職という視点で公認会計士が理想的なワークライフバランスを実現するためのポイントやホワイトな転職先について見ていきます。
なお、数年前まではワークライフバランスといえば大手事業会社への転職一択だったように思うのですが、近年は各所でワークライフバランスが取りやすいところが増えています。
目次
- 1 会計士の主な転職先ごとのワークライフバランス概況
- 2 自分の考えるワークライフバランスを具体化する
- 3 基本的に事業会社がワークライフバランスは取りやすい傾向
- 4 女性会計士でワークライフバランスを求めるなら常勤監査役が最近は狙い目
- 5 監査法人でもワークライフバランスがとれる転職先はあります
- 6 コンサルはワークライフバランスが取り難いが人によっては狙い目のポジションも
- 7 会計事務所への転職でワークライフバランスを実現することもできるが会計士がキャリアを作る上では難しい部分も
- 8 ワークライフバランスを実現しつつ年収も下げたくない会計士の転職
- 9 公認会計士がワークライフバランスがとれる環境に転職するために
- 10 ワークライフバランスを実現したい公認会計士向けのおすすめの転職エージェント
- 11 参考文献
- 12 その他関連記事
会計士の主な転職先ごとのワークライフバランス概況
かつては激務で体調を崩してしまう監査法人勤務の会計士はそれなりに多かったかと思います。
近年は、繁忙期は忙しいものの、昔と比べれば激務では無くなってきているような話を聞くこともありますが、それでも根本的な人手不足や監査手続きの複雑化していることなどを考えると、現在でも相変わらず忙しいことに変わりはないのかなと個人的には思っております。
そのため、ワークライフバランスを求めて転職を検討する会計士が比較的多くいらっしゃるものと考えます。
特にマネジャー層はかなり忙しくなっているのでその前後の役職まで上がってきた方の転職者は多いです。
監査法人での働き方や各種制度も改善されているとは思いますが、時代の流れとともに監査法人以外の環境も各領域ごとで良い意味で変化しておりますので、まず初めに最近の会計士の主な転職先ごとのワークライフバランスの概況についてザっと見ておきましょう。
転職先業界 | ワークライフバランス概況 | 転職の注意点 |
---|---|---|
監査法人 | 繁忙期はかなり忙しいが通常期は以前と比べれば随分と改善されたと思われる。繁忙期明けに長期休みが取れるのは特徴。ただ、繁忙期が忙しすぎて無理という方も多い。マネジメント者の能力によっても忙しさは変わってくる。 スタッフ層の業務は昔と比べれば改善されたとの話を聞くが、その分マネジャー層にシワ寄せが残業が増えた傾向。 Big4監査法人はなんだかんだ忙しくワークライフバランスはとりにくいと感じている人は多い。それ以外の中小中堅監査法人はワークライフバランスがとれ尚且つ兼業OKだったりするところもある(全部の中小がそうなわけではありません)ので、ワークライフバランスという視点だけで見た際は自分にとって良い転職が出来るケースもあり、監査法人でホワイトな環境を見つけることも不可能ではない。 |
ワークライフバランスだけを考えるのであれば、Big4以外を検討する必要がある。中堅まで含めて見ればワークライフバランスという視点では監査法人勤務もそこまで悪くないのですが、先のキャリアや福利厚生まで含めたトータルで転職先を検討すると避けたい転職先であることも多いので広い視点で検討する必要しないと後悔することもある。 |
事業会社 | コンプライアンス意識の高い大手上場企業の経理・財務や経営企画であれば比較的ワークライフバランスも取りやすく、尚且つ女性会計士が結婚や出産後に復帰しやすい環境も整っている。拘りがないケースでは内部監査は残業が少なく、業務スピードや顧客からの圧などのプレッシャーもあまりないため、働きやすい場合があり、家庭と両立しやすいという意味でもワークライフバランスが良い場合もある。 | 全てがホワイトな職場ということでもなく、どこの事業会社に転職するかが重要。 監査法人の時のように長期間のまとまった休みはとり難い傾向にあるため、長期休みを取りたい人はしっかりとした調査が必要。 監査法人・コンサルからの転職であれば基本的に年収ダウンは避けられない(年齢等にもよるが)。事業会社ならワークライフバランスがとりやすいという思い込みから転職失敗者も多いので注意が必要。近年はフレキシブルな働き方ができるということで、女性会計士がベンチャーの常勤監査役に就くケースが増えているが、永遠のIPO準備中状態やIPO断念などのケースもあり、他の視点での注意が必要。 |
コンサル | ワークライフバランスという視点ではあまり良い転職先とは言えない。労働時間や忙しさという観点だけで見ればブラックな職場が多い傾向。制度上女性が復帰できる環境が整っているところもそれなりに増えたが実績としてはあまり聞かない。 そのため、ワークライフバランスが第一の理由なのであれば基本的には転職先として選ぶべきではない。 ただし、ワークとライフのバランス次第ということなら選ぶファームが重要。また、会計士の場合ワークライフバランスの定義が人により大きく異なるので、必ずしもコンサルがダメなわけではない。 |
ワークライフバランスを意識しつつ監査以外のことがやりたいケースでコンサルに行くのであればライフの部分で譲れない条件をしっかり定義し求人探しを行わないと早期退職になるので求人探しをする前の要件定義が重要。 なお、コンサル経験者の方が30代以降選のキャリアの選択肢が広がるので長い目で見れば結果的にワークライフバランスが取りやすくなるということもある。 近年は在宅勤務OKな会計コンサルの求人も増えており、女性や子供を持つ親に配慮し、働きやすい環境のコンサルも増加。状況は変わってきているため情報収集がカギを握る。 |
上記はあくまで大雑把な概況となります。
ワークライフバランスという言葉一つとっても受け取り方は人それぞれなため、あなたが求めるものを整理していきながら転職先を考えていく必要があります。
特にワークライフバランスを考えて経理に転職し、後悔する事例はそれなりに多いので、思い込みは捨てて情報収集を行ってください。
自分の考えるワークライフバランスを具体化する
「ワークライフバランス」とひとくちにいっても人により捉え方は異なります。
転職相談の現場でもワークライフバランスが取れる職場へ転職したいという要望はよく頂くものですが、人によりその言葉の中身は異なります。
例えば、安定して19時から20時までには仕事が終わって帰れる環境の職場をワークライフバランスが取れていると考える人もいれば、定時で帰れるということをワークライフバランスが取れていると考える人がいたりとその定義は人によりさまざまです。
また、求人票にもワークライフバランスが取れる環境です!といった形で記載している企業は多いのですが、やはりその定義はバラバラです。
週1日ノー残業デイがあるからワークライフバランス取れるでしょ?といった程度でワークライフバランスがとれる職場ですと記載しているところもあります。
あなたが転職をする際にはエージェントを利用することもあるかと思いますが、エージェント担当者も個々人でワークライフバランスという言葉に対してそれぞれが違うイメージを抱いています。
そのため、転職によりワークライフバランスを実現するにはまず言葉の定義をしっかりとする必要があります。
「仕事と家庭の両立」といった漠然とした意味で使うのではなく、「子育てを優先させるために18時に仕事が終わるようにしたい」、「勉強をする時間を確保するために残業は月20時間以内にしたい」、「〇〇を実現するために、〇〇という制度があり、柔軟に〇〇できる環境」などの具体的なレベルで明確化し、他者にあなたが言うワークライフバランスとは何なのかということを説明できるようにしておきましょう。
定時帰りを奨励する会社は多くても子育てのための急な遅刻や欠勤、託児サービスまで充実している会社はそう多くありません。具体化によってそうした細かい視点を漏らさずに会社を探すことができます。
自分の要望を具体化する際に重要なことは、現時点での希望だけでなく数年後の未来を見据えた望みについてもあらかじめ考えておくことです。
例えば、今は子育てを優先したいとしても子供が大きくなって余裕がでてきた頃には自分のキャリアを維持して仕事に集中したい場合もあります。その場合は産後の職場復帰に積極的な会社などが適しています。
自分にとってのワークライフバランスとは何かを明確にすることで本当の意味での希望に沿った転職先を見つけやすくなります。
なお、一般的なワークライフバランスの定義として、厚生労働省の仕事と生活の調査や内閣府の資料によると仕事だけではなくそれ以外の普段の生活も充実させることを指すように記載されています。
仕事が早く終わるだけでなく、それ以外の部分の充実という点では何を重視するか個人差もあろうかと思いますので、上記記載したように自分の中での定義を持っておくと良いでしょう。
「残業0」「休日出勤が無い」「子育てに伴って○○が可能な職場」等。
なお、国の定義によると「仕事だけでなくそれ以外の普段の生活も充実させること」と言ったようなことが定義されています。
参考:厚生労働省の仕事と生活の調査
基本的に事業会社がワークライフバランスは取りやすい傾向
会計士がワークライフバランスを実現しやすい転職先としては事業会社が最もその可能性を秘めていると言えるかと思います。
上記で記載したように定義によるところもあるのですが、働き方という側面に限って見るのであれば、多くの会計士の希望が叶えやすいのは事業会社です。
ただ、注意点もあります。
転職先企業の情報収集を熱心に行う必要性
公認会計士の専門資格を活かしてワークライフバランスを実現できる転職先としては、先程記載したように事業会社を思い浮かべる方が多いでしょう。
一般的な指針としては、上場企業(プライム市場)などの大手の企業は環境が整っている傾向があります。また、性別や年齢などにこだわらず従業員の個性を経営戦略に取り入れているダイバーシティ企業もおすすめの一つと言えます。
理由としては、法令遵守を重視した労務管理、充実した福利厚生、各種制度や設備などが整った労働環境を構築している必要があるからです。
こうしたことから、大手企業は福利厚生が充実していてホワイトな環境であるというイメージを持っている方は多いことでしょう。
ただ、大手上場企業といっても千差万別です。
なんとなく大手事業会社であればワークライフバランスがとりやすそうという漠然とした考えで転職すると勤務先の実情に失望してしまう場合もあります。
制度が整っていても形骸化している企業も多いですし、大手であっても経理部門は人手不足に陥っているケースは増えてきています。会計士の場合は経理部門の中でも特殊なポジション的での配置となるケースもあり、一概には分からないケースがあります。
慢性的に一年中そこそこ忙しいという企業も結構ありますし、企業自体は全体的にホワイトでもあなたが配属されるポジションに限っては違うというケースもあります。
大手であれば大丈夫、というわけでもありません。
こうした企業の現状を把握するためには、綿密な情報収集が重要になってきます。
そのため、一般論(大手上場企業はちゃんとしている等)は重要視しつつもポイントを押さえた情報収集が必要となってきます。
このポイントとはあなたが定義するワークライフバランスに合わせて情報となってきます。
業務に関してオンラインでやり取りする仕組みが整っているなど、在宅でも働ける環境がある、制度が使えるなど細かいポイントまで見ていかないといけないケースもありますし、残業が少ない会社を選定するケースにおいて、同じ企業内でも部門によっては残業が定常化しているというケースもあるので、企業の内情(当該部門)に詳しい転職エージェントなどから情報収集する必要があったりします。
そのため、ポイントを押さえた求人先の情報収集が重要となります。
その他の注意点として、残業がそれほど無く、忙しくない職場の場合「いじめ」が発生するケースも稀に報告されます。
社会人にもなってそんなことあるの?と思う方もいらっしゃるようですが、大手企業でも意外とこうしたことは耳にします。監査法人でも意地悪な先輩・上司はいたかと思いますが、事業会社内の方が人の入れ替わりが少ないので、事態は深刻になります。
制度や残業時間などの目に見える環境の理解も重要なのですが、いわゆる人間関係もワークライフバランスが取れるかどうかに大きく関わってきます。いじめやいじわるなどの問題はなかなか情報が取得し難いものですが、例えば執務室を見学させてもらった際の空気感などでもくみ取れることはありますので、可能であれば文字で起こされた情報だけでなく、入社を承諾する前に最終面接の前後など現場を目にする機会ももらえないか聞いてみると良いでしょう。
事業会社への転職にあたって情報を取得するなら会計士専門の転職支援サービスを持ちつつも、総合型のエージェントとして広く多くの企業とのつながりがあるマイナビ会計士などの企業と会計士双方に強みを持つエージェントから情報を収集すると良いかと思います。
同一企業内部でも部門ごとで状況が異なるため、企業全体の残業時間・労働時間などだけを見ていては失敗するケースもある。自身の配属部門ではどうか?上長はどんな方針か?まで得られれば尚良い。
転職先候補である企業のニーズを理解する
求人先企業が求めていることを深く理解せずに入社した場合において、仮に採用に至ったとしても後々ミスマッチで後悔することがあります。
そうしたリスクを防止するためには、採用する側の企業が何を望んでいるのか、将来的な側面も含めて応募する前にきちんと見極める必要があります。
企業の希望を見極める際のポイントの1つは、作業員として採用なのか将来性(幹部候補)のどちらを求めているのかを明確にすることです。
例えば、同じ経理のスタッフを募集していても、単純に経理として作業的要素の高い仕事をこなす人員が欲しいだけなのか、それとも難関試験を突破したポテンシャルと財務会計原理を理解し多くの企業を見てきた経験を持つ将来の幹部候補としての業務を期待されているのかによって求められるものは違ってきます。
即戦力を求める場合は現在の知識や経験が重視されどちらかといえば単に実務をこなしていくことが求められ働きやすい傾向であり、作業さえ終われば帰れるのでワークライフバランスはとりやすいのですが、キャリア的な側面では全く伸びしろがなく、成長が見込めない可能性があります。
暇すぎて(つまらなさすぎて)辞めたくなってしまうケースもあるので、ワークライフバランスという視点だけで情報収集するのではなく、仕事内容・キャリアという側面でもしっかりと見ていく必要があります。
幹部候補採用の場合は潜在的な能力や将来の指導力の素養などが求められますし、仕事内容に関しても入社当初はともかくとして、高いアウトプットが求められる傾向にあるので、逆にワークライフバランスという点では大きなストレスになってくる可能性はあります。
これはわかりやすくするために極端な事例で記載しておりますが、事業会社経理へ転職したもののつまらなさすぎて(成長できず)退職することになったというケースも結構多くみているので、ワークライフバランスの定義をしっかりしつつもキャリア的な側面も見落とさないよう注意してもらいたいです。
一般的にはホワイトな職場であると定義できても、会計士として成長も考えているとなるとそれほど良い職場ではないケースもありますのでご注意ください。
転職を希望する企業のニーズを分析することで、自分がどんな人材としての採用を望んでいるのか、企業の希望に沿った条件を満たしているのかが見えてきます。
そういった各種ニーズとあなたのワークライフバランス以外の希望(キャリア的な側面等)とも合わせて転職先を決定していく必要があります。
女性会計士でワークライフバランスを求めるなら常勤監査役が最近は狙い目
近年はIPO準備企業の常勤監査役へ転職する女性の会計士が増えています。
背景としては、子育て等に伴ってフルフルでの勤務が難しい一方で、せっかく持っているスキルを活かした高度な業務がしたいし、キャリアもしっかり考えたいといったケースにおいて、常勤監査役は出勤時間など含めてフレキシブルな勤務が可能であることから、女性会計士がマッチするケースが多くなっています。
子育て中でなくとも、時間を大切にしたいケースではこうしたポジションがマッチする事から最近は結構増えているように思います。
また、IPOが順調なのも背景として有り、IPO準備企業が増えていることもあるでしょう。
上場に伴って女性の要職ポジションを増やす必要性もあることもあり、女性そのものの需要も高いため、近年は狙い目だと思っています。
ただ、冒頭の一覧のところでも記載したとおり、IPOできずに終わってしまう企業も多いですし、永遠のN-2期なんて言葉があるようにずっと上場準備中の会社も多くあります。想定外のことも含めて良い部分ばかりではないのも事実なので、企業選びは重要です。
この領域は会計士向けの転職エージェントサービスを利用することに加えて、IPO領域に強い転職支援サービスの利用も検討した方が情報確度が高くなります。
こうした領域はIPO準備企業に詳しいところを利用するのも良いでしょう。エージェントについては後半で記載しています。
監査法人でもワークライフバランスがとれる転職先はあります
ちなみに、監査法人はワークライフバランスがとれないと思い込んでいる会計士の方も多いのですが、そんなことはありません。
確かにBig4等の大手監査法人は忙しいのでワークライフバランスがとり難いと感じている方が多いのですが、一部の中小の監査法人であればワークライフバランスがとりやすいところもあります。
中小の場合比較的自由度が高い点と非監査業務を経験したい場合などでは監査とアドバイザリー業務の両方(監査の割合の方が多いですが)を経験できる転職先もあるので、監査法人に勤務しつつワークライフバランスを実現し、さらに非監査業務もやってみたいという会計士にとってはおすすめの転職先ではあります。
その他副業なども可能なので、ご自身で様々な業務を受託してやっていきたいと考えているケースでも独立前段階として役立つでしょう。
ただし、中小監査法人の場合は年収が場合により1~2割程度下がってしまうことがあることも覚悟しておいた方がよいでしょう。逆に年収が上がるケースもありますが、Big4監査法人での経験とポジションなど評価のされ具体によるところもあります。
そのため、ワークライフバランスを求めてBig4以外の監査法人へと転職される場合は監査法人の内情に詳しい転職エージェント等から情報収集しておくことをおすすめします。
※監査法人の労働環境も近年大きく変わってきており、特に中小は求人先によって働きやすいところも増えているのでエージェントなどから最新情報を得るようにしてください。また、賃金体系も中小監査法人高くなっているので、一概に下がることもなく、むしろ高いところもあります。
コンサルはワークライフバランスが取り難いが人によっては狙い目のポジションも
一般論で記載するとコンサルティングファームはワークライフバランスが取れない転職先です。
監査法人よりも通年で見た際は忙しいです。なので、ワークライフバランスを取りたい会計士が転職を目指すところではないというのが基本的な考え方です。
ただ、全てのケースでそうであるとは言い切れません。
例えば、監査法人よりもFAS(どこの所属かにもよりますが)の方が残業時間・労働時間そのものは多いのですが、FASの方が働きやすく、精神的な疲れはあまり無かったとする会計士の方も多いので、あなたの定義するワークライフバランスの内容によってはコンサルでも問題がない場合があるかもしれません。特にDD部門などであれば比較的働きやすいといえるでしょう。
また、IPOコンサル支援などを行うファームではメリハリのついた労働環境が整っているケースもあり、ほぼ出社しないでOK(リモートや直行直帰などクライアントの状況によって)なファームもあり、メリハリをつけて働けるところも増えているので人によってはマッチする可能性があります。
一般論でいうところのワークライフバランスという定義には当てはまらないけど、あなたが個人的に定義するワークライフバランスには当てはまるというコンサルも結構あるような気がするので、最初からコンサルを除外するのではなく、このあたりも視野に入れた転職活動を行うこと自体は悪くないと考えます。
会計士の場合、意識や視座が高い方も多いので、ワークライフバランスの定義の振れ幅が大きいように感じることもしばしばあります。
なので、一度このワークライフバランスに定義をしっかりしてエージェントなどに伝えてみてください。そのうえでコンサルという選択肢も有り得るかどうか判断していきましょう。
コンサルでの経験は将来的なワークライフバランスが取りやすくなる可能性
また、冒頭の一覧のところでも記載さいたとおり、コンサルで汎用性のあるスキルを身につけ、キャリアの選択肢が広がることで、働きやすい環境への転職がしやすくなるかと思います。
働きやすくて待遇も良い求人先というのは求められる要件も高くなりますので、会計監査に加えてファイナンスなどのスキルも合わせて持っておくことでキャリアの幅が広がり、ワークライフバランスと待遇に優れた転職先が見つかりやすくなる可能性は高まると言えるでしょう。
会計事務所への転職でワークライフバランスを実現することもできるが会計士がキャリアを作る上では難しい部分も
会計事務所へ転職するという選択肢もあります。
ワークライフバランスが整っている会計事務所は意外と多くあり、女性比率が高い事務所も多いので、女性だからこそ抱える悩みに応じた配慮が高いケースがあります。
なので、特に女性がワークライフバランスという面だけを見れば会計事務所もありだと思います。実際転職される方もいらっしゃいます。
ただ、実務面では税務に関連したものが多いので、キャリアを考えた際は会計士としての強みが薄まる可能性はあります。
もし会計事務所も視野に入れているケースがあれば、会計士と税理士双方に強みを持つエージェントを利用するようにしてください。
税務しかやらない事務所もありますし、税務以外の会計士が強みを発揮する実務をやりながらプラスアルファで税務関連に携わるなど様々なパターンがあり、どういったキャリアになるかが未知数となります。
会計事務所は情報取得が大変な業界ですので注意してください。
ワークライフバランスを実現しつつ年収も下げたくない会計士の転職
一部の大手上場企業や責任者ポジションでの転職を除いて、ほとんどの方がワークライフバランスを意識した転職をする際は年収が落ちます。
800万円くらいもらっていた方であれば、700万円前後になってしまうなど、100万円以上落ちるケースもあります。
事業会社の場合は年収だけではなく福利厚生が整っていたりして安定感があるので一時的な年収ダウンに納得して転職される方も多いのですが、中には年収を一切落とさずにワークライフバランスに優れたところに転職したいとお考えの方もいらっしゃいます。
そうした場合、限定的な話になってしまいますが、IPO支援などの業務を行っていた方やファイナンス関連のスキルに強みがあればIPO準備中ベンチャー企業なども意外と狙い目です。
ベンチャーというと忙しいイメージがあるかもしれませんが、メリハリをつけて働くことを意識したところも多いのでワークライフバランスがとれる転職先も実はあります。
IPO実務が多い職務だとN-2期以降の直前のところあたりは忙しくなりますが、そうではなく、経営企画などでファイナンスを中心にやっていくポジションであれば、求められる能力は高いものの、意外と労働時間という意味ではそこまでではないケースがあります。
ただ、ケースとしてはそれほど多いわけでは無いので一例としてお考え下さい。
また、このケースでは毎日定時で帰れる、子育て中でも働きやすいという意味のワークライフバランスというわけではなく、メリハリをつけて働くという視点にたったワークライフバランスになります。
ワークライフバランスもとりつつ年収を落としたくないとなると、やはり奇跡的に良い求人が出ているタイミングでうまく転職をする必要がありますので、転職エージェント等に相談し、そうした求人が出てきた際にいつでも応募ができるよう準備を整えておくのが良いでしょう。
そうした先は人気があるので、あなたのスキルも当然重要になりますし、タイミングも非常に重要です。
なお、常勤監査役という特殊なポジションであれば、ワークライフバランスはとりやすい傾向です(ただし年収は大きく下がります)。
公認会計士がワークライフバランスがとれる環境に転職するために
正直なところ求人票やホームページを見ただけでは本当にワークライフバランスが取れる環境の職場なのかわからないことが多いです。基本的に企業や求人会社は良いところを前面に打ち出してくるからです。
監査法人内部の情報であれば同僚や友人、昔の勉強仲間などから比較的情報をとりやすいかと思いますが、事業会社やコンサルティングファーム、会計事務所となるとなかなか情報が取りにくいかと思います。特に公認会計士が事業会社へ転職する場合は他の一般社員とは違った業務や成果を期待されるケースもあるため、ネット上に出ている情報だけでは不十分なことも多々あります。
そのため「情報収集が大事です」と言われてもなかなか難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
そうした場合、転職エージェントの活用を視野に入れてみるのもいいでしょう。転職エージェントの言うことを鵜呑みにするのもよくありませんが、情報収集に不安のある方は不安を軽減させるために使ってみるのもよいかも知れません。
情報源としても役立つのですが、面接の場などでしっかりと情報を引き出す際のポイントなども優秀なコンサルタントが担当になればコツを教えてもらえることもあります。
特に残業や制度、労働に対するスタンスなどは面接の場で結構分かることも多いので、ポイントを押さえた情報収集が可能です。そのあたりの情報の引き出し方も含めて希望転職先ごとに会計士におすすめの転職エージェントを紹介のページでどのエージェントが合うのかなども解説していますので、もしよろしければそちらのページもご参照ください。
なお、転職エージェントにワークライフバランスがとれる環境で働きたいと伝える際には、冒頭にも記載しましたがあなたが思うワークライフバランスがとれる環境とはどういうものなのかしっかりと伝えましょう。
私の感覚だと毎日19時~20時くらいまでに仕事が終わればワークライフバランスがとれているという感覚なのですが、人によっては、残業が多くブラックな環境と感じるようなので言葉の定義には気をつけましょう。
ちなみに、会計士の方ではないのですが、エンジニアの方で実際の面接の場でストレートに聞きにくいこと(こういう生活がしたいからこういう労働環境のところに転職したいけど、あなたの会社はどうか?)見たいなことを聞いた方がいるのですが、企業側もミスマッチを防ぎたいと考えているからなのか、しっかりと教えてくれて選考そのものも通過したという声もあり、働き方や求められていることに関する質問をしたからといって選考で絶対的に不利になることは無さそうだと感じることも増えてきました。
昔は労働環境や残業に関する質問をすると落とされるから辞めた方が良いというのが定説でしたが、企業側の価値観も変わってきているかもしれません。
あなたが何を優先するのか次第ですが、思い切った質問もありっちゃありなのかもしれませんので、参考情報として記載しました。ただ、会計士という資格が持つイメージもあるので、質問の仕方、聞き方には注意した方が良いかなとは思っています。
ワークライフバランスを実現したい公認会計士向けのおすすめの転職エージェント
上記で転職エージェントを紹介するページのご案内はしましたが、このページでも簡単に記載しておきますのでご参考ください。
コンサルや会計事務所業界(税理士法人系列のコンサル等含)でワークライフバランスがとれる転職先を探したいのであればRexはおすすめのエージェントです。
会計士のキャリアに精通しているのはもちろんですが、大手だけでなく中小・中堅あるいは少数精鋭ファームなどの転職先もしっかり押さえており、内情も含めてきちんと把握できているので、あなたが考えるワークライフバランスを実現するにあたってはどういった転職先がマッチするのかしっかりと提案してもらえます。
事業会社の情報はそれほど多くありませんが、会計業界でワークライフバランスということであればとても良いと言えるでしょう。
会計士の転職支援サービスにおいては老舗であり、事業会社・コンサル・会計業界と幅広い転職先を求人先として多数保有しているのが特徴です。
事業会社の求人保有数が多いので転職を実現させるという意味では確度が高いエージェントであり、各種ワークライフバランスを叶える転職においても有用と言えるでしょう。
会計士の場合、転職先業界を広く模索したいというケースが多いですので、一定の業界にとらわれずに多数の実績を持つ同社の利用はメリットが高いと言えるかと思います。
なお、特に事業会社への転職においては実績が高いのはご存じのことと思いますので、事業会社も含めて幅広く検討したいといったケースでは登録しておきたいところです。
途中で記載したとおり、ベンチャー領域での情報収集では一定の利用メリットがあると考えます。
ワークライフバランスを考えた際は常勤監査役など特殊なポジションが当てはまると思うため、気になる方は相談しても良いかと思います。
参考文献
本文に記載したもの以外で以下を参照させていただいております。
- CORE女性の結婚・出産・就業の制約要因と諸対策の効果検証: 家計パネル調査によるワーク・ライフ・バランス分析 樋口美雄他
- 女性の結婚・出産・就業の制約要因と諸対策の効果検証:家計パネル調査によるワーク・ライフ・バランス分析
- ワークライフバランスとは?|アデコ
- 朝日新聞女性役員の内部登用と女性役員の税理士・会計士の割合の多さについて
- 男女共同参画局経済再生における女性の役割とワークライフバランスに関して
会計業界の求人をしっかり保有しているのはもちろんですが、マイナビグループとして様々な企業との繋がりもありますし事業会社という視点では圧倒的な求人数を保有しています。
監査法人、事業会社、会計コンサル、会計事務所など幅広い選択肢の中からワークライフバランスに優れた転職先を紹介してもらうことができるでしょう。
特にワークライフバランスを求めて事業会社の経理などへの転職を検討していたのであれば、本記事でも記載しましたが、経理だからワークライフバランスが取れるわけではなく、企業の内情によるところも大きいため、事業会社の求人も多数保持しつつ、情報提供やキャリア相談にも力を入れているマイナビ会計士の利用はとても良いでしょう。
家庭の事情等も考慮してくれる転職先をサーチしたいという方も多いと思いますので、そのような個別性の高い転職先をサーチするケースにおいてはしっかり転職サポートを行てくれるこちらのようなエージェントを利用しましょう。
転職に役立つ情報もたくさん保持しており、応募書類の書き方から面接で聞かれるポイント、面接官の特徴まで丁寧に解説してくれるため、安心して転職活動を進めることができます。
ワークライフバランスといっても人により条件は異なりますが、そうした個別の悩み毎にしっかり転職相談を行ってくれるので、とてもおすすめできるエージェントとなります。
ただし、会計事務所への転職を希望されるケースにおいては、別途会計事務所に詳しいエージェントを利用した方が情報が濃いケースが多いため、必要に応じて使い分けると良いです。