監査法人を辞めたい・・・退職者が凄く多い理由や辞めた後の転職について考える【公認会計士の転職事情】

公認会計士試験合格後、ほとんどの会計士が監査法人に勤務することと思いますが、監査法人入所後5年から10年程度で半数以上程度の方が辞めていくことになります。

理由は様々ですが、近年は若手の公認会計士が比較的早期に監査法人を辞めるケースが目立っており、監査の仕事に対する不満、将来への不安、激務からの不満等により監査法人を辞めたいと考え転職するケースも増えております。また、ベンチャー企業のCFOを始めとして会計業界以外で活躍する会計士が増え、会計士のキャリアフィールドがとても広いことが認知されてきたことも監査法人を辞めたいと思う要因になっているでしょう。

きっかけ・理由は様々ですが、監査法人を辞めたいとお考えの潜在的な転職予備軍はかなり多くなっているのは間違いありません。

監査法人側の対策としては多様なキャリアパスの可能性や各種制度も含めた労働環境の見直し等は進んでおり、一時に比べれば環境は良くなっているもののそれでも監査法人から離職される方は多いのが現状です。

ここではそんな監査法人を辞めたいと思う理由や背景、辞めた後の転職先、キャリア、辞めなかった場合などについて見ていきたいと思います。

監査法人を辞めたいと感じる理由は「キャリア」「ワークライフバランス」「将来への不安」「飽きた・つまらない」「人間関係」というものが多い

監査法人を辞めたいと思う理由はたくさんありますが、代表的なものとしては「残業が多い」「将来不安」「監査に飽きた」「キャリアパスの多様性」というものがあげられるでしょう。

先程記載したように数年前に比べると監査法人内部の改善は進んでおり、労働環境という点では昔と比べると良い方向へ進んでいると言えますが、ただそれでも特にBig4監査法人等においては繁忙期を中心としてとても忙しいと感じている方が多くいらっしゃり、ワークとライフのバランスが崩れていると感じている方も少なくありません。
特に近年はマネジャー層が忙しく、この傾向にあります。
そのため、ワークライフバランスを求めて監査法人を辞めたいと思う方はかなり多いです。

また、近年はキャリアについて悩みを抱える方も多くいらっしゃり、AIの台頭による将来への不安や監査業務しかやっていないことに対するスキルへの不安も含めて転職を考える若手が増えています。

こうした監査法人を辞めたい理由について簡単に見ていきましょう。

残業の多さなども含めてワークライフバランスが保てなくて監査法人辞めたい

監査法人勤務の会計士の中には激務から心や身体を壊してしまう方もいらっしゃり、忙しさから逃れたいと考えて辞めたいなと思うようになる人もいます。
繁忙期の忙しさはかなりのもので終電に間に合わずタクシー帰りが多くなり、休日出勤も当たり前という状況が長く続きます。
特にインチャージとして複数のプロジェクトを抱えていたりすると自分の時間はどんどんなくなっていくでしょう。
また、近年はスタッフ層は残業時間が制限されていることもあり、マネジャー等の管理職層は業務カバーが必要となることから激務となるケースがあります。
人手を増やそうにも公認会計士の人数自体が急に増えるわけではありませんし仮に採用できたとしても辞めていく人も多いので一向に人手不足がおさまる気配が無いと言えます。

AIやRPAの導入なども進められていますので先々監査業務は簡略化されるでしょうが、まだまだ具体的な実用化には時間がかかり、今すぐこうした業務全てが改善されるものでもありません。

そのため、監査法人にて一定度勤務してきた方は、ワークライフバランスを求め事業会社の経理等への転職を考え始める傾向にあります。

特に20代後半の女性に関しては、先のライフイベント見据えて福利厚生が充実している企業の経理部門への転職をされるケースも多いです。

ただ、ワークライフバランスを考えての事業会社への転職は方向性としては良いと思うのですが、事業会社へ転職したからといって必ずしもワークライフバランスや福利厚生が充実しているわけではありませんので、事前にしっかり情報収集を行っておきましょう。

転職先を見誤らなければ、事業会社の経理に関わらず、安定した労働時間を求める転職は比較的容易ですので、このワークライフバランスを保つための転職というのは可能かと思います。

将来への不安から監査法人を辞めたい

AIやRPAの台頭により会計・監査業務がなくなってしまうのではないか?監査業務は単純作業も多いしつぶしがきかず将来のキャリアが心配、、、といった漠然とした不安から監査法人を辞めたいなと感じるようになる人もいらっしゃいます。

実際問題監査経験しかない公認会計士は年齢が上がるにつれて転職市場では会計業界以外においてはそれほど求められなくなっていきます。

例えば30代中盤以降になり監査経験しかない公認会計士が転職を考え始めた際、監査経験しかない会計士が経理・財務職へと転職することを検討した場合、不採用になるケースはかなり増えてきます。

会計士として持っている知識・経験が全く活きないというわけではありませんが、経理・財務実務をしていくにあたって新たに覚えてもらうことも多くなりますので、戦力として見た時に年収と30代中盤として求められる能力とのバランスが悪く、採用に至らないケースは多いです。

20代や30代前半までであれば監査法人での経験+他の一般的な経理人材が持ち合わせない専門知識などが評価され容易に転職できるのですが、30代後半あたりになってくると一気にハードルが上がり、これまでの経験が重要視されてくることになるのでご注意ください。

そういった様々な要因から20代中盤~30代前半くらいまでの方が将来を考えた結果監査法人を辞めて新しい経験を積むために転職をします。

転職先としては、財務・会計に関する知見に加えてプラスアルファのスキルを身につけるべくコンサルティングファームやベンチャー企業も含めた事業会社の経理・財務・経営企画への転職を検討する会計士が多くなっています。

仮に転職した先でうまくいかなかったとして、現在の市況であれば監査法人を含めた会計業界へと出戻ることも難しくないので思い切って監査法人の外に出てみるという選択肢が取りやすいのも転職が増えている要因の一つでしょう。

いずれにせよ、監査だけだとキャリアに対する不安は大きくなるようでしたので、そこが要因で辞めたいなと感じるようになる方は非常に多くなっています。

監査に飽きたから辞めたい

監査法人を辞める際の理由として監査に飽きたというものが最も多いかなと感じます。

監査法人入所当初は覚えることも多いため、新鮮な部分もあるかと思いますが、4,5年程度経ってくるとルーティン業務が多くなり、作業をしている感覚に近くなってくるため飽きが来るのです。

そうしたこともあり、最近はアドバイザリー部門への異動等が可能となってきているのでアドバイザリー部門へと異動される方も多くなっています。
監査法人でも人手不足が続いていることから以前に比べると異動はしやすくなっています。

ただ、監査法人以外のキャリアも気になるという方が多いためアドバイザリーも視野に入れつつ外部のコンサルティング会社や事業会社へ転職した場合とキャリアパスはどう異なってくるのかといったことも気になる方も多くなっています。

そうしたことから会計士としてのキャリア全般をまずは把握するという意味合いも含めて会計士のキャリアに詳しい転職エージェントに相談される方も多くなっています。

全体像や一般的な会計士のキャリアを知ることであなた自身のキャリアも見えてくることもありますので、まずはそうしたものをその先のキャリアも含めた事例も交えて情報を得ることも重要であると考えます。

会計士試験に合格される方は優秀な方が多く、ポテンシャルも高いので監査だけということではなく、様々なことにチャレンジするのも良いかと思います。

会計・財務・ファイナンスのスキルをクリエイティブに活かすことは可能なので、広くキャリアを見ることも検討してみましょう。

監査法人から転職したい会計士の転職先は?のページで各フィールドについて説明しているのでこちらのページも合わせてご確認ください。

所内の人間関係と外部との人間関係による退職したい意識の芽生え

監査法人に限った話ではありませんが、転職を考える理由として最も多いのが人間関係であろうと思います。

一般的には社内の人間関係がメインになってきますが、監査法人はチームで仕事を進めていくわけですのでまずは所内・チームでの関係性が重要となります。あなた自身のコミュニケーションスキルあるいはあなたの行動にもよるところもあるかもしれませんが、監査法人でアサインされず干されてしまう方もそれなりにいらっしゃいます。
仕事ができなくて嫌われるケースもありますが、いずれにせよ干されてしまうと居心地は悪いですので辞めたくなるケースは多いでしょう。

あくまで一例ですが同僚・上司・パートナー含めて人間関係が要因となった転職というのもそれなりにあります。

また、クライアントとの相性やクライアントとのコミュニケーションがうまくできずそれが要因となり所内での人間関係が悪くなるケースもあります。

後は人間関係というべきか悩ましいですが、クライアントの顔(全体像含め)が見えないということでもっと顧客に寄り添った仕事がしたいという理由で大手監査法人を辞めるケースもあります。
一気通貫で顧客に関わりたいという気質をお持ちのケースでは大手監査法人は合わないケースもあるでしょう。

いずれにせよ、人間関係が要因での退職は人によってそもそもの要因が何かによって全然違うので、原因の元があなたであるケースでは転職後もうまく行かないケースもあるので、客観的な立場で判断してくれる人に相談してみるのもよろしいかと思います。

監査法人を辞めた後のキャリアとしてどのような転職先があるのか

監査法人を辞めたい、、、と思ったら、先ほど記載したようにまずは会計士にはどのようなキャリアがあるのか知っておくことが重要かと思います。

場合によってはもう少し監査法人で経験した方が良いケースもありますし、逆に早く転職してしまって問題無いケースもあります。

そうした判断をするにはキャリア事例を知ることが重要です。

事業会社

昨今の傾向としては監査法人の次のキャリアとして事業会社の経理・財務を選択する方が非常に多くなっています。

全ての事業会社に当てはまるわけではありませんが、残業時間はそれほど多くなく、労働時間は比較的安定していて決算などの繁忙期でも監査法人ほど忙しくなく、休みは取りやすい傾向にあることからワークライフバランスを求めて転職されるケースが多くなっています。

特に大手上場企業であればしっかりと体制が整備されており、会計士も社内に何名かいるケースが大半ですので業務にも入っていきやすい傾向です。

ただ、事業会社と一口に言っても多くの企業があるので、しっかりと情報収集を行うようにしましょう。

公認会計士の事業会社の経理への転職は失敗も多いのページで会計士の事業会社への転職に関しての失敗などにも触れていますのでご参考ください。

また、近年はベンチャー企業への転職も人気となっていますが、ベンチャーからの離職もかなり多いのでベンチャー企業に転職する公認会計士が増えているのはなぜ?などもご参考ください。

コンサル

FAS等の会計系コンサルへ転職される方も多く、このあたりが会計士の一般的な転職先となっています。

大手Big4系FAS、独立系中小FASなどファームにより仕事の進め方から得られる経験値までことなりますので会計ファームに詳しいエージェントから話を聞いておいた方が良いでしょう。

コンサルの方が監査法人の時よりも忙しいというケースもありますが、逆に監査法人の時より仕事が単調でつまらないなどの事態もコンサルでも有り得るので、なぜコンサルなのかなど転職動機を整理したうえで転職先を決定していきましょう。

FASへの転職をお考えのケースでは公認会計士の転職で人気のFAS業界とは?のページもご覧ください。

会計事務所やその他の中小監査法人

あまり多くはいらっしゃらないのですが、会計事務所あるいは別の中小監査法人への転職を検討される方もいらっしゃいます。

会計事務所という選択を取るケースでは独立が視野に入っているケースが多いです。

この場合は税務に興味がある会計士の会計事務所への転職に関するページも合わせてご覧ください。

別の監査法人というケースでは監査は好きだけど大手だと自由度が無い、労働時間もキツイということで中小のそれほどきつくない監査法人への転職を考える方もいらっしゃいます。

ただ、中小監査法人にもいろいろありますので良い環境の中小監査法人を目指したい場合は会計士特化の転職エージェントに相談してください。会計業界での転職であればどちらかというと老舗のところの方が情報が濃いです。

辞めた先にどういった選択をするのかは個々人の想い次第ですが、いずれにせよ、監査法人を辞めたいと感じたら、まずはどのような転職先があり、どのような可能性があるのか調べてみると良いでしょう。

ここでは代表例として3つ例をあげましたが、監査法人の次の転職先やキャリアをまとめておりますので興味のある方はご確認ください。

監査法人から転職したい会計士が活躍できる転職先は?

辞めたいと思ったらすぐに辞めても問題無いのか?転職にタイミングについて

冒頭で少し記載しましたが、キャリアによっては早々(3年程度)に監査法人を辞めてしまっても問題ありません。
ただ、会計士として仕事をするのであればどんなに早くても修了考査合格までは監査法人で頑張るべきでしょう。

FASなど監査経験が活かせる職場への転職であれば5年程度の監査経験はしておいた方が良いケースもあります。

やめたいと思い始めた時の求人市況にもよるところはあるため、その時の状況次第というところもあることからエージェントなどに相談しておくことをおすすめします。

辞めたいと思ったらとりあえず転職活動をしてみるのも有り

漠然となんとなく将来が不安だから辞めたいなと思っている会計士の方は転職活動をすることで自分が何がしたいのか見えてくるケースもあります。

先ほど記載したように会計士としてのキャリア・スキルを活かしてどのようなキャリアパスがあるのか知らないから希望が見えてこないというケースも多くあります。

なので、具体的に転職活動をしてみることでそれらを知ることができ、前に進むことができるかもしれません。

なお、転職活動をするといっても必ず求人に応募したりしなければならないこともなく、まずは職務経歴書を作って見たりエージェントに相談してみたりといったところから始めれば良いかと思います。絶対に今すぐ転職ということではないが良いところがあれば転職したいと思っていると伝えれば求人の案内は受けられます。

監査法人を辞めたいという場合、転職活動はエージェントやヘッドハンティングサービスを活用することをおすすめします。

彼らはたくさんの会計士のキャリアを見てきているので、あなたの監査法人を辞めたいという理由に対してどういったアプローチが最適か、どういった選択をするとどうなるかなど事例を交えて情報提供してくれます。

また、具体的に転職をする段階になった際にも、公認会計士を対象とした求人は非公開のものが多いという点と、そもそも監査法人に勤務する会計士が転職活動に不慣れという方が多く、書類応募や面接等で失敗し不採用となってしまうケースも多いので、そういった意味でもとりあえず登録しておいた方が良いかなと感じます。

そのような失敗を避けるべく、特に初めて転職される方に関しては、求人情報の提供から応募書類・面接対策等をしっかり行ってくれる転職エージェントを活用すると良いでしょう。

いずれにせよ、監査法人を辞めたいと思っているが監査法人以外でどのようなキャリアがあるのか情報収集しておくのがよろしいかと思いますので、いろいろと話を聞いてみると良いです。すぐに転職しないケースにおいても、情報収集しておくことで、監査法人にいるうちにやっておくべきことなども見えてくるでしょう。

その他、キャリア以外の視点を重視する公認会計士も多いのですが、例えば自分の時間を確保するために転職したい、結婚や出産を機に制度がしっかりしている事業会社に転職したいという方もいらっしゃるかと思います。

そうしたことも含め、キャリア情報や転職エージェントに関する情報をまとめた記事もありますのでご参考ください。

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樋口 智大株式会社インテグラルベース 代表取締役
公認会計士・税理士・経理などの士業・管理部門の人材紹介を行う株式会社レックスアドバイザーズで勤務し、転職エージェントや会計専門メディアの事業の立ち上げを経験。その後、株式会社インテグラルベース(厚生労働省特定募集情報等提供事業者51-募-000806)を創業。現在は転職・採用・人事に係わるコンサルティングや求人サイトの運営を行っています。 士業JOBでは、これまで培った人脈と10年弱に及ぶ転職や採用に関する業務経験・実績を活かして転職に役立つ情報の配信を行っている他、多数の人材紹介会社とも協業し、最新の情報をブラッシュアップしながら配信を行っています。また、行政書士試験に合格しており、士業としての活動にも力を入れていく予定です。 執筆者・監修者・編集者情報へ